小田急3000形電車 (2代)

小田急電鉄の通勤電車(2002-)

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3000形電車(3000がたでんしゃ)は、2002年平成14年)2月10日に営業運転を開始した小田急電鉄通勤形電車

小田急3000形1次車(3251F)(新百合ヶ丘駅にて2004年7月19日撮影)
小田急3000形4次車(3655F)(向ヶ丘遊園駅付近にて2005年9月撮影)

マイナーチェンジを繰り返したため、同一形式ながらスペック/編成など数々のバリエーションが存在する。

概要

環境配慮、バリアフリー、快適性の向上、安全・正確な運行などを目指して新たに開発した車両で、開発時点での最新技術を積極的に採り入れたものとなった。

車体構造

軽量ステンレス鋼の構体を採用し、6連の編成単位での車両重量はひと世代前のステンレス製の1000形の86%、鋼鉄製の8000形の82%と軽量化が図られているが、その要因は車体以外にもある。さらに2600形以来小田急通勤車の特長であった広い車幅(約2,900mm)をやめて、一般的な2,866mmの一般的な通勤電車サイズとした。このため車体側面の裾絞りがなくなり、垂直・平坦な側面形状になった。1・2次車(3251F~3262F)に関しては車体最下部に若干裾絞りがある。

先頭部は東京地下鉄千代田線への乗り入れを考慮していない事もあって、これまで同社の通勤車両に設置されていた非常用貫通ドアが廃止され、フラットな形状となった。加えて1000形や2000形と異なり、FRPから鋼鉄による造形に改め、素材のリサイクル率を向上させている。

バリアフリーのために、出入口のホームとの段差を軽減する目的で車体の床の高さを30mm下げると共に、日本人の体格向上に合わせてドアの高さを1,870mmに拡大した。

通勤電車として標準的な20m片側4ヶ所の両開きドア(引き戸)を持つ。

製造時期による構成の差異

1次車

製造メーカー 日本車輌製造:3251F~3254F

  • 2000形と同様に先頭車最前部を除き1.6m幅ドア(ワイドドア)、○形つり革。小田急の通勤形電車で初めて左手ワンハンドルマスコンとシングルアーム式パンタグラフを採用した。側面のLED式行先表示器は、“湘南急行”(→快速急行)のみ種別と行先を交互に表示している他は、種別と行先を同時に表示している。

2次車

製造メーカー 東急車輛製造:3255F~3258F

  • これ以降、全扉が一般的な1.3m幅に変更された。これに伴い1次車で採用された戸袋窓+狭幅側窓の配置も一般的な広幅の側窓のみの配置となったため、JR・私鉄標準型側面スタイルとなった。また、ワンハンドルマスコンの形状の改良と、つり革が△形に変わった。

製造メーカー 川崎重工業:3259F~3262F

  • 前者に比べて側面LED式行先表示器の寸法が上下左右共に拡大された。これにより“湘南急行”(→快速急行)と行先の同一表示が可能になった。

3次車

製造メーカー 日本車輌製造:3263F~3266F・3651F~3653F

  • この車両よりTIOSを搭載した。変更点としては制御装置が1C6Mから1C4M(1つの制御装置でモーター4個を制御。3400形は1群、3200・3600・3800形は2群)方式に、モーター出力を180kWから190kWに向上させ、歯数比を7.07から6.06に低減する事によりモーター回転数を抑えた。さらにドアエンジンと前面スカートは隙間が少ないものになった。加えて車内の車両番号表記プレートの書体はオリジナルから新ゴに変更した。
  • 最初に落成した3263Fは試験として防音カバーが取り付けられ(後に撤去→M台車のみ取り付け)、後から落成した編成についても取り付け準備(4次車以降も)が行われた。

4次車

製造メーカー 東急車輛製造:3267F・3268F・3654F~3657F

5次車

製造メーカー 川崎重工業:3269F~3272F・3658F・3659F

  • この車両より車内表示器(LCD)を各扉上に設置した。このうち3658Fと3659Fはワンハンドルマスコンの形状も変更した。

6次車

製造メーカー 日本車輌製造: 3273F~3275F・3660F~3663F

  • 5次車とほぼ同仕様で、優先席にスタンションポールを設置すると共に、LCDモニターの設置位置を路線図枠と下辺が揃うようにした。

7次車

製造メーカー 日本車輌製造: 3276F~3279F・3664F・3665F

  • 正面及び側面行先表示器にフルカラーLED式を採用した。東急5050系などと同様に行先部分は白色LEDを使用していると誤解されがちであるが、実際には種別部分と行先部分は分かれておらず、行先部分はフルカラーLEDの白のみで表示している。

8次車

製造メーカー 川崎重工業: 3280F~

  • 車両端部の窓が開閉可能となっている。また前面スカートの点検用蓋が未設置である。

搭載機器

電動機制御三菱電機IPM-IGBT素子を使用した2レベルVVVFインバータ制御方式を採用した。この制御装置は停止寸前(0.7km/h)まで電力回生可能な純電気ブレーキシステムを持つ。ブレーキ制御方式は電気指令方式であるが、電磁直通ブレーキである従来車両と併結運転を行うため、ブレーキ読み替え装置を搭載し、電気指令/空気指令間のインターフェースを取っている。

付属機器も、往復運動のない空気圧縮機、SIV(静止型インバータ)方式の補助電源装置、滑走防止制御装置、シングルアーム式パンタグラフなど、開発時の最新技術を採用している。冷房装置は、これまでの同社車両で採用された4~5台搭載する集約分散方式から1台のみの集中方式に変更するとともに、低騒音化を図っている。

電気連結器は6両編成の新宿寄り先頭車のみ装備する。従来形式の6両編成では小田原寄り先頭車にも装備していたが、通常の運用において使用しないため、3000形では装備していない。

車内放送装置には自動音量調整機能付きマイク放送装置の他、自動放送を採用した。当初他形式と併結する際には使用停止としていたが、その後この場合でも自動放送を使用するようになり、併結した4000形以降の他形式編成についても自動放送を可能としている。自動放送は当初日本語のみだったが、その後英語放送を追加した。

車内設備

座席は標準的なバケットタイプのロングシートを採用している。1編成あたり2ヶ所に車いす利用者用の専用乗車スペースを設置するが、この部分は折り畳み方式の座席になっており、通常は座席として使用できる。

その他、優先席付近では網棚とつり革の位置を下げ、7人掛け座席に定員着席促進を兼ねた握り棒を設置するなどの配慮を行っている。前述したが、ドア上部には1~3次車はLED表示器を、4・5次車はLCDモニターをそれぞれ設置している。但し4次車では千鳥配置のため、ドア2ヶ所あたり1ヶ所に設置する。

編成

6連

1・2次車(3251F~3262F)は4M2T(4両が電動車、2両が付随車)編成であるが、電動車2両(小田原側から数えて2・4号車)は片方の台車のみ電動機を装備するため、実質的なMT比は1000形や2000形と同一の1:1となっている。3次車(3263F)以降は同3号車を付随車、2号車及び4・5号車を通常の2台車駆動の電動車とした3M3Tの組成に変更している。

8連

3次車(3651F)以降は中央に付随車2両を連結した4M4T編成となっている。

編成図

←小田原                  新宿→
6連(3251F~3262F)
1号車 2号車 3号車 4号車 5号車 6号車
3550 3500 3400 3300 3200 3250
6連(3263F~)
1号車 2号車 3号車 4号車 5号車 6号車
3450 3400 3350 3300 3200 3250
8連
1号車 2号車 3号車 4号車 5号車 6号車 7号車 8号車
3950 3900 3800 3850 3750 3700 3600 3650

在籍数

2007年1月24日現在、以下の編成が在籍する。2600形・4000形・5000形9000形を順次置き換えているので、小田急通勤車各形式の中では最も車両数が多い。

  • 6両編成・・・32本(192両)
  • 8両編成・・・15本(120両)

その他

 
小田急3000形防音カバー試験装着車両(3263F)(向ヶ丘遊園駅にて2004年8月29日撮影)
  • 最初に投入された車両は先頭車の前面の運転台窓下部の帯が他の小田急車両と同じ青色だったが、数年後に細帯に変更された。途中から増備された車両も落成時から青色の細帯を施している。
  • 3次車で最初に落成した3263Fは、試験的に車体下部の床下機器を覆う防音カバーを装着する。この編成はカバーと車体のデザインがアンバランスで、異様な外観となっているのが特徴である。当初は全体に装着していたが、その後モーターを装備する台車部分のみの装着とされた。「鉄道車両の俗称」も参照。
  • 2004年12月11日のダイヤ改正に合わせ、各停の表示が緑色から橙色に、準急の表示が橙色から緑色に変更された。これは2000形も同じである。
  • 3000形6両編成は他形式との連結も行われるが、併結時は1000形の場合(3.3km/h)を除いて起動加速度は2.7km/hに落とされる。それでも性能不足の編成を3000形が押引きをして無理に加速度を向上させるという形になっており、他形式との併結時は加・減速時に前後動が発生する事が多い。
  • 3次車のうち3265Fは新タイプのモータに換装し、合わせて制御装置のソフトをマイナーチェンジした。走り出すと初期編成に近い音を出す。
  • 2005年から、電気連結器未装備のスカートに補強板を順次設置している。
  • 広幅車体としなかった背景には複々線化工事との絡みもある。車両の製造単価と複々線完成後の混雑緩和を見越して車両単位の収容力との双方を抑制しようという考えである。
  • 3000形を名乗る車両は、小田急電鉄では2代目であるため「新3000形」とファンの間で言われることもある。ただし、百位の「0」と「1」は現在のところ設定されていない(例:3051F)。

関連項目