雨
雨(あめ)とは、空から水滴が落ちてくる天候のこと。また、その水滴。


雨の成因
雨は、気象学的には、地球上で水が循環する過程(水循環)で起こる降水現象の一つと位置づけられる。
雨の大半は、上空の気温により以下の二つに大別できる。ただし、これらとは異なる機構で発生する雨もある。
冷たい雨
日本の降雨の8割はこの「冷たい雨」の機構で起こるといわれている。
氷点下の大気中にある雲が原因となる。雲が過冷却の水滴でできている場合、氷晶核となるものができると氷晶が急激に成長する。氷晶がある程度の大きさになると、重力に耐え切れなくなって地上に落下する。この時点は、氷晶は固体であり、雪の形態をとっている。
氷晶が落下する途中で、気温が0℃より高い領域に達すると氷晶は融け始め、完全に融けると液体となり、雨粒となる。融けきれない場合は雪となる。地上の気温が0℃以上の場合、上空1500mで-6℃以上、または上空-5500mで-30℃以上で冷たい雨(又は霙)である。
暖かい雨
こちらは氷点以上の温度の場合の現象である。湿潤な空気が上昇すると、断熱膨張により冷却が起こり、凝結高度に達すると過飽和の状態になる。この際、大気中のエアロゾルを凝結核として雲粒が成長する。この成長はゆっくりしたものであるが、雲粒同士の併合過程により、一部の雲粒が急速に成長して重力に耐えきれなくなるほど大きくなる。この併合過程は、海洋性の積雲の場合に急速に成長する条件がそろっている。
雨粒
雨粒の大きさ
温帯地方の雨の水滴の大きさは、通常0.1~3mm程度である。0.1mm以下の雨粒は雲の中の上昇気流によって落ちなかったり、落下中に蒸発してしまい、消えてしまうことがある。3mm程度以上の大きさの雨粒は途中で分解してしまうことが多い。
雨粒の形状
雨粒が空気中を落下するときの形は、雨粒が小さい場合は球の形をしているといわれている。雨粒が大きいときは、落下するときに空気に触れる下の面がやや平らになり、下が平らになった球の形をするとされている(参考)。
雨粒の落下速度は、雨粒の大きさによって変わる。小さい粒は空気抵抗によって遅くなるが、大きな粒はおおよそ9m毎秒程度である。また、落下時は、空気の抵抗によって雨粒は平らなまんじゅうの形になる。涙滴と思われていたのは、木の葉の先から露が落ちるときや、窓ガラスをつたう水滴が涙形をしているためである。1951年に北海道大学の孫野長治博士が空中を落下する雨粒の写真撮影に成功し、「まんじゅう形」を世界で初めて確認した。
雨粒の大きさと粒の数の関係は、1947年に、マーシャルとパルマーが1ページの論文の中で、「マーシャル・パルマーの粒径分布」として表わせる、ということが発表された。実際には、全ての場合に適用できるわけではないが、おおよそ指数関数的な分布になっている。
日本の気象通報の区分
日本式の気象通報においては、水滴の大きさが直径0.5mm以上の場合を「雨」といい、これよりも小さい場合は「霧雨」」とよぶ。
雨の強さ(雨量)
雨の強さ(雨量)は単位面積に降った雨がたまった深さで表わす。通常は時間雨量(1時間あたりにたまった深さ)を表記するが、短時間の降雨の強さを表すために10分間雨量などを用いることもある。また、1分あたりの雨量を60倍して時間当たりの雨量に直す場合もある。いずれのケースにおいても単位はmmを使うことが多い。
雨水の化学成分
雨水は大部分が水であるが、微量の有機物、無機物、特に重金属類を含んでいる。これらは雲が発生する際、あるいは雨となって地上に落ちてくる際に、周囲の空気や土壌から集めてくる。雨自体に臭いはないが、オゾン、湿度が上昇することによって粘土から出されるペトリコールや、土壌中の細菌が出すものでジオスミンが雨が降るときの臭いの元だと言われている。
通常でも雨水は大気中の二酸化炭素を吸収するため、pH(水素イオン指数)は5.6とやや酸性を示す。雨が亜硫酸ガスなどを大気中から取り込み、強い酸性を示すものもある。日本では目安として、 pHが5.6以下のものを酸性雨と呼ぶ。
雨の観測
レーダによる観測
降雨状況、あるいは降雨強度を知ることは、気象予報や災害対策に重要である。そこで、レーダーを使い、レーダからの反射状況を見て、降雨状況を観測することが行なわれている。気象観測用のレーダーは特に気象レーダーと呼ばれることが多い。
レーダを使う場合、広い地域の降雨状況を観測することが出来る。個々の雨粒は、その直径の6乗に比例して電波を反射する。このことを利用して、降雨状況を調べている。強い雨には大きな雨粒が多いので、反射が強いと言うことは、大きな雨粒が多い、と言うことが出来る。但し、反射強度と降雨強度は比例するわけではなく、レーダの観測状況から正確に降雨強度を求められないという問題がある。
一方雲の粒は雨粒に比べるとかなり小さい。そのため、直径の6乗に比例する反射強度にはほとんど影響しない。雲の状況を見るときには、雨の状況を見るときよりも波長の短い電波を用いる必要がある。
さらに、雨粒以外のものによって、雨と誤解される状況が存在する。たとえば、鳥、昆虫などの小動物や空気の乱れなどがあげられる。このような、雨でない観測結果を「エンジェルエコー」と呼ぶ。
「雨」と文化・生活
雨の概念や雨に対する考え方は、その土地の気候によって様々なものがある。イギリス、ドイツ、フランスなど西洋の温暖な地域(西岸海洋性気候の地域)では「雨」を悲しいイメージで捉える傾向が強く、いくつかの童謡にもそれが表現されている。
一方、雨が少ないアフリカや中東、中央アジアの乾燥地帯などでは、雨が楽しいイメージ、喜ばしいものとして捉えられる事が多く、雨が歓迎される。
雨が多く、水田や山林など生活に雨が大きく関係している日本では、古くから雨が少ない時には雨乞いなどの儀式が行われて雨が降る事を祈った。しかし、大雨は洪水をもたらし田畑を壊す事から、降った雨を上手に扱う治水の技術も重要視された。又、西洋と同じく雨に対する悲しいイメージもある。
雨により、人間の活動が制限される事もある。野外で予定されていた行事が、雨天で中止になったり変更される例はよく見られる。ただし、「少雨決行」のように弱い雨の場合には雨天に関わらず行事が行われる場合がある。
雨をテーマにした音楽
- 『雨』(童謡。北原白秋作詞。「雨がふります。雨が降る。…」)
- 『雨』(森高千里)
- 『24の前奏曲より第15番「雨だれ」』(フレデリック・ショパン)
- 『ヴァイオリンソナタ第1番「雨の歌」』(ヨハネス・ブラームス)
- 『雨』 (ジリオラ・チンクェッティ、Gigliola Cinquetti)
- 『版画 第三曲 「雨の庭」』(クロード・ドビュッシー)
- 『男声合唱組曲「雨」』(多田武彦)
- 『雨』(三善英史)
- 『雨の御堂筋』(欧陽菲菲)
- 『雨の樹(Rain Tree 1981年)』(武満徹)
- 『Endless Rain』(X JAPAN)
- 『はじまりはいつも雨』(ASKA)
- 『Rain』(大江千里)
- 『Rainy Blue』(氷室京介)
- 『RAIN』(LUNA SEA)
- 『RAIN』(GLAY)
- 『RAIN』(ビートルズ)
- 『RAIN』(SIAM SHADE)
- 『Walkin'in the rain』(T-BOLAN)
- 『Rainy』(Janne Da Arc)
- 『Rain』 (マドンナ)
- 『雨が叫んでる』(田原俊彦)
- 『雨に唄えば』
- 『雨にぬれても』バート・バカラック
- 『雨をみたかい』CCR(クリーデンス・クリアウォーター・リバイバル)
- 『通り雨』(Mr.Children)
- 『雨のち晴れ』(Mr.Children)
- 『雨のMelody』(KinKi Kids)
- 『雨のプラネタリウム』(原田知世)
- 『大阪レイニーブルース』(関ジャニ∞)
- 『雨やどり』(さだまさし)
- 『Singin' in the Rain』(L'Arc~en~Ciel)
- 『雨』(ORANGE RANGE)
雨の様々な表現
- 雨の強さや降り方による表現
- 季節による表現
特異な雨
水だけが降ってくる、あるいは透明な色をしている通常の雨とは違い、さまざまなものが雨と一緒に降ったり、色がついた雨が降ることがある。
突風を伴った嵐の場合は、土壌の成分を含んで茶色がかった雨が降ることがある。また、黄砂などの大気中の浮遊粒子(エアロゾルなど)を含んだ黄色がかった雨、赤みがかかった雨、砂や泥を含んだ雨が降ることがある。これらは珍しい現象ではあるが、時々起こるものである。
しかし、ほとんど報告されないような珍しい雨もある。例えば、魚やカエルが一緒に降るような雨が、世界各地で報告されている。特に動物の雨は「レイニング・アニマルス」とも呼ばれる。以下にいくつかの例を挙げる。
- 1901年7月、アメリカ ミネソタ州 ミネアポリス - 嵐が最もひどくなった時にカエルやヒキガエルの雨が降った。カエルはパタパタと音を立てて落下し、町のおよそ4ブロックに渡ってカエルで埋め尽くされ、最大8cmの厚さまで積もった。
- 1981年5月、ギリシャ ペロポネソス半島 ナフリオン - 60~80gのカエルが町に降った。北アフリカに生息する種であり、強風で運ばれたものと見られている。
- 1861年2月、シンガポール - 市内各地で魚の雨が降った。
- 1989年、オーストラリア イプスウィッチ - 小雨の中、サーディンという魚約800匹が降り、民家の芝生が覆われた。
- 1956年、アメリカ アラバマ州 チラチー - 晴天の中暗雲が現れ、ナマズ、バス、ブリームといった魚を降らせ、その後白い雲になった。
- 1890年、イタリア カラブリア州 メシナディ - 強風によって引き裂かれた鳥のものと見られる、真っ赤な血の雨が降った。ただし、裏づけとなるような強風や鳥の死がいはなかった。
- 2001年7月、インド ケララ州 - 赤みがかかった雨が降った。詳しい調査によれば雨には菌類の胞子が含まれていたが、出所は不明だった。(ウィキペディア英語版の参考記事:Red rain in Kerala)
- 1982年~1986年、アメリカ コロラド州 エヴァンス - トウモロコシの粒が数回にわたって降った。
- 2001年8月、アメリカ カンザス州 ウィチタ - 長さ20~30cmほどのトウモロコシの皮が降った。(皮は乾燥しており、雨は伴わなかった)