紅世の徒

高橋弥七郎のライトノベル作品『灼眼のシャナ』に登場する架空の生命体の種族名

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“紅世の徒”(ぐぜのともがら)は、高橋弥七郎ライトノベル作品「灼眼のシャナ」及びそれを原作とする同名の漫画アニメコンピュータゲームに登場する架空の生命体の種族名である。

原作の文中では「“紅世の徒”」とダブルクオートで囲って表記される他、単に「“徒”」(ともがら)と言えば“紅世の徒”を指す。作中では特に、生まれ故郷の“紅世”を離れ、人間そのものを軽視し人間の“存在の力”を浪費する者に限定した呼称として用いられることも多い。


注意:以降の記述には物語・作品・登場人物に関するネタバレが含まれます。免責事項もお読みください。


概要

この世の“歩いて行けない隣”にある別世界の住民達であり、端的に言い表せば異世界生命体である。

人間に似た精神構造を持ち、離れた場所の強い感情や意思と共感する能力や、“存在の力”を自在に操る能力を持つ。また、自らの“存在の力”も持つ。人間と同様に老若や(実際には若干異なるが)男女の別がある。この世で数千年生きている“徒”もいるが、作中“徒”の自然死には触れられておらず、寿命などは不明。その他の詳細は、作中の描写が少なく不明瞭な部分が多い。

人間の感情と共感し、歩いてはいけない隣にあるこの世を知った“徒”の中の一人の、ある“紅世の王”が編み出した術によって、この世に渡ることが出来るようになった。“徒”にとって、この世の“存在の力”を喰らい力に変える事は呼吸に等しいほど容易な事であり、また、その“存在の力”を使って、己の意思や存在を自由に現せたため、過酷な環境を嫌い、より自在に力を振るい気儘な生を望む“徒”は、生きる上での無駄を持つ事すら許されず、延々と力の鬩ぎ合い続けなければならない生まれ故郷の“紅世”を嫌って「より自由」なこの世へ渡り来、放蕩の限りを尽くすようになる。

本来この世の存在でない“紅世の徒”は、普通はこの世の“存在の力”を喰らい、その“存在の力”を用いてこの世に“実体化”する。この世の“存在の力”を使わないで実体化することも可能だが、それはまさに自分の身を削るのと同様の行為であり、放っておけばすぐに死滅してしまう。また自在法を使う際も、“存在の力”を喰らって自前の力にした上で利用することが多い。ただし動物や物質が持つ“存在の力”は“徒”には合わず、喰らえば逆に力が薄められてしまう。よって“徒”は、この世で最も“徒”に近い存在である人間の“存在の力”のみを喰らう。なおこれらとは別に純粋な“存在の力”も存在するが、『都喰らい』と呼ばれる秘法を使った後にしか作中では言われていない(詳細は不明だが、「純度」と言う表現が使われていることから、“徒”が喰らう“存在の力”は通常、何らかの「不純物」を含んでいるとも推測できる)。

彼らがこの世の“存在の力”を喰らった結果、本来あるべき流れや調和を失った世界に「歪み」が生じ、それがもたらす両世界に起きる大災厄を危惧した“徒”達の中に、たとえ同胞を殺してでもこの世での“存在の力”の搾取を阻止しようとする“徒”達が現れ始め、「同胞殺しの道具」とも呼ばれるフレイムヘイズと呼ばれる元人間の討滅者達を作り出すようになる。無造作に人間を喰らうだけだとフレイムヘイズに察知されるようになったことから、生じる「歪み」を一時的に緩和させるために「トーチ」を生み出した。

“徒”がこの世に実体として現れることや、己の意思や存在を『自在法』としてこの世に現す事を「顕現」と呼び、特別な自在法を使わない限り、この世に“徒”が現れるときの姿は、その“徒”の本質をこの世の「形ある何か」で表したもので、人間や獣に似た姿の者もいれば、植物や道具、それらの形状が混在した者など、文字通り千差万別である(ただし現代では、「本性の姿」を「本性に見合った人間型」に変換する「人化の自在法」を併用することが多い)。

“紅世の王(ぐぜのおう)”

“紅世の徒”の中でも、強大な力を持っている者の総称。特に明確な基準があるわけではなく、“徒”たちの間の風聞や力の大きさ・強さによって“王”であるか否かが決まる。なおここでいう力の大きさとは、“存在の力”をどのくらいの規模で統制できるかというもので、大きな“存在の力”を持ったからといって“王”になれるわけではない。“徒”によって世界のバランスが崩れることを危惧し、世界のバランスを守るために人間と契約してフレイムヘイズとなる“王”も多いが、同様に、この世を跋扈し歪みを生む“紅世の王”も多くいる。

“紅世”における世界の法則の一端を体現する超常存在の総称。この世の神とは意味合いが異なり、宗教で崇められる象徴や概念的な存在ではなく、実際にどこまでも現実的に存在する。

それぞれが特異な権能を持ち、祈りと代償、運と神自身の意思により、強大な力を発揮する。神の降臨を要請する儀式を『召喚』と呼び、「神の意思をその力を欲する者に向けさせること」「了解を得るための代償として犠牲を払うこと」の二つに大別させる。フレイムヘイズ誕生の際の契約と呼ばれる行為は、ある“紅世の王”が神の召喚の儀式の手法を応用し、真似た物である。 フレイムヘイズと契約している場合は普段は他の“徒”となんら変わらない存在であるが、神としての権能を持ちいる事で、神威召喚の儀式が行われた場合、他の“徒”には無い、神としての力を振るう事ができる。

作中で出てきた『真正の神』は、「審判」と「断罪」の権能を持つ『天罰神』“天壌の劫火”のみ。ちなみに、この世で神が死ぬという事態は今までに起こっていないらしい。

“燐子(りんね)”

“紅世の徒”が作り出した、“徒”の下僕。この世の物に存在の力を吹き込む事で作られ、“存在の力”を喰らう事は出来るが、“存在の力”を自分の力に変えることはできず、作り主から“存在の力”を与えられることで存在を維持する。

物によってかなり性能が異なり、自立した意識を持たず、“徒”の自在法の補助のみに使われる道具同然の“燐子”もいれば、宝具を使う事すら可能な高度な知性と自立した意識を持った“燐子”もおり、その差はその“燐子”の使い道や、作り手である“徒”の技量によって異なる。

“燐子”の作成や、その維持には相応の“存在の力”や、それを繰る技量が必要なため、“徒”によって“燐子”無数使役したり、一体も使わなかったり、人によってまちまちである。トーチ同様、燃え尽きると、存在の消失を感じ取れない人間には忘れ去られる。

“紅世の徒”の一覧

ダブルクオート(“”)で括られた分が『真名』と呼ばれる“紅世”での本名であり、それ以外はこの世で自分で名づけた通名であり、愛称の様なもの。フレイムヘイズと契約した状態で登場した“紅世の徒”についての詳細は、フレイムヘイズの一覧を参照の事。

真名 通名 炎の色 その他の情報
狩人(かりうど) フリアグネ 薄い白 “燐子”マリアンヌ、ニーナ他
屍拾い(しかばねひろい)
螺旋の風琴(らせんのふうきん)
ラミー
リャナンシー
深緑色  
纏玩(てんがん) ウコバク 爛れた赤銅色  
壊刃(かいじん) サブラク 茜色  
彩飄(さいひょう) フィレス 琥珀色 『約束の二人』の片割れ
髄の楼閣(ずいのろうかく) ガヴィダ 乳白色  
愛染自(あいぜんじ) ソラト 山吹色 二人で「“愛染の兄妹”」と呼ばれる
愛染他(あいぜんた) ティリエル
穿徹の洞(せんてつのほら) アナベルグ 鉛色  
祭礼の蛇(さいれいのへび) 坂井悠二 [仮装舞踏会]盟主
黒い炎が映す影は銀色
逆理の裁者(ぎゃくりのさいしゃ) ベルペオル [仮装舞踏会]参謀
頂の座(いただきのくら) ヘカテー 明るすぎる水色 [仮装舞踏会]巫女
千変(せんぺん) シュドナイ 濁った紫 [仮装舞踏会]将軍
探耽求究(たんたんきゅうきゅう) ダンタリオン 馬鹿のように白けた緑 “燐子”ドミノ
道司(どうし) ガープ 浅葱色 [仮装舞踏会] 
獰暴の鞍(どうぼうのくら) オロバス [仮装舞踏会] 
千征令(せんせいれい) オルゴン 錆びた青銅のように不気味な緑青色 [仮装舞踏会]巡回士
琉眼(りゅうがん) ウィネ 藤色 [仮装舞踏会]捜索猟兵
嵐蹄(らんてい) フェコルー 臙脂 [仮装舞踏会]
『星黎殿』の守護者
翠翔(すいしょう) ストラス [仮装舞踏会]布告官
聚散の丁(しゅうさんのてい) ザロービ 飴色 [仮装舞踏会]捜索猟兵
吼号呀(こうごうが) ビフロンス 樺色 [仮装舞踏会]巡回士
不明 レライエ 不明 [仮装舞踏会] 
不明 デカラビア 不明 [仮装舞踏会] 
不明 ロフォカレ 不明  
棺の織手(ひつぎのおりて)
冥奥の環(めいおうのかん)
アシズ [とむらいの鐘]首領
虹の翼(にじのつばさ) メリヒム 虹色(七色) [とむらいの鐘]『九垓天秤』 『両翼』の右
“燐子”『空軍』
甲鉄竜(こうてつりゅう) イルヤンカ 鈍色 [とむらいの鐘]『九垓天秤』 『両翼』の左
大擁炉(だいようろ) モレク 黄色 [とむらいの鐘]『九垓天秤』宰相
闇の雫(やみのしずく) チェルノボーグ 枯草色 [とむらいの鐘]『九垓天秤』隠密頭
凶界卵(きょうかいらん) ジャリ 亜麻色 [とむらいの鐘]『九垓天秤』大斥候
巌凱(がんがい) ウルリクムミ 濃紺 [とむらいの鐘]『九垓天秤』先手大将
架綻の片(かたんのひら) アルラウネ 薄桃 [とむらいの鐘]
ウルリクムミの副官
焚塵の関(ふんじんのせき) ソカル 黄土 [とむらいの鐘]『九垓天秤』先手大将
天凍の倶(てんとうのぐ) ニヌルタ [とむらいの鐘]『九垓天秤』中軍首将
戎君(じゅうくん) フワワ 焦茶 [とむらいの鐘]『九垓天秤』遊軍首将
駆掠の礫(くりゃくのれき) カシャ アイボリー  
鯨鱗(げいりん) ニティカ 鼠色  
戯睡卿(ぎすいきょう) メア 朱鷺色  
天壌の劫火(てんじょうのごうか) アラストール 紅蓮 フレイムヘイズとして人間と契約
“紅世”真正の天罰神
蹂躙の爪牙(じゅうりんのそうが) マルコシアス 群青色 フレイムヘイズとして人間と契約
夢幻の冠帯(むげんのかんたい) ティアマトー 桜色 フレイムヘイズとして人間と契約
不抜の尖嶺(ふばつのせんれい) ベヘモット 褐色 フレイムヘイズとして人間と契約
虚の色森(きょのしきしん) ハルファス 薄いオレンジ色 フレイムヘイズとして人間と契約
破暁の先駆(はぎょうのせんく)
夕暮の後塵(せきぼのこうじん)
ウートレンニャヤ
ヴェチェールニャヤ
極光色 フレイムヘイズとして人間と契約
一つの体に二つの人格を持つ
払の雷剣(ふつのらいけん) タケミカヅチ 眩い紫電 フレイムヘイズとして人間と契約
虺蜴の帥(きえきのすい) ウァラク 丹色 フレイムヘイズとして人間と契約
啓導の籟(けいどうのふえ) ケツアルコアトル 青磁色 フレイムヘイズとして人間と契約

無所属

“狩人(かりうど)”フリアグネ[Friagne](CD 松風雅也/アニメ 諏訪部順一
“紅世の王”。悠二をトーチにした元凶。御崎市で起こる一連の事件の契機となる。近代では五指に入るであろう強力な“王”(作者からも、本来なら第一巻に登場させるには強力過ぎる敵、と評されたほど)。マルコシアスから「人形フェチ」といわれるほどの人形好きで、愛する“燐子”のマリアンヌを独立した一個の存在とするため、御崎市で秘法『都喰らい』を引き起こそうとした。
フレイムヘイズに対しては、炎を消し去る指輪型宝具『アズュール』とフレイムヘイズの内に眠る“王”を目覚めさせ器を破壊する銃型宝具『トリガーハッピー』をメインに戦い、さらに宝具の武器を持った“燐子”の軍団やそれらを爆破させるハンドベル型宝具『ダンスパーティー』や武器殺しとも呼ばれる金貨型の宝具『バブルルート』などを駆使して戦う。作者曰く、フレイムヘイズに対しては、最古参で歴戦のフレイムヘイズであるカムシンでも苦戦する強さだったらしい。だが彼の戦略は、炎をほとんど使わず、内に眠る“王”が目覚めても死なないと言う、通常のフレイムヘイズに当てはまらないシャナにはほとんど通じず、その結果シャナ(アラストール)に討滅されてしまう。
フレイムヘイズ側からは、“狩人”の真名を『フレイムヘイズを狩る狩人』としての意味で用いられる事もあるがフリアグネ曰く本来は“狩人”の真名は、『物事の本質を見抜く』能力を持つが故の、宝具の収集家(コレクター)である事を意味し(ただし、この世と紅世の狭間の産物である宝具はトーチ同様、紅世には存在しないため、これはフリアグネの勝手な解釈である思われる)その能力から入手した宝具の能力や使用法を即座に看破でき、状況に応じて様々な宝具を使用する。フリアグネが御崎市のデパート高層階に残した宝具『玻璃壇(はりだん)』は、彼の死後もマージョリー・ドーを手伝う田中栄太や佐藤啓作が町内の“存在の力”を見るために使用している。炎の色は薄い白
なお、彼は挿絵を担当するいとうのいぢのお気に入りのキャラであるらしく、その後番外編などの狂言回しとしてしばしば登場している。彼らの「なんでも質問箱」はDVDにも収録。
マリアンヌ(アニメ こやまきみこ
フリアグネに「可愛いマリアンヌ」と呼ばれる“燐子”。元は粗末なこの世の人形だったが、トリノで馬車から捨てられた所を偶然見かけたフリアグネが、あまりに可憐なその姿に心に雷霆億激の如き衝撃を受け一目惚れ、その後色々あって高度な“燐子”になって愛し合うようになったらしい。自立した意思を持ち宝具を使える、珍しい“燐子”。なお、彼女を含めたフリアグネ一党の“燐子”は総じて他の“徒”の“燐子”に比べ、かなりハイスペックである(ヴィルヘルミナから一手駒としては破格の強さであると言わせるほど)宝具まで使える“燐子”は作中では彼女達やドミノくらいである。
ニーナ(CD 浅野真澄
“狩人”フリアグネ配下の“燐子”の一体で、猫の人形型の“燐子”。主であるフリアグネ亡き後も、執念から“ミステス”悠二を襲い、シャナに戦いを挑み討滅される。その際にニーナが悠二に吐いたセリフは、II巻前半での悠二の心の惰弱さの原因の一つとなった。CDドラマ版と漫画版には登場しているが、小説本編やアニメには登場していない(公式設定として扱われている)。
“屍拾い(しかばねひろい)”ラミー[Lamies](アニメ 清川元夢
人間に対し中立の立場を取る“紅世の徒”。トーチに寄生し、現在老紳士の姿をしている。恋人であった人間の画家が描いてくれた自分の絵を復活させるために、“存在の力”を消えかけのトーチから集めている。世界の力のバランスに極力気を使っているため無害とされ、普通のフレイムヘイズはわざわざ討滅に乗り出さない。ラミーを討滅すると逆に、集められた膨大な量の“存在の力”が制御を失い、世界のバランスを崩す可能性の方が高いとされる。
偶然から悠二と出会い、シャナとの関係に悩む彼に様々な助言を与えた。性格は非常に冷静沈着で、討滅するために現れたマージョリーに対しても大して動揺せず、シャナにマージョリーを討つ機会を与えるために自ら囮になったりした。
“屍拾い”というのは、この世にのみ存在する「トーチを拾い集める者」を意味するこちら側での通り名であり、ラミーというのも偽名のようなもの。その正体は、『封絶』をはじめとする数多くの自在法を編み出した、“紅世”最高の天才自在師“螺旋の風琴(らせんのふうきん)”リャナンシー。その名はシャナやマージョリーも知悉していた。少女の姿をした、存在そのものはとても小さい“徒”だが、異常に高効率な自在法を、望むままに即座に構成することが可能。
ちなみに老紳士の姿をした彼は番外編で坂井悠二から師匠と呼ばれている。
炎の色は深緑色
通称のリャナンシーは、欧州の伝承に登場する、芸術家に才を与える代償に夭折させるという妖精
“祭礼の蛇(さいれいのへび)”
かつて存在した強力な“紅世の王”。かつて「支配」というものに興味を覚え、『大縛鎖』という都を作るが、作った途端にフレイムヘイズ達に袋叩きにされ、マルコシアスの談によると「一発昇天」したといわれている。『玻璃壇』の製作者でもある。[仮装舞踏会(バル・マスケ)]も参照の事。
“纏玩(てんがん)”ウコバク[Ukobach]
“紅世の徒”。シャナが悠二に出会う前に討滅した(0巻収録の短編参照)。己の本来の醜い姿を極端に嫌い、理想的な美しい人間型の姿を作る為に人攫いや写真撮影を行っていた。泡を放ち相手を捕獲する宝具『アタランテ』を持つ。他の“徒”と比較しても格段に弱い力しか持たない。炎の色は爛れた赤銅色
通称の由来はユダヤ、キリスト教の神話に登場する下級の魔神ウコバクから。
“壊刃(かいじん)”サブラク[Sabrac]
“紅世の王”。依頼を受け対象を抹殺する、文字通りの「殺し屋」。普段は思考も言動も全てが長口上。かなりの不平屋であるものの、怒るという場面はそうそう無いらしい。一時期、“探耽求究”ダンタリオンに雇われていたが、秘蔵の宝具である剣『ヒュストリクス』を「イカレたからくり」(正式名称は『浪漫の結晶ドォ――リル付き西洋風の両手剣』)に改造され激怒、袂を分かった。
現在は[仮装舞踏会]に雇われており、宝具『零時迷子』を狙っていた。
自らの存在を薄く広範囲に浸透させる事で、フレイムヘイズや“徒”に気付かれずに初撃のみ完全な不意打ちを、自らを浸透させた地域に限り複数個所に同時に行えるという特性を持つ。その初撃の洪水とも思えるような炎の濁流の威力とその炎に混ぜた剣による攻撃、さらにそれらで傷付いた箇所を時と共に広げていく自在法『スティグマ』を持つ。さらに実際に見えるサブラクは本体のほんの一部であるがゆえに、その自らを広範囲に浸透させる特性に気付かれなければ不死身の耐久力とも思える力を発揮し、さらに広範囲に浸透させているがゆえに広範囲の人間を戦いの最中に容易に喰らう事もできため、高い持久性をもつ。
かつて『約束の二人』とヴィルヘルミナを執拗に追い続け、終に『零時迷子』に『大命詩篇』の一片を刻んだ事もある。
“ミステス”坂井悠二に『大命詩篇』を打ち込み、さらに剣を突きつけ一時窮地に追い込むがヴィルヘルミナとの交戦中に悠二に正体を見破られ、シャナ、ヴィルヘルミナ、マージョリーらフレイムヘイズによって敗北。しかし死んだわけではなくビフロンスの『非常手段(ゴルディアン・ノット)』を使ってその場から転移したので生きている。ちなみに刃物マニアであり、戦闘時に使用する武器は全て彼のコレクションである(特に宝具というわけではない)。“戯睡卿”メアと知り合いで、待ち合わせの約束をしていたらしく、“逆理の裁者”ベルペオルから行き逢った際に得た情報をメアに与えた。炎の色は茜色。通称の由来はソロモン72柱の序列43番目の悪魔サブナックから。
“彩飄(さいひょう)”フィレス[Pheles]
人間に対し中立の立場を取る“紅世の王”で、『約束の二人(エンゲージ・リンク)』の片割れ。ヨーハンとともに『零時迷子』を作った。約束の二人は共に強大な実力の持ち主であり、さらに決して人間を喰らわないという誓いを立て、ヨーハンから供給される“存在の力”のみで顕現を維持し続けていた為、これまではフレイムヘイズ・“徒”のいずれとも真っ向から敵対することがなかった(多少のいざこざはあった模様)。外見は黄緑色の長髪の華奢な美女で、ツナギのような服を着ている。両肩の人または鳥の貌を象ったプロテクターと両手の無骨な手甲はいずれも強力な武器らしい。一時期、自分達を付け狙う“壊刃”サブラクの必殺の罠にかかってしまったヴィルヘルミナ・カルメルを助け、行動を共にしていた。再度サブラクに襲われた際、瀕死の重傷を負った『永遠の恋人』ヨーハンを助けるため、彼を『零時迷子』に封じ込め、自らはサブラクとともに自在法『ミストラル』で転移し、ヴィルヘルミナの逃走の時間を稼いだが、その為『零時迷子』に生じた異変を知る事ができなかった。
風を操る技を得意とし、目標物を探索し、発見した後はそこへの移動手段ともなる独自の自在法『風の転輪』や、周囲に発生させた風を自身の一部とし、相手を包み込んで攻撃する自在法『インベルナ』を使用。『零時迷子』を探しており、悠二を分解してヨーハンを取り戻そうとするが、突然、悠二の中から現れた『暴君』の為に失敗に終わる。その後、一時的に悠二から変化したヨーハンに説得されて悠二の分解を断念した。去り際、一美に宝具『ヒラルダ』を授けるが、その真意は不明。
ヴィルヘルミナ曰く彼女は出鱈目で明るく楽しい女性らしいが現在の所ヨーハンとの会話以外ではそのような性格は垣間見れない。炎の色は琥珀色
“髄の楼閣(ずいのろうかく)”ガヴィダ[Gavida]
人間に対し好意的な、世話好きで人情に厚い“紅世の王”。かつては討ち手や同胞と多く闘っていたが、芸術の魅力に取り憑かれて以降、人間と協力してさまざまな宝具を作り出した老成の“徒”。芸術に惚れこんで人間好きとなった後、人間を喰らわなければ顕現出来ないという邪魔な「“徒”」としての立場を取り払い人間と芸術について語らうために、“存在の力”を消耗せずにこの世に自らを留め置く宝具『カイナ』を作りあげた。[仮装舞踏会]と協力関係にあった事もあったが、とある変人が絡んだ騒ぎをきっかけとして袂を分かち、『天道宮』の『カイナ』の上に身を留めて隠居していた。その姿は6本腕の板金鎧で、柄の長い大金槌『キングブリトン』を武器とする。
大戦』の折、『天道宮』を取り引きによってフレイムへイズに貸し、その後チェルノボーグによって討滅される。[仮装舞踏会]の本拠地『星黎殿』も彼が作った。炎の色は乳白色
通称の由来はケルト神話の鍛冶神ゴヴニュの別名。
“愛染自(あいぜんじ)”ソラト[Sorath](アニメ 白石涼子
“紅世の徒”。シャナに匹敵する超一流の剣の腕に似合わぬ幼い言動が特徴。大剣『吸血鬼ブルートザオガー)』の使い手。戦闘時はを一瞬にして装着する。自在法は不得手で、初歩的な自在法である封絶や達意の言もまともに使えない。『贄殿遮那』を狙ってシャナを襲撃する。特殊能力として、欲するものを、見なくとも在処を知ることができる『欲望の嗅覚』を持つ。妹よりも目先の欲を優先した、純粋ゆえに冷酷な性格。炎の色は山吹色
ちなみに『吸血鬼』は、その後マージョリーが持ち帰り、マージョリーが現実を知らせる為佐藤と田中に与え、シャナに譲られた後、最終的に悠二の手に渡った。
“愛染他(あいぜんた)”ティリエル[Tiriel](アニメ 田村ゆかり
“紅世の徒”。最愛の兄・ソラトに見せる甘い顔と、それ以外のときに見せる残忍な顔を持つ。『揺りかごの園クレイドル・ガーデン)』という自在法を使い、ソラトのサポートに回る。『揺りかごの園』は封絶と似た力を持つが、内部の気配を外部に洩らさない。そのためシュドナイの様な気配が強大な“徒”でもフレイムヘイズに気付かれないでいる事が可能である。戦闘時には宝具『オルゴール』の力で、自在法を込めた“燐子”ピニオンを作り出し、街一つを覆うほど巨大に規模を拡大させる。その際は他者を逃がさない隔離空間としても機能し、さらにピニオンが周りの“存在の力”を奪い兄妹に“存在の力”を供給し続ける。他者(彼女の場合は兄)に尽くし、そのためには自分の命さえも厭わない彼女の存在の本質は『溺愛の抱擁』とも呼ばれ、自在法『揺りかごの園クレイドル・ガーデン)』の根源的な精神になっている。
この2人の互いにすがるような愛情表現にシャナは反感を覚えるものの、同時に愛するもののためならば自らの命を賭すことも辞さないその姿に大きな感銘を受ける。炎の色は兄のソラトと同じ山吹色
“探耽求究(たんたんきゅうきゅう)”ダンタリオン[Dantalion](アニメ 飛田展男
“紅世の王”。通称「教授」。実験に生き甲斐を感じており、そのためなら自分の命すらも捨てるマッドサイエンティスト。独自の理論体系によって創造された『我学』を用いて様々な実験を行う。自分の研究のためであればフレイムヘイズに協力することもある。性格と信条上、敵が多いため、逃げ足は誰よりも速い。彼の作った有形無形の実験物には『我学の結晶エクセレント(通し番号)』というシリーズ名が付けられ、その数は既に数万に及ぶ。大部分はガラクタだが、中には現在に至るまで使われる物や、他の自在師によって効果的に作り直され、広く普及したものもある(封絶の自在法など)。[仮装舞踏会]の客分待遇として組織と深い繋がりを持ち、トラブルを起こして逃げ出しては、必要な時にベルペオルに連れ戻されている。
人間の姿をしているが、あまりその形には捉われていないので腕や腰などの関節がありえない方向にありえないほど曲がったり、伸びたりする。ちなみに何故か近眼。
行動が荒唐無稽で凡人には理解不能(たまに自分でもわからないときがあるらしい)であるために超が付く程の変人だが、力そのものは強大な“王”である為、最も始末に終えない“徒”。御崎市で『調律』に対する『逆転印章アンチシール)』を起動させ極限の歪みを作りどんな結果になるか、という実験を試みるがフレイムヘイズ達に阻止され失敗に終わった。
やけにハイテンションな口調や仕草が特徴的。相手が誰だろうと気にしない無神経ぶりだが、ベルペオルと『鬼功の繰り手』サーレの事は「シイタケより嫌い」らしい。過去にはヘカテーを危険に晒したとして、シュドナイの怒りの矛先を向けられた事もある。
昔、興味の対象として何人かのフレイムヘイズを誕生させる、“徒”とフレイムヘイズの両方を強化し双方に甚大な被害を与える、協力者を新た思いついた実験で破滅に追いやる等の数々の問題行動も見られ、“紅世の徒”の中にも彼を恨んでいるものは多い(というより、人格面での信用は全くのゼロ)。炎の色は馬鹿のように白けた緑
通称の由来は悪魔ダンタリオン
ドミノ(アニメ 加藤奈々絵
ダンタリオンの“燐子”。ロボットの姿をしている。正式名称は『我学の結晶エクセレント28-カンターテ・ドミノ』。語尾に「~でありますです。」と妙な敬語を話す。一言多いタイプで、ダンタリオンに余計なツッコミを入れてはその都度(というか何もなくても)抓(つね)られる。温厚で“徒”には常に敬意を払う性格だが、主人であるダンタリオンの研究を否定する者には不機嫌な印象を持つ。しかし、宝具を使用できることから見ても、(実は)かなり高性能な“燐子”である。首だけになっても活動可能。
ナンバーが28なのは恐らく鉄人28号のパロディ。アニメ版では機械仕掛けの“燐子”と位置付けられ「フレイムヘイズはその気配を認識できない(御崎市駅潜伏時)」という特性があった。通し番号の若さを考えれば、ダンタリオンはその天才ぶりにふさわしく、遥か大昔に自律思考型ロボットを製造できた事になる。
アニメ版には彼(?)の量産型のような「27 1/5」が大量に出現した(1つ1つに意思はなく、ダンタリオンの機械から発せられる“存在の力”で動いている)。
“穿徹の洞(せんてつのほら)”アナベルグ[Annaberge]
“紅世の徒”。トレンチコートとソフト帽を身に纏い、火掻き棒のような手と丸型メーターの顔を持つ。
人間が作り出す文明や優れた物に心酔しているが、「文明の加速(発達を促進する)」のため、それらの破壊を目的に活動している。袖口などから噴出する蒸気で気配や“存在の力”をぼやかす事が出来るが、敵味方問わずの気配の混淆の為にフレイムヘイズの奇襲に“徒”が気付きにくくもなる。また、切り札として発射した炎弾の任意爆破もできる。炎の色は鉛色
[革正団]との戦いでフレイムヘイズ達がニューヨークから離れた隙を狙い、“千変”シュドナイを護衛として雇ってエンパイア・ステート・ビルを破壊しようと目論むが、マージョリーに阻止され、最後はユーリイに討滅される。
通称の由来はドイツで鉱山を守るとされる悪魔、アナベルグから。
海魔(クラーケン)[Kraken]
海魔は海洋上で人を襲う“徒”の総称であり、ここでは、かつてユーリイ・フヴォイカを襲った個体について述べている。
通名、真名ともに不明。炎の色は腐った藻のような暗い緑色。巨大な蛸のような姿。アメリカに向かう移民船を襲撃したが、ウァラクと契約したユーリイによって一撃で倒された。
通称の由来は北欧神話に登場するクラーケン
ロフォカレ[Rofocale]
真名及び炎の色は不明。三角帽に燕尾服の青年で、古風なリュートを抱える自称「楽師」。感受性に優れる。[仮装舞踏会]の協力者で、シュドナイ率いる軍の索敵を行っている。
通称の由来はおそらく地獄の宰相、ルキフグ・ロフォカル。
“駆掠の礫(くりゃくのれき)”カシャ
“紅世の徒”。薄手のジャケットにスラックス、首には洒落たストリング・タイという姿の青年。
ゾフィー・サバリッシュの下で師事していたシャナ(当時は炎髪灼眼の少女)と戦い、あっけなく討滅された。数十もの指輪からなる宝具『コルデー』を操る。炎の色はアイボリー
通称の由来は中国の独龍族の神話に登場する神。
“鯨鱗(げいりん)”ニティカ[Nitika]
“紅世の徒”。巨体は翼竜とも見え、体中に鱗のように金貨を貼り付けている。
外見から、金貨を集めることが趣味と推測される。古美術商店の金庫を漁っていたところをシャナ(当時は炎髪灼眼の少女)に襲撃され、逃亡。自身を中心とした移動式の封絶(全身に貼られた金貨が媒体のようだ)を構成し、低空飛行で破壊した街並みを未修復の状態で封絶外に放り出すことでシャナの動揺を誘ったが、最終的にゾフィー・サバリッシュに討滅された。炎の色は鼠色
通称の由来はヌクテメロンにおける六時のゲニウスの一人、宝石を司るニティカ。
“戯睡卿(ぎすいきょう)”メア[Mare](ゲーム 小林沙苗
“紅世の徒”。ゲーム版オリジナルとして登場した“徒”だが、ゲーム版も外伝の位置づけとなったからか、小説でも“壊刃”サブラクと知り合いらしき描写がある。ゴスロリ風の衣装と日傘という上品ないでたちをしている“徒”で、『零時迷子』の“ミステス”である悠二に執着していた。その実体は“ミステス”に寄生する、存在そのものは非常に小さい“徒”で、少女の姿も寄生している“ミステス”の物であり、本来の姿はピエロの様な姿。悠二に寄生する事で強くなろうとしていた。夢を操る自在法『ゲマインデ』と、寄生している“ミステス”の宝具、無数の鈴を飛ばす『パパゲーナ』を操る。炎の色は朱鷺色。                                      

[仮装舞踏会(バル・マスケ)]

盟主』と『三柱臣(トリニティ)』を中心とした、世界最大の規模を誇る“紅世の徒”の大集団。『大命』と呼ばれるものの成就を主眼とした活動をしているらしい。大命について、いまだ詳細は語られていないが、紅世・こちら側の世界共に大掛かりな変異を齎しかねない「何か」の為の百年・千年単位の計画であるようだ。『大命詩篇』と呼ばれる自在式(を纏めたものか?)にその詳細が記載されていると思われる。普段はこの世に跋扈する“徒”に、フレイムヘイズの発生を防いだり追跡をかわすための訓令を与えたり、この世に跋扈する“徒”に仇なすフレイムヘイズやその外界宿(アウトロー)の殲滅を行うなど、この世の“徒”に対する互助共生を行っている。行動の上に人間を使わず、“徒”だけで全ての事柄を行う。

役職として、上記の三柱臣に加えて、現在判明してる限りでは、戦闘を担当する巡回士ヴァンデラー)、フレイムヘイズの捜索・追討や組織のための情報収集を担当する捜索猟兵イェーガー)、組織の中枢と各地の捜索猟兵や巡回士らとの連絡を主任務とする布告官ヘロルト)などが存在する。

“祭礼の蛇(さいれいのへび)”坂井悠二
[仮装舞踏会]盟主。その正体はいまだ不明ではあるが、サブラクにより『零時迷子』へと打ち込まれた自在式により悠二の中に潜在・観察していた盟主の意識が、彼の望み(恐らくXIII巻での「頑張って戦い“徒”との戦いを終わらせる」という願い)を感じ、『零時迷子』では無く彼自身に興味を持ち、自分とともに歩む唯一の存在として認め、悠二もその存在を認め、融合を果したと思われる存在。現在はあくまで『仮の帰還』であるらしい。今後のストーリーの鍵を握る人物。
マルコシアス曰く、過去に『大縛鎖』と呼ばれる都を作った途端にフレイムヘイズから袋叩きにあい「一発昇天」した筈なのだが、どの様な状態でいるかは不明ではあるものの、現在“久遠の陥穽”と呼ばれる場所に存在している模様。強力な“王”達から敬服されている事から相当に強力な“王”と思われる。声は悠二の物と盟主の物の二重になっているが言動に悠二の面影は確認できず、謎が多い。数千年前に多くの人間に呼ばれていた名を捨て、“祭礼の蛇”坂井悠二という名で呼称されることになる。つまり『零時迷子』の“ミステス”である坂井悠二の名を自らの通名としている。袋叩きにあって消えた彼がなぜ生きており、どうやって仮とはいえ復活を遂げたかは、『大命詩篇』や『暴君』と因果関係があると思われるが詳細は不明。炎の色はであり、その炎が写す影の色は
『暴君』
仮装舞踏会の盟主に関係する『我学の結晶』だが詳細は不明。歪んだ西洋風の板金鎧の姿をしている。その本体は[仮装舞踏会]の本拠地、『星黎殿』の奥に磔にされている。フィレスが『零時迷子』を取り出そうとした際、その右腕が『零時迷子』の元へ転移した。マージョリー・ドーの仇敵である“銀”と深い関わりがある、もしくはそのものだと思われるが詳細は不明。人間の人格サンプリング装置であり「複数存在」するような言動が見られる。炎の色は
“逆理の裁者(ぎゃくりのさいしゃ)”ベルペオル[Bel-Peol](アニメ 大原さやか
“紅世の王”。[仮装舞踏会]『三柱臣(トリニティ)』の参謀。かつての役職名は軍師で、[仮装舞踏会]改組の際に改名させた。右目に眼帯をした、三つ目の女性。狡猾で智略に長けており、さらに部下を簡単に切り捨てることができる冷酷な“王”。常から不在がちな盟主と託宣に明け暮れる巫女“頂の座”ヘカテー、不真面目な将軍“千変”シュドナイに代わり、実質的に組織を運営している。『星黎殿』の司令室である『祀竃閣』にいることが多いが、大命遂行の為に外出する事も多い。「組織であるがゆえの強さ」を重んじ、数千年という単位で唱えている。大命遂行時にのみ行使を許される宝具『タルタロス』を所持している。『大戦』で『大命詩篇』が砕け、その影響で苦しむヘカテーを救助するために外部との共振、特定現象から切り離すなどの場面が見られるものの、その力の詳細は不明。
[仮装舞踏会]は三本柱ほどの強力な王が従っているにもかかわらず、目的がフレイムヘイズ側に知られていない事やベルペオル本人の智謀への評価から、対峙するフレイムヘイズは事あるごとに「彼女の陰謀の一環では無いか?」と疑心暗鬼に駆られて、その勢いを押し留める結果となっている。本人も自分の評判をせいぜい有効に活用しているようである。ダンタリオンからせしめた自在式を込める事のできる金塊を使ってゴルディアン・ノットなどの宝具を製造して利用している。
悠二の内にある『零時迷子』の存在に気付いてからは、『実験』を一段落させたダンタリオンを再び呼び戻し、“壊刃”サブラクに声を掛け、シュドナイ始め戦闘部隊に外界宿(アウトロー)を攻撃させている。炎の色は
通称の由来は、ルシファーの副官とされる悪魔 ベルフェゴール(Belphegor)の別名とされる、バアル=ペオル(Bel-Peol)と思われる。
“頂の座(いただきのくら)”ヘカテー[Hecate](アニメ 能登麻美子
“紅世の王”。[仮装舞踏会]『三柱臣(トリニティ)』の巫女を務める。表情に乏しい幼い美少女の容姿をしている。杓子定規な物言いが特徴。大命遂行に際し、主に『盟主』の意思を受ける役割があると思われる。通常は『星黎殿』の内部にある祭壇の間『星辰楼』にその身を置いている。大命遂行の際にのみその行使を許される宝具『トライゴン』を所持する。他にも「教授」とドミノの会話から笛の宝具を所持している可能性がある(ドミノがヘカテーの事を笛の巫女様と呼称していた事と「教授」が笛を十六回も改造してあげたと言った事から)。自身の炎と同じ色の光弾を流星の如く飛ばす自在法『アステル)』を使う。一度に数十発飛ばす事も可能。華奢な外観とは裏腹に膂力体術にも長けており、シャナと互角に渡り合える程である。[仮装舞踏会]の至上命題たる『大命詩篇』の扱いを一手に担っている。
自らに言い寄るシュドナイを相手にしないなど、基本的に他人とはあまり関わらない性格だが、盟主たる“祭礼の蛇”を神として崇拝している。その他、何故か誰もが扱いに困る変人ダンタリオンのことは「おじさま」と呼んで慕っており、彼を馬鹿にされると静かにながらも機嫌が悪くなる。また、高い山の山頂で過ごす事を趣味にしており、山を汚す登山家を嫌っている(過去に何度か出くわした際は、例外無く皆殺しにしたらしい)。天然の気もあり、とにかく素性が知れない少女。『零時迷子』に刻印(おそらく探知系の自在式)を刻み付けて、『零時迷子』の位置を常時探知出来るようにした。炎の色は明るすぎる水色。通称の由来はギリシャ神話で呪術を司る女神ヘカテ
アニメ版での設定では、膨大な器の持ち主で自分の器が満たされる事が望みだった。他者の器に自分の器を合わせると言う能力をもっており、今まで様々な者に器を合わせてきたが満たされたことはなかった。
灼眼のシャナSの『狩人のフリアグネ』でのフリアグネの話によると帽子の中には夢と秘密が詰まっているらしい。
また、アニメの番外編で『頂のヘカテーたん』というものも存在した(『灼眼のシャナたん』のIIIに相当する)。
“千変(せんぺん)”シュドナイ[Sydonay](アニメ 三宅健太
“紅世の王”。[仮装舞踏会]『三柱臣(トリニティ)』の将軍。しかし職務に対しては怠慢で、普段は依頼を受け他の“徒”を護衛している。
他の“徒”とは異なり、変化の本質を持っているため姿は不特定であり、必要に応じて姿を自在に変えることができる。普段は人間型をしており、プラチナブロンドをオールバックにしサングラスを掛けた(中世には黒い鎧の姿をとっていた)長身の男性の姿をとる。しかし戦う時や『食事』の時には、頭や腕や口を様々な場所に複数作ったり、部分的に腕や口などを巨大化させたり、全身や体の一部を蝙蝠、亀、大蛇など様々な動物(虎が比較的多い)に変えたりする(アニメでは、一本角のライオンの体に鳥の脚、蝙蝠の翼、爬虫類の尾、という姿で一定している)。
戦闘時には「本質そのままの姿」へと姿をとる戦闘スタイルからか、人間の文化に憧れるあまり本質そのままの姿を陳腐とする最近の“徒”の風潮を、内心で寂しく思っている。一方で、人間の姿をとる際には当代の流行文化をいち早く取り入れる洒落者の面も持つことから、人間の文化そのものには好意的と言える。特に煙草が大好きで、いつも吸っている。
素の力も非常に強力だが、大命遂行の際のみ、宝具『神鉄如意』を使い、事あればあらゆる物をその強大な力で粉砕する。
同格のヘカテーに好意を持っており「俺のヘカテー」と公言して憚らないが、当人には職務態度の悪い同僚程度にしか思われておらず、毎回きっちり「私はあなたのものではありません」と返されている。普段は飄々とした性格だが、ヘカテーが傷つけられると怒り狂い、傷つけた相手に全力で報復する。ダンタリオンも悪意は無いのであろうが、傷つけた過去があるようでボコボコにされているようだ。 さらにその怒りはヘカテーを守れなかった味方の護衛にも同等に矛先が向く。同格のベルペオルですら真剣に恐怖を感じるほどで、周りは敵の襲撃以上に、ヘカテーが傷つくことと、それがシュドナイに知れることを恐れている。
一方でベルペオルのことは公然と「ババア」呼ばわりしてこき下ろすが、ベルペオルもいちいち皮肉たっぷりに接しているのでどっちもどっち、お互いに「性格の反りは合わないが、その実力を利用する」関係といえる。ちなみに両者とも何者かとなんらかの盟約を結んでいるが、シュドナイはあまりその盟約には忠実ではない。
III巻で“愛染”兄妹の護衛をしている際に悠二と遭遇。“ミステス”と気づいて中の宝具を奪い取ろうとしたが、『零時迷子』に掛けられた『戒禁』(防御用の自在法)によって、右腕と本質の一部を失った(その後、再構成した)。そのことと、大した力を持たないのに“封絶”の中で動く事からから悠二の中身が『零時迷子』だと察知し、以降は[仮装舞踏会]の「将軍」と言う本来の職務に、急に本腰を入れるようになる。炎の色は濁った紫。通称の由来は悪魔アスモデウスの別名から。
“道司(どうし)”ガープ[Gaap]
“紅世の王”でベルペオルの直属の部下。武装修道士の姿をしている。大仰で騒がしい、嫌味な性格。駆ける速さで並ぶものはないと言われ、連絡役として動く事が多い。ただし精度や機動性には欠ける。『大戦』にも参加していた。
戦闘では『四方鬼』という“燐子”の人形で固定した敵を体当たりで突き破る『大突破』という技などを使用する。史上最悪の“ミステス”、“天目一個”に討滅、吸収される。炎の色は浅葱色。通称の由来はソロモン72柱の序列33番の悪魔ガープ
“獰暴の鞍(どうぼうのくら)”オロバス[Orobas]
“紅世の徒”。『大戦』時は黒馬の姿をしており、シュドナイが騎乗していた。現在は姿を黒服の男に変えており(おそらく人化の自在法による物)、バルマスケのシュドナイの軍に同行している。かなりシュドナイに心酔している模様。炎の色は。通称の由来はソロモン72柱の序列55番の悪魔オロバス
“千征令(せんせいれい)”オルゴン[Orgon](アニメ 斧アツシ
巡回士ヴァンデラー)の一人。“紅世の王”で、ベルペオルの古くからの直属の部下。『大戦』にも参加している。かなり傲慢で尊大な性格で、馬鹿にされるのを嫌う。トランプのジャックの騎士の名を冠す『レギオン』という、自らの“存在の力”を込めた薄く鋭い紙の軍勢を用いて戦う。また、この『レギオン』に自らの本質の顕現に使う力のほとんどを注ぎ込んでいる為、その姿は帽子、マント、手袋が浮いているだけのものとなっている。一見マティルダの『騎士団(ナイツ)』と似た能力だが、『レギオン』は自在法とはいえ、“千征令”というオルゴン固有の本質の顕現であるため『騎士団』とは原理も由来も関係なく、またオルゴン本体だけを討滅しても『レギオン』は消えない。一部を倒したり翻弄するのは容易でも、全てを滅ぼすには骨が折れ、敵を疲弊させてその数を持って敵を蹂躙する厄介な“王”。フレイムヘイズ達の外界宿(アウトロー)を単独で全滅させるほどに強大な力を持ち、「戦争屋」として恐れられている。
外界宿を潰す任務の帰り、[仮装舞踏会]からの連絡を受けてウィネと合流。ウィネに『天道宮』突入の為の囮として利用され、(彼の視点では)“天目一個”に虚仮にされ、ヴィルヘルミナに『レギオン』を翻弄され、と散々な目に遭った挙句、メリヒムの『虹天剣』によって全ての『レギオン』ごと一撃の下に滅された。炎の色は錆びた青銅のように不気味な緑青色
“琉眼(りゅうがん)”ウィネ[Vine](アニメ 鈴木達央
比較的若年の“紅世の徒”。捜索猟兵イェーガー)の一人。知覚を他人に伝染させて広範囲を探索する能力を持つ。また、他者の視界を任意の方向にねじ曲げるという、使い方次第では強力な武器になる能力もあり、過去に幾人ものフレイムヘイズを自身の手で討ち果たしている。ベルペオルを女神と崇め心酔しており、組織の大方針の一つである、「『炎髪灼眼の討ち手』の再契約阻止」を果たそうとするため、自身の能力で『天道宮』の場所を突き止めて奇襲したが、“天目一個”などの妨害に遭って失敗し、彼が女神と崇めるベルペオルによって命の残り火を利用され『天道宮』を崩壊させられた。
バイクをこよなく愛し、外見はライダースタイル。この世で手に入れ、手入れも欠かさない年季の入った中型バイクに跨り、フルフェイスのヘルメットのシールドには大きな両目が描かれている。この目は気分に応じて表情を作り、力を使うときなどは大きな一つ目となる。なお、ソラトとティリエルの兄妹を[仮装舞踏会]に紹介したのは彼である。彼らと別れる際、「因果の交差路で、また会おう」という“徒”の交わす別れの挨拶を教えたが、彼らの因果の道は再び交差する事はなかった。炎の色は藤色。通称の由来はソロモン72柱、序列45番ウィネ
“嵐蹄(らんてい)”フェコルー[Fecor]
“紅世の王”。『星黎殿』の防衛を一手に任せられている。ベルペオルの副官的存在。
外見に悪魔のような特徴を持つ、うだつの挙がらない中年男のような風采だが、相当に強大な“王”。『星黎殿』の中では『秘匿の聖宝(クリュプタ)』の効果で彼の強大な気配は隠されており、見た目の貫禄の無さと、誰に対しても腰が低い事もあって、若い“徒”には彼の実力を知らない者も少なくはなく、ウィネなどは単なる「案内係のおっさん」としか認識していない(そもそも彼が“嵐蹄”である事に気づいていない)。これは密かな監視などが目的ではなく、組織の末端にまで眼を配り、構成員たちの生の声を聞こうという彼自身の意図によるものである。粒子の嵐を操る鉄壁の防御用自在法『マグネシア』を使う。炎の色は臙脂。通称の由来は財宝を守るとされる悪魔フェコル。
“翠翔(すいしょう)”ストラス[Stolas]
“紅世の徒”。布告官ヘロルト)の一人で、その中でも古株的な存在。全身は獣毛に覆われ、頭部は無く、大きく張った胸に一対の眼、腹部に裂けた口を持ち、両腕は翼になっている、鳥とも獣とも人ともつかぬ異形の“徒”だが、見た目に相違して非常に律儀で礼儀正しい。文中では「鳥男」と記述される。鳥肉が好物で、鵞鳥を丸のまま喰らう(“徒”に通常の食事は不要であり、これはシュドナイの煙草などと同様、彼の嗜好である)。かつて『大戦』に参加し、その経験から『炎髪灼眼の討ち手』の復活を極度に恐れ、“琉眼”ウィネを始めとする多くの捜索猟兵を焚き付けて『天道宮』の捜索と再契約の防止を図った(が、結果だけ見れば完全な逆効果となった)。シュドナイの大命遂行に付き従うが、気ままな将軍に振り回され、いつも苦労させられている。『ドレル・パーティー』襲撃の際には、包囲網の指揮を取った。炎の色は(はなだ)。通称の由来はソロモン72柱、序列36番ストラス
“聚散の丁(しゅうさんのてい)”ザロービ[Zarovee]
“紅世の徒”。捜索猟兵イェーガー)の一人。
柔和な笑顔を浮かべた、痩身の老人の姿をした“徒”。それぞれが細い力の紐で繋がった赤、青、黄、緑、桃のスカーフをそれぞれ巻いた同じ姿(人数と色分け、及びオーバーアクションは「秘密戦隊ゴレンジャー」など「スーパー戦隊シリーズ」のパロディ)に分身したり、離れた自分と融合する事が出来るが、一体一体の力は非常に弱く、残り火の強いトーチ程度。ビフロンスと組んで任務に当たる事が多い。一人称は「ワタクシ」。“壊刃”サブラクを発見した結果、ベルペオルより大命の要たる坂井悠二の奪取、及び妨害するフレイムヘイズらを討滅する任務を授かったが、彼らはサブラクの襲撃のための囮に過ぎなかった。悠二によって秒殺討滅される(現在のところ、彼がこれまでに討滅した唯一の“徒”である)。炎の色は飴色。通称の由来はヌクテメロンにおける3時のゲニウスの1人、危地を支配するザロビ。
“吼号呀(こうごうが)”ビフロンス[Bifrons]
“紅世の徒”。巡回士ヴァンデラー)の一人。
土管を2つつなげたような身体に虫のような足が幾対も生え、拷問器具のような鉄棒で編まれた頭部という異形の姿。ガリガリという金属音のような笑い声と、読点の多い口調が特徴。普段は宝具『タルンカッペ』で気配を隠しているが、この状態では移動速度が非常に遅い。破壊を得意とし、瓦礫を吸い込み、その砲身の様な身体から強烈な一撃を放つ。ザロービと組んで任務に当たる事が多い。ザロービと共に囮として使われており、最期にはサブラクによって瀕死のところを遠隔操作され、自身の“存在の力”を砲撃に使い果たして消滅した。炎の色は樺色。通称の由来はソロモン72柱、序列46番ビフロンス
レライエ[Lerajie]
真名及び炎の色は不明。白服の女性の姿をしている。シュドナイの大命遂行に同行する。通称の由来はソロモン72柱、序列14番レライエ
デカラビア[Dacarabia]
真名及び炎の色は不明。XIII巻で名前のみ登場。レライエの上位に当たるらしい。シュドナイいわく「有能ではあるが、とにかく変物」で、周囲からの好悪の感情が極端に分かれている。通称の由来はソロモン72柱、序列69番デカラビア

[とむらいの鐘(トーテン・グロッケ)]

古く強大な“紅世の王”、“棺の織手”アシズを中心に組織され、16世紀初頭(先代『炎髪灼眼の討ち手』の時代)に『大戦』の結果消失した当時最大規模の“紅世の徒”の集団。理由は“徒”によって異なるが、フレイムヘイズとの戦闘を前提に置く戦闘集団。ヨーロッパのブロッケン山に要塞を築き、拠点としていた。[とむらいの鐘(トーテン・グロッケ)]の名は、世に新しい理を作る際に、古い理に対してとむらいの鐘を送るという意味を持つ。

16世紀初頭に、”棺の織手”アシズが『壮挙』と呼ぶ『両界の嗣子』の形成を実行するため、大戦の5日前には『壮挙』を為すために必要不可欠な宝具である『小夜啼鳥ナハティガル)』の争奪戦を、その18年前には都市オストローデで戦いを、フレイムヘイズや敵対する“紅世の徒”との間で起こしている。なお、争奪戦では『小夜啼鳥』を奪取し、都市オストローデでは秘法『都喰らい』を発動させ、勝利を収めている。

彼らの『壮挙』は、これに阻止すべく多数のフレイムヘイズを生み出す結果となった。この時期に「乱造」されたフレイムヘイズは、「ゾフィーの子供たち」と俗称される。

余談ながらブロッケン山、オストローデともに同名の土地が現ドイツ中部に実在する。「ゾフィーの子供たち」にゲルマン系の姓名が多いのは、同地方の出身者が多いからと思われる(物語のオストローデ市は都市ごと“存在の力”を喰われたので、人間同様「最初から存在しなかった事」となる筈であり、現在のオストローデ市と同一ではない可能性がある)。

“棺の織手(ひつぎのおりて)”アシズ[Asiz]
“紅世の王”。かつて『鍵の糸』という仕掛けを使い『都喰らい』を行い、都市丸ごとの“存在の力”を得て自身を強大な存在にした。ティスを蘇らせることは叶わなかったが、ティスの最後の願いを叶える為に、宝具『小夜啼鳥ナハティガル)』の力を用い、自身と愛するティスの存在を融合させた『両界の嗣子』を生み出そうとした。
元々は最古のフレイムヘイズの一人として活動していた“王”で、世界のバランスを守るという使命に燃える優れた自在師だったが、契約者であった少女ティスの死に際に彼女への愛情に気づき、彼女の喪失を恐れ周りの人間を喰らい顕現する。その際の代償として、“紅世”との関わりを完全に断ち切った。“棺の織手”とは本来、彼と契約していたフレイムヘイズの称号であり、彼自身の本当の真名は“冥奥の環(めいおうのかん)”である。
ティスを蘇らせるためのすべを探してフレイムヘイズと敵対しながら世界を旅するうち、『九垓天秤』と呼ばれる強大な力を持つ九人の“王”を従え、中世最大規模の“紅世の徒”の集団、[とむらいの鐘(トーテングロッケ)]を組織するまでに至る。
[とむらいの鐘]が強大な組織となったのは彼が出会った“徒”を誰も見捨てなかったからであり、癖の強い『九垓天秤』全員から慕われているところからもその人格面での優しさを伺える。愛し合う者同士が共に生きる事を望んだが叶わなかった過去を持つためか、マティルダとアラストールが愛し合っていた事を知っていたため、瀕死でもはや勝利は無いのに道具の様に世界のバランスを守るために死のうとする二人に同情し、二人の間にも子を作らせ仲間にしようと説得するが、最終的にアラストールの神威召喚『天破壌砕』で彼らに討滅される。仮面をつけた蒼い天使の姿をしている。『清なる棺』という、ある意味封絶に似た周囲の因果から閉鎖された強力な凝固空間を作り出す能力を使える。炎の色は
“虹の翼(にじのつばさ)”メリヒム[Merihim](アニメ 小西克幸
“紅世の王”で『九垓天秤』の一人。役柄は[とむらいの鐘]が誇る力の象徴『両翼』の右。『九垓天秤』中で唯一、その姿は人間のものと酷似している。一体一体が並のフレイムヘイズに匹敵する力を持つマティルダの『騎士団』を問題にせずに一瞬にして切り伏せる剣技に加え、距離による威力減退が無いも同然の破壊の虹を剣閃と共に放つ、無双の射程と威力を持ち当代最高の破壊力を誇る自在法『虹天剣』を使い、さらに虹天剣の反射・変質を行う宙に浮く透明な「攻撃のための盾」、“燐子”『空軍アエリア)』を多数所持しており、戦いにおいて空中での強大な抑止力となっていた。また、虹天剣は虹の七色の内の赤や黄色の光線だけを飛ばして威力を抑えたり、ある程度広範囲に放つ事や、切り札として七人に分身し相手を囲み、それぞれが放つ七色の光で虹の輪を作り破壊の力を集中させ撃砕する技も併せ持つ。宿敵であり、当代最強を誇ったフレイムヘイズ、マティルダ・サントメールを愛し、恋敵であるアラストールを嫌っていた。
先の『大戦』の折、先代『炎髪灼眼の討ち手』マティルダ・サントメールに敗れたのち、マティルダとの「誓い」を彼女への愛の証明として守る為、自らの顕現の規模を最低限の動くのみに抑えた「白骨」として数多くの『炎髪灼眼の討ち手』候補や幼少期のシャナ(まだ名はなかったが)を鍛えた。シャナからは「シロ」と呼ばれていた。シャナの契約の後、マティルダとの「誓い」から、イルヤンカと共にマティルダとヴィルヘルミナと死闘を繰り広げ敗れた後、数百年間全く回復していない身体に残された命を削った最後の力(相性の問題もあったとはいえ、強大な“王”であるオルゴンを一撃で滅するほどの攻撃力を出すことは出来た)で“紅世の王”としてシャナと戦い、身をもって彼女にフレイムヘイズの戦い方を教え、自らの成果に満足しながら倒される。ヴィルヘルミナは彼に好意を抱いていたが、彼は最後まで真っ直ぐにマティルダを愛し続けたのであった。自己中心的で傲慢な性格で癇癪持ちだが、聡明な所や冷静な所や一途な所もある。あだ名は「虹の剣士」。炎の色は虹色。通称のメリヒムの由来は雷と稲妻を齎す『空の軍勢』の君主たる悪魔デーモン、または地獄の九階級の第六位、アエリアエ・ポテスタテス(“空の軍勢”の意)の君主『メリジム(Merizim)』。つまり、『空の軍勢』が共通点であった。
“甲鉄竜(こうてつりゅう)”イルヤンカ[Illyanka]
“紅世の王”で『九垓天秤』の一人。役柄は[とむらいの鐘]が誇る力の象徴『両翼』の左。体中が鈍色の鱗で覆われた、四足・有翼の巨竜の姿をしている。自らを老人と称する、非常に古株の“王”。戦闘時は獰猛な面を見せるが普段は温厚で、ともすれば激発しがちなメリヒムらの抑えにまわる、『九垓天秤』の長老格。チェルノボーグのモレクに対する想いや、ヴィルヘルミナのメリヒムへの好意にも気付いていた。口や全身から噴出し留まらせる事で強大な防御力を発揮する、当代最硬を誇る自在法、『幕瘴壁』を使う。また、『幕瘴壁』は先端のみを硬化させることで強大な打撃力をもつ推進弾としても応用できる。
先の『大戦』の折、メリヒムと共に宿敵マティルダとヴィルヘルミナと戦い、ヴィルヘルミナの手によって討滅される。あだ名は「鎧の竜」。炎の色は鈍色
通称の由来はヒッタイト神話の邪龍イルルヤンカシュ(イルヤンカ)。
“大擁炉(だいようろ)”モレク[Molech]
“紅世の王”で『九垓天秤』の一人。役柄は宰相。『九垓天秤』の実質的なリーダーだが、普段は控えめというより小心で、地位に伴う威厳は皆無である。豪奢な礼服を纏った、直立した牛骨の姿をしている。その力の大きさは異常な程であり、自らを空間ごと山をも覆う巨大な牛型の迷宮へと変質させる自在法『ラビリントス』を使う。
同志に対しては穏やかで優しいが、人間は「自分達と同じ様な精神を持つが決定的に弱い種族」として、他の“徒”同様、「麦の穂」程度にしか思っていない。また、他人の自分への思いを察知するのにも疎く、最後まで周りからの密かな尊敬やチェルノボーグの好意にも気付けなかった。最後は主や仲間のために、自身の確実な死を理解しながらも『ラビリントス』を維持し続け、マティルダの全力爆破により討滅された。あだ名は「牛骨の賢者」。炎の色は黄色
通称の由来は中東の神、ソロモン72柱序列21番のモレク
“闇の雫(やみのしずく)”チェルノボーグ[Chernobog]
“紅世の王”で『九垓天秤』の一人。役柄は隠密頭。獣の耳を持つ、黒髪で痩身の女性。右の巨腕を織り交ぜた体術や爆破攻撃や、影に身体の一部や全体を潜り込ませ移動する『影浸』という自在法を駆使し闘う。モレクに好意を寄せ、彼から与えられた仕事をこなすこと、彼を守る事にこの上なく大きな充足感を覚えていたが、表面上は彼を「痩せ牛」と呼んで蔑むそぶりを見せ、いつもきつい態度で当たっていた。
モレクを失った喪失感からの自暴自棄気味な特攻の果てに、先代『炎髪灼眼の討ち手』マティルダ・サントメールの胸を貫き致命傷を負わせるも、ヴィルヘルミナ・カルメルの手で討滅される。あだ名は「黒衣白面の女」。炎の色は枯草色
通称の由来はロシア神話に登場する黒の神チェルノボグ
“凶界卵(きょうかいらん)”ジャリ[Jarri]
“紅世の王”で『九垓天秤』の一人。役柄は大斥候。魔物・老人・女の面が張り付いた人間大の卵の姿をしていて、その3つの面から付き合いの長い仲間でさえもなんとなくしか意図が知れない意味不明な声を繋げて喚く。チェルノボーグのモレクに対する想いにも気付いている様で全く関係ない様な、微妙な発言もした。
無数の蠅の大群にて広範囲の相手を索敵・情報収集・攻撃する自在法『五月蝿る風』を駆使する。攻撃用の自在法では無いため、ある一定以上の防御力を持つ相手には攻撃効果がないが、それでも十分に強力であり、『大戦』の舞台となった平原の空中で『空軍(アエリア)』を失ったメリヒムに代わり、討ち手の大部分の飛行を封じていた。あだ名は「奇妙な卵」。最強の敵マティルダを前に最後まで主に付き従ったが、マティルダにより『天破壌砕』を行う際の生贄とされた。炎の色は亜麻色
通称の由来はヒッタイト・小アジアの疫病の神。
“巌凱(がんがい)”ウルリクムミ[Ullikummi]
“紅世の王”で『九垓天秤』の一人。役柄は先手大将。分厚い鉄板もしくは鉄塊を巨大な人型に組んだような姿で頭部は無く、胴体部分に双頭の白い鳥の絵が描かれている。大戦では“徒”の軍勢を率い、フレイムへイズ兵団と戦った。周囲の鉄を集め、自身の濃紺の炎の竜巻に巻き込み、膨大な質量と速度で敵を砕く自在法『ネサの鉄槌』を使う。あだ名は「鉄の巨人」。
卓抜した戦術眼と統率力の持ち主であり、公明正大な人格者で、仲間からの信頼も厚い。炎の色は濃紺。『大戦』では、先手大将として軍勢を率いて、雷を使う相性の悪いゾフィー率いるフレイムヘイズ軍団と戦い続け、アラストールの顕現により大勢が決した後はより多くの同胞を生かすため、フレイムヘイズを足止めするために残り、ゾフィーに討滅される。
通称の由来はヒッタイト神話に登場する巨人ウルリクムミ
“架綻の片(かたんのひら)”アルラウネ[Alraune]
“紅世の徒”。その姿は、美女の顔を中心に抱いた妖花。援護や補助の法を得意とする自在師で、“巌凱”ウルリクムミの副官を務めていた。常に疑問形で話す癖がある。炎の色は薄桃。最後まで先手大将としての使命を果たそうとするウルリクムミに付き添い続け、彼と共に散る。
通称の由来は人の形をした植物、アルラウネ
“焚塵の関(ふんじんのせき)”ソカル[Sokar]
“紅世の王”で『九垓天秤』の一人。役柄は“巌凱”ウルリクムミと同じく、先手大将。名うての戦上手であったが、『大戦』では、防御陣の相性の悪さと開戦早々に不意を突かれた事でカール・ベルワルドによって討滅されてしまった。木の葉一つ無い石の大木の姿をしており、洞から喋る。見栄っ張りな性格で、ブロッケン要塞落成の式典の際には、入城の序列を巡って騒ぎを起こしたりもした。話が回りくどい。陰険悪辣の嫌な奴(ウルリクムミの評)である為か、他の面々、特にニヌルタとは反りが合わない。“千変”シュドナイと知らぬ仲ではないらしい。炎の色は黄土
通称の由来はメンフィスの墓地の神。
“天凍の倶(てんとうのぐ)”ニヌルタ[Ninurta]
“紅世の王”で『九垓天秤』の一人。役柄は中軍首将。その姿は槍や剣や棍棒など様々な武器が刺さったガラスの壷で戦闘時はこれらの武器に霜が降り始める。「氷の剣」と形容されている。謹厳実直な性格で、公正ならば文句は言わないが、ソカルとはよく激突していた。『大戦』直前の『小夜啼鳥』奪取の際にフレイムヘイズらによって討滅された。炎の色は(あおぐろ)。
通称の由来はバビロニア神話の戦争の神。
“戎君(じゅうくん)”フワワ[Huwawa]
“紅世の王”で『九垓天秤』の一人。役柄は遊軍首将。腹まで口が裂けた巨大な狼の姿をしており、「牙剥く野獣」と形容される。戦いにしか興味のない性格。『大戦』以前の『都喰らい』発動後の戦いでマティルダによって討滅された。炎の色は焦茶
通称の由来はバビロニア神話の怪物フンババ (Humbaba) の古名と思われる。

関連項目