ヨシノボリ

ハゼの1グループ

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ヨシノボリ(葦登)とは、淡水域や汽水域に多く生息するハゼの1グループである。ヨシノボリという呼び名は特定の種類を指さず、ハゼ亜目・ハゼ科・ヨシノボリ属 (Rhinogobius) に分類される魚の総称として用いられる。

ヨシノボリ属
カワヨシノボリ Rhinogobius flumineus
分類
: 動物界 Animalia
: 脊索動物門 Chordata
亜門 : 脊椎動物亜門 Vertebrata
: 条鰭綱 Actinopterygii
: スズキ目 Perciformes
亜目 : ハゼ亜目 Gobioidei
: ハゼ科 Gobiidae
亜科 : ゴビオネルス亜科 Gobionellinae
: ヨシノボリ属 Rhinogobius
Gill, 1859

多数(本文参照)

特徴

成体の体長はどの種類も10cm前後である。体の模様は種類間でさまざまな変異があるが、目から鼻筋にかけて赤や黒の線が数本あるものが多い。

各地の沼、河口などに生息する。腹びれが変化した吸盤で川底の石や護岸にはりつくことができ、かなり水流が速い川にも生息する。幼魚が遡上するときなどは流れの横の濡れた岩場をさかのぼることもある。この様子から「にも登る」という意味でこの名がついたが、実際には自分から葦を登ることはない。

藻類や川底の有機物(デトリタス)などを食べることもあるが、食性はほぼ肉食性で、昆虫ミミズエビ、魚の卵や稚魚などを捕食する。空腹時には自分の体の半分くらいの大きい獲物にも貪欲に襲いかかる。よって飼育下では一緒に飼う動物の大きさに注意しなければならない。

オスは繁殖期になるとなわばりを作り、なわばり内に侵入する他のオスを激しく攻撃する。一方で川底の石の下に巣穴を掘ってメスを誘いこみ、産卵をおこなう。巣穴には捨てられた空き缶などを使うこともあり、春から夏にかけて川の中の空き缶を拾うと中にこの魚が入っていたということがままある。他にウキゴリチチブなども空き缶をよく利用する。

産卵後はオスがメスを追い出して、巣穴で仔魚がふ化するまで卵を守る。ふ化した仔魚は海へ降河し、海で成長して再び川をさかのぼる。ただし降河せずに一生を川ですごす種類や、海の代わりにダムや湖で成長するものもいる。

山地の渓流から都市部の河川までよく見られ、身近な川魚の一つに数えられる。人や地域によっては食用にされ、観賞用に飼育する人もいる。

分類

 
ゴクラクハゼ
Rhinogobius giurinus

かつて日本に生息するヨシノボリ属魚種は「ヨシノボリ Rhinogobius brunneus」「ゴクラクハゼ Rhinogobius giurinus」の2種だけであるとされていたが、1960年に卵の大きさや鰭条数の違いからヨシノボリから分離される形で「カワヨシノボリ Rhinogobius flumineus(記載当時はTukugobius flumineus)」が新種記載された。その後「ヨシノボリ」のそれまでは模様の違いから型として扱われていたものも、生態の違いなどからそれぞれ別種とみなされるようになってきため、学術的混乱を避けるために1989年に学名が未決定のまま、標準和名ならびに、学名の仮の代わりとして Rhinogobius sp. の後に、それぞれの種をアルファベット大文字2文字で表す方法が提唱された。現在までのところ日本に生息するとされるヨシノボリ属魚種は以下の通りである。

ゴクラクハゼ Rhinogobius giurinus

頬に迷路のような細かい模様があり、体の横に黒っぽい大きな斑点と青い小さな点が並ぶ。汽水域に多い。

オオヨシノボリ Rhinogobius sp. LD

LDとは Large-Dark type の略。大きな河川に多い。ヨシノボリの中では大型になることが和名の由来。

カワヨシノボリ Rhinogobius flumineus

稚魚が海に降りず、一生を淡水で過ごすことが和名の由来。佃煮などで利用される。

クロヨシノボリ Rhinogobius sp. DA

DAとは DArk type の略。温暖な海域に面した、流れが速い小川に分布する。胸びれのつけ根が黒く、尾びれのつけ根に太い"Y"字型のもようがある。また、体色をよく変え、興奮すると体の横に黒い太い線が浮き上がる。黒っぽい体色のことが多いことが和名の由来。

シマヨシノボリ Rhinogobius sp. CB

CBとは Cross-Band type の略。頬に細かいミミズのような模様がある。繁殖期のメスは腹が鮮やかな青色になる。和名は頬や各鰭の模様に由来する。

トウヨシノボリ Rhinogobius sp. OR

ORとは ORange type の略で、オスの尾びれのつけ根に大きな橙色の斑点があることからこの名があるが、個体群によっては見られないものも多い。最も分布が広く、体の模様も地域差や個体差が大きいため、現在ではさらに橙色型、偽橙色型、宍道湖型、縞鰭型の4型に分けられている。

ルリヨシノボリ Rhinogobius sp. CO

COとは CObalt type の略。和名は頬に小さな青い点がたくさんあることに由来する。分布地は各地に点在する。

ヒラヨシノボリ Rhinogobius sp. DL

DLとは Depressed Large-dark type の略。和名は流れの速い川に適応して平たい体をしていることに由来する。

アヤヨシノボリ Rhinogobius sp. MO

MOとは MOzaic type の略。他の何種類かのヨシノボリの持つ色彩的特徴をモザイクのように持っていることを特徴とする。

アオバラヨシノボリ Rhinogobius sp. BB

BBとは Blue Belly medium-egg type の略。一生を淡水で過ごすが、卵の大きさがカワヨシノボリと稚魚が海に降りるタイプのヨシノボリとの中間の大きさをしているため、キバラヨシノボリとともに中卵型と呼ばれていた。抱卵した雌の腹部が青くなることが和名の由来。
絶滅危惧IB類 (EN)環境省レッドリスト

キバラヨシノボリ Rhinogobius sp. YB

YBとは Yellow Belly medium-egg type の略。一生を淡水で過ごすが、卵の大きさがカワヨシノボリと稚魚が海に降りるタイプのヨシノボリとの中間の大きさをしているため、アオバラヨシノボリとともに中卵型と呼ばれていた。抱卵した雌の腹部が黄色になることが和名の由来。
絶滅危惧IB類 (EN)環境省レッドリスト

オガサワラヨシノボリ Rhinogobius sp. BI

BIとは Bonin Island type の略。小笠原諸島に生息する。
絶滅危惧IA類 (CR)環境省レッドリスト

トウカイヨシノボリ Rhinogobius sp. TO

TOとは TOkai type の略。東海地方に生息している。
準絶滅危惧(NT)環境省レッドリスト

ビワヨシノボリ(仮称) Rhinogobius sp. BW

BWとは BiWa lake type の略。琵琶湖の固有種。
情報不足(DD)環境省レッドリスト

関連項目

外部リンク