アイアンマン (映画)

2008年のアメリカ映画

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アイアンマン』 (Iron Man)は、2008年アメリカ映画。主演はロバート・ダウニー・Jr

アイアンマン
Iron Man
監督 ジョン・ファヴロー
脚本 マーク・ファーガス
ホーク・オストビー
アート・マーカム
マット・ホロウェイ
製作 アヴィ・アラド
ケヴィン・フィージ
製作総指揮 ルイス・デスポジート
ピーター・ビリングスリー
アリ・アラド
スタン・リー
デヴィッド・メイゼル
出演者 ロバート・ダウニー・Jr
テレンス・ハワード
ジェフ・ブリッジス
グウィネス・パルトロー
音楽 ラミン・ジャワディ
配給 パラマウント映画 アメリカ合衆国の旗
SPE 日本の旗
公開 2008年5月2日 アメリカ合衆国の旗
2008年9月27日日本の旗
上映時間 125分
製作国 アメリカ
言語 英語
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概要

マーベル・コミックから生まれた人気フランチャイズアイアンマン」の実写映画化作品。1990年ユニバーサル映画から映画化の話が持ち上がって以来、20世紀フォックスニュー・ライン・シネマなど各社で壮絶な権利争奪戦が繰り広げられたが、最終的にマーベルの映画製作部門であるマーベル・スタジオズが権利を買い戻し、自社初の独立製作(インディペンデント)作品として2006年頃から製作が進められた。

監督には、同じくマーベル・コミックが原作の映画『デアデビル』に俳優として出演した縁からジョン・ファヴローが着任。脚本の草稿も完成し、本格的なプリプロが開始された。並行してキャスティングも進められ、おおよその役が決まっていったが、タイトルロールの「トニー・スターク」を演じる俳優探しに関しては難航した。製作サイドが数多くの若い男優をリストアップする中、ファヴロー監督は当時43歳のロバート・ダウニー・Jrを推薦したが「老けすぎている」との理由で却下。しかし、自ら原作コミックのファンを公言するダウニー・Jrはスクリーンテストに見事な役作りで臨み、製作サイドを納得させタイトルロールの座を勝ち取ることになる(選考の理由として、ファヴロー監督は「ダウニー・Jr自身の波瀾万丈のキャリアが、トニーという役に奥行きを与えた」と語っている)。

結果、様々な紆余曲折を経ながらも完成した本作は、本国アメリカをはじめ世界各国でヒットを記録。製作サイドの不安要素だったダウニー・Jr=「トニー・スターク」も原作ファンおよび批評家から絶賛され、作品のクオリティと共に高評価で歓迎されることとなった。

ストーリー


注意:以降の記述には物語・作品・登場人物に関するネタバレが含まれます。免責事項もお読みください。


巨大軍事企業スターク・インダストリーズ」の社長であり天才発明家のトニー・スタークは、自身が開発したクラスター型ミサイルジェリコ」を現地の在留アメリカ空軍プレゼンすべくアフガニスタンを訪れていた。しかし、無事にプレゼンを終え帰路に就いたトニーを待ち受けていたのは、現地のゲリラテン・リングス」による激しい襲撃だった。同行していた士官たちが次々と殺される中を必死に逃げまどうトニーだったが、ゲリラは彼に向けて小型ミサイルを発射した。トニーがそのミサイルに刻まれた「スターク・インダストリーズ」のロゴを目撃した瞬間、ミサイルは爆発。爆風で吹き飛ばされたトニーは意識を失ってしまう。

気がつくと、トニーはゲリラの本拠地である洞窟に拉致されており、胸には車載用バッテリーに繋がった電磁石が取り付けられていた。爆発の際、飛び散ったミサイルの破片がトニーの心臓周辺に突き刺さったため、電磁石で破片を引き留めておかなければ1週間で命を落とすというのである。ゲリラの本拠地には例のミサイルをはじめ、横流しされたスターク・インダストリーズ社製の武器が所狭しと並んでいた。囚われの身としてゲリラに武器を提供するよう命じられたトニーは、解放の条件として「ジェリコ」の組み立てを脅迫される。

脅迫に屈することを拒否したトニーは、同じく捕虜となったインセン博士の協力を得ながら、敵の目を欺いて密かにある物を作り始めた。膨大なエネルギーを生み出す熱プラズマ反応炉「アーク・リアクター」の小型版である。胸に接続することで生命維持を可能にするこの装置を完成させたトニーは、続いて装置と連動する鉄製の強固なアーマー「マーク1」を作り上げる。火炎放射器やジェット・パックを搭載し、凄まじいパワーを発揮するそのアーマーを装着したトニーは、自らの命を犠牲にしたインセンの手助けによってゲリラを退け、アーマーを故障させながらも何とか脱出に成功する。

脱出後、アフガニスタン辺境の砂漠に墜落しあてもなく彷徨するトニーだったが、空軍の捜索隊に保護され本土に生還。国を守るために作った自社製品がゲリラの手に渡り、またその武器により目の前で若い士官たちが殺されたことへの後悔から、記者会見で「軍事関係には今後一切関わらない」と宣言する。さらにテロ撲滅に貢献すべく、脱出で粉々になってしまったマーク1に代わるアーマーの開発に着手。試行錯誤の末、トニーは様々な武器を組み込み戦闘用に改良された「マーク2」を経て、ついに最終形「マーク3」を完成させる。

トニーは親友の「ローディ」ことジェームズ・ローズ中佐や秘書のペッパー・ポッツの協力も得て、完成したアーマーを装着し「アイアンマン」としてテロとの戦いを開始する。だが、その影にはスターク・インダストリーズで秘密裏に進むある陰謀、そして重役であるオバディア・ステインの野望が潜んでいた…。

登場人物

アンソニー・"トニー"・スターク(=アイアンマン)
巨大軍事企業「スターク・インダストリーズ」の社長。全米中の注目を集める大富豪で稀代の天才発明家としても知られ、その類い希なる才能は17歳にしてマサチューセッツ工科大学を首席卒業するほど。21歳の時、社の先代であり父親のハワード・スタークの死に際し、後を継いで社長に就任。その才能を活かして数々の軍事的開発に携わる一方、私生活では無類の遊び人として浮き名を流しており、雑誌「マキシム」の表紙モデル12人と毎月関係を持っていたという噂まである。かつてマンハッタン計画に関与し、原子爆弾を生み出した父親ハワードを「真の愛国者」として尊敬し、軍事産業にも肯定的な考えを示していたが、アフガニスタンでゲリラに拉致されるという事件を通して一変。取締役会による不正取引、そしてスターク・インダストリーズの手がけた武器によって多くの罪なき命が奪われたという事実を知り、自ら贖罪の意味を込めて「アイアンマン」となることを決意。テロ撲滅への貢献、そして自身の開発した武器の廃絶を誓う。
ジェームズ・"ローディ"・ローズ
アメリカ空軍武器開発部の中佐。スターク・インダストリーズとのパイプ役を担当しており、トニーの道楽ぶりに呆れつつも「偉大な師であり長年の友人」として尊敬し、親密な関係を築いている。アフガニスタンでは「ジェリコ」のプレゼンに同行するも、トニーとは別のトラックで移動していたため、トニーが誘拐された現場には遭遇していない。3か月もの間行方不明となっていたトニーを必死の捜索の末に発見し、共に本土へ帰還。だが帰還して間もなくトニーが「軍事関係から手を引く」と言い始めたため、一時はトニーを見放してしまうが、彼がアイアンマンとして活動していると知ってからはサポート役を引き受けるようになる。トニーの作ったアーマーを「こんなに格好いい物は初めて見た」と絶賛し、自身もアーマーを装着する機会を窺っている。
オバディア・"オビー"・ステイン(=アイアンモンガー)
トニーの父親であるハワードの盟友で、スターク・インダストリーズの創成期から経営に尽力。ハワードの死後一時期は社長も務めるが、トニーの社長就任後は取締役会の一員となり、良き相談相手として後見役を務めていた。だが、影ではトニーが発明した数々の武器をゲリラに横流しし、武器の需要を世界的に高めようと画策。また、密かに社の覇権も狙っており、内通していた多民族ゲリラ組織「テン・リングス」にトニーを殺害させようとするも失敗。しかしトニーがアフガニスタンから生還した後は取締役会を裏で操り、軍事産業に対する意見の相違を理由にトニーを経営から除外。事実上スターク・インダストリーズの全権力を掌握する。さらに、テン・リングスが入手した「マーク1」の破片と設計図を元にして最強のアーマー「アイアンモンガー」を完成。スターク・インダストリーズを手中に収めるため、再びトニーを殺害しようと企てる。
ヴァージニア・"ペッパー"・ポッツ
トニーの秘書。遊び人で無頓着なトニーの代わりに身の回りの世話を一手にこなす真面目な女性であるが、一方では自身の誕生日プレゼントをトニーのカードで購入したりと茶目っ気のある一面も。トニーがアイアンマンとして活動を始めると心配のあまり秘書を辞めるとまで言い出すが、トニーに説得されて活動の支援をすることに。改心したトニーの姿にいつしか思いを寄せるようになるが、周囲の目が気になってなかなか「社長と秘書」の関係から発展できずにいる。トニーに処分するよう言われた「初号心臓」ことアーク・リアクターのプロトタイプを「Proof That Tony Stark Has A Heart」(トニー・スタークにもハートがある)という刻印と共にガラスケースに入れてプレゼントするが、これが後に思いがけず役立つことになる。
クリスティン・エヴァーハート
雑誌「ヴァニティ・フェア」の記者で、テロを何より憎んでいる。それは武器開発の第一人者であるトニーに対しても同様で「テロに便乗して金儲けをしている」と好印象は持っていなかったが、インタヴューをした際トニーに口説かれ、初対面ながら一夜を共にしてしまう。スターク・インダストリーズの記者会見に姿を見せたり、アフガニスタンで行われている不正取引を突き止めたりと、記者としてもきちんと働いている。
インセン
アフガニスタン人の科学者で、かつてベルンの開発会議でトニーと顔を合わせている(当時トニー本人は酔い潰れており、このことを記憶していない)。グルミラという小さな村で家族と共に暮らしていたが、テン・リングスの襲撃によって家族は死亡。自身も生き延びたものの捕虜となり、テン・リングスの監視下に置かれることに。瀕死のトニーに車載用バッテリーで延命措置を施し、命を救った張本人。一時はゲリラに屈しかけたトニーを奮い立たせ、共にゲリラの監視下でアーク・リアクターおよびマーク1を完成させるも、脱出時にマーク1が起動するまでの時間を稼ぐために犠牲となり、無惨にも射殺されてしまう。彼が死に際に残した「命を無駄にするな」という言葉は、トニーが「マーク2」以降の開発を進める大きな要因の1つとなった。
ラザ
テン・リングスの首領。チンギス・ハンを崇拝し、彼のようにアジア地域を武力制圧するという野望を抱いている。オバディアと密かに結託しており、スターク・インダストリーズの武器を裏取引する代わりにある人物の殺害を命じられるが、その人物が天才科学者であるトニー・スタークだと知るやいなや殺害を拒否。トニーを拉致し、最新武器の開発をさせることでテン・リングス台頭のために利用しようと目論むが、マーク1に身を包んだトニーにねじ伏せられ脱出を許してしまう。だがトニーが逃亡した後、砂漠に散乱していたマーク1の残骸およびその設計図を入手。それらを餌に、オバディアに「アーマーの軍団による世界征服」というさらなる取引を持ちかけるが、彼の裏切りによって殺害されてしまう。
フィル・コールソン
合衆国の特殊組織「戦略国土調停補強配備局」のエージェント。トニーが生還するまでの経緯が「極秘」とされていることに興味を持ち、トニーやペッパーから話を聞き出そうと何度も接触を試みる。ペッパーがオバディアの不正を暴いた際に偶然居合わせたため、仲間のエージェント5人を引き連れてオバディア逮捕に向かうが、オバディアによってコールソン以外のほとんどが倒されてしまう結果に。あまりに組織名が長いため「覚えにくい名前だ」と皮肉を言われることもしばしばだが、後に「S.H.I.E.L.D.」という略称が考案される。

劇中に登場するアーマー

マーク1
トニーが「テン・リングス」の本拠地から脱出するため、監視の目を盗んでインセンと共に完成させた最初のアーマー。武器としては小型ボンベを利用した簡素なミサイル火炎放射器、飛行用のジェット・パックを搭載している。もともとは「ジェリコ」を組み立てるためのスクラップを変形・溶接させて造ったために、形は左右非対称で粗削り。さらにアーマーを起動させる際はコンピューターによる起動シークエンスが必要で、かなりの時間を要するが、起動後は内蔵されたモーターを「アーク・リアクター」と連動させることにより相当量のパワーを発揮。防弾壁を数回の殴打で破壊でき、岩をも砕くことができる。スクラップから組み上げられた鉄の装甲は、強固な防御力を誇る。至近距離から銃撃されても、跳ね返すことができる。ただし防御力に関しては、前面のみに特化したまさしく突撃用のアーマーだけに側面および背面はモーターがむき出しとなっており、そこを攻撃されるとたちまち故障してしまうのが弱点。トニーは脱出途中に近・遠距離からの集中射撃を受け、脚部のモーターを故障させるもジェット・パックで脱出に成功した。だがジェット・パック自体は打ち上げ式のため飛行制御ができず、結局はアフガニスタンの砂漠に墜落。アーマーはバラバラに飛び散ってしまう。
マーク2
アメリカに帰還したトニーがマーク1に代わるアーマーとして、自宅を管理する人工知能J.A.R.V.I.S.(ジャーヴィス)」の分析を元にテスト用に設計した2番目のアーマー。素材はマーク1と同じくである。当初はマーク1を原型として製作する予定だったが、トニーが改良過程でデザインを一新。より洗練された形になっており、パワーもより強化されている。そのため、従来のアーク・リアクターでは動力供給が不十分になり、リアクター自体もより強力なものへとアップグレードされた(詳しくは次項参照)。肩には対人用の銃弾を発射する多連装を、腿部には撹乱用のフレア放出装置を、そして腕には戦車をも破壊可能な小型ミサイル発射装置を組み込み、戦闘力も格段に向上。掌にはアーク・リアクターのパワーを一点に集中させ、誘導性エネルギーとして発射する「リパルサー・レイ」発射装置が組み込まれた。ちなみにリパルサー・レイ発射装置は、脚部(の接地面)のジェット・パックおよび背中の飛行用フラップと組み合わせることにより、超音速での飛行が可能。ヘルメットの内側はヴァーチャル操作パネルを備えた多機能HUDとなっており、目視でのターゲット捕捉やJ.A.R.V.I.S.との通信、外部との電話連絡が可能。アーマーとしてはほぼ完成しているが、鉄製ゆえ成層圏付近に近づくとアーマーが氷結してしまい、全機能が停止してしまう。この場合J.A.R.V.I.S.との通信がオフラインとなりアーマーの自動制御が不可能になってしまうので、緊急手段としてフレア放出装置に手動でフラップを全開放できるレバーを備えている。
マーク3
マーク2の弱点を解消するため、さらなる改良が加えられた3番目にして完成型のアーマー。マーク2と比べても性能・外見ともに大差ないが、アーマーの外殻に用いられる素材を軍事衛星にも使用されているチタンの合金に変更。成層圏付近におけるアーマーの氷結問題を解決すると同時に、戦闘に合わせた軽量化がなされている。だが軽量化されたとはいえアーマー自体の防御力は損なわれておらず、至近距離からの銃撃はもちろん、戦車からの直接攻撃にも耐えることができる。主な性能のアップデートとしては、ディスプレイからスターク・インダストリーズの兵器データベースにアクセスでき、自社製品が一瞬で識別できるようになっている。また、マーク2では不可能だった脚部ジェット・パックだけでのホヴァリング(空中浮遊)がわずかな時間ではあるが行えるようになっており、空中からの対地攻撃も可能になっている。中でも最大のアップデートは、リパルサー・レイに加え、胸部のアーク・リアクターから直接パワーを放出する強力な破壊光線「ユニ・ビーム」の発射が可能になったことであるが、ユニ・ビームは破壊力が強い一方でアーク・リアクターに多大なバッテリー消費をもたらすため、アイアンモンガー戦の時のみ用いられている。もともとJ.A.R.V.I.S.の試算段階では金一色のカラーリングだったところ、「派手すぎる」としたトニーの思いつきで自身の所有するホットロッドにちなんだ赤色のペイントが施された。このアーマーを目撃したマスコミにより「アイアンマン」というニックネームが付けられるが、トニー本人は「実際には鉄(アイアン)じゃない」と文句を言いながらも気に入っている。
アイアンモンガー
テン・リングスが回収したマーク1の残骸を手に入れたオバディアが、それを元にして開発したアーマー。スターク・インダストリーズ本社研究所にある「セクション16」という一角で、数名のチームと共に極秘裏に完成させた。だが起動に必要なアーク・リアクターだけはどうしても完成させることができず、トニーを神経麻痺に陥らせて奪い取った。全高が3メートル近くにも及ぶ巨大なアーマーであり直接の装着が難しいため、操縦は内部コックピットでの手動制御で行う。マーク3の倍近くある大きさにも関わらず、マーク3と同様の俊敏な挙動、そしてマーク3を凌駕する圧倒的な破壊力を発揮。そのパワーはマーク3のアーマーを圧壊させ、指2本でヘルメットを握りつぶしてしまうほどである。主な兵器として、腕にはガトリング砲グレネードランチャーを、肩にはミサイル発射装置を装備。トニーが開発したアーマーと比べると性能・外見ともにより兵器らしくなっており、オバディア本人もトニーに対し「私のデザインは君ほど保守的じゃない」と吐き捨てている。脚部にはジェット・パックも装備しているが、マーク1のデータを元にしているため成層圏付近での氷結対策は講じられておらず、やはりマーク2同様に全機能が停止した。マーク3(マーク2)と同じく頭部の内側は多機能HUDとなっているが、マーク3のインジケーター色が白色(マーク2は青色)であるのに対しアイアンモンガーは赤色になっている。

劇中に登場するテクノロジー

ジェリコ
トニーがアメリカ空軍の要望に応じて開発した新型ミサイル。多数の小型弾頭を内包したクラスター型ミサイルで、一度の発射により広範囲を破壊できる。世界で初めて「リパルサー・テクノロジー」を応用したミサイルでもあり、トニーはここからリパルサー・レイ開発のヒントを得た。
アーク・リアクター
スターク・インダストリーズが、かつて「新世代のエネルギー供給装置」として開発した熱プラズマ反応炉。最初に完成した大型のものはスターク・インダストリーズ本社研究所アトリウムに展示されている。小型化が難しいという理由から研究が長らく中断されていたが、トニーはゲリラの監視下という極限の状況において小型化に成功。心臓からミサイルの破片を遠ざけるだけでなく心臓ペースメーカーとして働き、なおかつアーマーを稼働させるコアとしての役割も果たしている。パラジウムを外殻とし、発生する熱量は毎秒3ギガジュール。接続するものによって稼働の程度は異なるが、人間の心臓に直結すれば人生50回分もの鼓動を生み出し、「人間より大きなもの」(マーク1のアーマー)であれば約15分間の稼働を可能にする。非常時にはバックアップ・パワーとして数分間の自家発電を行うことも可能。使用に伴い、胸部にのようなプラズマ性廃液がたまってしまうのが難点。ちなみにアフガニスタンから生還後、マーク2(マーク3)の開発にあたって「アーマーの15分以上の稼働」および「連続飛行」に耐えうる改良版が製作された。トニーの胸の中央に接続部があることから、小型版の通称は「チェスト・ピース」(胸当て)。
J.A.R.V.I.S.(ジャーヴィス)
トニーが開発した最新鋭の人工知能カリフォルニア州マリブにあるトニーの自宅を集中管理し、トニーの趣味であるホットロッド製作からアーマー設計の分析まで幅広くサポート。トニーがアイアンマンとして活動する際にはワイヤレス回線を通じてオンライン連携を取り、トニーの指示に沿ってアーマーの内部メカニズムを制御している。高度な会話プログラムも有しており、家族のいないトニーにとっては唯一の話し相手でもある。
トニーのワークショップ
トニーの自宅の地下に設置されている駐車場の一部が、様々な開発・実験用に改築されたスペース。もちろん、このスペースもJ.A.R.V.I.S.の集中管理下にある。ワークショップに入るにはパスワードの入力が必要だが、そのパスワードはトニーとペッパーのみが知っている(だが、後にトニーがリパルサー・レイのテスト中にドアを破壊してしまい、パスワードの入力は必要なくなった)という正にプライヴェートな空間で、トニーはホットロッドの製作やアーク・リアクターの交換、さらにアーマーの設計などを全てここで行った。このスペースの床部分および天井部分にはアーマー装着用の装置が内蔵されており、トニーが出動する際にはそれらの装置が分担してアーマーを取り付ける(まず床部分が回転して台座となり、ブーツ→腿部→下腹部の順にアーマーを装着。次に天井部分から2本のアームが降下し、腕部→胸部→頭部の順に装着してアーマーを完成させる)。
"不器用アーム"
トニーが大学在学時、卒業製作として作り上げた多機能アーム。現在はワークショップに設置されている。人工知能を内蔵しているがかなりの年数が経過しているため動きが鈍く、トニーは最新鋭のJ.A.R.V.I.S.と比較して「不器用なやつだ」と皮肉交じりに揶揄している。アームは複数台あり、トニーがマーク2の飛行テストを行う際はカメラ撮影と消火を分担して行っていた。
神経麻痺誘発装置
スターク・インダストリーズが以前軍事用に開発した装置。大きさは小型のキーホルダー程度だが、相手の耳元(首筋)へ装置を近づけることにより神経麻痺を誘発。効果は一時的だが、かなりのダメージを与えることができる。使用する本人が耳栓を着けた上で装置を作動させなければならないことから、ある種の音波が応用されていると思われる。装置自体は違法扱いとなり日の目を見ずに終わるが、オバディアは密かに装置を持ち出し、ラザを殺害する際、そしてトニーからアーク・リアクターを強奪する際にこの装置を使用した。

キャスト (日本語吹替版キャスト)

スタッフ

  • 監督: ジョン・ファヴロー
  • 脚本: マーク・ファーガス & ホーク・オストビー and アート・マーカム & マット・ホロウェイ
  • 製作: アヴィ・アラド / ケヴィン・フィージ
  • 製作総指揮: ルイス・デスポジート / ピーター・ビリングスリー / アリ・アラド / スタン・リー / デヴィッド・メイゼル
  • 撮影: マシュー・リバティーク, ASC
  • プロダクション・デザイナー: J. マイケル・リーヴァ
  • 編集: ダン・リーベンタール, A.C.E.
  • 視覚効果 & アニメーション: インダストリアル・ライト & マジック
  • 視覚効果スーパーヴァイザー: ジョン・ネルソン
  • 音楽スーパーヴァイザー: デイヴ・ジョーダン
  • 音楽: ラミン・ジャワディ

公開後の評価

アメリカ
パラマウント映画配給で2008年5月2日に封切られ、堂々の初登場第1位を記録。週末ボックスオフィスでは歴代11位(公開当時)となる9861万ドル(約105億円)を記録し、見事なサマー・シーズンの幕切りを飾った[1]。ちなみに2008年12月現在の全米興行収入は、マーベル作品歴代ボックスオフィスの第4位(第1位~3位は『スパイダーマン』シリーズで、第5位は『X-MEN: ファイナル ディシジョン』)[2]。また、本作は最先端のVFXを用いた映像が高く評価され、第81回(2008年度)アカデミー賞において「視覚効果賞部門」にノミネートされている。
日本
ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント配給で2008年9月27日に公開。近年はアメコミ実写映画化作品が揃って不振の日本において、同年公開の『ダークナイト』でさえ成し得なかった初登場第1位を達成(日本で公開されたマーベル原作映画において、第1位獲得は2007年の『スパイダーマン3』以来1年ぶりの快挙)。最終的な興行収入は他のアメコミ作品と同じく12億円程度と振るわなかったものの、健闘ぶりを見せつけた。ちなみに「ぴあ満足度ランキング」では、満足度平均点87.7点という高評価を記録している。

続編およびクロスオーヴァー展開

『アイアンマン』3部作
全米公開後間もなく、本作のヒットを受けて続編2作の製作も決定。脚本は『トロピック・サンダー/史上最低の作戦』を執筆し、同作に出演したダウニー・Jr.を唸らせたというジャスティン・セロウが担当する[3]。ファヴロー監督や主要キャストの続投も報じられたが、メインキャラクターの1人「ジェームズ・ローズ」を演じたテレンス・ハワードは続編の製作決定直後、出演料に関してマーベル側と衝突し急遽降板。第2作『Iron Man 2』(2010年5月7日全米公開)以降は、ダウニー・Jr同様に原作の大ファンであるドン・チードルが代役として出演する[4]。この直後、本作に「ニック・フューリー」役でカメオ出演したサミュエル・L・ジャクソンも続編への関与を否定した[5]が、その後マーベル側と『Iron Man 2』『Iron Man 3』を含む9作に登場する契約を交わし復帰した[6]。また、ファヴロー監督はあるインタヴューで、トニーの父「ハワード・スターク」の若き頃をティム・ロビンスに演じて欲しいと語っている[7]が、これは正式な決定ではなく、交渉段階に入っているのかさえ不明である。『Iron Man 2』のヴィラン(悪役)には、ミッキー・ロークが「アイヴァン・ヴァンコ(=ウィップラッシュ)」役[8]で、そしてサム・ロックウェルが原作におけるトニーの好敵手「ジャスティン・ハマー」役で登場することが決定した[9]。ちなみに一部マスコミではロークの降板が報じられ[10]ファンが激怒するという騒動もあったが、後にロークはこれらの報道を否定するため自ら出演に関してのコメントを寄せている[11]。また、時を同じくして登場が発表された「ナターリャ・ロマノヴァ(ナターシャ・ロマノフ=ブラック・ウィドウ)」役には、スカーレット・ヨハンソンが抜擢[12]。同役はエミリー・ブラントが交渉を受けた[13]がスケジュールの都合で実現しなかったという経緯があり、エリザ・ドゥシュクも同役を切望していたことを打ち明けている[14]
『The Avengers』
また、本作以降のマーベル・スタジオズ作品は、「マーベル・ユニヴァース」の4大ヒーロー(アイアンマン以外に「ハルク」「ソー」「キャプテン・アメリカ」が加わった4人)が一挙に登場する『The Avengers』(2012年5月4日全米公開)に繋がる一大プロジェクトであることも発表されており、同作ではファヴロー製作総指揮のもとダウニー・Jrがアイアンマンを、チードルが原作の人気キャラクターである「ウォーマシン」をそれぞれ演じることになっている[15]

関連情報

  • 当初はヴィランとして「マンダリン」が候補に挙がっていたが[17]、最終的にアイアンモンガーになった。
    • ちなみに劇中に登場するゲリラの「テン・リングス(10個の指輪)」という名前は、マンダリンが手に10個の指輪を付けていることに由来する。
  • 原作コミックおよびマーベル・ユニヴァースに登場する事物の名前やシンボルが随所に散りばめられている。
    • マーク2の飛行テスト中、トニーが口にする戦闘機の名称「SR-71 ブラックバード」とは、X-MENが緊急出動時に使用するステルス機「X-ジェット」の別名である。
    • マーク3とF-22がドッグファイトを繰り広げるシーンで、原作に登場するヴィラン「ウィップラッシュ」の名前がそのまま戦闘機のコールサインとして用いられている。ちなみにウィップラッシュは前述の通り『Iron Man 2』でミッキー・ロークが演じるヴィランでもある。
    • トニーがマーク3としての初出動を終え、自宅のワークショップでアーマーを脱ごうとあくせくするシーンで、背景に作りかけの「キャプテン・アメリカの楯」らしきものが映り込んでいる。
  • J.A.R.V.I.S.の声を演じたのはポール・ベタニー
    • ファヴロー監督は、以前に『ウィンブルドン』で俳優として共演した縁からベタニーに声をかけたが、ベタニーは自分がヒーロー映画に出演するとは思ってもいなかったという[18]
  • 本作およびその他のマーベル・スタジオズ作品間で、『The Avengers』に関する様々なクロスオーヴァーが行われている。
    • 本作の後半、ローディがマーク2のアーマーを見て「Next time, baby」(次の機会だな)と呟くシーンがあるが、前述の通りローディは『The Avengers』でアーマーに身を包みウォーマシンとなることが決定していることから、それを示唆したシーンと思われる。
    • 本作のラスト近くで、後にアベンジャーズを指揮することになる特殊組織「S.H.I.E.L.D.」(シールド)の名前が登場。エンドクレジット終了後にはサミュエル・L・ジャクソン演じる長官ニック・フューリーが登場し、トニーにアベンジャーズの存在をちらつかせている。ちなみに本作に次いで全米公開された『インクレディブル・ハルク』の作品中盤には、軍部がS.H.I.E.L.D.のデータベースにアクセスするシーンもある。
    • インクレディブル・ハルク』に、スターク・インダストリーズの社名およびロゴが登場。また、同作のラストシーンではロバート・ダウニー・Jrがトニー・スターク役としてカメオ出演を果たし、ウィリアム・ハート演じる「サディアス・"サンダーボルト"・ロス将軍」にアベンジャーズの話を持ちかけている。
  • アイアンマンのアーマーを手がけたのはスタン・ウィンストン・スタジオ[20]
    • ウィンストン自身が原作コミックの大ファンだったことと、ファヴロー監督の前作『ザスーラ』でも仕事をしていた縁から、本作に関わる運びとなった。
    • ウィンストンは惜しくも本作の公開後に他界し、本作は彼にとって最後のプロジェクトとなった(完成作として。未完および製作中だった作品も含めると『ターミネーター4』が事実上の遺作となる[21])。

Blu-ray Disc/DVD/UMD

2009年3月18日ソニー・ピクチャーズ エンタテインメントよりBlu-ray Disc/DVD/UMDの3フォーマットでリリース。

  • Blu-ray Disc
    • アイアンマン(税込 4,980円) ※2枚組/通常版
    • アイアンマン 日本限定フィギュア付 Blu-ray BOX(税込 12,800円) ※2枚組/3,000セット限定販売
  • DVD
    • アイアンマン デラックス・コレクターズ・エディション(税込 4,179円) ※2枚組/通常版
    • アイアンマン フェイスマスク・ケース付 DVD-BOX(税込 4,980円) ※2枚組/Amazon.co.jp完全限定販売
  • UMD
    • アイアンマン(税込 3,990円) ※1枚組

参考

外部リンク