姨捨駅
姨捨駅(おばすてえき)は、長野県千曲市大字八幡姨捨にある、東日本旅客鉄道(JR東日本)篠ノ井線の駅である。
姨捨駅 | |
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![]() 駅舎(2022年4月) | |
おばすて Obasute | |
◄冠着 (5.9 km) (8.7 km) 稲荷山*► | |
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所在地 | 長野県千曲市大字八幡姨捨4947 |
所属事業者 | 東日本旅客鉄道(JR東日本) |
所属路線 | ■篠ノ井線 |
キロ程 | 12.5 km(篠ノ井起点) |
電報略号 | ステ |
駅構造 | 地上駅 |
ホーム | 2面2線[1] |
乗車人員 -統計年度- |
43人/日(降車客含まず) -2020年- |
開業年月日 | 1900年(明治33年)11月1日[2] |
備考 |
無人駅(乗車駅証明書発行機 有) スイッチバック駅 標高:551.2m[1]** |
* この間に桑ノ原信号場有り(当駅から4.2km先)。 ** 駅観光案内標では海抜547m。 |
概要
標高551mの山の中腹に位置し、全国でも数少ないスイッチバック方式を擁する駅である。冠着山に近いが、その山頂は駅舎及びホームからは山襞や樹木に隠れて望見はできない。
当駅のホームから見下ろす善光寺平は、日本三大車窓の一つと数えられる。他の二つは、根室本線の狩勝峠(現在はルート変更により廃止)と、肥薩線の矢岳駅である[1]。長野県下にある国指定の名勝5か所のうちの一つでもある「田毎の月」(長楽寺持田である四十八枚田に映る月)が有名[1]。標高が高く眺望の良い手近な場所に当駅が設置されたことにより、観月と風景を楽しむ周辺の観光エリアが広がった。
日本経済新聞社の2007年アンケート「足を延ばして訪れて見たい駅」の全国第2位にランクされた(1位はJR九州門司港駅)。また2008年9月6日号の『日本経済新聞』朝刊別刷り「日経プラス1」紙面において、全国に数ある月の名所の中から、当駅周辺が第1位の「お月見ポイント」に選ばれた[3]。『日経おとなのOFF』では「日本三大名月の里」の1つに数えられている[4]。
2012年(平成24年)8月1日には「日本夜景遺産(自然夜景遺産)」に認定された[5]。後述のナイトビュー姨捨も2015年(平成27年)7月27日に「日本夜景遺産(施設型夜景遺産)」に認定されている[6][7][報道 1]。
当駅は無人駅ではあるが、こうした風景の良さから旅行者がしばしば立ち寄り、週末には周辺住民有志が来訪者にお茶を振る舞うなどしてきた。後述のように「TRAIN SUITE 四季島」が停車するようになってからは知名度が上がり、住民有志が販売を請け負う記念きっぷの販売枚数が2017年は約3600枚と、2016年より1100枚程度増えたという[新聞 1](「駅構造」の項も参照)。
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善光寺平-姨捨駅から
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ホームにあるビューポイントの表示 ホームより上の写真のような善光寺平の景色を楽しむことができる(2007年9月)
歴史
- 1900年(明治33年)11月1日:国鉄篠ノ井線 篠ノ井駅 - 西条駅間の開通と同時に開業[2][1]。旅客・貨物の取扱を開始[2]。
- 1934年(昭和9年):駅舎改築[1]。
- 1960年(昭和35年)6月1日:貨物の取扱を廃止[2]。
- 1972年(昭和47年)3月31日:荷物扱い廃止[8]。無人化[9]。
- 1987年(昭和62年)4月1日:国鉄分割民営化により、東日本旅客鉄道の駅となる[2]。
- 2010年(平成22年)
- 2011年(平成23年)7月24日:駅舎の外装および跨線橋のリニューアルに伴い、記念式典を開催[報道 3]。
- 2012年(平成24年)
- 2016年(平成28年)5月10日:クルーズトレイン「TRAIN SUITE 四季島」の運行開始に合わせて、駅整備をすることを発表。概要は上りホーム待合室のリニューアルと「TRAIN SUITE 四季島」の車両に合わせたホームの嵩上となっている[報道 5]。
駅構造
相対式ホーム2面2線を有するスイッチバック方式の地上駅である[1]。駅付近の本線は、稲荷山付近から冠着トンネルまで最大25 ‰の上り勾配である[1]。また、スイッチバックの引き上げ線内も奥へ向かって25 ‰の上り勾配になっていて、水平になっているのは駅の着発線付近のみである。かつては駅の着発線のさらに奥に66.7 ‰の急勾配が設置されており、ブレーキが効かずにオーバーランした車両を受け止める避難線となっていた。この線路の跡地は、姨捨変電所と駅利用者のための駐車場になっている[10]。
本線上にホームは設置されておらず、通過列車は当駅のホームには入線しない[1]。当駅に停車する場合、上り列車は急な上り勾配が続く本線から左側に分岐して水平に行き止まりの引き上げ線に入り、そこで進行方向を後ろ向きに変え本線を横切ってホームに入線する。発車時は再び進行方向を前向きに変え、本線へ進む。下り列車は逆に本線から左側に分岐して水平のホームに入線し、発車時は後進し本線を横切って引き上げ線に入った後に改めて前進する。運転士は後進の際、運転台を移動せずそのまま操作を行う(列車によって異なる場合あり)。
駅舎は大正デモクラシーの時代の設計であり1934年(昭和9年)に完成したものである。木造で約100平方メートルある[11][リンク切れ]。古くは貨物や小荷物も取り扱っていたが、1972年(昭和47年)3月に国鉄の駅としては無人駅となった。無人化後も、平成初めごろまでは構内にキヨスクがあり、簡易委託として硬券の乗車券が販売されていた。しかし店主の引退に伴い売店が閉店となり、完全に無人駅となった。駅の管理は長野駅によって行われている。乗車駅証明書発行機が設置されている。
なお、スイッチバック方式の駅として設置された目的に「蒸気機関車への給水」があったが、1970年(昭和45年)2月に蒸気機関車の運行が行われなくなったため、現在では給水設備は撤去されている。この区間の電化は1973年(昭和48年)3月28日であり、蒸気機関車廃止から電化までの間は気動車(ディーゼル車)による運行がされた。
2010年に駅舎のリニューアル工事が行われ、同年7月24日に記念式典が行われた[報道 2]。このリニューアルでは、1934年当時の様子の復元が行われ、手小荷物扱い窓口が再現され、内壁や天井、建具などの修繕が行われた[報道 2][新聞 4]。さらに9月7日には2番線ホームに半径2.5mの展望台が設置された[新聞 5]。その後、2011年7月24日に駅舎の外装や跨線橋がリニューアルされ、記念式典が行われた[報道 3]。また、4月頃から11月頃までの休日は地元の有志の方々により「くつろぎの駅」として、駅事務室の開放やお茶のおもてなしなどが行われる[報道 6][12][要文献特定詳細情報]。「くつろぎの駅」開設期間を通して、2018年までは硬券の記念入場券を買うことができたが[報道 6]、2019年からはこれに代わって「来駅記念券」が販売されている[新聞 6]。出札業務は行われていない。
さらに、2017年5月から運行開始されたクルーズトレイン「TRAIN SUITE 四季島」の停車に合わせ、ホーム上に新たに展望ラウンジとバーが設置された[報道 5]。
のりば
番線 | 路線 | 方向 | 行先 |
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1 | ■篠ノ井線 | 下り | 長野方面 |
2 | 上り | 松本方面 |
(出典:JR東日本:駅構内図)
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駅舎内(2022年4月)
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ホーム(2022年4月)
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ホーム(左)と本線(右)(2010年10月)
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車止め(2022年4月)
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左奥1線がスイッチバック用待避線、手前右2線が駅構内へ向かう線路だが、当駅に停車しない特急列車等はスイッチバックを行わずに、手前の長野側と奥方向の松本側の間の本線を通過する
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リニューアル前の駅舎(2006年9月)
利用状況
JR東日本によると、2020年度(令和2年度)の1日平均乗車人員は43人である[利用客数 1]。無人駅ではあるものの、不定期で窓口営業が行われているため集計対象となっている。
2014年度(平成26年度)以降の推移は以下のとおりである。
乗車人員推移 | ||
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年度 | 1日平均 乗車人員 |
出典 |
2014年(平成26年) | 60 | [利用客数 2] |
2015年(平成27年) | 61 | [利用客数 3] |
2016年(平成28年) | 56 | [利用客数 4] |
2017年(平成29年) | 56 | [利用客数 5] |
2018年(平成30年) | 64 | [利用客数 6] |
2019年(令和元年) | 53 | [利用客数 7] |
2020年(令和 | 2年)43 | [利用客数 1] |
駅周辺
夜景100選に選ばれている長野自動車道の姨捨サービスエリアまでは当駅から直線距離約200 m(徒歩だと1 km)で、ほぼ同じ眺望を共有する。
棚田の周辺には小規模ながら古墳が散在する。駅南側の踏切を渡って左側に入った小古墳上からの景観は穴場と言える。眺望ポイントは駅からのほか、下記の地点が標高差や方位、時代背景、環境変化と共に推奨されて来た。
その他
- 休日に限らず駅周辺からの写真を撮る人が多い。列車と雪景色、桜、新緑、田植、稲刈、紅葉、夜景など季節毎の景観を撮りこんでの題材が得られ人気がある。また元日早朝には初日の出を期待する人が20 - 30人を数えることがある。
- 近年は姨捨発着の臨時列車の設定が盛んで、2008年5月には豊田車両センターの201系四季彩号を使用した「姨捨フォトトレイン四季彩号」[報道 7]、2009年5月には高崎車両センターの旧形客車を使用した「快速ナイトビュー更科号」が(前年にも「更科ロマン号」として設定実績あり)設定されている。また、現在は「ナイトビュー姨捨」が土休日を中心に運行されている。また、新たに運行された「TRAIN SUITE 四季島」も当駅に停車する。
- 松本 - 篠ノ井間で保安装置変更が行われ、従来のATS-SNからATS-P型に更新されたが姨捨駅構内はATS-SN型のまま残置され、保安装置の「P」→「S」及び「S」→「P」への切り替えを示す標識が駅手前の本線上や折り返し線に取り付けられている。
隣の駅
脚注
記事本文
- ^ a b c d e f g h i j k l 信濃毎日新聞社出版部『長野県鉄道全駅 増補改訂版』信濃毎日新聞社、2011年7月24日、88-89頁。ISBN 9784784071647。
- ^ a b c d e 石野哲(編)『停車場変遷大事典 国鉄・JR編 Ⅱ』JTB、1998年、206-207頁。ISBN 978-4-533-02980-6。
- ^ 卯月盛夫「日本三景「松島」(宮城県)の自然景観と地域の生活文化を生かした新たな国際観光の創世に関する研究」(PDF)『研究助成実施報告書』、公益財団法人大林財団、2013年3月、15頁、2017年3月16日閲覧。
- ^ 日経おとなのOFF 編『日本人なら知っておきたい 「和」の基礎知識』日経BP社〈日経ホームマガジン 日経おとなのOFF〉、2008年。ISBN 9784822260095。
- ^ a b “2012年度「日本夜景遺産」新規認定地発表!”. 日本夜景遺産 (2012年8月1日). 2012年8月14日時点のオリジナルよりアーカイブ。2016年5月26日閲覧。
- ^ “2015年度「日本夜景遺産」新規認定地発表!”. 日本夜景遺産 (2015年7月27日). 2015年9月7日時点のオリジナルよりアーカイブ。2016年5月26日閲覧。
- ^ 恵 知仁 (2015年7月31日). “快速列車「ナイトビュー姨捨」が「日本夜景遺産」に”. 乗りものニュース (メディア・ヴァーグ). オリジナルの2015年8月2日時点におけるアーカイブ。 2016年5月26日閲覧。
- ^ “日本国有鉄道公示第691号”. 官報. (1972年3月31日)
- ^ 「通報 ●篠ノ井線冠着駅ほか1駅の駅員無配置について(旅客局)」『鉄道公報』日本国有鉄道総裁室文書課、1972年3月31日、10面。
- ^ 小西純一「篠ノ井線の歴史と技術」『鉄道ピクトリアル』2009年1月(No.813) pp.35 - 40 電気車研究会
- ^ “棚田眺める展望台も整備 姨捨駅で姨捨駅で改装工事”. 信州Live on (2010年6月17日). 2010年8月11日閲覧。
- ^ 長野県鉄道全駅増補改訂版(信濃毎日新聞社)
- ^ 千曲市観光協会 姨捨駅
- ^ “姨捨駅”. 東日本旅客鉄道・長野支社. 2016年5月26日閲覧。(駅の小さな物語)
報道発表資料
- ^ “快速ナイトビュー姨捨が日本を代表する夜景として「日本夜景遺産」に認定されました” (PDF) (Press release). 東日本旅客鉄道長野支社. 30 July 2015. 2015年8月6日時点のオリジナル (PDF)よりアーカイブ. 2016年5月26日閲覧.
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: CS1メンテナンス: 先頭の0を省略したymd形式の日付 (カテゴリ) - ^ a b c “篠ノ井線 姨捨駅 駅舎リニューアル記念セレモニー開催!” (PDF) (Press release). 東日本旅客鉄道長野支社. 9 July 2010. 2020年5月18日時点のオリジナル (PDF)よりアーカイブ. 2020年5月18日閲覧.
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の日付が異なります。(もしかして:2020年5月17日) (説明) - ^ a b “篠ノ井線 姨捨駅 駅舎リニューアル記念セレモニーを開催します!” (PDF) (Press release). 東日本旅客鉄道長野支社. 12 July 2011. 2020年5月18日時点のオリジナル (PDF)よりアーカイブ. 2020年5月18日閲覧.
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- ^ a b “「TRAIN SUITE 四季島」の運行開始に合わせて、姨捨駅に夜景・眺望を楽しむための施設を整備します。” (PDF) (Press release). 東日本旅客鉄道長野支社. 10 May 2016. 2020年5月18日時点のオリジナル (PDF)よりアーカイブ. 2016年5月12日閲覧.
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の日付が異なります。(もしかして:2020年5月17日) (説明) - ^ a b “2013年「姨捨駅」営業日のお知らせ” (PDF) (Press release). 東日本旅客鉄道長野支社. 25 March 2013. 2013年6月26日時点のオリジナル (PDF)よりアーカイブ. 2013年8月30日閲覧.
- ^ “姨捨フォトトレイン四季彩号運転” (PDF) (Press release). 東日本旅客鉄道長野支社. 19 May 2008. 2020年12月12日時点のオリジナル (PDF)よりアーカイブ. 2020年12月13日閲覧.
新聞記事
- ^ 「四季島 沿線ホクホク/運行1年/山形 カーペット人気■無人駅 知名度アップ」『読売新聞』東京夕刊2018年4月28日(社会面トップ)
- ^ “千曲の姨捨駅舎、改装終える 明治の開業当時の姿イメージ 休日開放へ”. 信濃毎日新聞 (信濃毎日新聞社): p. 34(朝刊). (2010年7月25日)
- ^ “千曲のJR姨捨駅に展望台新設”. 信濃毎日新聞 (信濃毎日新聞社): p. 27(朝刊). (2010年9月8日)
- ^ 『交通新聞』2010年7月27日
- ^ “JR姨捨駅に展望台新設 日本三大車窓の一つ”. 信濃毎日新聞(信越観光ナビ). (2010年9月8日). オリジナルの2010年9月12日時点におけるアーカイブ。 2016年5月12日閲覧。
- ^ “長野)姨捨駅で記念入場券に代わる来駅記念券 千曲市”. 朝日新聞. (2019年5月11日). オリジナルの2020年12月12日時点におけるアーカイブ。 2020年12月13日閲覧。
利用状況
- ^ a b “各駅の乗車人員(2020年度)”. 東日本旅客鉄道. 2021年7月11日閲覧。
- ^ “各駅の乗車人員(2014年度)”. 東日本旅客鉄道. 2019年3月26日閲覧。
- ^ “各駅の乗車人員(2015年度)”. 東日本旅客鉄道. 2019年3月26日閲覧。
- ^ “各駅の乗車人員(2016年度)”. 東日本旅客鉄道. 2019年3月26日閲覧。
- ^ “各駅の乗車人員(2017年度)”. 東日本旅客鉄道. 2019年3月26日閲覧。
- ^ “各駅の乗車人員(2018年度)”. 東日本旅客鉄道. 2019年7月11日閲覧。
- ^ “各駅の乗車人員(2019年度)”. 東日本旅客鉄道. 2020年7月13日閲覧。
関連項目
外部リンク
- 駅の情報(姨捨駅):JR東日本
- 動画で見るニッポンみちしる 姨捨駅 - NHKアーカイブス(改修前の駅舎の映像)