島田荘司

日本の小説家、推理作家

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島田 荘司(しまだ そうじ、1948年10月12日 - )は広島県福山市出身の推理作家小説家。現在ロサンゼルス吉祥寺に居を構える。

島田 荘司
誕生 (1948-10-12) 1948年10月12日(77歳)
日本の旗 日本 広島県福山市
職業 小説家
国籍 日本の旗 日本
活動期間 1981年 -
ジャンル 推理小説
代表作 御手洗潔シリーズ
主な受賞歴 第12回日本ミステリー文学大賞
デビュー作 占星術殺人事件
ウィキポータル 文学
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人物

広島県立福山誠之館高校武蔵野美術大学商業美術デザイン学科を卒業。

ダンプカーの運転手、ライター、ミュージシャンなどを経て、1981年に名探偵御手洗潔が登場する『占星術殺人事件』(投稿時の題名は『占星術のマジック』)が江戸川乱歩賞最終候補作品となり小説家としてデビューする。

主な作品に御手洗潔シリーズ、吉敷竹史シリーズがある。吉敷竹史シリーズはTBS系で『警視庁三係・吉敷竹史シリーズ』としてドラマ化されている。その他死刑、冤罪、日本人論、文明論を扱った作品も執筆している。

本格ミステリーにおける新人の推薦にも力を入れている。松本清張などの社会派推理小説が優勢だった当時のミステリー界に「新本格」推理のジャンルを切り拓き、綾辻行人歌野晶午らを世に出すなど、1980年代後半から現在のミステリー隆盛に繋がる流れを創った。このことから「新本格」ミステリーの祖とされ、稀に「新本格のゴッドファーザー」「ゴッド・オブ・ミステリー」として称される機会もある。2007年からは、出身地である広島県福山市が開催する「島田荘司選 ばらのまち福山ミステリー文学新人賞」の選考委員を務め、本格推理小説の書き手を発掘している[1]

また近年では、日本のみならずアジア全体に視野を広げ、本格推理小説の発展を支えている。2008年からは台湾の出版社皇冠文化出版と、日本の文藝春秋、中国、タイの出版社がタッグを組んで開催する「島田荘司推理小説賞」の募集が開始され、その最終選考を本人自ら行っている。2009年には、講談社より刊行される「島田荘司選 アジア本格リーグ」の選者となり、アジア各地域の良質な本格推理小説を紹介している。また日本国内でも2011年3月スタートの南雲堂の本格ミステリー・ワールド・スペシャルというシリーズにおいては二階堂黎人と共に日本国内の新人作家の推理小説を多数編纂・監修、講談社発「本格ミステリー『ベテラン新人』発掘プロジェクト」では講師として60歳以上のベテラン新人を発掘する予定。

自身の創作では、近年も講談社BOXレーベルにおいて2008年1月よりイラストレーター士郎正宗とともに「大河ノベル」全12冊書下ろしに挑戦(2011年内に完結予定)。その傍ら2011年4月には御手洗潔シリーズ短編集を出版。以降も10月に『探偵Xからの挑戦状!』用に書下ろした原作『ゴーグル男の怪』の長編化、短編集『樹海都市』、また昭和20年の広島原爆をテーマとした書下ろしの出版を予定するなど、還暦を過ぎても今尚旺盛な作家活動を展開している。紛れもなく本格ミステリーを代表する巨匠であり、重鎮的存在である。

エピソード

  • 『占星術殺人事件』でデビューした際、文壇からはほぼ黙殺に近い扱いを受けたと述懐している。その中においてプロの作家では鮎川哲也梶龍雄森村誠一からは暖かいエールを送られたという。森村からの励ましについては島田は後に「その時、あれだけの地位と名声を築いていらっしゃる方だから、逆に解ってくださるのだなぁと思いました。嬉しくて、森村先生にお礼の手紙を書いたのですね。そうしたら、『小説は、作家が歌う歌だと思うのです。私はあなたの歌が好きなのです』と葉書でお返事を頂いた」と語っている。
  • 推理作家である綾辻行人我孫子武丸司凍季霧舎巧麻生荘太郎松田十刻の名付け親として知られる。歌野晶午は「晶午」の部分を考案、法月綸太郎はもともと「林太郎」となっていたところを姓名判断により「綸太郎」に改めるよう本人にアドバイスをした。
  • 上記の作家に影響を与え続けているのもさることながら、学派に属していない伊坂幸太郎が自身の著書やインタビューで島田に大きく影響を受けたことを事あるごとに言明している。「島田作品はとても好きですね。島田荘司さんがいなかったら、プロの作家になろうなんて思わなかったような気がします。本当に深く影響を受けています」と語っており、「島田さんの作品は島田荘司にしか書けない。誰も真似できない」とも評している。『KAWADE夢ムック 総力特集伊坂幸太郎』によると、伊坂の島田の著作のベスト5は『北の夕鶴2/3の殺人』『奇想、天を動かす』『暗闇坂の人喰いの木』『水晶のピラミッド』『アトポス』だそうである。また島田の近作『リベルタスの寓話』についても「もう、ありえない話なんですよ。トリックが明かされてもよく分からないんですけど、なかば強引に説得させられてしまうあたりはさすがだなぁと」と絶賛している。その他、貫井徳郎小島正樹(小島のデビュー作品は島田との共著)、石平ひかりなど後発の作家に及ぼした影響の大きさは計り知れないものがある。
  • 井上夢人は友人。井上も著書『おかしな二人』のなかで島田を「かけがえのない友人」と紹介していた。また井上の自伝的意味合いを持つ『おかしな二人』発表後、島田は井上に「あれじゃ可哀想だよ。相手にも言い分がある」と電話したという。
  • 池波志乃中尾彬夫妻や俳優の金田賢一、女優の南波杏吉本新喜劇内場勝則は島田の愛読者である。内場は島田の著書を全て読破する程で中でもお気に入りが『奇想、天を動かす』であるという。また金田が島田ファンになったきっかけは、伊東四朗が島田の小説が面白いと勧めたのが最初であったという。後に池波と金田は島田の著作の文庫本で解説を書いている。南波杏とは対面したこともある。
  • 以前「週刊文春」に『金田一少年の事件簿』で『占星術殺人事件』のトリックが流用されたことについての本人の見解を掲載した(この文章は『21世紀本格宣言』に後に掲載)。それによると、「読者が色々と言っているのは耳に入っているが、自分としては今のところ行動を起こすつもりはない。ただし、『占星術―』に関しては、類例のないトリックであると自負しており、トリックの価値を護るために映像化などの二次使用はこれまでお断りしてきた。ゆえにトリックを流用するテレビ企画があるなら絶対にやめて欲しい」とコメント。以降、『金田一少年の事件簿』の該当話は、原作漫画の文庫本や公式ガイドブックにはトリック流用の旨が明記され、テレビドラマ版に関しては収録したビデオよりその後欠番になった。
  • 2006年より南雲堂より『島田荘司全集』の刊行がスタートしたが、本の背表紙のタイトルで『斜め屋敷の犯罪』が『斜屋敷の犯罪』と誤植されていた。その他にもある誤植の多さ、出版のスケジューリングの管理不十分、『パロディサイト事件』販売手法などの問題でこの出版社の姿勢を疑問視する声は多い。
  • 2009年5月に刊行された『島田荘司全集 III』での綾辻との対談にて、綾辻より本格ミステリ作家クラブに入会を勧誘されたが島田がそれを拒否したという事実が明らかにされている。しかし後述する本格ミステリクラブ主催の本格ミステリ大賞の自作のノミネートは受諾している。

無冠の帝王、戴冠

  • 『占星術殺人事件』に続いて出版された『斜め屋敷の犯罪』『死者が飲む水』も実は江戸川乱歩賞に応募された作品である(講談社文庫の江戸川乱歩賞全集の巻末にある予選通過作品一覧にその名を見つけることが出来る)。しかし両作品とも最終候補にも残らず予選通過のみで落選、という憂き目に遭っている。
  • 1984年、『漱石と倫敦ミイラ殺人事件』で、1985年、『夏、19歳の肖像』で直木賞候補にあがるが、落選。以降の作品では直木賞にノミネートされていない。
  • 1985年は吉川英治文学新人賞に『漱石と倫敦ミイラ殺人事件』が候補としてノミネートされるが、落選。
  • 日本推理作家協会賞には8年連続で8回候補としてノミネートされたが、これは選考前に本人から辞退している(島田荘司『奇想の源流 島田荘司対談集』より)。
  • 上記の日本推理作家協会賞ノミネート拒否の経緯により賞レースに消極的な姿勢を貫いていたかに見えたが、2005年に発表した『摩天楼の怪人』が本格ミステリ大賞にノミネートされた際、拒否することなく候補を受諾した。しかし結果は東野圭吾の『容疑者Xの献身』が大賞を受賞、『摩天楼の怪人』は2票差で次点に甘んじることとなった。
  • 以上のように、これまで島田はいくつもの推理小説関連の賞と縁がなかった。しかしそれによって評価が貶められることはなく、逆にその豊富なキャリアから「無冠の帝王」として称される機会が多かったが、2008年10月22日、第12回日本ミステリー文学大賞を受賞。遂に「無冠の帝王」という長年の称号を返上するに至った。
  • その後2010年に発表の『写楽、閉じた国の幻』で第11回本格ミステリ大賞にノミネートされるも受賞ならず(大賞は麻耶雄嵩『隻眼の少女』)。

作品一覧(年代順)

(年代は初出)

小説

御手洗潔シリーズ

吉敷竹史シリーズ

出版元は「消える『水晶特急』」以外はいずれも光文社。一部の作品はTBS系列でテレビドラマ化されている。警視庁三係・吉敷竹史シリーズを参照。

そのほかの小説

1980年代

  • 死体が飲んだ水(1983年6月 講談社)
    • 【改題】死者が飲む水(1987年5月)
    • 【改訂完全版】死者が飲む水(2008年 講談社)
  • 嘘でもいいから殺人事件(1984年 集英社
  • 漱石と倫敦ミイラ殺人事件(1984年 集英社
    • 【改訂完全総ルビ版】漱石と倫敦ミイラ殺人事件(2009年 光文社文庫)
  • 高山殺人行1/2の女(1985年 光文社)
  • 殺人ダイヤルを捜せ(1985年 講談社)
  • サテンのマーメイド(1985年 集英社)
  • 夏、19歳の肖像(1985年 文藝春秋)
  • 火刑都市(1986年 講談社)
  • 消える上海レディ(1986年 角川書店)
  • 展望塔の殺人(短編集、1986年 光文社)
  • 網走発遥かなり(連作短編、1987年 講談社)
  • ひらけ!勝鬨橋(1987年 角川書店)
  • 毒を売る女(短編集、1988年 光文社)
  • 切り裂きジャック・百年の孤独(1988年 集英社)
  • 嘘でもいいから誘拐事件(中編集、1988年 集英社)
  • 見えない女(短編集、1989年9月 光文社)
    • 【改題】インドネシアの恋唄(1995年6月 南雲堂)

1990年代

  • 踊る手なが猿(短編集、1990年 光文社)
  • 都市のトパーズ(1990年 集英社)
    • 【改訂愛蔵版】都市のトパーズ(1999年 原書房)
    • 【改題】都市のトパーズ2007(2007年 講談社)
  • 天国からの銃弾(短編集、1992年 光文社)
  • 天に昇った男(1994年 光文社)

2000年代

  • 透明人間の納屋(2003年 講談社)
  • エデンの命題(2005年 光文社)
  • 帝都衛星軌道(2006年 講談社)
  • Classical Fantasy Within(既刊8巻、2011年再開予定- 講談社)
    • 第一話 ロケット戦闘機「秋水」(2008年1月)
    • 第二話 怪力光線砲(2008年2月)
    • 第三話 火を噴く龍(2008年3月)
    • 第四話 アル・ヴァジャイヴ戦記 決死の千騎行(2008年10月)
    • 第五話 アル・ヴァジャイヴ戦記 ヒュッレム姫の救出(2008年11月)
    • 第六話 アル・ヴァジャイヴ戦記 ポルタトーリの壺(2008年12月)
    • 第七話 アル・ヴァジャイヴ戦記 再生の女神、アイラ(2009年1月)
    • 第八話 ハロゥウイン・ダンサー(2010年5月)
  • 写楽 閉じた国の幻(2010年 新潮社)
  • ゴーグル男の怪(2011年 新潮社)
  • 樹海都市(2011年刊行予定 講談社)※注文販売のみで予価10000円の予定とのこと

ノンフィクション

  • 秋好事件(1994年10月 講談社)
    • 【改題】秋好英明事件(2005年1月 南雲堂、2007年6月 文藝春秋)
  • 三浦和義事件(1997年 角川書店)

エッセイ

  • 砂の海の航海(1987年 新潮社
  • ポルシェ911の誘惑(1989年 講談社)
  • 異邦人の夢(1989年 PHP研究所 「新・異邦人の夢」に改題)
  • 本格ミステリー宣言(1989年 講談社)
  • エンゼル・ハイ(1990年 PHP研究所)
  • 島田荘司の名車交遊録(1990年 立風書房 「名車交遊録」(上・下)に改題)
  • パリダカ漂流(1991年 芸文社)
  • 自動車社会学のすすめ(1991年 講談社)
  • 世紀末日本紀行(1994年 講談社)
  • 本格ミステリー宣言II(1995年 講談社)
  • 島田荘司読本(1997年 原書房)
  • アメリカからのEV報告(1997年 南雲堂
  • 聖林輪舞(2000年 徳間書店)
  • ミタライカフェ(2002年 原書房)
  • 21世紀本格宣言(2003年 講談社)
  • 異邦の扉に還る時(2004年 原書房)
  • 島田荘司のミステリー教室(2007年 南雲堂)

アンソロジー・対談集・書簡集

  • ミステリーの愉しみ(1992年 立風書房 鮎川哲也と共同編集)
  1. 奇想の森
  2. 密室遊戯
  3. パズルの王国
  4. 都市の迷宮
  5. 奇想の復活
  • 本格ミステリー館にて(1992年 南雲堂 「本格ミステリー館」に改題 綾辻行人との対談集)
  • 日本型悪平等起源論(1994年 光文社 笠井潔との対談集)
  • 死刑囚・秋好英明との書簡集(1996年 南雲堂 秋好英明との書簡集)
  • 奇想の源流 島田荘司対談集(1996年 有朋書院 対談集)
  • 御手洗さんと石岡君が行く(1998年 原書房 コミックアンソロジー)
  • 石岡和己の事件簿(1998年 原書房 コミックアンソロジー)
  • ちっぱーみたらいくん(1998年 原書房 コミックアンソロジー)
  • 死刑の遺伝子(1998年 南雲堂 対談集)
  • 御手洗パロディ・サイト事件(上・下)(2000年 南雲堂 アンソロジー)
  • 御手洗潔攻略本(2000年 原書房 アンソロジー)
  • 石岡和己攻略本(2001年 原書房 アンソロジー)
  • パロサイ・ホテル(2001年 南雲堂 アンソロジー)
  • 21世紀本格(2001年 光文社 責任編集アンソロジー)
  • 牧逸馬の世界怪奇実話(2003年 光文社 責任編集アンソロジー)
  • 島田荘司選アジア本格リーグ
  1. 錯誤配置(2009年 講談社)
  2. 二つの時計の謎(2009年 講談社)
  3. 美術館の鼠(2009年 講談社)
  4. 蝶の夢(2009年 講談社)
  5. 殺意の架け橋(2010年 講談社)
  6. 第三面の殺人(2010年 講談社)

コミック原作

  • 御手洗くんの冒険1 ブローフィッシュ教殺人事件(1999年 南雲堂)
  • 御手洗くんの冒険2・3 マンモス館殺人事件(上・下)(2003年 南雲堂)

その他

  • 季刊 島田荘司01(2000年 原書房)
  • 季刊 島田荘司02(2000年 原書房)
  • 季刊 島田荘司03(2000年 原書房)
  • 季刊 島田荘司04(2005年 原書房)
  • 天に還る舟(2005年 南雲堂 小島正樹との共著)
  • 島田荘司全集I(2006年 南雲堂)
  • 島田荘司Very BEST10(2007年 講談社)
  • 本格ミステリー・ワールド2007(2007年 南雲堂)※監修
  • 本格ミステリー・ワールド2008(2007年 南雲堂)※監修
  • 島田荘司全集II(2008年 南雲堂)
  • 本格ミステリー・ワールド2009(2008年 南雲堂)※監修
  • 島田荘司全集III(2009年 南雲堂)
  • 本格ミステリー・ワールド2010(2009年 南雲堂)※監修
  • 島田荘司全集Ⅳ(2010年 南雲堂)
  • 本格ミステリー・ワールド2011(2010年 南雲堂)※監修

関連項目

脚注

  1. ^ 地方自治体が、長編ミステリーを公募するのは全国初の試みである。毎年長編受賞作を選び順次講談社光文社原書房より刊行される。2009年度の第1回受賞作には松本寛大『玻璃の家(はりのいえ)』が選ばれた。

外部リンク