新世界訳聖書

エホバの証人によって翻訳された聖書

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新世界訳聖書(しんせかいやくせいしょ)は、エホバの証人で構成された「新世界訳聖書翻訳委員会」によって翻訳され、「ものみの塔聖書冊子協会」によって出版された聖書。英語版が1950年から1960年にかけて分冊で発表され、1961年には一冊にまとめられて出版された。

新世界訳聖書が登場する以前まで英語圏のエホバの証人は、長年ジェームズ王欽定訳やアメリカ標準訳を使用してきた。日本のエホバの証人は日本聖書協会文語訳聖書を使っていた。新世界訳聖書の刊行以降は、ほぼ全世界的にエホバの証人の使用する聖書が統一されている。エホバの証人による布教活動や聖書研究は、新世界訳を用いることが原則となっている。

日本語版は1973年にギリシャ語聖書(新約聖書)の部分が発行され、1982年にはヘブライ語聖書(旧約聖書)の部分も含めた全巻が発行された。最新の日本語版は1985年版。他の日本語の聖書と異なり横書きで印刷されている。

エホバの証人側が字義訳であり、最も正確な翻訳であるとする一方、エホバの証人に反対するキリスト教の団体からは、エホバの証人の教理に合わせて改ざんされているという批判がある。また非英語圏においては、英語からの重訳聖書であり、学問的な水準に疑問があるという指摘がある。 しかし、新世界訳聖書は適切で正しい翻訳であるとする学者もいる。(英語版を参照)


特徴

  • ビブリア・ヘブライカ』(略称BHK)・『ビブリア・ヘブライカ・シュトゥットガルテンシア』(略称BHS)のヘブライ語本文中、神の名前として登場する6,828回のヘブライ語の四文字語יהוה(YHWH)のうち裁き人(士師記)19章18節以外を「エホバ」と訳している。また、『ギリシャ語セプトゥアギンタ』の読みに倣い、申命記30章16節、サムエル第二15章20節、歴代第二3章1節でも四文字語を復元し、「エホバ」と訳している。また、BHK・BHSの脚注に基づき、イザヤ34章16節とゼカリヤ6章8節の1人称単数代名詞を「エホバ」と訳出している。
  • ギリシャ語聖書の27のヘブライ語訳に基づき、ギリシャ語聖書中にも237回「エホバ」と訳している。
  • 他の翻訳で「十字架」と訳されているギリシャ語σταυρος(スタウロス)を「苦しみの杭」、ギリシャ語ξυλον(クシュロン)を「杭」と訳している。
  • 他の翻訳で「地獄」や「陰府」と訳されているヘブライ語שאול(シェオール)、ギリシャ語αδης(ハーイデース)を「シェオル」、「ハデス」と音訳し、ギリシャ語γεεννα(ゲエンナ)を「ゲヘナ」、ギリシャ語ταρταροω(タルタロオー)を「タルタロス」と音訳している。
  • 他の翻訳で「魂」・「命」・「人」とさまざまに訳されるヘブライ語נפש(ネフェシュ)、ギリシャ語ψυχη(プシュケー)を一貫して「魂」と訳している。
  • 他の翻訳で「再来」・「来ること」と訳されるギリシャ語παρουσία(パルーシア)を「臨在」と訳している。
  • 他の翻訳で「会堂」・「会衆」・「教会」と訳し分けられるヘブライ語קהל(カーハール)、ギリシャ語εκκλησια(エックレーシア)を一貫して「会衆」と訳している。
  • 他の翻訳で「世」と訳されるギリシャ語αιων(アイオーン。字義、時代・存在の期間)を「事物の体制」と訳し、ギリシャ語κοσμος(コスモス。「世界」の意)と訳し分けている。
  • ヘブライ語聖書の底本はルドルフ・キッテルの『ビブリア・ヘブライカ』(BHK、第7版、8版、9版)に載せられたレニングラード写本B19Aである。1985年版の研究資料を準備するため、『ビブリア・ヘブライカ・シュトゥットガルテンシア』(BHS、1977年版)が用いられた。また、ドイツ聖書協会が1935年に発行した『ギリシャ語セプトゥアギンタ』からの翻字も含まれている。
  • ギリシャ語聖書の底本はウェストコットとホートの『ギリシャ語原語による新約聖書』(1881年版)である。イエズス会の学者ホセ・マリア・ボーベルおよびフランシスコ・カンテラ・ブルゴス編『聖書』(1943年)、アウグスティヌス・メルク編『聖書』(1948年)、聖書協会世界連盟発行『ギリシャ語新約聖書(The Greek New Testament)』(1975年)、『ギリシャ語新約聖書(Novum Testamentum Graece)』(1979年)などの、他のギリシャ語本文も参考にされた。シリア語ペシタ訳』(1826年版、ならびに聖書協会世界連盟による再版、1979年)、ラテン語ウルガタ訳聖書』(ウュルテンベルク聖書出版社、1975年版)も参考にされた。
  • 横組みで、章と節は「ジェームズ王欽定訳」の章節番号に従っている。普通版には上部に見出し、中央に参照聖句が記され、巻末に聖書語句索引と付録が付いている。参照資料付き聖書には下部に欄外脚注が載せられている。
  • 外典(間約聖書、旧約続編)は含まない。
  • 「新世界訳聖書」の最大の特徴は、キリストの神性に言及する聖書箇所(ヨハネ1:1、テトス2:13、ペテロの第二の手紙1:1など)を翻訳するに当たって、ギリシャ語の文法では、どちらにも解釈できる箇所を含めて、キリストの神性を否定する方向に翻訳することで一貫していることにある。

他の版

  • 2008年現在、(点字・手話を含め)71の言語で1億3,900万部以上発行。

全訳版:アフリカーンス語アラビア語アルバニア語イタリア語イロカノ語インドネシア語英語点字版あり)、オランダ語韓国・朝鮮語ギリシャ語グルジア語クロアチア語コーサ語ショナ語スウェーデン語ズールー語スペイン語点字版あり)、スロバキア語スワヒリ語セソト語セブアノ語セルビア語セルビア語ローマ字)、タガログ語チェコ語中国語簡体字)、中国語繁体字)、ツォンガ語ツワナ語デンマーク語ドイツ語日本語ノルウェー語ハンガリー語フィンランド語フランス語ポーランド語ポルトガル語点字版あり)、マケドニア語ルーマニア語ヨルバ語

部分訳:アメリカ手話DVD)、アルメニア語イタリア語点字イボ語ウクライナ語エフィク語オセット語シンハラ語スラナン語スロベニア語チェワ語トウィ語トルコ語ブルガリア語ペディ語ベンバ語マダガスカル語マルタ語リンガラ語ロシア語

日本語版には、大文字版(分冊)、参照資料付き版、ポケット版、デラックス版、カセットテープ版、コンパクト・ディスクMP3版がある。

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