上野東京ライン

東日本旅客鉄道の列車および電車運行系統

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東北縦貫線計画(とうほくじゅうかんせんけいかく)とは、上野駅が事実上の起点となっている東北本線宇都宮線)の列車線東京駅まで乗り入れさせ、東海道本線との直通運転を実現することを想定した計画。2008年5月30日から工事が始まり、2014年度の完成を予定している。

東北縦貫線
上野 - 秋葉原間にある留置線(写真奥。2007年3月8日撮影)。
神田駅付近に立ち始めた高架脚(2009年10月11日撮影)。

概要

東北新幹線の建設に伴い分断された上野駅 - 東京駅間の線路を再度敷設することで、上野駅を起点とする中距離電車東北本線宇都宮線〉・高崎線常磐線常磐快速線〉、以下3線)を東京駅まで乗り入れ(常磐快速線の通勤列車は不明)させ、さらに東海道本線へ直通運転を行うための路線である。3線方面から東海道線東京・新橋品川川崎横浜大船方面への直通が可能となり、また山手線京浜東北線の混雑率が大幅に緩和され、直通輸送体系の整備により所要時間が短縮されるなどの利点があり、利便性が大きく向上することが期待される。

  • 予定駅:東京駅 - 上野駅
    • 全線が東北本線であるので、東京駅が起点駅である。
    • 途中駅はなく、並行する電車線となる山手線・京浜東北線にある神田秋葉原御徒町の各駅は通過する。このうち、秋葉原駅については停車も検討されていたが、費用とスペースの面から通過となる。

計画に至るまでの過程

第二次世界大戦前から東京駅 - 上野駅間には回送列車貨物列車を走らせるための回送線が存在し、戦後1946年7月に連合軍専用列車「Yankee Limited」が初めて同区間を直通する列車として設定され、1954年 - 1956年の山手線と京浜東北線の分離運転工事期間は上野駅折り返しだった国電常磐線が朝夕のみ有楽町駅まで乗り入れていたほか、乗り入れ終了後も東北本線・常磐線・高崎線の通勤列車(朝晩の各1往復程度)が上野から新橋駅まで乗り入れていた(後述の1973年の旅客列車乗り入れ中止時点では前橋駅熱海駅を結ぶ中距離電車が1往復運転されていた)。その後、「Yankee Limited」の後を引き継いだ急行「十和田」が東京駅に乗り入れ、その後も特急「ひたち」「つばさ」「ひばり」「はつかり」「とき」「あさま」、 準急「日光」「中禅寺」といった列車に東京駅を発着する便が設定された。また、準急「湘南日光」や通勤時間帯に設定されていた快速「わたらせ」などは東京駅を越えて東海道本線にまで乗り入れていた[1]

しかし、東北新幹線の工事に際し、用地の問題が発生する。1973年4月限りで定期列車の東京駅乗り入れが中止され、わずかに残った荷物・回送・団体列車についても1983年1月31日限りで直通運転が廃止され、線路用地を新幹線に転用するために秋葉原駅 - 神田駅付近で線路が分断された結果、東北本線系統の列車は東京駅に乗り入れることができなくなった。残った線路は、上野駅側は御徒町駅付近から貨物駅の使命を終えた秋葉原駅の貨物ホーム付近までを留置線に転用したが、同駅周辺の再開発に伴い貨物ホームは撤去され、新たな留置線が建設された。一方東京側では、東海道本線の列車の折り返し線に転用された。

新幹線は1991年6月20日に東京駅 - 上野駅間が開業し、東北・山形(1992年7月1日 - )・秋田(1997年3月22日 - )・上越長野(同10月1日 - )の各新幹線が乗り入れている。

その後、山手線と京浜東北線の同区間には並行した中距離電車が運行されず、両線はラッシュ時の混雑が非常に激しくなる。このため、埼玉県などが宇都宮・高崎線の中距離電車の東京駅乗り入れについて要望し[2]2000年運輸政策審議会答申第18号において「2015年までに開業することが適当である路線」に指定された[3]。これらの路線を国鉄から継承して運行する東日本旅客鉄道(JR東日本)自身にとっても乗り入れは悲願であり[4]、この指定を受け、2009年度末の完成を目標として東京駅 - 秋葉原駅間の東北列車線建設工事を計画、2002年3月27日に発表した。これは旧・東北列車線を撤去して建設した東北新幹線の高架のさらに上層部に新・東北列車線を直上高架で建設するものである。それによる33パーミルの急勾配に対応できない車両の置き換え問題も生じるものとされる。また、コスト面や旅客流動予測から途中駅は設置しない予定である。総事業費はJR東日本の自己負担で300億円(後に400億円に訂正)になる[5]

整備による主な効果

  • 京浜東北線・山手線の上野駅 - 御徒町駅間の混雑率が緩和される。首都圏で最も混雑率の高い同区間の混雑率は、230%から180%以下となると期待されている[5]。なお、この数値の推測は計画当初のものであり、その後混雑率が変化している。実際、同路線の新型車両(E233系E231系)の導入やD-ATCなどの整備効果で、2009年度から混雑率がワースト2に[6]2010年に混雑率は195%へ減少している[7]。前記「180%以下」の推計がこれらも想定した上でのものかどうかは不明である。
  • 直通運転により所要時間が短縮する。上野駅や東京駅での乗り換えが一部列車で不要となるため、尾久駅以北 - 品川駅間で11分程度所要時間が短縮される。なお、湘南新宿ライン大宮駅 - 横浜駅間において達成された時間短縮から推測しても前記の時間程度の短縮が見込まれる。
  • 首都圏を南北に結ぶ輸送ネットワークがさらに強化される。乗り換えの手間がなくなり利便性が向上するためである。これまで上野駅止まりだった3線が東京駅を経て東海道線に直通し、また東京駅止まりだった東海道線が上野駅を経て3線に直通することとなる。その結果、3線の各方面と東海道線湘南方面との相互交流が促進され、地域の活性化に寄与する。
  • 東京駅および上野駅における時間や労力も一部省ける。折り返し運転の必要性がなくなるためである。
  • 将来的には2027年開業予定のリニア中央新幹線の始発駅となる品川駅へのアクセス向上に寄与することとなる。

完成後の予定と見込み

運行系統

宇都宮線・高崎線・常磐線の列車の一部を東京駅まで乗り入れるとともに、利用状況を勘案して、東海道線と相互直通運転が実施される。また、品川折り返しも想定されている[8]

ラッシュ時の混雑緩和

完成後の山手線と京浜東北線の混雑率は、最大時で約230%から180%以下に緩和される見込みである。

京浜東北線・根岸線の代替路線(快速線)としての役割

宇都宮線と高崎線の直通後の停車駅は、大宮駅 - さいたま新都心駅 - 浦和駅 - 赤羽駅 - 尾久駅 - 上野駅 - 東京駅 - 新橋駅 - 品川駅 - 川崎駅 - 横浜駅 - 戸塚駅 - 大船駅となる見込みであることから、特にこの区間の比較的長い区間を利用する場合や東京駅以南と上野駅以北とに跨って利用する乗客の乗り換えが不要になることから、並行する山手線や京浜東北線に対する速達列車としての役割が期待されている。また、相互区間を利用する際の所要時間の短縮が見込まれている。

常磐線に関する計画

常磐線方面からの直通運転に関しては、2001年の計画発表のプレスリリースによると「朝通勤時間帯については直通列車の混雑等を勘案し、宇都宮・高崎線からの乗り入れを基本」としており[5]、全時間帯については言及されていない。また、2007年8月24日付けの読売新聞千葉版においても常磐線の当路線への乗り入れは特急の一部のみの方針という記事が掲載されているが、2008年のプレスリリースでは、「具体的な輸送計画については今後検討を進めてまいります。」とされており、計画については不透明である。しかし、常磐線の取手駅以北で使用される快速電車の車両が特殊な「交直流両用車両」である点や、取手駅以南のみで使用される快速電車の車両は直流電車だが、短距離通勤タイプである(すべてロングシートでトイレの設置がなく、グリーン車も連結されていない)ことから、東海道線との相互乗り入れは、不可能ではないものの、車両運用上ネックとなり、整備等の効率性も悪くなる。

品川車両基地について

JR東日本による計画発表のプレスリリースにて、「車両留置箇所の見直しによる車両基地用地の有効活用」との記載及び別紙として品川車両基地の現状 (PDF) との資料を添付している。この中で、品川車両留置基地の現状における車両留置面積及び「一部用地の生み出し」の記述がされており、田町車両センターなど品川駅北側の車両基地の再編を想定していることがわかる。また、一部報道でも再編後に過半数に及ぶ十数ヘクタールの敷地が開発可能と報じている[9]

また、前記の開発に伴い、山手線・京浜東北線の線路を整地したエリアの東側に移設した上で、移設区間の泉岳寺駅近辺に新駅(名称未定)を設ける計画となっている。 新駅の件については、2012年1月4日あるいは5日に報道された。これによれば、同用地は15ヘクタールで2011年12月に国から国際戦略総合特区に指定されており、新駅は東京都・港区・JR東日本などで組織する検討委員会で話し合いを行っており、2014年度の着工を見通している。

各種意見

賛成意見

 
東北縦貫線の早期実現を要望する看板(2007年8月29日、佐貫駅にて撮影)

宇都宮線や高崎線で上野駅に出て山手線や京浜東北線、さらには東京地下鉄銀座線日比谷線に乗り換えて東京方面に通勤・通学する住民が多い埼玉県ではこの計画を評価しており、計画が遅れていることから、2006年11月には早期開業を求める要望書を提出している。

常磐線(常磐快速線)においては、沿線の千葉県茨城県などの自治体(常磐線輸送力整備・新線建設促進期成同盟を参照)がそれぞれ期成同盟会を結成し、常磐線の東京駅乗り入れを推進している。

賛成自治体・団体

反対意見

計画発表当初から、一部住民など建設反対の声が挙がっている。主に台東区上野御徒町地区では「(特に工事中の)騒音がひどくなる」「家具が揺れる」などの意見がある。

さらに千代田区神田地区では、住民から「国鉄時代に二層高架は行わないとの取り決めがあった」「日照権を侵害する」「大地震時に倒壊し、周辺に多大な被害が出る危険性がある」「風通しが悪くなり、周辺の気温が上昇する」「二層高架化による勾配を電車がフルノッチで駆け上がるために、モーターの騒音が相当なものになる」などの反対意見が出た。JR東日本との対話も行われたが、納得できなかった住民が2007年8月1日に建設の差し止めを求めて東京地方裁判所に提訴している[10]。また、神田駅周辺の住民からは、縦貫線を二層高架ではなく地下化する提案がある[11]

反対意見者

  • 千代田区神田の一部住民
  • 台東区の一部住民

反対意見に対する事業者側の見解

騒音、振動問題
最新の技術及び建設機械、低騒音及び低振動の工法・機械を採用し、敷地境界付近には仮囲いを設置する。長時間連続する作業を避ける。建設作業騒音及び建設作業振動は基準以下である。防音壁、ロングレール、レールの重量化及び弾性バラスト軌道、バラストマットの採用、レール研磨、車輪及び車両の整備。
日照権
防音壁に透光板を採用する。住居地域及び近隣商業地域に定められている日影の基準を満たす。
安全性
地質調査を行った上で設計し、兵庫県南部地震クラスの大地震に対しても耐えられる構造物としている。

JR東北縦貫線計画・事業者側の見解 (PDF)

計画の遅れ

前述の通り、沿線住民より反対意見があり訴訟も起こされているため、本格着工が大幅に遅れた。当初の計画の2004年度中に環境アセスメント終了という予定ですら大幅に遅れ、2009年度末の完成予定も延期されることになった[12]。アセスメントについては2007年9月に「満足する」、一部に「概ね満足する」とする評価書が出ている[13]

計画の変更

2008年3月26日、JR東日本は同年5月より工事に着手し、2013年度の完成を予定していることを発表した[14]。2008年3月31日、JR東日本は「グループ経営ビジョン2020 - 挑む - 」と称した方針の中で、計画を実行に移すことを改めて表明した。

同年5月30日には起工式が執り行われた。なお事業費は当初より100億円増えて400億円となる見込みである[15]

現在、各地で工事が進行しており、特に神田 - 東京間の新幹線との重層部に関しては架設機を新幹線の直上に設置するとともに新幹線終電後に東京駅新幹線ホーム南側「南部ヤード部」に待機してあったクレーン車が新幹線線路を利用して工事現場に移動し、始発までのわずかな時間で工事を行うという、一歩工事を誤れば新幹線の運行に多大な影響を与えかねない難工事で建設が進められており、万が一には上野折り返しを即座に開始できるように要員等の準備がなされている[16]

なお、沿線住民に配慮して、正確には新幹線の直上から一部山手線外回り・京浜東北線南行側にはみ出す構造となり、耐震性の問題からも軽い桁を新たに開発するなどの工夫を行っている[4]

2012年4月12日東日本大震災の影響等により、工事計画を一部変更し、2014年度の開業を目指すことが発表された[17]

脚注

  1. ^ 運行記録の詳細は結解学「東北縦貫線ストーリー」 交友社鉄道ファン』2008年10月号 No.570 p89 - p95 を参照。
  2. ^ JR高崎・東北線の東京駅乗り入れ埼玉県議会 平成11年6月定例会 一般質問 質疑質問・答弁全文、1999年
  3. ^ 運輸政策審議会答申第18号国土交通省関東運輸局
  4. ^ a b August 2010:特集「新幹線直上に架けるJR東北縦貫線」| KAJIMAダイジェスト | 鹿島建設株式会社(鹿島建設の解説ページ内のJR東日本側の解説)
  5. ^ a b c JR東日本:プレスリリース:宇都宮・高崎・常磐線の東京駅乗り入れについて(東海道線との相互直通運転)
    建設業界ニュース東京版「JRが「東北縦貫線」で近く都アセス手続き」
  6. ^ JR山手線上野-御徒町間が混雑率ワースト2位に-ワースト1位は総武線、上野経済新聞、2011年01月12日
  7. ^ 三大都市圏における主要区間の混雑率(平成22年度)、国土交通省 統計情報
  8. ^ JR東日本:プレスリリース:2010年度設備投資計画について (PDF) によると、開業に向けて品川駅の折り返し設備工事を着手する予定である。
  9. ^ JR東日本/首都圏で駅開発を加速/主要ターミナル9カ所、20年までに事業化、日刊建設工業新聞、2008年7月31日
  10. ^ JR東北縦貫線計画:神田駅の周辺住民、建設中止求め提訴、毎日新聞、2007年8月2日
  11. ^ もぐれ! 東北縦貫線 神田の環境を守る会 東北縦貫線(じゅうかんせん)二重高架反対!
  12. ^ JR宇都宮・高崎線 東京乗り入れ 2013年度 5月着工、読売新聞埼玉版、2008年3月28日
  13. ^ 手続の進捗状況-東北縦貫線(東京駅〜上野駅間)整備事業、東京都環境影響評価条例ホームページ
  14. ^ JR東日本:プレスリリース:宇都宮・高崎・常磐線の東京駅乗り入れ工事の着手について (PDF) 、2008年3月26日
  15. ^ JR東日本:東京 - 上野駅結ぶ「東北縦貫線」が起工 - 毎日jp(毎日新聞)、2008年5月30日
  16. ^ August 2010:特集「新幹線直上に架けるJR東北縦貫線」| KAJIMAダイジェスト | 鹿島建設株式会社(建設を請け負っている鹿島建設による解説)
  17. ^ JR東日本:プレスリリース:2012年度設備投資計画について、2012年4月12日 (PDF)

関連項目

外部リンク