ハンドフルート

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ハンドフルート(handflute)は、楽器を使用しない手笛の一つである。

解説

森光弘インターロック奏法 (お祈りのような形を組む奏法) の手笛に音階を変え曲が演奏できるように発展させ考案したものである。

リードを用いず空気を吹き込み口に当てて発生する気流の渦で音を出すエアリードの一種であり、ヘルムホルツ共鳴の原理で音が鳴ると考えられる。しかし、発音原理は完全には解明されていない。

音階を作れる手笛について、海外では1970年台に少数ながらカップハンド奏法(おにぎりを握るような形で手を組む奏法)の手笛奏者が口笛大会に出場している。1979年に口笛世界大会(the World's Second International Whistle Off in Carson City)のクラシック部門にインターロック奏法の手笛奏者Peter Hassellが出場して優勝した。彼は自分が初めて世界大会にインターロック奏法を使用したと語っている[1]。 その後も、およそ30年間、インターロック奏法で音階を作り曲を演奏する手笛奏者は少なく、日本では、ほとんど知られていなかった。そのような中で、森光弘が独力で奏法を開発し、ハンドフルートとして世界的に知られるようになった。2人の天才手笛奏者が時代を超えて、別々に開発してたどり着いた奏法と言える。

現在では複数の演奏家によりYouTubeなどでハンドフルートの演奏法の紹介動画が複数紹介されるなど、演奏技法として広まっている[2][3]

ハンドフルートの誕生

起源

森光弘(もりみつひろ・東京都江東区出身・東京音楽大学卒業)は幼少時代、フクロウの鳴き真似として父から手笛を教わった。

森の実家は音楽教室で、幼少の頃からエレクトーンやピアノに触れて育っていたが、その手笛を夢中になって吹いているとあるとき音程を変えられることに気付く。

その後、手の中の空洞の広さを変えることによって音程を変える独自の方法を開拓していき、いつしか自身の好きなアニメのテーマを吹いて遊ぶことが出来るなど、自分の中の特技として発展していった。

東京音楽大学在籍中、森は職員として勤めていた指笛奏者の中村倫二に誘われ、学内の芸術祭でその手笛の演奏を初披露した。

森は当時音楽教諭を目指し同大学音楽教育科で勉強していたが、その演奏での聴衆の反応によって「まだ誰にも知られていないこの奏法を多くの方々に広めていかなくてはいけない」と使命感を持ち、それまで人前で聴かせるものではないと思っていた考えが改まり、卒業後の進路を変更するきっかけになった[4]

手笛には様々な音の出し方があり、それらは当時通称で「ハンドオカリナ」や、また海外では「ハンドホイッスル(handwhistle)」と呼ばれていたが、森の奏法はその従来の手笛とは組み方や音程の変え方などが異なり、森が独自に開拓していったものだった。

そのため自身の奏法を広めるにあたって新たな呼称を命名することにし、親しみやすさを込めて造語で「ハンドフルート(handflute)」と名付けたのであった。

森は同級生で、同大学ピアノ演奏家コースの臼田圭介とハンドフルートとピアノのデュオ「CHILDHOOD(チャイルドフッド)」を結成し、音楽活動を開始。

その一環でYouTubeに動画を投稿していたところ注目を浴びるようになり、国内外にその奏法と名称が広まっていった。


森には、奏法が広く知られていってほしいという思いがあり、初期の頃からレクチャーを積極的に行なっていた。当初はCHILDHOODのコンサートでハンドフルートのやり方を説明するコーナーが定番だったが、近年では森自身が執筆したハンドフルート初の教則本の出版やシダックスカルチャーワークスでの講座を開講するなど、ハンドフルートの拡がり方も変化してきている。

名称に関する語弊

「ハンドフルート」という名称は、その構造的特性から、しばしば以下のような誤った総称として用いられることがある。

• 手笛全般の総称

• インターロック型(お祈り型)の手笛の総称

• 音程を作り、楽曲を演奏できる手笛の総称

• 楽器として扱われる手笛の総称

しかし、これらの認識は適切ではない。「ハンドフルート」は、森光弘が、独自の奏法を体系化して楽器として命名した呼称である。同じインターロック型の Peter Hassell の「Hassell Hand Organ」(彼も自身の奏法に名前を付けている)とも音程の変え方、トリル奏法等で異なっており、彼も後進の指導に積極的で森氏の奏法と異なるインターロック型の手笛奏法は多くいる。

誤解の原因

手笛には、鳩笛、ハンドオカリナ、ハンドホイッスル、ハンドホイッスリングなど、複数の呼び方があるが、これらは特定の奏法や奏法の分類を指す固有の名称ではない。ハンドフルートも、これらの手笛の単なる「別名」として誤認されていることが、誤解の主な原因であると推測される。また、楽器に限らず、固有の名称には、「Hassell Hand Organ」 のように、発明者の名前が含まれることが多い。森氏の名前が含まれていなかったことも原因の一つと考えられる。「ハンドフルート」の体系化に伴い手笛の奏法を分類する必要性が発生しグローバルの状況を無視した命名が発生した可能性がある。

英語圏における議論

英語の "flute"(フルート)は、オーケストラで使用されるコンサートフルートの他に、笛の総称という意味も含んでいる。そのため、"handflute" は「手笛」のほぼ直訳となり、自然に発生する言葉である。この背景から、特定の奏法に「handflute」という名称を固有名詞として使用することには疑問が呈されることがある。これを「誤り」と断言することはできないという意見も存在する。実際、海外では、手笛全般の呼称に「Hand Flute」が使われることが一般的になりつつある。

一般的な解釈

日本におけるカタカナ英語「ハンドフルート」と英語圏の“Hand Flute”の意味は異なり、カタカナ英語「ハンドフルート」は森氏の奏法、英語圏の“Hand Flute”は手を使ったホイッスル(笛)の総称と解釈されることが一般的になりつつある。

奏法

手の組み方

  1. 両手の指を互い違いになるようにして奥まで組み、手のひらを閉じて手の中に空洞を作る。
  2. そのまま両親指を並べて付け、その指同士の間に隙間(吹き口)を作る。
  3. そして親指の第一関節を軽く曲げたところに口を付け、吹き口から息を吹き込む。

息を吹き口から吹き込むと、空気とともに手の中の空洞を上から回って渦を作り、吹き口の下半分から出てくる仕組みなので、空気の出口をふさがないように口をつけなければならない。[5]

また吹き口以外に隙間が開いているとそこから空気が抜けて空洞の共鳴が起こりづらくなり、音が鳴らなくなってしまうため、吹き口以外に隙間が開かないように気を付けてしっかりと密閉して手を組む。


音程の変え方

手の中の空洞の容積を変えることで音程を調整することが出来る。

  • 手を組んだ時に上になった方の手の指を使い、下になった方の手の甲を押して空洞の広さを調節する(自然に手を組んだ時に人差し指が手前に来ている方の手が上[6]
  • 下になっている方の手は自力では動かさず、上になっている指の力加減で調節し、隙間が開かないように気をつける。

森は幼少時代の成長期の段階からこの手の形を作って成長しているため、手の骨格が馴染んでハンドフルート用になってしまっていると語っている[7]

森が手を組んだ時は、左手が上、右手が下になっているが、これは個人の感覚の問題で自分が組んだ時に、自然と手が上になる組み方で良い。

その日の体調によって音程の取りづらさ、音域、音色が変わってくる。

また湿度や気温なども影響する。

寝起き時などの手がむくんでいる状態、手の筋肉が固まってしまっている状態では手が動かしづらくなる。

そのためハンドフルート公式テキストでも、充分に手のストレッチを行い、柔軟にしてから練習をするように推奨されている。[8]

注釈

  1. ^ “ABOUT WESTCHESTER” (英語). The New York Times. (1979年11月11日). ISSN 0362-4331. https://www.nytimes.com/1979/11/11/archives/westchester-weekly-about-westchester.html 2022年11月7日閲覧。 
  2. ^ ハンドフルートの吹き方やコツ、音程の変え方を解説!”. signature - シグネチャー (2022年1月3日). 2025年9月28日閲覧。
  3. ^ mitsuhiro mori”. YouTube. 2025年9月28日閲覧。
  4. ^ 森光弘 『森光弘の誰でも鳴らせるハンドフルート公式テキスト』ドレミ楽譜出版社、2017年、1頁、はじめにより
  5. ^ 森光弘 『森光弘の誰でも鳴らせるハンドフルート公式テキスト』ドレミ楽譜出版社、2017年、17頁
  6. ^ 森光弘 『森光弘の誰でも鳴らせるハンドフルート公式テキスト』ドレミ楽譜出版社、2017年、14頁より引用
  7. ^ 2016年2月28日、CHILDHOOD3rdアルバム『Shining』購入特典
  8. ^ 森光弘『森光弘の誰でも鳴らせるハンドフルート公式テキスト』ドレミ楽譜出版社、2017年、13頁より

参考文献

  • 森光弘 『森光弘の誰でも鳴らせるハンドフルート公式テキスト』 ドレミ楽譜出版社、2017年10月30日、1、4-7、14-17、28頁。ISBN 978-4-285-14696-7

関連項目

外部リンク