チャイナリスク
チャイナリスクとは、カントリーリスクの一種であり、特に中国国内で外国企業が経済活動を行う際のリスク(不確実性)、特にダウンサイドリスクだけを取り出したもの。
概要
チャイナリスクの体系
- カントリーリスク
- 政治
- 社会
- 三農問題
- 雇用確保と失業問題
- 所得格差の拡大
- 腐敗・汚職問題
- 環境汚染問題
- 一人っ子政策による弊害
- 経済
- 中国経済の持続的成長
- 政府のマクロ経済の運営
- インフレもしくはデフレ圧力
- 不動産バブル
- 不良債権問題
- 証券市場の低迷
- 為替制度改革
- 恒常的な国家財政の赤字
- 国有企業改革
- 資源・エネルギー不足
- セキュリティーリスク
- 対日本抗議行動
- 反日デモ
- 不買運動
- 治安悪化
- 黒社会
- 誘拐
- 盗難
- 新興感染症
- エイズ
- 新型肺炎(SARS)
- 鳥インフルエンザ
- 対日本抗議行動
- オペレーションリスク
- 投資環境
- 不透明な政策運営
- 中央・地方の不統一性
- 経済法制度の未整備
- 恣意的な法制度の運用
- 会計制度・税制の不備および運用の不透明性
- 技術流出および不十分な知的財産権保護
- 運輸・電力などインフラ問題
- 外国資本優遇措置の見直し
- 外資系企業及び地場企業との競争激化
- M&Aの増加に伴う統合、敵対的買収
- 生産
- 品質管理の困難:①食のチャイナショック:2008年に起こった中国製食品中毒問題は、安全安心を掲げるCo-opで販売された中国製食品であったため、その影響は大きく中国における製品の品質管理の難しさを消費者に認知させる結果になった。
- 部品・原材料の現地調達の困難
- 限界に近づきつつあるコスト削減
- 輸入品に対する高関税、非関税障壁
- 販売
- 代金回収の困難
- 模倣品の氾濫
- 在庫調整と需要予測の困難
- 雇用・労働
- 人材(中間管理職・技術者)の採用難
- 労働者の質・教育レベル
- 賃金水準の上昇
- 労務問題(ストライキ、労働組合問題など)
- ジョブホッピング
- 投資環境
チャイナリスクの歴史的サイクル
リスクの内容
内容のいくらかは、中国脅威論と共通する部分が多い。
- 不透明な市場の流れにより半ば横行している株式のインサイダー取引。
- 官僚の絶大な権力による法令の朝令暮改。
- 行政手続きの不透明性
- 例えば日経ビジネスオンラインでは、許可申請を少し変更したら、認可が下りるまでに4年かかった王子製紙のコメントのあとで以下のとおり結んでいる[2]。
- 「日本でも規則は変わるが、まず話し合いがあってのことだ」。王子製紙の篠田和久社長は今回の経験について、こう語る。「中国では、それが予告なしに起こる。もっと透明性が必要だ」
- 中国での事業展開に苦労したことのある経営幹部なら、一様に篠田氏の話に共感するだろう。
- 行政手続きの不透明性
- 対日本企業特有のもの
- 政治の腐敗による贈収賄
- 特有の社会主義による労働運動、労働慣行
- 偽ブランド品の商標登録問題
- 知的財産権の保護、模倣品問題
- 技術・ノウハウの流出
- これについて、ジェームズ・マックグレゴールは、著書「中国ビジネス最前線で学ぶ教訓」で以下のように述べている。
- 「やむを得ない場合を除いて間違っても国営企業と合弁を組むな。合弁の結果、中国側は貴社の技術、ノウハウ、カネのすべてを手に入れ、企業をコントロールする」[3]
- 情報・人権に関する制限の問題
- しばしば諸外国から不公正であると指摘される裁判制度
- 軍事力の増大とナショナリズムによる周辺諸国との摩擦
- 中国軍事脅威論に関連して、軍事転用可能なハイテク技術においては、日本から中国国内への移転ができないといった制限がある
- 現地人による過度の安全性の軽視と品質の低下
- 一般に値段と安全・信頼性をはかりに掛けると前者を重視する
- 中国バブル崩壊論
- 中国のビジネスリスク
- 中国の独特な環境のために起こるビジネスリスクで、特に近年、人件費の上昇、価格下落、代金回収問題、人民元切り上げ問題、中国の環境問題、中国の水危機の問題、中国製品の安全性問題、中国産食品の安全性の問題、反日感情にまつわる不買・労働放棄の問題などが取り上げられる。
背景
改革開放後、漸次的に共産主義の経済制度を資本主義化・市場化していく過程で、多くの企業が中国へ進出した。
しかし、共産主義のもとで形成されていた経済制度や既得権益と、資本主義の下で活動していた企業の利益は各所で衝突。中国での経営では文化の差を越えて独特の経営慣行が求められることとなった。
日本や欧米を始めとする先進国では、普通選挙に基づく民主主義が政治体制として採用され、法の支配の下で基本的人権が保証されている。しかし、中国では、中国共産党が事実上の一党独裁によって権力を掌握しており、市民の力によって中国の民主化を目指した1989年の六四天安門事件も、治安部隊により弾圧されている。改革開放後もその政治制度に大きな変化はなくなっている。
現在まで、中国に次々と進出する日本企業は、チャイナリスクを考慮した行動や対策を行ってこなかった。これは、政治的・歴史的な緊張関係にとらわれず、未来志向の経済協力による日中融和を目指すという、日本企業の利益優先主義によるものであった。
しかし、その日本企業が当てにしていた中国において、在留日本人が暴力事件に巻き込まれる事件が多発し、日本企業が地下鉄工事や道路建設において競争入札の門前払いを喰らうなど、日本人に対する差別が原因と思われる事態が次々と発生。2005年に中国全土へ広がった反日デモは、その中でも特に顕著な例であり、日本の総領事館にまで投石などが相次ぎ、取締りを行うべき治安部隊がその行為を黙認、中国政府は「日本側の態度が暴動の原因として」謝罪や賠償責任まで否定するという状況に至った。(後に報道機関により日本領事館の惨状が公開されると、中国側は一部の修復を負担している)
これらの諸問題の解決策として、中国側による反日デモの誠実な謝罪や犯人の徹底追及、中国政府による損害賠償、アカデミックなレベルでの歴史問題の解決や日中間の民間交流の促進、日本側が行っているODAや経済協力による日中融和政策の中国側の理解などがあげられるが、まだ有効な解決策が見出せていないというのが現状である。
そのため、日系企業の間では、タイやベトナム、インド、ロシアなど他の新興国にも生産拠点を分散させたり、日本国内での生産に回帰したりする動きが広がっている。下記チャイナプラスワンも参照。
なお、中国政府は、チャイナリスクの存在自体を否定している。
チャイナプラスワン
チャイナ・プラス・ワン(China plus one)、中国プラス1とも呼ばれる。チャイナリスクを回避するための手法の一つで、中国に投資をしつつもあえて集中させず、平行して他の国においても一定規模の投資を行い、リスクを分散化させる動きのことを言う。
他国の候補地としては、インドやベトナムなど他のアジア諸国が多い。中国の製造業への投資が近年鈍化している要因の一つとして指摘されている[1]。
中国のビジネスリスク
その他のリスク
- 中国の上海にある日本人学校で使用するために取り寄せた日本の図書を上海税関は中華人民共和国出版管理条例に違反すると認定し、一部を差し止めた。