成田チョコレート缶覚醒剤持ち込み事件
成田チョコレート缶覚醒剤持ち込み事件(なりたチョコレートかんかくせいざいもちこみじけん)とは、2009年にチョコレート缶に入った覚醒剤を日本入国時に摘発された人物が、逮捕・立件された事件。日本の裁判員裁判としては初の全面無罪判決となった事件となるが、二審で逆転有罪判決が下され、更にその後最高裁判所で再び判決が翻り逆転無罪の自判が出された[1][2]。
最高裁判所判例 | |
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事件名 | 覚せい剤取締法違反,関税法違反被告事件 |
事件番号 | 平成23年(あ)第757号 |
2012年(平成24年)2月13日 | |
判例集 | 刑集第66巻4号482頁 |
裁判要旨 | |
刑訴法382条の事実誤認とは、第1審判決の事実認定が論理則、経験則等に照らして不合理であることをいう。 | |
第一小法廷 | |
裁判長 | 金築誠志 |
陪席裁判官 | 宮川光治・櫻井龍子・横田尤孝・白木勇 |
意見 | |
多数意見 | 全員一致 |
意見 | 白木勇 |
反対意見 | なし |
参照法条 | |
刑訴法382条・397条1項・411条1号 |
概要
2009年11月1日にクアラルンプール国際空港(マレーシア)から成田国際空港に到着した際、持ち込んだチョコレート缶に覚醒剤約1キロが入っていることを摘発されたAが、覚醒剤取締法及び関税法違反の罪で逮捕、起訴された。Aは取り調べに対し、所持していた偽造旅券をマレーシアから運搬した事実を認めたものの、覚醒剤が入っていたチョコレート缶については「日本への土産として預かった」として、故意による覚醒剤営利目的輸入を否定した[2]。
1審・千葉地裁は、重量感などから普通の缶と区別がつかない点や、30万円の報酬は偽造旅券運搬に対する報酬だった可能性を指摘。「違法薬物が隠されていることを知っていたとは認められず、犯罪の証明はない」として、2010年6月に裁判員制度で初の全面無罪を認定した[1]。これに対し、検察は控訴。
2審・東京高裁は2011年3月30日、「〔間接事実〕を総合評価すると、被告人は……チョコレート缶3缶に覚せい剤が隠匿されていることを認識しながら本邦に持ち込んで来たものと認めるのが相当」とし認定し、一審判決を破棄して懲役12年、罰金600万円の有罪判決を下した[2]。弁護側は、この判決に対して、即日上告した[3]。
これに対し、最高裁第一小法廷は、2012年1月19日に口頭弁論を開き、同年2月13日に原判決を破棄し控訴を棄却する判決を言い渡した。これにより一審の無罪判決が確定する。この際、事実誤認を理由に1審判決を見直す場合は、論理的な整合性や一般常識などにあたる「論理則、経験則」に照らして不合理な点があることを具体的に示さなければならないこと、また2審は1審判決に事後的な審査を加えるもの(事後審)であるべきと明示された[注釈 1][4]。
補足
裁判員裁判の控訴審について、最高裁司法研修所は2009年に市民の判断を尊重すべきとしながらも具体的にどんな場合に裁判員裁判の判断を覆せるのかは明らかにはしていない。[要出典]
脚注
注釈
出典
- ^ a b “心理負担多い密輸審理 無罪から無期“振れ”大きく 【検証 裁判員制度10年】 第2部千葉の現場から (1)「成田事件」”. www.chibanippo.co.jp. 千葉日報 (2019年5月10日). 2021年4月11日閲覧。
- ^ a b c d e 後藤, 昭「裁判員裁判と控訴審の役割」『刑法雑誌』第54巻第3号、日本刑法学会、2015年、358-373頁、doi:10.34328/jcl.54.3_358。
- ^ “裁判員裁判で無罪の男に逆転有罪 全面無罪の破棄は初 東京高裁”. MSN産経ニュース. (2011年3月30日). オリジナルの2011年4月2日時点におけるアーカイブ。 2013年11月9日閲覧。
- ^ “裁判員10年 高裁の破棄率は低下 「1審尊重」明確に”. 産経ニュース (2019年5月15日). 2021年4月11日閲覧。
参考文献
- 2011年3月31日 朝日新聞