抱き合わせ商法
競争法で禁じられる強制的・不公正な取引形態
抱き合わせ商法(だきあわせしょうほう)とは、本来の売り物・サービスとは別の売り物・サービスをセットで販売する方法・手法の総称である。抱き合わせ販売ともいう。
概要
大抵の場合は、多くの人が入手したいと考えるような購買率の高さが期待できる人気商品と、そこまで人気が無く売れ行きが芳しくない商品とをセットにして販売する例を指す。人気商品と不人気商品の組み合わせで販売行為に及んだ場合、消費者が人気商品を手に入れるためには、不人気商品と同時に購入しなければならなくなる。この場合、販売者にとっては人気の無い商品に対する消費者の購買率が高められることが期待できるが、消費者にとっては廉価で良質な商品を選ぶ環境でなくなってしまう。
また、主たる商品に従たる商品を付加して販売することによって、従たる商品の市場でのシェアを高めるための抱き合わせもある。この場合、主たる商品の市場で大きなシェアを占める企業が従たる商品の市場での競争業者を排除する手段として抱き合わせが利用されているといえる。
日本においては、このような販売方法は不公正な取引方法の一般指定(10項)により指定されており、独占禁止法(第十九条)違反となる。
不当な抱き合わせ販売とならない場合として、二つの商品が密接にかかわっている場合(例 - レンタカーと保険)、個別に購入できる選択肢が残されている場合などがあげられる。しかし、複写機と消耗品など、関係が密接であっても、当該消耗品市場における参入を阻害するおそれがある場合は抱き合わせ販売にあたりうる。
抱き合わせの例
以下に、商売手法として「不当な抱き合わせ」とされている一部の実例を例示する。
- テレビゲーム・ドラゴンクエストシリーズが新発売の時期に、ただでさえ入手しにくいことを利用してIII・IVを買うなら他のシリーズや別の不人気なファミコンソフトも買うという条件付きで販売する店が存在した。
- 1993年米騒動で日本米が手に入りにくくなった時期に、当時不人気だったタイ米とセットで買わないと日本米を売らないという態度にでる販売店が存在した。
- 何らかの会員権を買うと英会話などの教材が付いてくると称して実際はその会員権自体が使い物にならなくて結局高い教材を買わされた。
- 米マイクロソフトのオペレーティングシステムWindowsに含まれるインターネット閲覧ソフト (Internet Explorer) や動画音声再生ソフト (Windows Media Player) などについて、違法な抱き合わせ販売として、日本国内外で過去に何度か問題提起されている[1][2]。
- 1996年ごろ、マイクロソフトがパソコンメーカー各社に対し、Microsoft Officeのバンドル・プリインストールの際はWordとExcelをセットで販売する方針を取っていたことについて、公取委により勧告を受けたことがある[3]。事件当時、ワープロソフトは一太郎のシェアが高かったが、これによりWordのシェアが上がったとも言われている。
- 近年の音楽CD販売などは「初回限定盤」と銘打って初回盤にのみPV入りのDVDやボーナストラックを入れるなどの一種の抱き合わせ的な商法が主流となっている。
- 日本の芸能界においてはバーターと呼ばれ、日常的に行われている。
- 近年ではニンテンドーDSにおける同様の販売例が顕著である。一時期のオンラインショップなどではプレミア価格と称して不人気ソフトとの抱き合わせ販売を定価以上で行っていた。DSの普及が進んでからは終息した。
- バンダイビジュアルが2007年から順次リリースしている劇場版アニメ(機動警察パトレイバー the Movie等)のBlu-ray/HD-DVD版にDVDディスクが同時梱包されており、定価が一万円を超えた。この為、Amazon.co.jp等のカスタマーレビューではこの件に対して幾つかの批判が書き込まれている。
- インテルが2008年1月および3月に発売したCPU、 Core 2Duo E8xxxおよび同Quad Q9xxxシリーズでは、様々なパーツ販売ショップにおいてマザーボードと同時購入のみ可能などのセット販売が積極的に行われ、一部[誰?]エラー: タグの貼り付け年月を「date=yyyy年m月」形式で記入してください。間違えて「date=」を「data=」等と記入していないかも確認してください。で批判が相次いだ。ショップによってはCPU販売価格の2倍を超えるセットも登場した[4]
- ネットブックを始めとした小型のノートパソコンとイー・モバイルのデータ通信端末のセットで、回線契約を条件としてパソコン本体を格安で販売。初期費用は少ないが、実質的に支払う費用は変わらない。家庭内利用がメインなど通信端末の必要性が薄い場合や、型落ちなどでパソコン本体の価格が安い場合、非セット価格よりも支払う費用が高くなってしまう。通常価格よりもインパクトの強いセット価格を前面に提示していることが多い。
- パチンコ・パチスロにおいては、人気機種を優先的にホールに導入できるようにする代わりに同じ会社の不人気機種を抱き合わせで購入させられることが半ば常態化していたことから、2009年1月にパチンコ業界の関係4団体がそのような販売方法を規制することで合意したことが明らかにされた[5]。しかし、合意直後の同年3月に発売されたCRスロぱちんこグラディエーターエボリューション(京楽産業.)において次機種との抱き合わせ販売が行われていたことが明るみに出るなど[6]、現場レベルでは依然抱き合わせ販売が横行している。
- 機動戦士ガンダムのプラモデル(ガンプラ)のブームの際に、不人気のプラモデルの抱合せ販売をする小売店が、各地で存在した。ガンプラの品薄状況について、バンダイの「生産調整」の疑惑が持たれたため、バンダイはスケールモデルの生産を中止した。
脚注・出典
- ^ 米司法省らが米マイクロソフトを反トラスト法違反容疑で提訴 - ASCII24 1998年5月19日
- ^ 欧州委員会、Microsoftに650億円の罰金とMedia Playerの分離を命令 - Impress 2004年3月25日
- ^ 公取委、マイクロソフトに独禁法違反で排除勧告 - Impress 1998年11月20日
- ^ 九十九電機のG-CASE(約10万円)など
- ^ ■ 大量導入優先販売の是正に向け、4団体が合意 - 月刊グリーンべると・2009年1月30日
- ^ ■ 京楽が販売方法で全日にお詫び、都遊協が報告 - 月刊グリーンべると・2009年5月1日