似顔絵

人物の容貌や特徴をとらえて、あるいはデフォルメして描いた人物画

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似顔絵(にがおえ)とは、人物の容貌や特徴をとらえて、あるいはデフォルメして描いた人物画。

東洲斎写楽による浮世絵:市川鰕蔵の似顔絵

浮世絵役者絵のうち、役者の個性をとらえて描いたものが特に「似顔絵」と呼ばれるようになった。それ以降、浮世絵に限らず、人物の顔を似せて、あるいはデフォルメして描いた肖像画も「似顔絵」とよばれるようになった。

浮世絵における似顔絵

浮世絵初期の役者絵は、役者個人の特徴をとらえたものではなかった。浮世絵中期にあたる明和年間、一筆斎文調勝川春章が役者個人個人の特徴をとらえた浮世絵を描きはじめ、これが「似顔絵」と呼ばれるようになる。役者似顔絵を得意とした絵師には、勝川春好、勝川春英、鳥居清長、東洲斎写楽、歌川豊国などがいる。

浮世絵以外の似顔絵

後世、浮世絵以外でも、対象個人の特徴をよくとらえた肖像を似顔絵と呼ぶようになる。 それらの似顔絵には、芸術性を帯びた肖像画から、風刺パロディの要素を持った漫画イラストレーションのようなものまである。たとえ子どもの殴り書きのような簡単なスケッチでも、人物の顔の特徴をとらえて似せた絵は立派な「似顔絵」である。逆に美術的には優れた絵でも、特徴を捉えていない物は似顔絵とは言わない。

例えば右の中江兆民は面長な輪郭、秀でた額、小さな目元などの特徴が捉えられている。また島村抱月の場合、彼の特徴であるピンと張った口ひげ、大きな鼻梁、耳の形などがデフォルメして描かれている。 1981年から山藤章二週刊朝日誌上で「山藤章二の似顔絵塾」の連載を持ち、塾生から多くの似顔絵描きを輩出した。

警察と似顔絵

警察による身元不明者の情報募集や犯人 指名手配では、写真が得られない場合には「似顔絵」が用いられることが多い。これらを担当する捜査官は似顔絵捜査官と呼ばれる。

また、似顔絵は顔の特徴を強調するため、写真やビデオ画像よりも犯人の記憶を思い起こしやすく、逮捕に繋がりやすいという[1]

似顔絵描き

 
テルトル広場の画家たち

無名画家たちの収入源のひとつが「似顔絵描き」である。街角に立ち、似顔絵の見本を並べ、観光客の似顔絵を描いてなにがしかの収入を得る。

フランスパリは一名、「芸術の都」と称され、無名の画家たちが数多く住んできた。モンマルトルにあるテルトル広場は似顔絵描きが数多くいることで知られ、パリの観光スポットにもなっている。

日本では東京上野公園の入り口階段付近やイベント会場などで似顔絵描きが行われている。

似顔絵漫画

似顔絵を使った漫画もある。特に政治や世情に関する風刺や批判を目的とする漫画やスポーツ・芸能の情報関連の漫画では有名人の似顔絵がほとんど必須である。

参考図書

  • 山藤章二『カラー版 似顔絵』 岩波新書 岩波書店 ISBN 4004306752 2000年
  • 和田誠 『似顔絵物語』 白水社 ISBN 4560046638 1998年
  • 小河原 智子『似顔絵18のテクニック―ワンポイントで楽しむ』 日貿出版社 ISBN 4817032847 2002年
  • 小河原 智子『小河原智子のだれでもカンタン!「ポジション式」似顔絵入門』造事務所 (編集) 河出書房新社 ISBN 4309268382 2005年
  • 清 つねお『似顔絵教室』 晩成書房 ISBN 4893802712 2002年

似顔絵漂流記 アウトドア・ライフの大衆芸人 :玉川しんめいパンリサーチインスティテュート

脚注

  1. ^ 『記憶呼び起こす似顔絵、難事件相次ぎ解決…科学捜査時代に』2008年3月18日付配信 読売新聞

関連項目