テオ・アンゲロプロス

ギリシャ・アテネ出身の映画監督

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テオ・アンゲロプロスTheo Angelopoulos)ことテオドロス・アンゲロプロスギリシャ語Θόδωρος ΑγγελόπουλοςTheodoros Angelopoulos1935年4月27日 - 2012年1月24日)は、ギリシャアテネ出身の映画監督長回し、360度パン、曇天での撮影の徹底など、頑ななまでに独自のスタイルを貫いた。

テオドロス・アンゲロプロス
Θόδωρος Αγγελόπουλος
Θόδωρος Αγγελόπουλος
2009年
生年月日 (1935-04-27) 1935年4月27日
没年月日 (2012-01-24) 2012年1月24日(76歳没)
出生地 ギリシャの旗 ギリシャ アテネ
死没地 ギリシャの旗 ギリシャ ピレウス
職業 映画監督脚本家
受賞
カンヌ国際映画祭
パルム・ドール
1998年永遠と一日
国際映画批評家連盟賞
1995年ユリシーズの瞳
1984年シテール島への船出
1975年旅芸人の記録
審査員特別グランプリ
1995年ユリシーズの瞳
脚本賞
1984年シテール島への船出
ヴェネツィア国際映画祭
金獅子賞
1980年『アレクサンダー大王
国際評論家賞
1980年『アレクサンダー大王
銀獅子賞
1984年『霧の中の風景
その他の賞
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履歴

アテネ大学を卒業後、兵役を経て、パリソルボンヌ大学に留学。のち退学。その後、パリ高等映画学院に入学するが、教師と対立し放校処分になる。1964年11月に軍部台頭で政情不安定なギリシャに帰国。左翼系日刊紙『ディモクラティキ・アラギ』で映画批評活動を始める。1965年には、ヴァンゲリス・パパタナシューのグループが主演する長編映画『フォルミンクス』に着手するが製作者と衝突して未完に終わる。1967年軍事政権発足後、1968年に映画雑誌『同時代映画』を創刊。同年、短編映画『放送』を発表。1970年に長編第1作『再現』を完成する。

1936年の日々』に続く「現代史三部作」の二番目の作品に当たる『旅芸人の記録』が世界的な評価を受け、現代史三部作の締めくくりである『狩人』でその評価を確実なものとする。現代史三部作は第二次世界大戦を挟んだギリシアの歴史を描いたものだが、トルコからの侵略、ナチスの侵攻、イギリスの進出と圧政、そして大戦後の左右両派による内戦と右派軍事独裁体制、という複雑な歴史を描き、共産主義を一つの理想と捉えたユートピア思想的なものだった。

その後、ギリシャ現代史に関する集大成的な作品と言える『アレクサンダー大王』を製作。だが、世界的な共産主義の退潮と独裁体制の崩壊に伴い「20世紀最大の理想の一つである共産主義」に別れを告げ、「国境」に視点を移す。『シテール島への船出』、『こうのとり、たちずさんで』、『ユリシーズの瞳』といった「国境三部作」は、それをテーマとする。『ユリシーズの瞳』においては、これまで一度もギリシャを出なかった舞台をバルカン半島全体に広げ新境地を開くかに思われた。だが、次作の『永遠と一日』においては、国境を題材の一つにしながらも舞台を再びギリシャに戻すと共に、これまでにない内省的な作品となった。

新しい三部作である、「20世紀三部作」の第1部『エレニの旅』においては、舞台をバルカン半島以外にも広げ、新たなる展開を示した。20世紀三部作は、当初『トリロジア』という題名の1本の長編となる予定であったが、上映時間が膨大になりすぎるため、三部作として製作されることとなったという[1]

第2部『THE DUST OF TIME (第三の翼)』の公開を控えていた。舞台はついにヨーロッパを離れてニューヨークにまで発展する節が言及されていた。

続く第3部『THE OTHER SEA (もう一つの海)』の撮影中だった2012年1月24日、アテネ郊外のトンネル内でオートバイにはねられて頭を強打し、運ばれた先の病院で死亡した[2]。76歳没。

作風

彼の場合、長大な長回しが話題にされる。彼の真骨頂は、思想を如何にして映画表現として実現するかに挑戦し続けたことにある。彼の特徴的な、長回し、同一シークエンス(カット)内における時間の転移、人物のストップモーション的な利用、360度パンクローズアップの不使用、などは、彼のその挑戦と大きく結びつく。

旅芸人の記録』以降、全ての作品で曇天(または降水時)での撮影が徹底されているのも特徴(ただし、『永遠と一日』では例外的に晴天での回想シーンが存在する)。また、『アレクサンダー大王』まで劇中歌以外の音楽がほとんど使用されていなかったが、『シテール島への船出』以降全ての作品でエレニ・カラインドルーが音楽を担当するようになっており、それまでの印象を変えるものとなった。

テーマ、表現手段(手法)共に峻厳である余り難解さや退屈さを指摘されることも少なくない。だが、現代の映画作家の中で、映画に対する挑戦意識と到達した地点がもっとも高い一人である。

ギリシャでは、しばしば「子供が寝付かないで困るときはアンゲロプロスを見せろ」と言う。長回し、少ない台詞などに関して言われる冗談である。

作品

DVD

紀伊国屋書店よりDVDが発売されている。なおDVD-BOXに収録されている作品のうち『テオ・オン・テオ』以外は、現在単品での発売はされていない。

  • 『テオ・アンゲロプロス全集 DVD-BOX I <現代史三部作>』 (『1936年の日々』『旅芸人の記録』『狩人』) 紀伊国屋書店 KKDS-130
  • 『テオ・アンゲロプロス全集 DVD-BOX II <国境三部作>』 (『シテール島への船出』『こうのとり、たちずさんで』『ユリシーズの瞳』) 紀伊国屋書店 KKDS-131
  • 『テオ・アンゲロプロス全集 DVD-BOX III <時空を超える旅>』 (『アレクサンダー大王』『蜂の旅人』『霧の中の風景』) 紀伊国屋書店 KKDS-132
  • 『テオ・アンゲロプロス全集 DVD-BOX IV <永遠の旅>』 (『永遠と一日』『再現』『放送』『テオ・オン・テオ』) 紀伊国屋書店 KKDS-133
  • 『エレニの旅』  紀伊国屋書店 KKDS-261
  • 『それぞれのシネマ 〜カンヌ国際映画祭60回記念製作映画〜』 角川エンタテイメント ACBF-10572
  • 『テオ・オン・テオ』  紀伊国屋書店 KKDS-145 ※ドキュメンタリー、出演

Blu-ray

監督自身による最新HDマスターにて、現在4作品がBlu-rayで発売されている。

脚注

外部リンク