課長島耕作

日本の漫画、メディアミックス作品

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課長島耕作』(かちょう しまこうさく)は、「週刊モーニング」(講談社)に1983年から1992年まで掲載された弘兼憲史漫画。シリーズ作品に『部長島耕作』『取締役島耕作』『常務島耕作』『専務島耕作』『ヤング島耕作』がある。

作品概要

本作品は、1980年代前半(日本経済低成長期)から同年代後半(バブル経済期)を経て1990年代初期(バブル崩壊前夜)に至るまでの、日本経済の動向、大企業間の競争、大企業内部の派閥争い、経済活動の末端で働くサラリーマン(特に団塊の世代)の群像の様々をリアルタイムで活写したもので、サラリーマン層を中心に好評を博した。

1991年度(平成3年)、第15回講談社漫画賞一般部門受賞。

本作品の主人公(島耕作)は、団塊の世代に属し、大手家電企業、初芝電器産業に勤務するサラリーマンである。作品が掲載された当初(1983年頃)の島は、どちらかといえば小心で保身を考える平凡なサラリーマン像に描かれており、作品内容も妻以外との恋愛(すなわち不倫)などの個人的な身辺事が主たるものであった。1984年後半から毎回連載が始まると、作品は大企業内部の派閥抗争や企業戦略に基づく経営展開などのマクロな経済世界へと舞台の主軸を移していった。それに伴い島耕作は、揺れ続ける社内派閥の動向の中でも自身の信念のみに従って行動する人物として描かれていき、度重なる苦難に直面しても、前進する意思と(都合が良すぎる程の)幸運さですべて乗り切ってしまう。苦難を乗り切る過程では、多くの場合、知人の探偵(木暮久作)を駆使したミステリ仕立ての冒険活劇が展開されるが、部下や女がいつの間にか全てを解決してくれることも多い。また、島の周囲には必ずと言って良いほど島と性的関係を結ぶ女性が常につきまとう。これらの複雑に絡み合う各要素(派閥抗争、経営戦略、ミステリ活劇、多彩な女性関係)が、多くのサラリーマン、とりわけ団塊の世代の男性の心を掴み、1990年頃には大人気漫画として社会現象を巻き起こした。

しかし、本作品への批判も多い。特に女性からは、島の多彩な女性関係を指して、女性を単なる手段としか見ていないとする強い批判がある(もっとも、作者から見た理想の女性像が描かれただけ、あるいはこの程度の異性の描写は少女漫画やレディースコミックならばごく普通、とする擁護論もある)。また、窮地に陥ると毎回都合良く島を助けてくれる人物が現れる、エリートならいざ知らず普通のサラリーマンが会社中枢(社長や役員)に多くの知己を得ることは考えられない、あんなにたくさんの女性と性関係を持つのはあり得ない(うらやましい)、といった作品の構造そのものに対する批判もある。次々に出世の階段を駆け上がってゆく島の姿をして「団塊世代ののらくろ」という評価もなされた。

これらの批判にも関わらず、多くの支持を得たのは、本作品が現代のおとぎ話として読まれたからだとする説がある。この説では、島耕作が自身の信念を貫き、英語に堪能であり、大きな商談をまとめるなど有能さを発揮し、しかも女性にもてまくり、妻ともわだかまりなく離婚できた等、たとえあり得なくとも、大多数のサラリーマンにとって理想のサラリーマン像として描かれたからこそ、絶大な人気を博したのだとしている。

1992年、本作品は、直属の上司が社長へ抜擢され、島自身も課長から部長へ昇進するという非常に幸福な結末を迎えた。しかし、日本経済に未曾有の大打撃を与えたバブル崩壊が本作品の連載中に起こったことを考慮すると、もう少し連載が長ければ、作品のその後の展開も異なった形態をとっていたかも知れない。


ディテールの雑さへの疑問

作者は大手家電会社(松下電器)に勤務したことがあり、本作品にはその時の経験が反映されているという。とはいえ、作者の勤続年数は3年間程度であり、主人公が昇進し、会社の経営そのものに関与する立場になると、現実味の乏しさに拍車がかかっている。

作中で島耕作は「英語に堪能」という事になっている。作中の描写から判断して早稲田大学ESS出身と推測されるが、(新入社員向けに実施する)「オリエンテーション」を「オリエンテーリング」としている辺りを見ると、その英語力には疑問符が付く。おそらくは作者と島耕作の間の英語力のギャップによって生じた現象と思われる。 またDRAMをDRUMと表記しており、それがモーニング誌上で数週間続いたことから「シリコンバレーで太鼓を作っている」と島耕作が誤解しているかのようなシーンもあったが、これについては単行本では修正されていた。

常務編では、孫鋭が北京からムンバイに向かうときに利用していた航空会社がチャイナエアラインであった。当然のことであるが、北京にはチャイナエアラインは乗り入れていない。

専務編では、ニューヨーク出張時に自由の女神の頭頂部に登るなど、作者の調査不足と思われる場面も出ている(自由の女神は、2006年現在、台座最上部の展望台までしか立ち入りが許されていない。)

また、初芝役員による愛人同伴の海外出張など、現在の企業では「公私混同」として大きな問題に発展する可能性のある行為が公然と行われている点を批判する向きもある。

シリーズを通して、「登場人物が死んで物語が急展開する」ケースが多く、読者からは「次は誰が死ぬのか」といった予想が交わされる程である。

暴力団やマフィアなど、裏社会の描写はいつも生き生きとしており、私刑の場面などは過剰なほどのコマが割かれている。特に、取締役編の中国裏社会に島が巻き込まれるエピソードや、常務編でのインドのテロリスト退治のエピソードなど、一般の大企業幹部ではまずできないであろう体験を島がしている点などは(現実味の乏しさという意味で)特筆に価する。

シリーズ作品

部長島耕作

部長島耕作』は、1992年から2002年まで週刊モーニング誌上で掲載された漫画作品。当初は半年~1年に1回の頻度で掲載されていたが、1999年、人気が低迷していた週刊モーニングは、かつて人気を誇った作品の続編・外伝等を掲載することで販売数を回復しようとしたため、このとき本作品も毎週連載が再開した。

島の敬愛する社長が退任して、その反対派が社長となったことで、島は関連会社への出向を命じられる。しかし島は持ち前の前向きさと柔軟さで出向する先々で関連会社の経営立て直しに成功する。その業績が認められて初芝本社の取締役へ就任することとなる。 なお、この作品以降、『課長島耕作』に見られた躍動感、スピード感がやや失われたとする意見もあるが、現場を中心とした課長と比べ、部長以上は現場に出ることも稀となるため、やむを得ないことであろう。

取締役島耕作

取締役島耕作』(全8巻)は、2002年から2005年まで週刊モーニング誌上で連載された漫画作品。島は、初芝電器産業の取締役として中国へ派遣されることになるが、それを通して急成長する中国経済が描かれることとなる。島の恋愛・性交も相変わらずで、60歳を目前にした島の絶倫ぶりは、同世代の読者へ夢と希望を与えている。

常務島耕作

常務島耕作』は、2005年から2006年まで週刊モーニング誌上で連載された漫画作品。平取締役時代に引き続いて、中国担当としての活躍が描かれている。2006年専務に昇進し連載が終了した。

専務島耕作

2006年から連載されている漫画作品。

本シリーズはこのように課長→部長→取締役→常務→専務と昇進を続けており、部長島耕作の最終話に至っては掲載紙モーニングの編集担当者山中氏を登場させ、「タイトルが出世するのはのらくろ以来」と言わしめた。作者は別作品(『加治隆介の議』)で一介のサラリーマンを数年で総理大臣にしており、本シリーズもいずれは『社長島耕作』に至るであろう。ファンは島がどこまで出世するかを様々に予想して楽しんでいるが、現実的な線で経団連会長や内閣総理大臣、荒唐無稽な説ではアメリカ合衆国大統領や地球国家の元首という予想まで出ているほどである。

ヤング島耕作

ヤング島耕作』は、2001年からイブニング誌上で連載されている漫画作品(2006年7月現在)。イブニング創刊時の目玉作品として掲載された。島耕作が初芝電器産業へ入社した当時(1970年頃)の社会情勢、世間の気風、大企業の雰囲気などを描こうとしている。ただ、どうしても30年後の視点で描かれてしまう部分も散見される。また、作品上の状況設定が、『課長島耕作』の設定と矛盾を来している箇所もある。それらの問題点もあるが、全体的な時代背景や島耕作の性格描写は多くの読者をひきつけている。島の出身地が、作者と同じく山口県岩国市であることが明らかにされた。

主な登場人物


注意:以降の記述には物語・作品・登場人物に関するネタバレが含まれます。免責事項もお読みください。


島耕作(しま こうさく)
主人公。1947年9月9日山口県岩国市生まれ。早稲田大学出身。大学時代の所属サークルはESS等。初芝電産株式会社に所属している。
座右の銘はIt's not my business.
広告課で自社カレンダー作りを担当、その後アメリカ支社、京都、フィリピン、タイ、マレーシア、ベトナム、ワイン事業(ヨーロッパ)、レコード会社、九州、上海と世界各地を飛び回るスーパービジネスマンになる。英語が堪能な為、海外赴任や通訳等への抜擢も多い。
著者はこの名を石田三成の家来島左近をイメージして名付けたとしている。
会社員としての事務処理能力の高さもさることながら、中国の売春組織の壊滅や、インドにおけるテロ勃発の察知、取引先企業のオーナーの腹心の反社会的行為を突き止めたりと、非常に高い行動力と情報収集能力を持つ。
それ以上に島の能力として特筆すべき点は、精力絶倫な点である。課長編では自分の部下や水商売の女性、出張先の外国人女性などと数多くの女性を抱いてきた。特に、恋人の大町久美子とのセックスでは、お互いがグロッキーになるまでの激しくかつ濃厚なセックスをこなす。
今野輝常(こんの てるつね)
「島耕作シリーズ」の名物キャラクター。和歌山県出身で子沢山農家の末っ子として育つ。島のショウルーム課時代の部下であり実務能力そのものは高く、大阪からショウルーム課に着任してきた頃は良くも悪くも生き生きと業務に励んでいたが、絶望的に人心掌握力に欠け、結果的に人望の無さが、初芝の業績を悪化させることに繋がった。
セクハラ行為が発覚し、その後通信部に左遷された。
部長編では、島の出向先である子会社の社長として再登場する。ここでもやはり人望の無さが原因で社長の椅子を島にとって変わられてしまい、島に悪態をつくが、島に強く叱責され改心し、最終的には和解。
高卒という学歴で、かつセクハラによる不祥事で左遷させられたにもかかわらず、最終的には初芝電産本体の部長職まで登りつめ(ただし子会社への出向のまま退職)、定年まで勤め上げた今野を、島は心から祝福した。
定年間近で妻の浮気が要因で離婚することになるが、その際に一切の慰謝料を要求せず、加えて定期預金を妻に持ち逃げされたにもかかわらずこれを「ええねん」の一言で済ませるほどの太っ腹な一面もある。
今野以前の悪役キャラクターとしては、福田の後任でやってきた検見川次長や今野の前任者であった野中主任がいたが、いずれも登場してすぐに左遷されており、今野に勝る存在感ある悪役は島耕作シリーズでは今のところ現れていない。
退職したことから常務編、取締役編における出番はなかったが、熱烈なファンが多く、今後の再登場が期待される。
大泉裕介(おおいずみ ゆうすけ)
初芝電産第4代社長。初代社長の娘婿。東京大学法学部出身。もともとは四井銀行の銀行員だったが、吉原初太郎の娘である笙子と結婚したことで、将来の社長候補として初芝電産に入社する。妻は初芝の個人筆頭株主で、妻には頭が上がらない。
苫米地社長を退陣に追い込んだ後社長に就任するが、経営への意欲は明らかに下がっていた。老いても性への執着に関しては20代並であり、愛人の馬島典子の陰毛を愛でる性癖は健在であった。典子との情事の最中に脳梗塞で倒れてしまい一線を退く。引退後も典子とは夫婦同然の暮らしを続けており、取締役編で看取られる。豪傑で寛大な一面も持ち、典子と島の浮気が判明したときも島へは公私共にお咎めは一切無く、また対立勢力を破ったあともその腹心を有能だという理由で昇進させたこともある。
馬島典子(まじま のりこ)
銀座のスナックのママであり、かつて島とも肉体関係があった。部長編以降は大泉の愛人として妻同然に尽くした。大泉の事実上の喪主であり、葬列時には先頭で位牌を手にした。職業柄、業界の要人ともつながりが深く島のスパイになることもあった。
決まり文句は、「私は銀座の女よ。」で、数々の客の男を手玉に取る。
吉原初太郎(よしはら はつたろう)
初芝電産の創始者で初代社長。「経営の神様」と呼ばれ、初芝の基礎を築いた。島とは死の直前に一度会っている。関西出身。モデルは松下幸之助か。
大町久美子(おおまち くみこ)
初芝の一社員だが、実は吉原と愛人の間に生まれた娘。島の部署に配属され、その後セックスフレンドになる。
島の課長時代に短大卒の新入社員として初芝に入社したため、現在の設定年齢は30台後半~40台前半と推定される。
セックスに関しては非常にオープンであり、島の部長昇進時にも「セレブレーションファックしよか」とあっけらかんと誘うほどである。
パンティストッキングでブラジャーのように胸を縛る事が多いが、これが島の性癖なのか久美子の習慣なのかはわかっていない。
大町愛子(おおまち あいこ)
久美子の母。元芸者で、吉原に身請けされた愛人。久美子の数倍大胆な人物。何度か島を誘ったことはあるが「親子丼」には到っていない。
中沢喜一(なかざわ きいち)
初芝電産第5代社長。大学院修了後に初芝電産株式会社に入社。入社当初は営業を担当していた。派閥に縛られない自由奔放さを見込まれ社長に抜擢される。島が尊敬する唯一の人物で行動理念となっている。部長編でチャコママとの情事の最中に突然死去(チャコママは取締役編で島とも関係をもっている)。「カカカ。」という笑い方が特徴。過去に二人の愛人がおり、それぞれに子供をもうけた。そのうちの一人はボクシングの世界チャンピオンになっている。
ただし、妻とは「長年セックスレス。」とチャコママにカミングアウトした。そのせいか、臨終の際には妻は顔色ひとつ変えることなく中沢につけられていた生命維持装置をはずすように医者に依頼した。
万亀健太郎(まんがめ けんたろう)
初芝電産第6代社長。中沢の社長就任時には広報部長であった。期待を受けて社長に就任したが、思いのほか業績を伸ばすことができず、退任。常務編時点で会長。豊子という愛人がいたが、取締役編で万亀の中国出張同行中に死去。常務編では島の中国人秘書と交際するようになる。
義理人情に篤い性格であり、大泉と中沢に「社長と女(豊子)、どちらを取るか?」と問われても迷わず、「女をとります。」と答えたり、自分が面倒を見た相手は、たとえ裏切られても最後まで面倒を見たりするなど非常に寛大な人物であった。大泉の社葬時には葬儀委員長を勤め、本来親族が位牌を持ち先頭に立つべきところを、大泉の愛人である典子に任せるという粋な計らいを見せた。
島奈美(しま なみ)
島の娘。短大卒業後に広告会社に就職し、父の出向先であったレコード会社と組んで「ニャッコ」を歌手として売り出す。アメリカ人男性との間に耕太郎という息子を出産したが、まだ結婚していない。
ニャッコ(にゃっこ)
本名はナンシー。課長編で島がハツシバアメリカに出向していた時につきあっていた女性(アイリーン)との間にできた娘で、奈美の異母妹。誕生したとき、島は既に日本に帰国する途中で、その際電話で「男の子である」と知らされていた。部長編で島と奈美の手によって「ニャッコ」の芸名で歌手として売り出される。猫をイメージしたコスプレが受けて、発売した曲は大ヒットしたが、歌詞の英語部分は「××××」で表現されていた。
余談だが、初芝のライバル会社、ソラー電機は同じコンセプトで「プッシー」という芸名の歌手をデビューさせた。
樫村健三(かしむら けんぞう)
島の、同期入社社員で国際事業部に勤務。その後フィリピンに転勤、島に好意を寄せていた同性愛者である。フィリピンで島と共にゴルフ場の帰りにメルセデスベンツに乗っていた所に、テロリストの銃撃を受け死亡した。
福田敬三(ふくだ けいぞう)
連載当初は販売助成部長であり、島の上司。宇佐美専務失脚後は左遷させられるが、大泉社長就任時に役員に昇進する。今野輝常の仲人であるが、今野の妻とは長期の不倫関係にある。部長編ではほとんど出番なし。なお、家族以外では唯一、読みきり編第1話から登場している。(名前は出てこないが、風貌と関西弁の喋りから福田と見て間違いない。)
当初は上司の宇佐美のご機嫌を伺いつつ、部下である島には時には厳しく接したり、権謀術数を駆使してライバルを蹴落とすなど典型的中間管理職として描かれていた。役員昇進を境に、徐々に島や中沢を疎ましく思うようになり、自分に従う今野の諫言を鵜呑みにして島に地方勤務命令を出すなど、今野とともに悪役としての描写がされるようになった。管理職として致命的なまでに人望がない今野をバックアップするあたりは、人を見る目はなかったのかもしれない。

苫米地功(とまべち いさお)

初芝電産第3代社長。自らの派閥入りを拒絶した島にクビを言い渡したりするなど、恐怖政治を敷いた。しかし、それが大泉派にクーデターのチャンスを与えてしまい、最期は自らの派閥の役員からも総スカンを食らった結果、満場一致で社長解任決議をされてしまい、失脚した。
登場当初は温和な雰囲気の初老の男性であったが、自分が大泉社長就任までの暫定政権であることに気がつくと大泉失脚に向けてあらゆる手を尽くした。作者の人物評では「おばさん顔」。

八木尊(やぎ たかし)

総合宣伝課立ち上げ時の島の部下。初登場時は課長代理。海外経験が豊富で数ヶ国語に精通している。ハーバード・ビジネス・スクール出身。アメリカで経営を学んだせいか、考え方は合理主義で人情よりも数字と組織の利益を優先する。そのため、島に対しては、大局的ながらも打算的な視点でアドバイスをすることが多い。部長編では島の後任として総合宣伝部長を務めた。部長編終盤で島と同時に、そして島より若く40代で役員昇進を果たした。現在は島の後釜として上海地区を担当している。
課長編では総合宣伝課の優秀な部下として島を支え、部長編ではサンライトレコードに出向中の島のもとへ優秀な部下を派遣したり、派閥抗争に組することに苦慮していた島にアドバイスをしたりと、強い信頼関係で結ばれている。
しかし、取締役編ラストで自ら島に、「挑戦状を叩きつけた。」と宣言し島を越えて社長になることを決意する。島の後任として、上海董事長就任後は大変な権力志向になり、折り合いのつかない部下を露骨に左遷させたり、労使問題が発生した場合は力ずくでこれを排除しようと躍起になる。島を過剰なほどに敵対視するようになるが、島を優秀なビジネスマンとして認めているが故の心境といえる。

宇佐美欣三(うさみ きんぞう)

初芝電産常務取締役(後に専務取締役)兼営業本部長。権謀術数に長ける。吉原会長死後、大泉が副社長となったことで失脚し、ほどなく癌で憤死した。ヤング編では販売助成部長として登場。
島(岩田)玲子(しま(いわた) れいこ)
島の元妻。耕作とは同じ大学の同じサークルの先輩後輩の間柄であった。島の主任時代に半ばだまし討ちの形で、強引に婚姻関係を結んだ。
そのためか初登場時にはすでに夫婦の仲は冷めており、耕作のアメリカ赴任をきっかけに別居、その後離婚する。離婚前から電報堂という広告代理店の社員と交際しており、娘の奈美をもないがしろにするようになる。
大泉笙子(おおいずみ しょうこ)
吉原初太郎の娘であり、大泉裕介の妻。初芝電産株式会社の個人筆頭株主。非常に気が強く、かなりの高齢にも関わらず、大町愛子と人前で全裸になりスポーツクラブのプールで水泳対決をしたほど。裕介の浮気は事実上黙認していたと思われる。取締役編で裕介より先に死去する。
岡林栄一(おかやばし えいいち)
初芝電産第7代社長。慶應義塾大学経済学部出身。万亀とは逆に、守りの経営を得意とする。万亀社長退任後、初芝電産第7代社長に就任し、かねてより快く思っていなかった島を福岡へ左遷させた。その後は人員削減を推進していったが、業績は悪化の一途をたどり、責任を取って退陣した。
平井均(ひらい ひとし)
初芝電産AVソフト室長。最年少部長職ということで出世コースを歩んでいたが、妻が暴力団幹部と不倫をしていたことでゆすられてしまい、さらにその脅しを断ったことで会社の正面玄関に妻のヌード写真を張られてしまうという事態に陥った。その事件をきっかけに、所属していた社内の派閥からは追放されてしまったが、島との結束を強めた。部長編では独立し、外食産業に進出。引き続き島をバックアップしていた。
木野穣(きの みのる)
初芝電産第2代社長。吉原会長の死後、苫米地に社長を譲り会長になる。大泉社長が脳梗塞で倒れた後、社長代行として初芝の指揮をとった。大泉とともに、脱派閥を実現するために中沢を社長に推薦し、社長を中沢に託した後、課長編最終回で死去。大町久美子の父親代わりでもあった。
赤松  (あかまつ    )
初芝電産の副社長(常務編現在)であり、シリーズきってのこうもり男である。絶妙なバランス感覚を持つが、おそらくは島が持つサラリーマン哲学とは対極にある存在であり、これまでも派閥抗争に流されず理知的に勢力分析を行い、従属勢力が劣勢と判断すれば即座に対抗勢力に乗り換え、出世街道を着実に歩み副社長にまで上り詰める。社長争いをしていたが、対抗勢力とは無関係の飛び級人事により郡山が就任。そのため未だ失脚には至っておらず、今後の動向が注目される。
高市千鶴(たかいち ちづる)
極道の娘であるが、堅気として育てられ初芝貿易(ハツボウ)の秘書として勤務、その後サンライトレコードに転職し島を支えた。菩薩さまである。
登場当初は島に好意を寄せ、何度もベッドインをもくろむがすべて寸でのところで未遂に終わる。その後は島の行きつけの割烹料理店の板前に思いを寄せるが、ラブレターを破られたりするなど失恋してしまい、島のあとを追って福岡に引っ越した。福岡ではチャコママと共同で「トンコ」という店を経営し、福岡で生活する島とその仲間たちで繁盛した。福岡で島の取引先である三郎丸と恋仲になり、ヤクザの父親の反対を押し切って(最終的には父親も祝福した)結婚に到った。
部長編においては島の救世主的存在であり、「カタギではあるが極道の組長の娘」という絶妙な立場で極道とのコネクションを駆使し、数々の問題を解決するが、その都度島に猛烈に怒られていた。
郡山敏郎(こおりやま としろう)
初芝電産第9代社長。初登場は部長編終盤。島同様に中沢を尊敬しており、その影響もあり社内ではどの派閥にも組せず、ニュートラルな立場を貫いていた。島との初対面時には勝木社長擁立に動いていた彼に、走狗のようだと幻滅したが、島の弁明により同じ中沢イズムにある者同士だと納得、これに賛同した。その後はお互いをライバルと認め合いながらも強い信頼関係にあり、初芝を共に支えるようになる。
平取から専務へ一気に昇進し、その後も着実に実績を挙げていき、万亀会長と病床の勝木社長の推薦を受け、初芝電産第9代社長に就任した。社長就任直後の記者会見では、大規模な人員削減と経営合理化に着手することを宣言。そして、かつての上司であった副社長に退任を求めるなど自分の動きやすい体制作りに着手する。


主要登場人物の多くは老若男女問わず不倫の当事者であることが多く、しばしば愛人同伴で海外出張に出かける初芝役員もいる。 また上述の高市千鶴をはじめとして、「太目の女」がコミカルに描かれる傾向が極めて強く、彼女たちが島と肉体関係を持つことはない(未遂に終わる)。

初芝電産歴代社長
初代 吉原初太郎(よしはら はつたろう)
二代 木野穣(きの みのる)
三代 苫米地功(とまべち いさお)
四代 大泉裕介(おおいずみ ゆうすけ)
五代 中沢喜一(なかざわ きいち)
六代 万亀健太郎(まんがめ けんたろう)
七代 岡林栄一(おかやばし えいいち)
八代 勝木清春(かつき きよはる)
九代 郡山利郎(こおりやま としろう)
初芝電産歴代会長
初代 吉原初太郎(よしはら はつたろう)
二代 木野穣(きの みのる)
三代 大泉裕介(おおいずみ ゆうすけ)
四代 万亀健太郎(まんがめ けんたろう)

歴代社長をみていくと、電気機器メーカーでありながら、営業、経理出身者が多く、技術系出身者が不存在な点は異質かもしれない。 苫米地(ヤング編では専務取締役営業本部長)、中沢は営業畑、岡林、勝木は経理畑(それぞれ経理本部長経験者)である。

島耕作シリーズにおけるストーリー展開の典型例

  • 新しく登場した女性(但し美女に限る)はほぼ必ず島耕作とセックスする。
彼女たちはほぼ全員キーパーソンに対し絶大な影響力を持ち、その時まさに島が直面している問題を解決するために全面的に協力する。
ただし、取締役編以降は島の年齢もあってか、セックスの回数は極端に減っている。
  • 逆に、太っている女性(高市千鶴等)はコミカルに描かれる。彼女たちが島とセックスをすることはまずない。
  • 大町愛子、久美子母子をはじめとして、登場する女性たちの多くは非常にセックスに関して大胆である。
  • 島に敵対する人物は島を罠に嵌めようとしても必ず島に見抜かれ、跳ね返される。反対に島は敵に対しどんなに稚拙な手段を使っても敵は罠にかかる。課長編および部長編の場合は敵は左遷もしくは退職、取締役編の場合は彼らの多くは麻薬で自滅する、もしくはマフィア等により惨殺される。
  • 初芝の人事異動のほとんどは上司の感情によって行われる。島も上司の感情による転勤や降格人事(未遂を含む)を何度か経験している。
一例として、島の京都への転勤(大泉裕介に馬島典子との情事を見られた。)、島の解雇騒動(苫米地功からの派閥入りを拒否した。)、島の熊本転勤話(今野の福田への諫言がきっかけ。ただし、中沢が阻止した。)などかなりのケースが存在する。ただし、島が感情で人事異動や退職勧告を部下に命令することはない。

テレビドラマ

1993年から1998年にかけてフジテレビによりテレビドラマ化され放映された。

映画化

1992年田原俊彦主演で映画化された。

外部リンク