用心棒
- 身を守るために用意しておく護身用の棒。
- 上に転じて、ボディーガードなど護衛のために身近につけておく従者、武芸者。
- 心張り棒の別名。
- (1つ目の意味から)黒澤明監督の時代劇映画作品。:ここで記述する。
- TWOFIVEの女性向けメディアミックス企画。Yo-Jin-Bo。
『用心棒』(ようじんぼう)は、1961年に公開された黒澤明監督のアクション時代劇映画である。続編といわれる作品に『椿三十郎』がある。
用心棒 | |
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監督 | 黒澤明 |
脚本 |
黒澤明 菊島隆三 |
製作 |
田中友幸 菊島隆三 |
出演者 |
三船敏郎 仲代達矢 山田五十鈴 |
音楽 | 佐藤勝 |
撮影 |
宮川一夫 斉藤孝雄 |
公開 |
1961年4月25日 ![]() |
上映時間 | 110分 |
製作国 | 日本 |
言語 | 日本語 |
次作 | 椿三十郎 |
あらすじ
冬の青空に雪を戴く赤城山から乾いた空っ風が吹き降ろす、荒涼とした上州の宿場町。二つのやくざ勢力が対立するこの町に、流離の浪人が現れた。桑畑三十郎(三船敏郎)と名乗る彼は、両方の勢力に用心棒として売り込みつつ、巧みに同士討ちを仕組んでいく。しかし、そこに伊達な雰囲気を漂わせた新田(しんでん)の卯之助(仲代達矢)が帰郷して…。
概説
原作はダシール・ハメットのハードボイルド・アクション小説「血の収穫」である。
「この映画(続編的存在の椿三十郎も)の最大の魅力は殺陣のシーンではなく、主人公の三十郎の特異なキャラクター設定にある」と黒澤本人は主張している。とはいえ、斬新な殺陣(重要なものは三箇所ほどしかない)の表現も見逃せない魅力である。
それまでの時代劇の殺陣は、東映作品群に象徴されるような従来の舞台殺陣の延長にあった。いわゆる「チャンバラ映画」である。黒澤は、それを現実の格闘ではあり得ない舞踊的表現と見なし、まったく新しいリアルな殺陣の表現を探っていた(「羅生門」、「七人の侍」、脚本を書いた「荒木又右ヱ門 決闘鍵屋の辻」)。それは『用心棒』でひとつの完成形を見せ、当時の人々を驚かせた。
本作では『七人の侍』以来多用した望遠レンズの効果が遺憾なく発揮され、殺陣をより効果的に見せている。油の乗り切った黒澤の表現技法が見事に結実していると言える。なお、撮影についてはむろん宮川一夫の存在が大きいが、マルチカム方式で撮影されている本作品ではクレジットされていないものの、斉藤孝雄の貢献も無視できない(斉藤本人が、自分の撮影分の方が多く使用されていると発言している)。
なお、本作の「ある町にふらりと現れた主人公が、そこで対立する2つの組織に近づいて敵を欺き、組織を全滅させて去っていく」というあらすじの作品は、多少の違いはあるが他の東宝映画にも見受けられる。その1つは本作の前年に公開されたギャング・アクション映画「暗黒街の対決」(1960年 岡本喜八監督)、もう1つはこの約10年後に公開された任侠パロディ映画「日本一のヤクザ男」(1970年 古澤憲吾監督)である(偶然にもこの3作全てに司葉子が出演している)。
今ではよく見られる演出だが、侍の対決シーンで、すれ違いざま刀を振り下ろし、いったん静止して片方が倒れて死ぬという描写や、効果音として刀の斬殺音を使用したのは、黒澤のこの映画が最初である。
群馬県では、ギャンブルの神様として崇拝されている、「国定忠治」に代表されるように、水野忠邦の天保の改革(人返し令)以降、食い詰めた農村出身者がからなる、江戸の都市侠客の流入により、「博打県」として名高い(伊勢崎オート、前橋競輪、高崎競馬、桐生競艇、etc)、群馬県の体質をよく現している。
キャスト
- 三船敏郎(桑畑三十郎)
- 仲代達矢(新田の卯之助)
- 司葉子(小平の女房ぬい)
- 山田五十鈴(清兵衛の女房おりん)
- 加東大介(新田の亥之吉)
- 河津清三郎(馬目の清兵衛)
- 志村喬(造酒屋徳右衛門)
- 太刀川寛(清兵衛の倅与一郎)
- 夏木陽介(百姓の小倅)
- 東野英治郎(居酒屋の権爺)
- 藤原釜足(名主多左衛門)
- 沢村いき雄(番太の半助)
- 渡辺篤(棺桶屋)
- 藤田進(用心棒本間先生)
- 山茶花究(新田の丑寅)
- 西村晃(無宿者の熊)
- 加藤武(無宿者の瘤八)
- 中谷一郎(斬られる凶状持A)
- 堺左千夫(八州廻りの足軽A)
- 谷晃(丑寅の子分亀)
- 羅生門綱五郎(丑寅の用心棒かんぬき)
- 土屋嘉男(百姓小平)
- 清水元(清兵衛の子分孫太郎)
- ジェリー藤尾(腕を斬られる無宿者)
- 佐田豊(清兵衛の子分孫吉)
- 大友伸(馬の雲助)
- 広瀬正一(丑寅の子分)
- 天本英世(清兵衛の子分弥八)
- 大木正司(清兵衛の子分助十)
- 大橋史典(斬られる凶状持B)
- 寄山弘(百姓の親爺)
- 大村千吉(八州廻りの小者)
- 本間文子(百姓の古女房)
- 西条竜介(丑寅の子分)
- 桐野洋雄(清兵衛の子分)
- 草川直也(清兵衛の子分)
- 津田光男(清兵衛の子分)
- 千葉一郎(八州廻りの足軽B)
映画賞
- ヴェネチア国際映画祭(1961年) 男優賞 三船敏郎
- ブルーリボン賞(1961年) 主演男優賞 三船敏郎
- ブルーリボン賞(1961年) 音楽賞 佐藤勝
- ブルーリボン賞(1961年) 特別賞 三船敏郎(国際的な活躍による)
『座頭市と用心棒』
勝新太郎主演の大映映画に『座頭市と用心棒』があり、三船敏郎が同じような衣装で用心棒として登場する。これは当時の人気キャラクター座頭市と用心棒を対決させる企画であるが、三船敏郎の役名は本作と違う佐々大作になっており[1]、役作りもかなり違う。なお『椿三十郎』では撮影が小泉福造、斉藤孝雄に変わったのに対し、『座頭市と用心棒』の撮影は、本作と同じ宮川一夫である。
リメイク
- 後にイタリアで『荒野の用心棒』(1964年/セルジオ・レオーネ監督)、アメリカで『ラストマン・スタンディング』(1996年/ウォルター・ヒル監督)に翻案リメイクされた。
- リメイクではないがアメリカ映画『ボディガード』で主人公達が映画館で見るのが『用心棒』であり1シーンがそのまま使われている。また『ボディガード』の題名自体がアメリカ公開時の『用心棒』の英語タイトルであり、この作品内では『用心棒』を含む黒澤映画へのオマージュが多々見られる。
脚注
- ^ ただし、本作での三船敏郎の役名「桑畑三十郎」や、続編での「椿三十郎」は偽名であることが作中で暗示されている。