ナニー・ドス

これはこのページの過去の版です。リトルスター (会話 | 投稿記録) による 2009年1月16日 (金) 08:55個人設定で未設定ならUTC)時点の版 (interlang)であり、現在の版とは大きく異なる場合があります。

ナンシー(ナニー)・ドスNancy Doss, 1905年11月4日 - 1990年6月2日)は、判明しているだけでも8人を毒殺したアメリカ合衆国の連続殺人犯。

生い立ち

アラバマ州アニストンに五人兄弟の四女として誕生。父親は今で言うところの家庭内暴力をふるう人物であり、その事が彼女の人格に大きな悪影響(理想を追求しすぎる傾向)を及ぼしたと推測されている。

最初の結婚とその顛末

幼いころから恋愛小説を好み、理想の伴侶を夢見ていた彼女は16歳の時に結婚。相手は、職場の同僚だったチャーリー・ブラッグスという人物だった。

【甘い結婚生活】を夢見た彼女の人生は、ブラッグスの母親が同居するようになってからもろくも崩れ去ってしまう。母親は彼女に厳しく当たり、あらゆる面に置いて彼女を絶対服従させようとしたのだ。

とうとう堪え切れなくなったナンシーは、砒素を主成分としたネズミ駆除剤を食事に混ぜることで次女と三女を毒殺。当初は食中毒と断定されたが、夫は彼女が殺害したのではないかと疑い、(ナンシーの望み通りに)離婚を考えるようになってしまう。

1927年、ブラッグスの母親の死もあって二人は離婚。こうして彼女の計画は成功した。

二度目の結婚とその顛末

晴れて自由の身になったナンシーは、新聞の恋人募集欄を使って新しい伴侶を捜索。数ヶ月後、フロリダ州ジャクソンビルに住むフランク・ハレルソンという人物と出会い結婚した。

十数年間、【甘い生活】を送っていた彼女だったが、ただひとつ、夫の酒癖の悪さには閉口していた。フランクの酒癖はもはや酒乱と言えるレベルであり、悪酔いしては彼女に暴力をふるっていたのだ。

ナンシーは何度も夫に禁酒することを約束させたが、その度に夫は隠れて飲酒。とうとう堪えられなくなった彼女は、夫が庭のプランターに酒瓶を隠していることを見抜き、その中にネズミ駆除剤を混ぜフランクを殺害する。

三度目の結婚とその顛末

ケンタッキー州のハリー・ラニングという人物と結婚したナンシーだったが、またもや夫の性癖に悩まされることになってしまう。

夫は極端な浮気性だったのだ。とうとう堪え切れなくなった彼女は、プルーンの砂糖煮に大量のネズミ駆除剤を混ぜて夫を殺害。

その死は心不全として扱われ、彼女の犯行は暴かれなかった。夫の(表向きな)妻への献身が、ナンシーへの疑惑をそらすカモフラージュとなっていたのだ。

ちなみに、ハリーの殺害後ラニング家は火災に見舞われているが、それに関する彼女の関与は不明である。

四度目の結婚とその顛末

カンザス州に向かった彼女は、リチャード・L.モートンという人物と結婚。彼もまた女性関係にルーズな人物であり、とうとう堪え切れなくなった彼女はプルーンの砂糖煮に大量のネズミ駆除剤を混ぜて夫を殺害。

夫は三ヵ月間地獄の苦しみを味わった末、死んだとされている。

五度目の結婚とその顛末

1953年オクラホマ州の公務員(道路整備機関に勤務)、サミュエル・ドスと結婚したナンシーだったが、夫の亭主関白ぶりに悩まされることになってしまう。

夫は厳格な性格であり、彼女の根幹をなしているロマンス雑誌を嫌悪。とうとう堪え切れなくなった彼女は、プルーンの砂糖煮に大量のネズミ駆除剤を混ぜて夫を殺害――しようとしたが、夫の丈夫な体質に阻まれて計画は頓挫。

夫は食中毒と診断され、病院に収容された。数ヶ月後、サミュエルは退院することになったが、帰宅後すぐにまた体調を崩して今度は死亡。

生命保険目当てと、夫への異常な憎しみにかられていたナンシーに毒入りコーヒーによってとどめを刺されたのだ。

人生の顛末

サミュエルの死を不審に思った主治医により、彼の遺体は検死解剖に回されることになった。

その結果、サミュエルの体から18人分の砒素が検出され、ナンシーはついに逮捕される。取り調べの結果、五人の夫の他、自分の親族を次々と殺害していたことを告白。

その動機として、「理想の生活を追い求めていただけ」と力説した。

結局、彼女は殺害を物理的に立証できるサミュエル殺害の咎で終身刑を言い渡され、オクラホマ州の刑務所に収監された。

ロマンスとは明らかに縁遠い牢獄の中で、彼女が死去したのは1965年。彼女が60歳の時だった。

死因は白血病である。

人物像

超極端な理想主義者であり、いうなればハーレークインのような華麗なる恋愛を求めて再婚を繰り返した彼女。結婚相手が少しでも自分の理想からずれた顔をのぞかせることが我慢できず、砒素を用いて次々と殺害したのだ。

なぜ彼女は捕まらなかったのか?

彼女は、周囲の人間を次々と殺害したにも関わらず、なぜ数十年間もの間逮捕されなかったのか?

当時、アメリカの警察には情報を統括するシステムが存在しておらず、州をまたいだ犯罪が行われると対処のしようがなかった。

ナンシーは殺人を犯すとすぐにその土地を離れ、二度と戻ってこなかったため罪が判明するのが遅れたのだ。

ちなみに、アメリカの犯罪情報を統括するFBIが本格的に始動したのは1924年のことである。

関連項目

  • 家庭内暴力
  • 連続殺人
  • 相棒―Season 4に日本全国をまたにかけ、次々と女性を殺害した連続殺人鬼(演:小日向文世)が登場。彼が数十年間逮捕されなかった理由も、また情報統括システムが整備されていなかったのが原因であった(日本の場合は現在も未整備のままである)。

外部リンク

  • [1]―ウィキペディア英語版の該当記事彼女の写真が掲載されている。
  • [2]―「殺人博物館・突飛なる事件の系譜という電子書籍に彼女の記事が掲載。著者は岸田裁月。