「インスタントコーヒー」の版間の差分

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[[File:Instant coffee.jpg|250px|thumb|right|インスタント・コーヒーの粉末]]
'''インスタントコーヒー'''とは、[[コーヒー豆]]の抽出液を乾燥させて粉末状に加工した[[インスタント食品]]である。[[]]を注ぐだけで[[コーヒー]]が完成する。
 
'''ソリュブルコーヒー'''とも呼称されるが、「インスタントコーヒーとソリュブルコーヒーは定義の異なる製品である」として両者を区別する場合もある。
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[[File:Kato Coffee Co., Souvenir, p. 1.jpg|250px|thumb|right|1901年、パンアメリカン博覧会で配られたKato Coffee Co.のパンフレット表紙]]
 
コーヒーを[[インスタント食品|即席食品]]化する場合、抽出液粉末化するのがもっともである。しかしだがその加工過程で[[嗜好品]]であるコーヒーにて重要な味や香りが損なわれやすい。加工後も味と香りを維持する技術の改良史が、インスタントコーヒーの歴史と言える。
 
[[1771年]]に[[イギリス]]で[[水]]に溶かすインスタントコーヒーが発明されたが、製品の貯蔵可能期間が短く発展せず、[[1853年]]にも[[アメリカ合衆国|アメリカ]]で開発が試みられたが、保存に成功しなかった<ref name=randy/>。
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[[1889年]]に[[ニュージーランド]][[インバーカーギル]]のコーヒー・[[香辛料]]販売業者デイビッド・ストラングが「ソリュブル・コーヒー・パウダー」(可溶性コーヒー粉末)の作成法の[[特許]]を取得し、「ストラング・コーヒー」として製品化したのが、記録上確認できる最初の例とされる<ref>[http://www.stuff.co.nz/life-style/food-wine/8085893/Instant-coffee-invented-down-south Instant coffee invented down south] 2012年12月16日</ref><ref>[http://atojs.natlib.govt.nz/cgi-bin/atojs?a=d&d=AJHR1890-I.2.3.2.1&e=-------10--1------0-- 1890 First Annual Report, New Zealand, Patents, Designs and Trade-marks] ニュージーランドの商標出願記録で1889年1月28日付、3518号としてストラングの出願記録が掲載されている。記載された商品名は"Strang's Patent Soluble Dry Coffee-powder"</ref>。
 
[[1899年]]にアメリカ[[イリノイ州]][[シカゴ]]に在住していた[[日本人]][[科学者]]の[[カトウ・サトリ]]博士が、[[緑茶]]を即席化する研究途上、揮発性オイルを使用したコーヒー抽出液を[[真空乾燥]]する技術を発明し、[[1901年]]に[[ニューヨーク州]][[バッファロー (ニューヨーク州)|バッファロー]]で開催されたパンアメリカン博覧会で「ソリュブル・コーヒー」と名づけて発表した<ref name=randy>RANDY ALFRED,[http://www.wired.com/thisdayintech/2009/08/dayintech_0811/ Aug. 11, 1903: Instant Coffee, a Mixed Blessing],08.11.09 ,12:00 AM.WIRED([http://wired.jp/2009/09/10/%E3%82%A4%E3%83%B3%E3%82%B9%E3%82%BF%E3%83%B3%E3%83%88%E3%83%BB%E3%82%B3%E3%83%BC%E3%83%92%E3%83%BC%E3%80%81%E6%9C%80%E5%88%9D%E3%81%AE%E7%89%B9%E8%A8%B1%E3%81%AF%E6%97%A5%E6%9C%AC%E4%BA%BA/ 日本語訳WIRED2009.9.10.「インスタント・コーヒー、最初の特許は日本人」]</ref><ref name="saito">[[西東秋男]]編『日本食文化人物事典 人物で読む日本食文化史』筑波書房,2005</ref><ref>[[富田仁]]編『事典近代日本の先駆者』(日外アソシエーツ 1995)</ref><ref name=osakatosyokan>{{CRD|1000070650|インスタントコーヒーを発明した人に日本人とアメリカ人がいるらしい。名前を知りたい。|[[大阪市立中央図書館]]}} カトウ・サトリについては彼とその発明品について著述したいずれの文献でも詳細な情報に乏しく、このレファレンス事例でも詳細不明のままである。</ref><ref>[http://coffee.ajca.or.jp/instant/08rekisi.html 日本インスタントコーヒー協会サイト「インスタントコーヒーの始まり」]</ref>。[[1903年]]にカトウは[[特許]]を取得した(USP735777) (USP735777) が、商品化には成功しなかった<ref name=randy/>。
 
[[1906年]]にアメリカ合衆国で{{仮リンク|ジョージ・コンスタント・ルイス・ワシントン|en|George_Washington (inventor)}}がインスタントコーヒー製法の特許を取得し、「Red E Coffee」としての製品化を経て成功を収めたが、ストラングやカトウの製法とワシントンの製法との関連は不明である<ref name=randy/>。
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ワシントンの特許以後、いくつかのメーカーがインスタントコーヒーの製造販売を行ったが、その中で後年にまで知られる大きな成功を収めたのは、[[スイス]]・[[ヴェヴェイ]]に本拠を置く食品商社の[[ネスレ]]であった。
 
[[1920年代]]末期コーヒーの大産地である[[ブラジル]]で、[[コーヒー豆]]大豊作となり価格相場が暴落農民らが困窮した。これに苦慮したブラジル政府は余剰のコーヒー豆を用いた加工食品の開発をネスレに要請する。ネスレは数年間の開発期間を経て、[[1937年]]にほぼ現在同様のスプレードライ法によるインスタントコーヒーを完成させた。この製品は[[1938年]]に「[[ネスカフェ]]」の商品名で市販され、インスタントコーヒーの代名詞としてられるようになが広がる。
 
[[フリーズドライ]]製法で製造されたインスタントコーヒーは、[[1960年代]]にアメリカで登場し風味に優れることから成功を収めた。
 
[[日本]]は[[1950年代]]からインスタントコーヒーが輸入され始めたが、1960年代以降国産化が進み、[[1960年]]に[[森永製菓]]によって国内生産開始され以降大衆に国産化が進展してコーヒーを広く普及させる契機となった。
 
[[カフェイン]]を抜く加工を施除去した[[デカフェ|カフェインレス]](英語では (decafという) が普通)のインスタントコーヒー商品もある。
工業国でない国家の多くで、レギュラーコーヒーよりもインスタントコーヒーの方が値段が高いことがある。手間暇がより多くかかっているからということもある。
 
[[カフェイン]]を抜く加工を施した[[デカフェ|カフェインレス]](英語ではdecafというのが普通)のインスタントコーヒーもある。
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=== スプレードライ法 ===
[[File:Instant coffee SprayDry.jpg|250px|thumb|right|スプレードライ法によるインスタントコーヒーの粉末]]
高温の乾燥筒に、高温のコーヒー液を噴霧して素早く乾燥させる。一般的にで、気流乾燥装置呼ばも称さる。製品は微粉状とな末を生成する。冷水にけやすいという利点があって量産性が高いが、製造時の熱よって高温下を経るため、香味と酸味が若干揮発して苦味が強調され、香味も揮発することによってやや損なわれやすい。香味の損耗については製造工程の改善もあり、熱風中に数秒間ブロー乾燥させたのちすぐに冷却される程度のものに過ぎず、極端なものではない(代表例:[[ネスレ日本]]「ネスカフェ クラシックブレンド」「ネスカフェ エクセラ(ソリュブルコーヒーに変わる前)」、[[味の素AGF|AGF]]「ブレンディ」などがある
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=== フリーズドライ法 ===
[[File:Instant coffee FreezeDry.jpg|250px|thumb|right|フリーズドライ法によるインスタントコーヒーの粒]]
コーヒー液をマイナス40℃40[[セルシウス度|度]]以下で一度凍結させた後に細かく、[[真空]]状態にして下で水分を蒸発させるである。製品は粒度2 - 3mm程度の大きさが尖った粗い状のとなる。スプレードライ法に比して香味の低下損なわ抑えらにくい、製造に手間がかかるため、やや量産性に劣る。このためスプレードライ法多くよりで売は高め(代表例:く設定される。ネスレ日本「ネスカフェ プレジデント(ソリュブルコーヒーに変わる前)」「ネスカフェ 香味焙煎(ソリュブルコーヒーに変わる前)」「ネスカフェ ゴールドブレンド(ソリュブルコーヒーに変わる前)」、AGF「グランデージ」「マキシム」、[[UCC上島珈琲|UCC]]「ザ・ブレンド」などがある
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=== エキス抽出液体式 ===
[[アメリカ合衆国|アメリカ]]の[[グリーンコーヒー]]が日本などにも上陸して[[オーガニック]]系[[カフェ]]や個人経営でこだわりを持つ嗜好的[[喫茶店]]などで提供されに広まようになった。もっ手軽に飲めるようにインスタント商品化みら行され、植物抽出技術を持つスマカフェなど外資系会社による製造して販売も行われている<ref name="summacafe">[http://exfuze.com/products/summa.html exfuze Summa Café]</ref><ref name="mynavi">[http://news.mynavi.jp/news/2013/10/10/435/ マイナビニュース2013/10/10「脂肪も燃焼してくれるグリーンコーヒーならテカリ肌にもサヨナラ」]</ref><ref name="Summa">[http://summa-cafe.com/ Summa cafe]</ref>。
 
== ネスレ日本の製品呼称変更 ==
== 公正競争規約との関係 ==
{{law|section=1}}
日本の[[公正競争規約]]上では、インスタントコーヒーを「コーヒーいり豆から得られる抽出液を乾燥した[[水溶性]]の粉状、顆粒状その他の固形状のコーヒー」と定義している<ref>[https://www.jfftc.org/rule_kiyaku/pdf_kiyaku_hyouji/coffee.pdf レギュラーコーヒー及びインスタントコーヒーの表示に関する公正競争規約]2018年5月21日 全日本コーヒー公正取引協議会</ref>。粉状で湯を注ぐだけで完成するコーヒーであっても、粒子の中にコーヒー豆を内包する製品の場合、日本では同規約上レギュラーコーヒーに分類されてしまい、「インスタントコーヒー」を名乗れない<ref name=bzm130828>[https://www.itmedia.co.jp/makoto/articles/1308/28/news087_2.html ネスカフェ「インスタントコーヒー」終了!?すべて「挽き豆包みコーヒー」に (2/2)] - Business Media 誠・2013年8月28日</ref>。このため、「ソリュブルコーヒー」(「ソリュブル」は「可溶性」の意)と称した場合には、粒子にコーヒー豆を内包するものを含んだ「湯を注ぐだけで完成するコーヒー製品全般」を意味するとして、インスタントコーヒーと区別する見解がある。
 
実際に[[2013]]年9月には、[[ネスレ日本]]がすでに採用済みの「ネスカフェ 香味焙煎」([[2010年]]9月のリニューアル以降より採用)と「ネスカフェ プレジデント」([[2011年]]9月のリニューアル以降より採用。[[2015年]]7月をもって一旦製造終了するも[[2016年]]9月復活)を除く残りのネスカフェ全製品を「挽き豆包み製法」を採用した製品に統一することに伴い、製品の呼称を「インスタントコーヒー」から「レギュラーソリュブルコーヒー」に変更することを発表している<ref name=bzm130828 />。
 
ただし、コーヒー業界団体である全日本コーヒー公正取引協議会内規でネスレ日本の一連の製品のような「粒子の中にコーヒー豆を内包する製品」について「インスタントコーヒー(レギュラーコーヒー入り)」と表示するようことを規定しており、「『レギュラーソリュブルコーヒー』表記では『ドリップで入れるレギュラーコーヒー』と誤認する」と反発する業者もいる<ref>[http://www.nikkei.com/news/print-article/?R_FLG=0&bf=0&ng=DGXNASDD280NL_Y3A820C1TJ0000&uah=DF_SOKUHO_0002 ネスレ日本「インスタント」の呼称やめる 「ネスカフェ」刷新] - 日本経済新聞・2013年8月28日</ref>。
 
ネスレは自社の「レギュラーソリュブルコーヒー」について、「コーヒー抽出液を乾燥させて粉状にする」インスタントコーヒーの製法とは異なり、「微粉砕したコーヒー豆を抽出液と混ぜて乾燥させる」という新しい製法を取っていると説明したほか、豆をく「レギュラーコーヒー」でも、従来の「インスタントコーヒー」でないと説明し、「ソリュブルコーヒー」をインスタントコーヒーの定義に該当しない新ジャンルのコーヒーと位置付けていた。
 
しかし、[[2014年]]7月に全日本コーヒー公正取引協議会は、同社製品について「インスタントコーヒー(レギュラーコーヒー入り)」と表示されるべきものに過ぎないとして、新ジャンルの呼称「ソリュブルコーヒー」という新ジャンル呼称および「レギュラーソリュブルコーヒー」の名称の使用を一切認めないことを決議し、[[2018年]]「レギュラーソリュブルコーヒー」という名称を広告において使用することを『不当表示』として制限する公正競争規約改訂案を採択、同した。改訂案について[[公正取引委員会]]及び[[消費者庁]]長官より認定を受け、その告示があった同年5月21日から施行した<ref>[https://www.jfftc.org/rule_kiyaku/pdf_kiyaku_hyouji/coffee.pdf レギュラーコーヒー及びインスタントコーヒーの表示に関する公正競争規約]2018年5月21日 全日本コーヒー公正取引協議会</ref><ref group="注">同規約第2条には「(定義)この規約において'''「コーヒー」とは、レギュラーコーヒー及びインスタントコーヒー'''であって、容器又は包装に密封されたものをいう。ただし、コーヒー飲料等の表示に関する公正競争規約の適用を受けるものは除く。 2 この規約において「レギュラーコーヒー」とは、[[コーヒーノキ]]の種実を精製したコーヒー生豆(以下「コーヒー生豆」という。)を焙煎したもの(以下「煎り豆」という。)及び煎り豆にコーヒー生豆を加えたもの並びにこれらを挽いたものをいう。 3 この規約において「インスタントコーヒー」とは、煎り豆又は煎り豆にコーヒー生豆を加えたものから得られる抽出液を乾燥した水溶性の粉状、顆粒状その他の固形状のものをいう。 4 この規約において、レギュラーコーヒーとインスタントコーヒーを混合したもの及びインスタントコーヒーの製造工程における抽出液にレギュラーコーヒー粉末を混合して乾燥させたものは、最終製品の重量百分比率で、'''レギュラーコーヒーの割合が多いものは「レギュラーコーヒー」、インスタントコーヒーの割合が多いものは「インスタントコーヒー」とみなす'''ものとする。」とあり、「ソリュブルコーヒー」をどちらでもない新ジャンルの「コーヒー」と称するネスレ日本の主張を一切認めていない。また同規約第6条には「(不当表示の禁止) 事業者は、次の各号に掲げる表示をしてはならない。(中略)(2) 第2条第1項から第4項までの規定で定義するコーヒーについて、'''定義に合致しない名称'''で、かつ、一般消費者を誤認させるおそれがある表示」とあり、「ソリュブルコーヒー」という名称の表示も認めていない。</ref>。
 
その結果、この規約によってネスレ日本は現在の商品名称で販売・広告展開が不可能になるため、協議会および一般社団法人[[全日本コーヒー協会]]<ref group="注">全日本コーヒー商工組合連合会・日本インスタントコーヒー協会・日本家庭用レギュラーコーヒー工業会・日本珈琲輸入協会・日本[[グリーンコーヒー]]協会の5業界団体により、構成されている。</ref>を脱退した。さらには、当時ネスレ日本の[[高岡浩三]]社長が会長を務めていた日本インスタントコーヒー協会<ref group="注">事務局はネスレ日本本社内に置かれていたため、脱退した団体の事務局が自社内にある状態になっていた。移転時期は不明ながら[[2020年]]4月現在は[[味の素AGF]]内に置かれている。</ref>・日本珈琲輸入協会をも退会した。今後は業界に縛られない営業活動を展開するという<ref>[http://sankei.jp.msn.com/economy/news/140723/biz14072316280017-n1.htm ネスレ日本が業界団体から脱退―自社表記を認められず] [[産経新聞]]2014年7月23日</ref><ref group="注">「[[天声人語]]」([[朝日新聞]]2014年7月25日)にネスカフェの「違いがわかる男」というコピーから「バラと呼ぶ花を別の名前にしても、美しい香りはそのまま」を引用してこの問題を語っている。</ref>。このため、ネスレの製品は日本で唯一、コーヒー協会のマークがラベルに入っていないする
 
== 脚注 ==