ペット供養
ペット供養(ペットくよう)とは、ペットの供養及びそれに関連するビジネス(サービス業)。特に断り書きがない限り、日本の事例について述べる。
概要
ペットの供養自体は古くから行われており、例えば縄文時代の遺跡から犬の埋葬跡が発見された事例がある(ペット、柴犬、縄文時代も参照)。これらは居住区の近くに土葬をするのが通常であった。また古代エジプトでは猫のミイラも発見されており、愛着のある・あるいは道具として役に立った動物を、丁寧に葬る習慣は世界各地で見出される。
しかし現代におけるペットの家族化(→コンパニオンアニマル)に伴い、ペットが亡くなった際に人間と同じように法事(葬儀、位牌、仏壇)、埋葬を望む人が増えている。この需要に伴いペットへの法事のサービス業態化や、ペット霊園の整備が行われるようになった。
ペット霊園における埋葬では、人間の埋葬と同じように火葬、骨壺による埋葬、49日等の法要を行うサービスが用意されていることが多い。欧米でもペット霊園への埋葬といった風習もみられ、こちらは土葬ではあるが、専用の棺や、あるいはエンバーミングすら見られる。
なお、ペットではないが動物園でも亡くなった動物の供養するための慰霊祭は行われており、他にも屠場での食用家畜の供養や、保健所で保護期間を過ぎて処分された動物の霊を慰める供養が、定期的に行われている。
社会的位置付けと意義
これらは主に、ペットを失った人の満足のためのサービス業で、宗教活動とは認められない。ペット供養の謝礼等は収益事業に当たりうるとする判例があり(最判平成20年9月12日判時2022-11)、宗教法人の持つ宗教活動への非課税特権がペット供養に関する収益には適用されないことがある。ただしペット供養自体の法的定義は未定である(後述)。
しかしペットに対する思い入れの強い人には、ペットを失ったストレスから、一般にペットロス症候群とも呼ばれる状態に陥る事もある。
法的な整理
この記事は特に記述がない限り、日本国内の法令について解説しています。また最新の法令改正を反映していない場合があります。 |
- ペットの遺体の法的定義
- 廃棄物の処理及び清掃に関する法律第2条第1項、第2項により、ペットの遺体は一般廃棄物となる。そのため、その埋葬については、一般廃棄物の焼却処分や埋立処分の基準を満たす必要がある。河川や公園などの公有地や他人の土地にペットの死骸を埋めた場合は、廃棄物の不法投棄となり同法律により罰せられる。また、海に投棄することも同法律施行令で禁じられている。適切に焼却した上で、不衛生にならない形で自宅の敷地内に埋めたならば、法律上の問題はないと思われる。
- ペット供養は収益事業かそれとも宗教的行為か
- 最高裁判所は2008年9月12日に、この点について判断を示し、宗教法人が行うペット供養について、外形的に請負業、倉庫業及び物品販売業に並びにその性質上これらの事業に付随して行われる行為の形態を有するものと認められ、事業に伴う財貨の移転が役務等の対価の支払として行われる性質のものか、それとも役務等の対価でなく喜捨等の性格を有するものか、また、当該事業が宗教法人以外の法人の一般的に行う事業と競合するものか否か等の観点を踏まえた上で、当該事業の目的、内容、態様等の諸事情を社会通念に照らして総合的に検討して判断すべきものとした。
- その上で、料金表等により一定の金額が定められており、その目的、内容、料金の定め方、周知方法等の諸点において、宗教法人以外の法人が一般的に行う同種の事業と基本的に異なるものではなかった事例で、依頼者の要望に応じてペットの供養をするために、宗教上の儀式の形式により葬祭を執り行っていたとしても、法人税法2条13号でいう収益事業に該当すると判断した。
近年では消費税の課税に関する裁判も見られる。
一般的な遺体の処理
以下では一般的な遺体の処理方法について述べる。
- ペット霊園への埋葬
- 当初は一般の(人間用の)霊園の片隅でペットを埋葬していたが、その後需要の増加に伴いペット専用の霊園も登場した。現在では飼い主と同じ墓に入れる(納骨室は区切ってある)霊園も登場している。近年では遺骨や遺灰の一部を納めるカロートペンダントを利用する人もいる。
- 庭への土葬
- 遺体を私有地である庭へ埋葬する行為には問題はない。ただし、土に還る過程で深い穴を掘って埋めるなど近隣への腐敗臭の配慮等は必要となる。
- 自治体への処分依頼
備考
社会的注目度や需要が2000年代以降拡大しつづけているペット供養だが、毎日新聞が各地の国民生活センターに寄せられた相談として報じたところによると、ペット火葬事業の業者の中に悪質業者がいる模様で、2007年秋頃から相談事例が増加しているという[1]。
ペット供養では、自動車に火葬用の設備を搭載したものがフランチャイズビジネスなどの形で登場しているが、この形態の中に火葬をはじめてから「追加料金が必要だ」として金銭を広告掲載外で追加請求、拒否すると火葬中の遺骸を「生焼けのままで返却する」、「遺骨は渡さない」と脅すなどという手口だという。東京都消費生活総合センターによれば遺骸の重量別の料金表を示している業者ウェブサイトの料金表で数万円の火葬費用以外不要だとしている業者の中に、同種手口で飼い主を脅して十数万円をせしめているものがいるという。これらでは口頭で金額を請求するケースも多いとしている。
同センターはペット火葬には法的な規制が無いとした上で、焼却を開始する事前に書面で見積もりを提出させ、納得できない契約は例え業者にせかされてもすべきではないと警告している。
また珍しい現象ではあるが、もともと肉体を持たないいわゆるバーチャルペットの世界でも、たまごっちの墓と称するものがある。
移動火葬の種類
- 合同火葬
- ペットの遺体を預かって保管し、一定量集まった他のペットと一緒に火葬するので遺骨が戻らない。移動火葬車が自宅に来ない場合が多く、業者が引き取りに来るだけで一切の立会いはできない。遺骨は他のペットと一緒に共同墓地に埋葬される。
- 一任火葬
- 個別に火葬はするが立会いはできない。移動火葬車は自宅に来ないこともある。遺骨は業者が拾い戻されるが、ペット遺体を引き渡した後、業者任せとなる。
- 個別火葬
- 移動火葬車が自宅まで来る。遺体を引き渡した後、遺体を火葬炉に入れ、遺骨を拾うまで立会いができる。
- 個別火葬+オプション
- 僧侶の読経、棺などのオプションを個別火葬に加えたものである。
移動火葬は上記の通り選択肢が多く料金体系が複雑である。固定炉のみで運用している火葬業者は人間の葬儀と平行して営んでいることが殆ど[要出典]で(ペット専用の葬儀部門を別に持つという意味)料金も明確で移動火葬より安い。予算と望む様式に合わせて比較検討することができる。このような料金体系はペット葬儀固有のもので、人間の遺体の場合は墓地、埋葬等に関する法律で選択肢が限定される一方、ペットの遺体は法的な位置づけが異なるためである[2]。
脚注
- ^ 毎日新聞記事
- ^ 法規制なくトラブル頻発 ペット霊園(産経新聞記事)