包茎手術商法
包茎手術商法(ほうけいしゅじゅつしょうほう)とは、男性の陰茎の悩みに関するコンプレックス産業の一種である。(中には悪徳商法である場合がある。)
概要
これらは、雑誌やスポーツ新聞などで宣伝している包茎専門クリニックであるが、雑誌広告やクリニックのウェブサイトで「土日・祝祭日も診療(年中無休)」、「医療ローンあり(分割払いあり、無理のないお支払い等)」、「完全予約制」、「男性スタッフのみ」等の宣伝コピーを謳うことによって男性患者が来院しやすいようにしている。また、これら業態の特徴として「包茎であることは不潔で恥ずかしいことだ」と位置付けての宣伝活動が挙げられる。
その中には本来、生殖機能の面で必要のない(手術しなくても性交に支障が出ない)者に対しても手術を勧める上で、不安を煽るような情報を与えるなどしているため、悪徳商法にみなされる業態も国民生活センターや泌尿器科医師などから報告が挙がっており、社会問題としても取り沙汰されている。
こと悪徳商法の場合では、包茎手術をしようとやってきた患者に対し不安を煽るような情報を与えたり、広告に示された金額以外に追加で様々なものが必要だと後から説明するなどの問題が出ている。例えば「包茎手術後の痛みを和らげるのにコラーゲンが必要」などとし、コラーゲンを一本数万円の単価で、数本程度から多いときには20本から30本必要だとするなどした上、この代金として消費者金融と同程度の高金利ローンを組ませ、合計金額が100万円以上越えてしまったケースも報告されている[1]。
またこういった手術では「ついでだから」とフォアダイスの除去や所謂「真珠埋め込み」などを勧め、こういった施術の代金としてやはり高額な金額を請求された事例も聞かれる。これらの事例では、判断能力の弱い未成年者に対して将来の不安を煽る形で手術を勧めるため、特に問題視されている。
本来の包茎手術との違い
亀頭部分が細菌感染により炎症を起こしやすかったり、勃起という陰茎の機能を損なう重篤な包茎の手術の場合は健康保険制度の適用範疇で泌尿器科にて治療が行われるが、勃起機能に支障が無い包茎(日本人では仮性6割・真性1~2%とされる)の場合は一般の医療行為と異なり、健康保険が適用されない自由診療(いわゆる美容外科の範疇)のため、高額な請求になりやすい。
2006年において真に包茎治療が必要な者の場合、健康保険適用で自己負担額は1~3万円程度とされるが、本来必要ではない包茎手術費用は一般的なクリニックでも10~20万円程度だという。また全男性の1~2%とされる真性包茎の場合でも、手術を無理にしないステロイド剤塗布での治療が泌尿器科の主流となりつつある。米国での調査ではステロイド剤治療で9割程度が改善されているという。
包茎手術の問題
包茎手術を考える場合は、雑誌などに広告しているクリニックや美容外科ではなく、健康保険が適用できる泌尿器科の診察を受けて検討するのが本来の形である。また無暗に矯正することを問題視する医師もおり、勃起機能を損なう場合の治療や割礼のような社会的理由によるものを除けば、全ての劣等感のみを理由とする包茎手術は有害だという主張すら存在する[2]。
神戸市の泌尿器科医である石川英二は著書『切ってはいけません! 日本人が知らない包茎の真実』において、日本人の8割までもがいわゆる「包茎(仮性・真性問わず)」であるとして、無理な包茎手術を問題視している。なお日本国外には「仮性包茎」という概念自体存在せず、正常な状態の一つだと考えられている。
日本小児泌尿器科学会理事の中井秀郎は通常、新生児は全て真性包茎であるが思春期と共に勃起時には自然に皮がめくれるようになるが、乳幼児の段階で無理に剥いてしまうと怪我をする危険性があり、これが治る過程で将来に渡って陰茎と包皮が癒着したり剥け難くなる真性包茎になる可能性を指摘しており、幼児の段階では簡単に剥けないならそのまま包皮ごと洗って清潔に保つだけでも十分だとしている。
包茎手術の適用範疇は上に述べたとおり、勃起時に皮が引き伸ばされ痛みが生じたり、或いは亀頭部分が感染症を起こしやすく常に清潔にせざるを得ない場合に限られる。なお性交の場合は、行為の前に入浴して局部をよく洗うなどして必要十分な清潔さは保てると考えられる。
こういった包茎手術は勃起時の状態で外皮の弛み具合を調節するが、これはある程度の熟練を要する施術でもあるため、十分な弛み具合が確保されていないような包茎手術の場合では、逆に勃起時に表皮が引っ張られ痛みが生じる場合もあり、また手術方法如何では陰茎にはっきりとそれと判るような目立つ傷が残ることもあり、包茎を隠そうとしてより目立ってしまい、劣等感の元になる可能性もある。