オズの魔法使い

アメリカ合衆国の児童文学

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オズの魔法使い(オズのまほうつかい、The Wonderful Wizard of Oz)はライマン・フランク・ボームLyman Frank Baum)を著者とする、児童文学小説。 この後、ボームが14冊、彼の死後他の作者等がオズ・シーリーズ(Oz books)を出版している。

本の表紙(1900)

概要

アメリカカンザス州に暮らす少女ドロシー(Dorothy)は竜巻に家ごと巻き込まれて、飼い犬のトト(Toto)と共に不思議な「オズの国(Land of Oz)」へと飛ばされてしまう。途中で脳の無いカカシ・心の無いブリキの木こり・臆病なライオンと出会い、それぞれの願いを叶えてもらうため「エメラルドの都(Emerald City)」にいるという大魔法使いの「オズ」(Wizard of Oz)に会いに行く。

「オズ(Oz)」の名の由来は、原作者ボームが近くのファイリング・キャビネットにO-Zと記されているの見て名づけたなど、色々な説がある[1]

作品の政治的解釈

この作品は児童文学であると同時に、19世紀末のアメリカ経済に関する寓話とも言われ、歴史学者、経済学者や文学者等が政治的解釈を述べているが、読者および批評家の多くは物語をそのまま楽しんできている。本作品の原作者ボームは1890年代に政治的に活動はしたが、ボーム自身は本作品の政治的解釈については、否定も肯定もしていない。

1880年~1886年、アメリカ経済は23%ものデフレを経験したが、これは金本位制を採っていたアメリカ経済の拡大に対して、金貨の供給量が追いつかなかったためである。 当時の西部の農民達の殆どが、東部の銀行からの借金で開拓を行っていたが、デフレーションの発生は借金の実質的価値を増大させ、西部の農民は苦しみ、東部の銀行が何もせずに潤うという事態が発生した。 当時の人民主義派はこの問題について、不足する貨幣供給量を銀貨の自由鋳造で賄うことで解決するべきだと主張した。 銀と金、金本位体制を巡っての論争は1896年の大統領選挙において最も重要な論点となったが、民主党は銀貨の採用を主張し、共和党はあくまでも金本位制にとどまることを主張した。


経済史家ヒュー・ロッコフ(Hugh Rockoff)の記述[2]では、

  • ドロシー:アメリカの伝統的価値観
  • トト:禁酒党(Teetotalers)
  • かかし:農民
  • ブリキの木こり:工場労働者
  • マンチキン:東部市民
  • 臆病なライオン:1896年民主党大統領候補、ウィリアム・ジェニングス・ブライアン 
  • 東の悪い魔女:24代大統領、グローヴァー・クリーヴァランド
  • 西の悪い魔女:25代大統領、ウィリアム・マッキンリー
  • 魔女:共和党議長、マーク・ハナ
  • オズ:金の単位、オンスの略号(OZ)
  • 黄色いレンガ道:金本位体制

  ドロシーは最後に、家に帰る道を見つけるが、黄色いレンガ道をたどるだけでは見つからなかった。ドロシーは魔法使いオズが役に立たない代わりに、自分の『銀の靴』に魔力があることを知る(映画では靴の色はルビー色になっているが、ハリウッド関係者は、原作者が19世紀の経済論争を題材にしていることに気がつかなかったか、もしくは誕生石でルビーは処女性や純血の意味も持つので、その暗喩の可能性がある。童話の赤ずきんの赤い頭巾が処女性の暗喩になっているのと同じようなもの)。

結局、民主党は大統領選挙に敗れ、金本位制は維持されることになったが、1898年にアラスカのクロンダイク川で金が発見され、また、カナダや南アフリカの金の採掘量も増え、結果的に貨幣供給量は増大し、デフレは解消されてインフレ傾向となり、農民は借金を容易に返せるようになった。

としている。

オズ・シリーズ

(著:Lyman.Frank.Baum)

  • 1.「オズの魔法使い」 (The Wonderful Wizard of Oz)1900年
  • 2. 「オズの虹の国」 (The Marvelous Land of Oz) 1904年
  • 3. 「オズのオズマ姫」 (Ozma of Oz) 1907年
  • 4. 「オズと不思議な地下の国」 (Dorothy and the Wizard in Oz) 1908年
  • 5. 「オズへつづく道」 (The Road to Oz)1909年
  • 6. 「オズのエメラルドの都」 (The Emerald City of Oz)1910年
  • 7. 「オズのつぎはぎ娘」 (The Patchwork Girl of Oz)1913年
  • 8. 「オズのチクタク」 (Tik-tok of Oz) 1914年
  • 9. 「オズのかかし」 (The Scarecrow of Oz)1915年
  • 10. 「オズのリンキティンク」 (Rinkitink in Oz)1916年
  • 11. 「オズの消えたプリンセス」 (The Lost Princess of Oz) 1917年
  • 12. 「オズのブリキの木樵り」 (The Tin Woodman of Oz)1918年
  • 13. 「オズの魔法くらべ」 (The Magic of Oz)1919年
  • 14. 「オズのグリンダ」 (Grinda of Oz)1920年

(著:Ruth Plumly Thompson)  

  • 15. The Royal Book of Oz 1921年
  • 16. Kabumpo in Oz  1922年
  • 17. The Cowardly Lion of Oz  1923年
  • 18. Grampa in Oz  1924年
  • 19. The Lost King og Oz  1925年
  • 20. The Hungry Tiger of Oz  1926年
  • 21. The Gnome King of Oz  1927年
  • 22. The Giant Horse of Oz  1928年
  • 23. Jack Pumpkinhead of Oz  1929年  
  • 24. The Yellow Knight of Oz 1930年  
  • 25. Pirates in Oz 1931年
  • 26. The Purple Prince of Oz 1932年
  • 27. Ojo in Oz  1933年
  • 28. Speedy in Oz  1934年
  • 29. The Wishing Horse of Oz  1935年  
  • 30. Captain Salt in Oz  1936年
  • 31. Handy Mandy in Oz  1937年
  • 32. The Silver Princess in Oz  1938年
  • 33. Ozoplaning with the Wizard of Oz  1939年

(著:John R. Neill)

(著:Jack Snow)

  • 37. The Magical Mimics in Oz 1946年  
  • 38. The Shaggy Man of Oz  1949年

(著:Rachel R. Cosgroce)

(著:Eloise Jarvis McGraw and Lauren McGraw Wagner)

メディア作品

映画

1939年のMGMミュージカル映画。 ヴィクター・フレミング監督、ジュディ・ガーランド主演。 一部テクニカラーを採用した。エドガー・イップ・ハーバーグ(作詞)とハロルド・アーレン(作曲)による挿入歌『虹の彼方に』(Over the Rainbow)は、主演のガーランドが歌って大ヒットし、現在に至るスタンダードナンバーとなった。 製作前からトラブルが相次ぎ、粗悪な化学薬品のメイクの為に俳優が体調を壊し変わったり、撮影の長引きで資金が増えすぎたり、脚本などが難航して何度もスタッフが変わるなど、制作は困難を極めたが、現在も色あせない輝きを放っている。
1986年のディズニー製作映画。 上記「オズの魔法使」の制作関係者の了解を取っていない非公式な続編(unofficial sequel)。 「オズの虹の国」と「オズのオズマ姫」を原作にしている。ゲイリー・カーツ製作総指揮、ウォルター・マーチ監督、フェアルーザ・バーク主演。 アニマトロニクスモーション・コントロール・カメラストップモーション・アニメーションなど当時最新鋭のSFX技術を駆使してオズの国の住人たちをリアルに再現したファンタジー大作。

TV

  • オズの魔法使い
1974年10月5日から1975年3月29日(午後7時30分~8時)にかけて日本テレビ系で放映していた作品。全26話。シェリー主演。番組中数分間、赤と緑の色眼鏡を使う立体映像を取り入れていた。なお、エンディング曲は『虹の彼方に』を採用。主演のシェリーが歌っていたが、オリジナルとは違い、アップテンポで現代風な歌詞と編曲(山本直純による)になっていた。キャストは佐藤博(ライオン)、高見映(かかし)、常田富士夫(ブリキマン)、山崎唯(トト(ドロシーのペットのねずみ)の声)。
  • オズの魔法使い
1986年10月6日から1987年9月28日にかけて、テレビ東京系で放映していたアニメ作品。全52話。原作の1〜3巻部分のアニメ化。ただし、原作の2巻目にあたる部分でもドロシーが登場する(原作ではまったく出てこない)。
キャスト/ドロシー:島本須美、かかし:安原義人、木こり:神山卓三、ライオン:永井一郎、モンビ:北川智絵、かぼちゃくん:青木和代、オズマ姫:野沢雅子
オープニングテーマ「ファンシーガール」(作詞・作曲:小坂明子/編曲:京田誠一/歌:山野さと子
エンディングテーマ「魔法のクレヨン」(作詞・作曲:小坂明子/編曲:京田誠一/歌:大杉久美子大杉恵麻
テレビ東京 月曜19:00枠
前番組 番組名 次番組
世界のプロレス
※一時間枠
オズの魔法使い(アニメ)
おらぁグズラだど(リメイク版)

関連項目

脚注

  1. ^ 英語版Wikipedia 「Origin of the name Oz」 参照
  2. ^ ROCKOFF, H., 1990, The Wizard of Oz as a Monetary Allegory, in Journal of Political Economy 98 (August 1990) pp 793-60

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