シアノ水素化ホウ素ナトリウム
シアノ水素化ホウ素ナトリウム(シアノすいそかほうそナトリウム、sodium cyanoborohydride)は、化学式が NaBH3CN と表される無機化合物。無色の塩で、有機合成化学においてイミンの還元に用いられる。
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物質名 | |
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別名 ナトリウムシアノボロヒドリド シアノトリヒドリドホウ酸ナトリウム | |
識別情報 | |
3D model (JSmol)
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ChemSpider | |
ECHA InfoCard | 100.043.001 |
EC番号 |
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PubChem CID
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UNII | |
CompTox Dashboard (EPA)
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性質 | |
NaBH3CN | |
モル質量 | 62.84 g/mol |
外観 | 白色粉末 |
密度 | 1.20 g/cm3 |
融点 | 241 ℃(分解) |
可溶、反応 | |
危険性 | |
労働安全衛生 (OHS/OSH): | |
主な危険性
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可燃性固体、飲み込んだ場合・皮膚に接触した場合・吸入した場合に致命的、酸と接触すると非常に有毒なガスが発生、水と接触すると引火性が高いガスが発生 |
GHS表示: | |
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Danger | |
H228, H300, H310, H314, H330, H410 | |
P210, P260, P264, P273, P280, P284 | |
NFPA 704(ファイア・ダイアモンド) | |
作業環境許容濃度 (TLV) | 5 mg/m3 (TWA) |
安全データシート (SDS) | Sigma Aldrich[1] |
特記無き場合、データは標準状態 (25 °C [77 °F], 100 kPa) におけるものである。
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合成と利用
編集シアノ水素化ホウ素ナトリウムを合成するためには、ボランとシアン化ナトリウムを反応させるか、もしくは水素化ホウ素ナトリウムとシアン化水銀(II)を反応させる。電子求引基であるシアノ基を持つことから、 アニオンの求核性は アニオンよりも弱められている[2]。
シアノ水素化ホウ素ナトリウムはイミンをアミンへと還元する穏和な還元剤である。アルデヒドやケトンのようなカルボニル化合物と、1級アミンとを共存させてシアノ水素化ホウ素ナトリウムを作用させると、脱水縮合により系中で発生するイミンが還元されることで、2級アミンが得られる。アンモニアを用いると同様に1級アミンが得られる。pH 7-10 の弱塩基性条件では反応が選択的に進み、還元的アミノ化反応として利用される。
この還元反応は Borch反応として知られる[3]。
シアノ水素化ホウ素ナトリウムは水と反応して分解するが、その速度は遅いため還元反応の溶媒として水系を用いることもできる[4]。環状アセタールの水素化分解にも用いられる。
脚注
編集- ^ Sigma-Aldrich Co., Sodium cyanoborohydride. Retrieved on 2014-11-09.
- ^ Baxter, E. W.; Reitz, A. B. Reductive Aminations of Carbonyl Compounds with Borohydride and Borane Reducing Agents in Organic Reactions, 2002, John Wiley and Sons. doi:10.1002/0471264180.or059.01
- ^ Borch, R. F.; Bernstein, M. D.; Durst, H. D. (1971). “Cyanohydridoborate Anion as a Selective Reducing Agent”. J. Am. Chem. Soc. 93 (12): 2897–2904. doi:10.1021/ja00741a013.
- ^ Beard, T. M; Turner, N. J. (2002). “Deracemisation and Stereoinversion of alpha-Amino Acids Using D-Amino Acid Oxidase and Hydride Reducing Agents”. Chem. Commun. (3): 246–247.