ポモルニク型エアクッション揚陸艦
ズーブル型高速エアクッション揚陸艦(Zubr class air cushion landing craft、Проект 1232.2)は、ソ連で建造された高速エアクッション揚陸艦である。ロシア側名称は、プロイェクト1232.2級中型揚陸艦。NATOコードネームは、ポモルニク(Pomornik)。 エアクッション揚陸艦艇としては世界最大で150tのペイロードを持ち、1隻に戦車なら3両、歩兵戦闘車なら8両を搭載することができる。LCACのように母船である揚陸艦から海浜に車両等を運搬する装備であるエアクッション揚陸艇ではなく、洋上を高速自力航行してLSTのようにビーチングして揚陸を行うエアクッション揚陸艦である。
概要と運用
本型の特徴はその作戦速度と重武装にある。本型の最高速度は63kt(約113km/h)に達し、直接ビーチングして一挙に揚陸できる。出港から揚陸・展開までが空輸に準じる速度で完了するので、その速度を生かした迅速な侵攻が可能である。
また、予想される対艦ミサイル等の攻撃に対しては自衛用のAK-630 30mmCIWS 2基、イグラ-M地対空ミサイル四連装発射機 4基があり、敵残存火点からの砲撃に対しては、多連装ロケット発射装置による概略位置への面制圧で、着上陸部隊に火力支援を与えることもできる。
こうした特性をズーブル型に与えた旧東側の運用構想は、西側には類例の無いものである。 ズーブル型は米揚陸艦隊のような遠征を目指したものではない。実際、その進出能力は300海里(540km)程度であり、LCAC同様、海象(シーステート)にも制約を受ける。しかし、米露の地理条件の相違により、本型の運用が想定されているのは内海や近距離での作戦と言った条件下であり、そうした条件下では時速36kmのドック型揚陸艦の約3倍の時速113kmという高速で航行できる。 単に迅速な奇襲性のみを追及するのであれば空挺降下にまさるものはない。しかし、第2次大戦のいくつかの作戦で教訓が得られている通り、空挺部隊は一般に軽装備にとどまらざるを得ず、戦闘能力とりわけ火力と装甲防御を欠くために、重装備を備えた敵防御部隊に対しては脆弱にならざるを得ない。 それに対して本型は、空挺よりはやや遅いものの、重いが強力な第三世代MBTが運べるのである。本型6隻でMBT18両の戦車中隊ないし、MBT12両歩兵戦闘車16両からなる機甲中隊を空挺降下にわずかに遅れて投入可能である。
そしてそのことにより、味方主力部隊が揚陸・合流するまで、空挺部隊より遥かに強力な重装備によって、敵の猛反撃に耐えて要衝を占拠維持することを期待されるのである。また、空挺と組み合わせて、揚陸艦隊本隊に先立つ先遣部隊として味方空挺部隊降下の1-2時間後に救援合流する事もできるし、敵の背後に機甲中隊を揚陸する事も可能である。
本型はホバークラフトと空挺の複合による電撃的な着上陸という東側独自の揚陸ドクトリンを反映した装備であると言えよう。
主要緒元
同型艦
全艦、黒海艦隊所属。
- MDK-95
- MDK-97
- MDK-103
- MDK-104
- MDK-106
- MDK-108
- MDK-109
- MDK-116
- MDK-117
- MDK-118
- L180 ケファリニア
- L181 イタキ
- L182 ケルキラ
- L183 ザキントス
- 同型艦6隻