アンチウイルスソフトウェア
アンチウイルスソフトウェア (Anti-Virus Software) とは、コンピュータウイルス(以下ウイルス)を検出・除去するためのソフトウェアである。単に「アンチウイルス」、または「ワクチン(ソフトウェア)」、「ウイルス対策ソフトウェア」などとも言う。
なお、ウイルスソフト等と呼ばれることもあるが、この呼び名ではこのソフトウェア自体がウイルスだという意味に取れるので、不適切である。(なお、「~ソフトウェア」の略語として「~ソフト」とも言う。)
概要
基本的には、コンピュータに常駐して作動するソフトウェアで、次のような動作をする。
- コンピュータウイルスの特徴など(パターン)を記録したデータファイル(パターンファイル、定義ファイルなどともいう)とコンピュータ内部で遣り取りされるデータを照合する(パターンマッチング)。照合対象は、ファイルの静的検索型が基本的であり、さらに読み書きされるファイル等のデータを動的検索するもの、ウェブブラウザやメーラーで送受信されるデータ(添付ファイル、スクリプト等)を動的検索するものがある。
- 内部にウイルスが発見された場合は、除去できれば除去を行い、除去できないものも含めて何らかの警告を出す。
主に、クライアントを対象とするものと、サーバ(メールサーバ、データサーバなど)を対象とするもの(ゲートウェイ型)に分かれる。
データファイル(パターンファイル等)やウイルス検索エンジン(検索プログラム)は、新しく発見されたウイルスに対応するために頻繁に更新されている。また、最近のクライアント向けアンチウイルスソフトウェアでは、インターネットから自動的にダウンロードして更新するものが主流である。しかし、しばしば、それらの更新ソフトウェアのテストが不十分な場合があり、それらが自動更新された多くのユーザのパソコンが動作不良・起動不能になったり誤検出するなど、トラブルが発生することがある(有名な例としてはウイルスバスターの「CPU使用率が100%になる問題」がある。詳しくはウイルスバスターの項を参照)。
なお、スパイウェアを発見・駆除するものはアンチスパイウェア等と呼ばれる。またパーソナルファイアーウォール、アンチスパム等の製品とも区別される。これらの総合対策スイートとして提供される製品もある。また、アドウェアやフィッシング (Phishing) 対策ソフトウェアも今後展開しようとしている。
これらの有害なプログラム類を総称して不正ソフトウェア、マルウェアと呼び、これへの対策を不正ソフトウェア対策、マルウェア対策と言う。この対策をするソフトウェアを、不正ソフトウェア対策製品ないしアンチマルウェアと言う。経緯上、アンチウイルス ソフトウェア (Anti-Virus Software) はアンチマルウェアとの戦いの始まりに相当する。
このようなアンチウイルス、アンチスパイウェアを装ったマルウェア(WinFixerなど)が登場しているので、この点も注意が必要である。
なお、一部のアンチウイルス ソフトウェアも、通常のソフトウェアと異なりユーザーの意向を無視したファイル削除やポップアップ表示濫用などの動作があり、ユーザーから見るとマルウェアに近い性質を有する。
これらセキュリティソフト(特にアンチウイルス)は、1台のパソコンに2個以上の製品を同時にインストールしないことが正常動作の基本条件となる。これは、機能的に競合を起こし、最悪の場合はOS自身を巻き込んだ起動不良を引き起こす危険性があるためである(簡単に言えば、カビ取り剤をむやみに混ぜてはいけないのと同じ)。もちろん、機能的に競合しないよう配慮すれば(たとえばアンチウイルスとファイアウォールそれぞれ別会社のものを個別インストール、など)原理的には正常動作する。
日本での市場
セキュリティ対策ソフトの日本での市場は、トレンドマイクロ、シマンテック、マカフィーの大手三社による寡占的な状況が続いてきた[1][2]が、個人向けについては低価格路線で登場したソースネクストウイルスセキュリティが一時的とはいえメーカー別シェア2位になるなど[3]、新たな潮流ができつつある。同様の低価格路線をとる対策ソフトには、V3ウイルスブロック インターネットセキュリティやキングソフトインターネットセキュリティ、ウィルスキラーなど、アジアで開発された製品が多い。
さらに、無料で利用できるAVG Anti-Virusやavast! antivirusの一般への普及や、ウイルスセキュリティZEROなど年次更新料不要の低価格帯ソフトも登場している。
だが、このような低価格路線とは対照的に、検出力を売りとする対策ソフトの新規参入も2005年秋頃から増加している。検出率の高さで知られるカスペルスキーの販売をジャストシステムが開始したことなどはその代表例である。同様の高検出率路線をとる対策ソフトには、NOD32アンチウイルスやDr.Web、F-Secure インターネットセキュリティ、G DATA アンチウイルスキットなど、ヨーロッパで開発された製品が多い。
また、クライアントOSで高いシェアを持つマイクロソフトもセキュリティ対策部門に進出し、2007年1月に同社ウイルス対策ソフトWindows Live OneCareを発売しており、動向が注目されている。このようなマイクロソフトの動きに対しては各社とも対抗策をとり始めており、対抗製品としてシマンテックからNorton360、G DATA SoftwareからTOTAL CAREなどが発売され、またトレンドマイクロやF-Secureなどからは1台分のライセンス料で複数台使えるパッケージが登場するなど、セキュリティ対策ソフト市場は競争が激化しつつある。
主なソフトウェア
- Active Virus Shield (AOL)
- Avira AntiVir PersonalEdition (Avira GmbH)
- avast! antivirus (ALWIL Software a.s.)
- 個人・非商用使用に限り無料。日本語版もある。
- AVG Anti-Virus (グリソフト)
- 個人・非商用使用に限り無料。2007年に日本語版も発売・配布開始。メールスキャンを使用する場合、メールの末端に広告が入る。
- BitDefender (SOFTWIN)
- 毎日更新される迅速なウイルス検知・対応や他アンチウイルスソフトと競合しにくいという特徴が支持されている。体験版は1年間の試用が可能(但し常駐ウイルススキャンは非対応)。Windows以外にLinux・FreeBSDに対応。Linux版のみ、日本でSoftAgencyから購入可能。
- Clam AntiVirus (Summit Open Source Development Group)
- Dr.Web (Doctor Web Ltd. / 株式会社ネットフォレスト)
- Windows 95 ~ XP、Linux、FreeBSD、OpenBSD、Solaris (x86) に対応。企業、製品共にロシア国防省の certified を受けており、事実上「政府機関ご用達」製品となっている。
- ウイルスチェイサー (株式会社インテリジェント ウェイブ)
- ロシア政府も採用するウイルス検索エンジンDr.Webを使用したWindows用のアンチウイルスソフト。高いウイルス検出能力と動作の軽さが評価されている。体験版は1ヶ月の試用が可能。
- CA アンチウイルス (日本CA株式会社)
- F-Secureインターネットセキュリティ(日本エフ・セキュア)
- Sophos Endpoint Security (ソフォス株式会社)
- 英国に本拠を持つ。WindowsやMacO S、UNIX等のセキュリティ製品を提供する。個人ユーザー市場へは展開を行わず、企業向けに特化することで高品質なサポートを提供することをポリシーとしている。
- G DATA アンチウイルスキット (G DATA Software)
- ウイルスバリア(インテゴ)
- Kaspersky Anti-Virus (ZAO Kaspersky Lab)
- キングソフトインターネットセキュリティ (金山軟件有限公司 / キングソフト株式会社)
- 6ヶ月の期限付きで無料ダウンロード、利用が可能。1年間ならびに無期限サポートへの更新時は有料。日本語・日本サイト。元々は中国のソフト。開始当初、一部の対応機種で障害は見られたものの、現時点では全て解消している。
- 価格はウイルスセキュリティゼロ、ウイルスキラーゼロとほぼ同じで無期限サポートの利用が可能だが、Checkmarkによるテストで、アンチウィルスでLevel2(駆除)、トロイの木馬検出能力を認証されている。
- 広告表示されるが、無料版もある。
- マカフィー・ウイルススキャン (マカフィー株式会社)
- 有料のみ。日本語・日本サイト。ワーム系のウイルスに強いとされている。
- 企業採用では世界トップシェアの老舗ベンダー。大手三社のなかでは最も古株で、MS-DOSの頃「世界で初めてトロイの木馬が駆除できるソフト」として知られた。
- 企業向けに1台のサーバーでネットワーク内の全パソコンのバージョン管理できる製品が用意されている。そのため、大規模ネットワークを組んでいる企業での採用は多い。
- 1998年頃までは日本で90%以上と圧倒的なシェアを誇った。しかし、ソースネクストが日本語化して販売したバージョン4がデフォルト設定でウィルスを駆除しない設定となっていたためMcAfee使用者にウィルスを蔓延させて信用を落としてほとんど販売されなくなり、一時日本撤退を噂された。マカフィーの日本法人が代理店を務めるようになってからシェアは回復してきている。
- フェンリル株式会社と業務提携を行っており、Sleipnir2インストール時に、90日無償版をインストールして使用することも可能である。
- 一時期、メーカー製パソコンにプリインストールされていることが多かった。
- NOD32アンチウイルス(ESET, s.r.o. / キヤノンシステムソリューションズ株式会社)
- ノートン・アンチウイルス (株式会社シマンテック)
- Panda Titanium Antivirus (Panda Software, S.L. / ITX イー・グローバレッジ株式会社)
- V3ウイルスブロック インターネットセキュリティ(株式会社アンラボ / 株式会社インターチャネル・ホロン)
- 元NECインターチャネル。名前のとおり、元NECの子会社。低価格と親しみやすいインターフェイスが魅力。
- 「ウイルス警備隊」の名前で廉価版ソフトでは最も早く日本で発売された。そのため発売当初は三大ベンダーの製品しか比較対象がなく知名度も低かったため苦戦を強いられた。
- ウイルスキラー (イーフロンティア)
- ウイルスセキュリティ (K7Computing / ソースネクスト株式会社)
- 価格の安さが魅力。マイクロソフトによるWindows Vistaのサポート終了まで更新料が不要な版も発売。
- 検知率は、評価が分かれる。
- 代理店のソースネクストは以前McAfeeのローカライズをミスしてウィルスを蔓延させたことがあるため、当時を知っているパワーユーザでは嫌うものも多い。
- ウイルスバスター (トレンドマイクロ株式会社)
- ウイルスドクター (北京江民新科技術有限公司 / 株式会社デジターボ)
- 中国では金山、瑞星(Rising AntiVirus)と並ぶアンチウイルスソフトのひとつ。
- 検出率は高い方であり、動作も軽いため評価は高い。製品評価でMcAfeeやSymantecなどの有名ベンダーより高い評価を受けることもしばしばである。
- 日本ではパステルカラーを基調とした使いやすいインターフェイスで主に女性をターゲットに販売している。
- Windows Live OneCare (Microsoft)
- マイクロソフトから2007年1月に販売されたアンチウイルスソフト。
- 発売当初の検出率が悪い・セキュリティホールが多いなど欠点が多く、評価機関に評価外の烙印を押されたこともある。その後改善し、通常使用には耐えるソフトになっている。
- NOD32と並ぶ動作の軽いアンチウィルスソフト。また、基本的にメンテナンスフリーであるため初心者向けといわれる。
- スパイスウィーパー
- ウェブルート・ソフトウェア株式会社が2007年1月から販売したアンチウイルスソフト
関連項目
脚注
外部リンク
- ウイルス対策ソフトの検出力調査結果
- ウイルス対策ソフト比較
- Microsoftウイルス対策ソフトウェア ベンダの一覧
- 勝手にウィルステスト
- 各製品共通テストウイルス(無害ですが自己責任でテストして下さい)
- 道具解