手稲山
手稲山(ていねやま/Teine-yama・Mt.Teine)は、北海道札幌市西部の手稲区と西区に跨る標高1023.1mの山。札幌市中心部からほぼ真西に直線で約15km、自動車で約40分の位置にある。
| 手稲山 Mt. Teine | |
|---|---|
|
冬の手稲山(2009年3月) | |
| 標高 | 1023.1 m |
| 所在地 | 北海道札幌市手稲区・西区 |
| 種類 | 火山 |
古くはアイヌ語で「タンネウェンシリtanne-wen-sir」(長い・悪い・場所)と呼ばれ、南斜面に大きく広がる崖地形から名づけられたとされるが、手稲という地名は「テイネィteyne-i」(濡れている・もの)に由来し、手稲区市街地の広がる山麓の開拓される前にあった低湿地帯を指すといわれる。
地質と地形
那須火山帯に属する。第四紀火山と考えられていたこともあったが、現在は否定され、より古い鮮新世(約500~160万年前)の火山と考えられている。地質は、安山岩、頁岩、凝灰岩などで構成される。
山頂の西側には尾根が連なり、南側と北側は急峻な断崖絶壁となっている。北側の絶壁(通称「北壁」)の下(現在のロープウェイ山麓駅付近)には火口のひとつがあったと考えられている。東側には溶岩の流れた跡とされるなだらかな傾斜が続いている。
手稲鉱山
明治期より、星置川で砂金がとれたため、手稲山には金が眠っていると噂された。明治20年代半ば、星置で農業を営む鳥谷部弥平治が偶然金脈を発見した。道庁に試掘を申し出、全財産をなげうって明治40年頃まで探したが、よい結果は得られなかった。大正に入り、元道庁の技師石川貞治が鉱業権を取得し、手稲鉱山と命名。一時成功するが、新たな金脈探しに失敗し、一度閉山する。
昭和に入り、1928年に広瀬省三郎が鉱業権を得る。現在の手稲駅近くまで鉄索をひき、出鉱量は1934年には約3万4千トンにのぼった。
1935年に三菱鉱業(現在の三菱マテリアル)が買収。金・銀・銅・亜鉛・テルルなどを最盛期には月6万トン産出し、一時期は鴻之舞鉱山に次ぐ日本第二位の産出量を成し遂げていた。東洋一の設備を誇ると言われたが、戦後、荒川鉱業・千歳鉱業などに継承されながら徐々に規模を縮小し、1971年を最後に閉山した。
他の銅を産出した鉱山と異なる点として、銅の鉱石鉱物のほとんどが安四面銅鉱や硫砒銅鉱といった硫塩鉱物であり、一般的な国内の銅鉱山では黄銅鉱を鉱石鉱物としていた。
様々な鉱物を産出するため鉱物収集家には有名な産地として知られている。1939年に手稲石(teineite、CuTeO3・2H2O)、閉山後の1993年に渡辺鉱(watanabeite、Cu4(As,Sb)2S5)、2001年にリシェルスドルフ石(richelsdorfite)といった新鉱物や珍しい鉱物が発見され、世界的にも有名な鉱山である。
現在も手稲区内の地名や札樽自動車道の金山パーキングエリアに金山(かなやま)の名を残しているが、これはかつて金を産出していた鉱山の名残である。また、付近のバス停にも手稲鉱山の名が残っている。(→札樽線 (ジェイ・アール北海道バス)参照)
鉱床
手稲鉱山の鉱床は、大きく分けると以下の3つに分類される。
- 三山鉱床群
- 黄金沢鉱床群
- 万能沢鉱床群
スポーツ・レジャー
手稲山は北海道の山スキー発祥の地といわれる。1926年に北海道大学スキー部創立15周年事業として、日本初のスキーヒュッテであるパラダイス・ヒュッテをスイス人建築家マックス・ヒンデルの設計により、現在のロープウェイ山麓駅から徒歩約10分の場所に建てられた。老朽化のため1978年に閉鎖されたが、有志により1994年に原設計に忠実に復元新築されている。
1965年、三菱金属鉱業(現・三菱マテリアル)と北海道放送(HBC)が中心となってテイネオリンピアを設立。北側中腹にスキー場のほかゴルフ場と遊園地をオープンさせた。
1972年開催の札幌冬季オリンピックでは、手稲山にもアルペンスキー(回転・大回転)、リュージュ、ボブスレーの会場が置かれた。札幌冬季オリンピック開催の後もアジア冬季競技大会、ユニバーシアード冬季大会といった国際スポーツ競技大会の会場となっている。
オリンピックに先立ち、1970年に北側5合目から山頂まで札幌市によってロープウェイが設置された。大会終了後には王子緑化(現・王子木材緑化)がテイネハイランドスキー場を開設した。
1990年頃のスキーブームの際には、ハイランドの西区西野方面への拡張が計画されたが、多くの反対にあい頓挫している。
オリンピア、ハイランドの両スキー場はスキーブームの後収益が悪化し、2002年にハイランドの運営、オリンピアの所有と運営を、2003年には財団法人札幌市公園緑化協会がロープウェイを、それぞれ加森観光に譲渡した。
2003年にはオリンピアにK=30mのスキージャンプ台が新設され、少年団の練習の場となる。
現在はオリンピアゾーンとハイランドゾーンを8人乗りゴンドラで接続、最長6,000mの滑走ができるサッポロテイネとして一体的に運営されている。
送信所・中継所等
山頂付近は強固な岩盤であり、また石狩平野を一望できるロケーションの良さから、無線送信・中継設備が多く置かれている。
- 1956年12月に、北海道放送(HBC)がテレビ送信所を設置。テレビ送信所の設置場所を巡り、地形的にも物理的にもテレビ送信所の設置が困難とされていた手稲山にテレビ送信所の設置を主張する北海道放送(HBC)と対立し、当初はさっぽろテレビ塔にテレビ送信所を設置していたNHK札幌放送局と札幌テレビ放送(STV)も、後にHBCと同様にテレビ送信所を手稲山に移設しており、現在、札幌圏の全ての放送局のテレビ・FMラジオの送信所が軒を連ねている。
- 2006年全局一斉に開始した札幌圏の地上デジタルテレビ放送の送信所もこの山頂に置かれた。
- 山頂からの見通しは西、北、東の3方向に直接開け、また南方向は山地が連続するものの手稲山より高い間近の遮へい物は多くなく、VHF帯以上の周波数の無線局としてはすこぶる好立地である。道央・道北地方の多くの場所で手稲山との直接波通信が可能で、面積にして北海道全域のうち半分ほどをカバーできる。テレビ放送では、地方中継局とのチャンネル割当の重複などがなければ、留萌・宗谷地方の日本海沿岸部や十勝地方、青森県下北地方の一部など100km以上離れた遠隔地でも高性能アンテナで明瞭に受信できることがある。
- NHK札幌の正式な放送局名は、手稲山テレビ・FM放送所である。
また、MCA無線、業務無線、JR北海道やNTT東日本、国土交通省、警察庁などの無線基地局や中継局のほか、北海道大学の気象観測施設なども置かれ、山頂はさながらアンテナ銀座の様相を呈している。
地上デジタルテレビジョン放送送信設備
地上デジタル放送における各放送局のチャンネルは、物理チャンネルではなく、リモコンキーIDで○chと表記している。
| ID | 放送局名 | コール サイン |
物理 ch |
空中線 電力 |
ERP | 放送対象地域 | 放送区域 内世帯数 |
本放送 開始日 |
Gガイド等 局名表記 (xはマルチ 放送の番号) |
ワンセグ 局名表記 |
チャンネル 利用番号 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 1 | HBC 北海道放送 |
JOHR-DTV | 19 | 3kW | 28kW | 北海道 | 1,096,108世帯 | 2006年 6月1日 |
- | HBC北海道放送携帯 | 011-013 |
| 2 | NHK 札幌Eテレ |
JOIB-DTV | 13 | 33kW | 全国放送 | NHK教育x・札幌 | NHK携帯2 | 021-023 | |||
| 3 | NHK 札幌総合 |
JOIK-DTV | 15 | 34kW | 石狩・ 空知 (滝川市以南)・ 後志 |
NHK総合x・札幌 | NHK携帯G・札幌 | 031-032 | |||
| 5 | STV 札幌テレビ放送 |
JOKX-DTV | 21 | 27kW | 北海道 | - | 札幌テレビワンセグ | 051-053 | |||
| 6 | HTB 北海道テレビ放送 |
JOHH-DTV | 23 | HTB | 061-063 | ||||||
| 7 | TVh テレビ北海道 |
JOHI-DTV | 14 | 28kW | TVhワンセグ | 071-073 | |||||
| 8 | UHB 北海道文化放送 |
JOBM-DTV | 25 | 27kW | UHBワンセグ | 081-082 |
- 2005年6月10日に予備免許が交付、2006年2月1日に試験電波が発射、2006年5月23日に本免許が交付、2006年6月1日から本放送が開始された。
- 物理ch番号16、18、20、22、24は深川アナログ中継局で使用していたため、欠番となっている。(22chは小樽中継局のデジタル放送で使用している。24chは深川アナログ中継局のほか、小樽中継局のアナログ放送でも使用していた。17chは手稲山アナログTVhの番号のため、当然使用できなかった。)
- 札幌管内(NHK札幌局が放送されている地域)ではニセコ、岩内、黒松内中継局が同一の物理chを使用しており、機器のチャンネルスキャンは必要なく、札幌のプリセットchを使用できる。
地上アナログテレビジョン放送送信設備
※印の日付は、さっぽろテレビ塔における開局日。
| ch | 放送局名 | コールサイン | 空中線 電力 |
ERP | 放送対象地域 | 放送区域 内世帯数 |
開局日 | 閉局日 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 1 | HBC 北海道放送 |
JOHR-TV | 映像10kW /音声2.5kW |
映像79kW /音声20kW |
北海道 | 約736,000世帯 | 1957年 4月1日 |
2011年 7月24日 |
| 3 | NHK 札幌総合 |
JOIK-TV | 映像73kW /音声18kW |
石狩・ 空知 (滝川市以南)・ 後志 (黒松内町以外) |
1956年 12月22日※ | |||
| 5 | STV 札幌テレビ放送 |
JOKX-TV | 映像89kW /音声22kW |
北海道 | 1959年 4月1日※ | |||
| 12 | NHK 札幌Eテレ |
JOIB-TV | 映像105kW /音声26kW |
全国放送 | 1962年 6月1日 | |||
| 17 | TVh テレビ北海道 |
JOHI-TV | 映像30kW /音声7.5kW |
映像280kW /音声70kW |
北海道 | 1989年 10月1日 | ||
| 27 | UHB 北海道文化放送 |
JOBM-TV | 映像293KW /音声73kW |
1972年 4月1日 | ||||
| 35 | HTB 北海道テレビ放送 |
JOHH-TV | 映像340kW /音声86kW |
1968年 11月3日 |
FMラジオ放送
| 周波数 (MHz) |
放送局名 | コールサイン | 空中線 電力 |
ERP | 放送対象地域 | 放送区域 内世帯数 |
開局日 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 80.4 | AIR-G' | JOFU-FM | 5kW | 32kW | 北海道 | 約736,000世帯 | 1982年 9月15日 |
| 82.5 | NORTHWAVE | JOPV-FM | 1993年 8月1日 | ||||
| 85.2 | NHK 札幌FM |
JOIK-FM | 33kW | 石狩・ 空知 (滝川市以南)・ 後志 (黒松内町以外) |
1962年 12月24日 (実用化試験局として) |
備考
送信所設置状況
- NHK札幌放送局はFM放送の送信所建物の隣にデジタルテレビ放送送信施設の建物と鉄塔を別途新設。
- FM放送の送信所はかつてアナログテレビ放送の送信設備も併設していた。現在の局舎はデジタルテレビは2005年、FM放送は2代目の局舎として1991年に完成したものである(1962年の手稲山移転当初に建てられた初代局舎の老朽化に伴う新築移設)。両局舎は渡り廊下で結ばれている。
- 非道新系のSTVとHTBは共同でデジタル用送信施設を新設(アナログは個別で設置)。
- STVのロゴはアナログ・デジタルとも1959年開局時のものを使用。
- HTBのロゴはアナログ・デジタルとも2006年からの現行のものを使用しているが、アナログ送信所では珍しく長方形のダイナミックスクエアも描かれている(手稲山デジタル送信所と他地域の送信所・中継局の大半では現行のものを使用していてもダイナミックスクエアは描かれていない)。手稲山デジタル送信所完成当初は1968年開局当時のロゴが描かれていた。
- 道新系のHBC・UHB・TVhは、個別設置のアナログの施設をそのまま運用。
- HBCデジタルテレビに関しては唯一、局単独で設置(手稲山以外のHBCデジタルテレビ送信所・中継局はすべて他局と共同で設置)。現在の局舎は完成から55年を経過し老朽化が進んでいるため、2012年初頭に現在の送信局舎の隣に新たなデジタル送信局舎が完成し、同年内にデジタル放送の送信設備が移転される予定である。従来の局舎は「HBC」の文字は1956年の完成当初から壁面にアクリル板で表記し続けていたが、新しく完成した局舎では2001年からの正式ロゴを壁面に記されている。
- UHBは民放FMラジオ局のAIR-G'・NORTHWAVEも包含。
デジタルテレビ放送局の名称
- NHK札幌総合:NHKさっぽろデジタルテレビジョン(放送読み上げでは「NHKさっぽろそうごうデジタルテレビジョン」)
- NHK札幌Eテレ:NHKさっぽろきょういくデジタルテレビジョン(放送読み上げは2007年9月30日放送分まで)
- HBC:HBCさっぽろデジタルテレビジョン
- STV:STVさっぽろデジタルテレビジョン
- HTB:HTBテレビデジタルテレビジョン
- UHB:UHBデジタルテレビジョン
- TVh:テレビほっかいどうデジタルテレビジョン
放送エリア
- 常時視聴可能のエリア:石狩振興局・岩見沢市・美唄市・三笠市・砂川市・滝川市・苫小牧市・空知郡(空知総合振興局のみ)・夕張郡・樺戸郡・勇払郡(胆振総合振興局のみ)全域、夕張市・深川市・雨竜郡・小樽市・余市郡・沙流郡・白老郡の一部
- 伝播状況により常時または時々視聴可能のエリア:稚内市・天塩郡・利尻郡・礼文郡・苫前郡・古平郡・積丹郡・虻田郡のそれぞれ一部地域。上川総合振興局北中部・十勝総合振興局はアナログは視聴可能であっても、デジタルは一部地域で視聴不可である(物理チャンネル重複による事情から)。
- FMラジオでは上記のほか、大型FMアンテナ・ブースター併用で、上川総合振興局北部・檜山振興局の一部地域等でも受信できる地域がある。(檜山振興局南部の受信状況は、江差ラジオ中継局参照。)
- 稚内市でも西浜・ノシャップ岬周辺では高性能アンテナやカーラジオを使うことで受信可能(テレビも受信できなくはないが、受信感度が劣化することがある。受信できる場合はTVhを受信可能)。
その他
- 手稲山に最初に送信所を設けたのはHBC。後にNHK札幌放送局は1962年5月27日に(総合テレビのみ。教育テレビ・FMは放送開始当初より手稲山から送信)、STVも1969年1月15日にさっぽろテレビ塔より移転した。
- さっぽろテレビ塔には都心部のFM難聴取対策のため中継局とNHK札幌放送局の予備送信所が設けられている。
- 地上デジタル放送のカバー率は世帯ベースで全道の約48%(開局時)。
- NHKは、道内で独自のネットワークを築いているが、教育テレビでは個別放送局のコールサイン読み上げは行われず、道内7放送局のコールサインを一括して表示している(アナウンスは「NHK教育テレビジョンです」、「NHK教育デジタルテレビジョンです」のみ)。デジタルテレビは札幌局が先行していることもあり、2007年9月30日までは開始・終了時の読み上げが行われていたが、2007年10月に道内他局が放送開始後は、運用コスト削減のため、アナログと同様の方式が取られている。道内主要地域での試験放送での段階では札幌局からの裏送り送出で「NHK教育テレビジョン 試験電波発射中」の文字に札幌局以外の道内6放送局のコールサインを一括で表示した。この表示はデジタル総合テレビでも同様である。
関連項目
外部リンク
- 手稲でみつけた手稲のはなし 15 手稲鉱山~鉱山の泣き笑い
- 手稲石 日本産鉱物図鑑
- 渡辺鉱 日本産鉱物図鑑
- 地上デジタル放送エリア(北海道放送ホームページ)
- デジタルテレビ放送エリア(北海道文化放送ホームページ)
- 国土地理院 地図閲覧システム 2万5千分1地形図名:手稲山 (北東)
