言葉狩り
言葉狩りは特定の言葉の使用を禁じる社会的規制にネガティヴな意味合いを持を持たせる表現。その社会で支配的なイデオロギーに対立するイデオロギーの用語の規制や、特定の国家・被差別集団の抗議に対してマスコミ等が不適切に反応した場合の自主規制が当てはまる。現代日本では主に差別用語を一般的な用語に言い換えることを強制する風潮を指し、このような言い換えを筆者が拒否する場合には出版社がその原稿を雑誌に掲載しなかったり、出版後に訴訟が起きたりして、その用語の使用の是非が問われることになる。
ある差別用語が使用される歴史的・社会的文脈を無視した言い換えが強制される場合には表現の自由が侵害されることにもなりかねず、特に文学作品など表現の独自性が問われる分野で問題になる。この場合その表現が公共の利益に反するかどうかが問われねばならないが、しばしば感情的に扱われ、耳慣れない新語を無理に使用させる不自然さが風刺されることがある。
例
イデオロギーによる言葉狩りの例としては、1970年代の旧西独では旧東独のことを「ソ連占領地域」または「中ドイツ」とのみ呼び、「ドイツ民主共和国」という正式名称を使えば共産主義のシンパとして言論界から追放されたりしたことが挙げられる。
マスコミによる自主規制的言葉狩りの例としては、現代日本では肉体的障害を表現する用語が現在では差別用語とされていて、それを「○○が不自由な人」と言い換えるのが一般的とされるが、これを例えば過去の文学作品のテキストにまであてはめて、それを改変しようとする行為は言葉狩りだということができる。現在ではこのような語を含む文学的テキストには末尾に、差別用語とされる語も含むが当時の状況を鑑みまた芸術作品であることに配慮して原文のままとした旨記されていることが多い。
ほかにも童話『ちびくろサンボ』が、その内容は黒人を貶めるものではなくむしろサンボの知恵を賞賛するものであるにも関わらず、タイトルの「ちび」も「くろ」も「サンボ」も内容も差別的だとする抗議によって一時全国で絶版になっていた事例を挙げることができる。とくに「サンボ」については事実誤認に基いた抗議であり、『ちびくろサンボ』は社内の徹底的な討論の末1999年径書房から再版されている。
また、特に性差に基づく用語の言い換えを進める運動を「ポリティカル・コレクトネス」という。言葉狩りに等しいほどの過剰な言い換えだという批判を浴びた経緯があり、『政治的に正しいおとぎ話』のような風刺本はベストセラーになった。 しかしポリティカル・コレクトネスは英語圏では男女を表す語尾を中性的に言い換えるなど公式の用語が大きく変化した原因となり、職業生活における性差の撤廃にもつながっている。
差別用語の使用を批判する側からも、言葉狩りによる単なる用語の言い換えや使用禁止を行うだけでは差別の実態を有耶無耶にする事になり、真の差別撤廃から遠ざかる事になるという批判がある。
関連項目
外部リンク
- 自主規制語補完辞書 (ATOK用)