JR東日本HB-E210系気動車

東日本旅客鉄道の一般形気動車

これはこのページの過去の版です。Toshinori baba (会話 | 投稿記録) による 2015年6月24日 (水) 14:35個人設定で未設定ならUTC)時点の版 (機器・制御システム)であり、現在の版とは大きく異なる場合があります。

HB-E210系気動車(HB-E210けいきどうしゃ)は東日本旅客鉄道(JR東日本)が2015年5月から仙台 - 石巻間の「仙石東北ライン」で使用している一般形気動車

JR東日本HB-E210系気動車
HB-E210系気動車C-2編成
(2015年1月28日、陸前山王駅)
基本情報
製造所 総合車両製作所横浜事業所
主要諸元
編成 2両編成
軌間 1,067 mm
最高運転速度 100 km/h
起動加速度 2.3Km/h/sと1.8Km/h/sの両方を切替え可能
減速度(常用) 3.5Km/h/s
編成定員 262名(座席定員90名)
自重 38.4t(HB-E211)
39.4t(HB-E212)
編成重量 78t
最大寸法
(長・幅・高)
19,500×2,950×3,620(mm)
連結面中心間20,000mm
車体 ステンレス
台車 軸梁式ボルスタレス台車
DT75B(動力)/TR260B(付随)
機関 DMF15HZB-G直噴式直列6気筒ディーゼルエンジン
機関出力 331kW (450ps)
主電動機 かご形三相誘導電動機
MT78 (95kW)×2
歯車比 14:99 (7.07)
編成出力 662kW (900ps)
制御装置 C124形主変換装置
コンバータ+VVVFインバータ制御
制動装置 回生・発電ブレーキ併用電気指令式空気ブレーキ(応荷重・滑走・再粘着機能付き)直通予備ブレーキ 抑速ブレーキ
保安装置 ATS-Ps
防護無線EB装置TE装置
テンプレートを表示

概要

東日本大震災により全線で被害を受けた仙石線は、その後の一部区間の高台移設を含んだ復旧工事を進めてきたが、全線において復旧工事がほぼ完了する見込みとなり、2015年5月30日から仙石線の全線運転を再開するとともに、利府町から松島町にかけての東北本線と仙石線の並走区間に新たに設けられた仙石線・東北本線接続線(仙石東北ライン)を経由して仙石線に入線し石巻を結ぶ「仙石東北ライン」の運転を開始することになった。東北本線は交流饋電方式、仙石線は直流饋電方式とそれぞれ電気方式が異なるのと仙石線・東北本線接続線が非電化区間となるため気動車による直通運転となり、ディーゼルハイブリッドシステムを搭載した本車が開発された。

構造

車体

車体構造は新系列電車と同じく車体底部の台枠の一部を除きステンレス材により構成する軽量ステンレス製のワイドボディとなっており、客室扉のレールヒータなどを装備した耐寒耐雪構造としている。側面からの衝撃に対する安全策として、車体の側構体の柱の位置に幕板補強と車体の屋根構体の枕木方向に配置されている骨組みの垂木を合わせることで車体構体に数多くのリンク構造を設け、衝撃荷重を受けた時での車体構体の変形量の抑制を図っている。またハイブリッドシステムを搭載に伴う車体質量増加に対応するため、側窓などの側開口周囲や車体中央部出入口の側梁を補強することで強度や剛性の強化を図っている。前面はE129系E721系をベースとしたFRP製構造となっている。仙台地区の通勤需要に配慮して側扉を押しボタン開閉式の半自動扉機構付き片側3扉としており、客室の床面高さは仙石線ホームの高さ1100mmと東北本線ホームの920mmに対応するため1130mmとしており、客室扉の出入口付近はノンステップとなっている。燃料タンクには線路で使用されるバラストなどが衝突しても損傷が発生しないように下半分に防爆塗料が塗られており、タンクの気抜き管部に燃料漏れ検知センサーを装備して燃料漏れを検知することが可能となっている[1]。車両のデザインは東北本線沿線のシオガマザクラ・仙石線沿線の矢本海浜緑地公園・石巻の日和山公園のサクラの名所をイメージした桜色と仙石線のラインカラーの青色を基調とし、この2色の四角形が重なることで仙台エリアと石巻エリアをつなぐことを表現している。また、重なる部分にはJR東日本のコーポレーションカラーのグリーンを配置しており、車体の前面の向かって右下と後位側の4位側の側面には「HYBRID TRAIN」の文字が描かれている。

車内

車内の色合いはE233系と同様としており、客室の座席はE721系と同じくセミクロスシートの配置となっている。ハイブリッドシステムなどの機器を内蔵した機器室が車内の山側に設置されているため、本来はボックスシートが配置されている場所が機器室やロングシートとなっている。貫通引戸は、自然閉機能とブレーキ機能を持たせた水平式戸閉装置としている。客室扉に半自動機能が付いているため、車外と車内に設置された押しボタンを設けて乗客がドアを開閉できるようになっている。室内照明にはLED照明を採用しており、機器室の壁には本車のハイブリッドシステムの動作状況を表示する液晶式のハイブリッドモニタが設置されている。また仙台方のHB-E211形後位側の端部には車椅子スペースおよびベビーカースペースと車椅子対応の洋式便所が設置されており、トイレ内には、炎検知装置と非常通話装置を設置している。また、トイレ内の排気はE233系と同じ床下からの排気となっている。

機器・制御システム

 
主回路の見取り図

採用されているハイブリッドシステムはキハE200系やHB-E300系と同じく、エンジンの動力は発電機を回転させる電力用として使用し、発電機からの電力と搭載された蓄電池の電力と組合わせてモーターを駆動するシリーズハイブリッド方式と呼ばれるシステムで、電車の技術を最大限に使用している。システムを構成する機器類は、エンジンとそれに直結した発電機を持つエンジン発電機・主回路用蓄電池・主変換装置・輪軸駆動用のモーターで構成されており、力行時には主回路用蓄電池からの電力または主回路用蓄電池とエンジン発電機からの両方の電力を使用して、主変換装置に内蔵されたVVVFインバータ装置により、VVVFインバータ制御でモーター(誘導電動機)を駆動させる。制動時には回生ブレーキによりモーターから発生した電力をVVVFインバータ装置を介して主回路用蓄電池に充電する[2]。またエンジン発電機の起動または停止は主回路用蓄電池の充電状態により自動的に行われている。またキハE200系やHB-E300系と同様の「エネルギー管理制御システム」を搭載しており、各装置からの情報を集約して最適な動作の指令を各装置に指示することで、エンジン発電機と最適な蓄電池の充放電の制御を行なっている。車両の床下には主変換装置・エンジン発電機・エンジンラジエーター・電動空気圧縮機・制御用蓄電池箱・ブレーキ制御装置などの機器を搭載しており、HB-E300系と同じくエンジン冷却性能向上のためエンジンラジエーターの大形化や後述する静止形インバータの容量増加による主変換装置の大形化が図られている。そのため、車両の屋上に集中式冷房装置を挟んで前位に主回路用蓄電池を2個、後位に元空気だめの一部が搭載されている。(HB-E212形では前後逆)

エンジンはDMF15HZB-G形直噴式直列6気筒横形ディーゼルエンジン、定格出力331kw(450PS)定格回転数2100rpm×1、発電機にDM113形交流発電機、出力270KW×1を組合わせている。エンジンは気筒内への燃料噴射方式を電子制御としたコモンレール式を採用して、排気中の窒素酸化物(NOx)を約60%低減させている。主回路用蓄電池には出力密度が高く、軽量高出力のMB3形リチウムイオン電池が使用されており、で1両あたりの容量は15.2KWhで電圧は直流680Vである。また蓄電池に不具合が発生した場合を考慮して、2群構成として冗長性を持たせている。主制御装置にはC124形主変換装置を搭載しており、補機類とサービス電源用の電源装置である静止形インバータ(SIV)と一体構成となっている。なお補助電源装置の容量は70kVAで三相交流400Vを出力する。また各車には、補助電源で作動するMH3125-C600N形電動空気圧縮機(CP)を搭載している。

主電動機はMT78形誘導電動機(1時間定格出力95kw)を1両につき2個動力台車に装備している。1車両2台車のうち1台車のみ電動台車とし、もう一方の1台車を付随台車とした0.5M車構成としている。

車両が停車→発車→加速→惰行→制動→停車するまでの車両の状態は以下の通りになる。

停車中・惰行中
エンジン発電機はアイドリングストップを行い(起動させることも可能)、車両の補機類とサービス用の電源は主回路用蓄電池からの電力が補助電源装置に送られて、そこから電力が送られる。
力行時(低速時)
主回路用蓄電池からの電力のみでモーターを駆動させる。15km/h程度からエンジン発電機を起動させて、主回路用蓄電池とエンジンからの電力を併用しながらモーターを駆動させる。
力行時 (中高速時)
エンジン発電機を起動させ、主回路用蓄電池とエンジンからの電力を併用しながらモーターを駆動させる。惰行中からの場合はエンジン発電機を起動させる。また走行負荷の状態に応じて主回路用蓄電池の充放電を行う。
制動時(抑速ブレーキ時も含む)
エンジン発電機を停止させ、回生ブレーキによりモーターから発生した電力は主回路用蓄電池に充電されるが、一部は補助電源装置に送られる。

台車

ボルスタレス台車を採用しており、軸箱支持装置は軸梁式としている。HB-E211形の前位側とHB-E212形の後位側には動力台車のDT75BをHB-E211形の後位側とHB-E212形の前位側には付随台車のTR260Bを使用している。

乗務員室

E721系と同じく半室構造となっており、非貫通時においては、引戸により運転室と客室との間を完全に仕切ることができる。運転台は左側に主幹制御器が配置されており左手操作式のワンハンドルマスコンである。その周囲にはリセットスイッチ・システム停止・定速スイッチが取付けられており、右手手掛け内には勾配起動スイッチが取付けられている。また、正面にはモニタ装置が内蔵されている。

保安装置

統合形ATS車上装置(ATS-Ps形)を編成に1台搭載しており、その他にデジタル列車無線(3形)、防護無線、EB・TE装置を備えている。また、将来においてATS-P設置区間でも入線できるようにATS-P形車上子の取付準備工事を行っている。 またE233系等で導入された移動禁止システムも新製時から装備している。[3]

運用

2015年1月に第1陣となるC-1とC-2編成が総合車両製作所横浜事業所を出場している[4]。2015年3月までに2両編成8本が出揃い、小牛田運輸区に配置された[5]。2015年5月30日から仙台-石巻間の「仙台東北ライン」と、仙台への送り込みを兼ねた東北本線普通列車の仙台-小牛田間で運用を開始した。

形式

HB-E211
仙台方の先頭車。後位側に身障者対応トイレと車椅子スペースを備える。
HB-E212
石巻方の先頭車。
編成表
編成番号
← 仙台
石巻 →
C-1 - C-8 形式 HB-E211 HB-E212
車両重量(t) 39.6 38.4

脚注

  1. ^ 燃料タンクから燃料が漏れるとそれに見合う量の空気量が気抜き管を介して燃料タンクに流入することを利用しており、ある一定の値の空気流入量を超えた場合、それを検知して燃料漏れと判断することで早期の燃料漏れに対応することができる。
  2. ^ 主変換装置内はコンバータ部とVVVFインバータ部に分かれており、その間に主回路用蓄電池が接続されている。力行時はDM113形交流発電機からの三相交流の電力をコンバータで直流の電力に変換した後に主回路用蓄電池からの直流の電力を加えてVVVFインバータで三相交流に変換して誘導電動機を駆動させ、制動時は誘導電動機からの三相交流をVVVFインバータで直流の電力に変換した後に主回路用蓄電池に充電される仕組みとなっている。また、補助電源装置の静止形インバータ(SIV)へ送る電力は、停止時や低加速での力行時では主回路用蓄電池から、中高速時での力行時には主回路用蓄電池からの電力の他に発電機からの電力の一部が送られる、制動時は回生ブレーキにより発生した電力が主回路用蓄電池に充電するために送られる際にその一部が送られる。
  3. ^ http://www.ttech.co.jp/business/product-development/pdf/data-2.pdf
  4. ^ JR仙石東北ライン用新型車両 HB-E210系出場・甲種輸送 鉄道ニュース部(2015年1月13日)
  5. ^ 交友社鉄道ファン』2015年7月号「JR旅客会社の車両配置表」

参考文献

  • 平成27年5月30日、「仙石東北ライン」にデビュー! HB-E210系ディーゼルハイブリッド車両 『鉄道ファン』2015年4月号、交友社、2015年、p.62 - p.67。
  • 「仙石東北ライン」、東北本線、仙石線にデビュー! 「HB-E210系一般形ハイブリッド車両」 『鉄道ファン』2015年5月号、交友社、2015年、p.48 - p.54。

関連項目