ぶりっ子

わざと愛らしさや可愛らしさをアピールする女性を指す日本語

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ぶりっ子(ぶりっこ)とは、性格類型のひとつ。主に男性の前で、無知を装い甘える女性を指して使われる。または人前で非力をアピールしたり、わざとらしい女らしさのアピール(猫を被る行為)を批判・皮肉る際にも使われる。

ぶりっ子の中でも、本当は知っているのに知らないふりをするふるまいをカマトトとも言う。ただし、「カマトト」という言葉そのものは「ぶりっこ」以前から存在する。

歴史

語源には諸説あるが、1980年の時点で江口寿史の代表作『すすめ!!パイレーツ』に「かわい子ぶりっこ」という言葉が登場している。「かわいい子ぶるかわいいふりをする」を、江口が独自に変化させた言葉だと考えられる。これがマスコミで「ぶりっ子」という言葉が最初に使用された例とされている。なお、この時に「ぶりっ子」として描かれたのは石野真子である(作中の登場人物が、石野真子の姿を真似て「わかんないですぅ」と言う)。これがアイドル歌手の松田聖子(1980年デビュー)の人気と共に世間に広がったと見られる。詳細は後述。

当初は若者の間の流行語だったと言えるが、1981年に人気を獲得した女性コメディアン山田邦子のギャグから一般的な流行語になったと見る向きもある。従来の「カマトト」を置き換える形でこの言葉が広まり、若年層だけではなく中高年層にも新語として定着し、現在に至るまで使われるようになった。1981年12月には、『邦子のかわい子ぶりっ子(バスガイド篇)』というレコードがヒットした。

1982年には、銀蝿一家の弟分紅麗威甦(グリース、ヴォーカルは現在俳優の杉本哲太)が『ぶりっ子ロックンロール』をリリースして小ヒットした。

松田聖子の場合

「ぶりっ子」の典型例と言われたのが松田聖子である。松田は1980年に歌手デビューし、人気アイドルとなったが、やっかみや反感もあってか、何かと、からかわれることも多かった。

発端は、1982年のFNS歌謡祭で『野ばらのエチュード』が大賞に選ばれた時、松田がマスカラが取れるほどに嬉し泣きしているにも関わらず、司会の露木茂アナが半ば冗談に「涙は出てますか?」と言ったことが拡大解釈され「可愛い子ぶって嘘泣きした」と指摘された事にある。露木の「涙は出てますか?」は軽い気持ちの発言(ジョーク)と見られ、露木は後のFNS歌謡祭で彼女に謝罪している。

彼女を否定的に見る者にとっては、上記の「嘘泣き疑惑」なるものが「ぶりっ子」の証左とされ、女性漫才コンビの春やすこ・けいこの十八番の持ちネタともなった。

当時のアイドル歌手の大半は程度の差こそあれ「ぶりっ子」的な傾向を持っていたとされ、その中で松田が殊更「ぶりっ子」だとされたのは、「親しみを込めた、からかい」との見解もある。

魚の場合

  • 東北地方などでは、食用にするハタハタを「ぶりこ」または「ぶりっこ」と呼ぶ。秋田音頭が作られた江戸時代より前から用いられている古い言葉であるが、上記の言葉は「振りをする」が「ぶる」と変化したものの派生語であり、まったく関係は無い。
  • 「ぶりっ子」の派生語として「はまちっ子」というものもあった。「ハマチ」は「ブリ」の成長途上のものを指す言葉であることから「ぶりっ子より多少程度の軽い状態」の意味。しかし、いかにも造語っぽく語呂が悪いこともあり、定着しなかった。

フィクションにおけるぶりっ子

この性格類型のキャラクターは、古くからの少女漫画トレンディドラマ等のラブストーリーにおけるヒロインライバルにも多く見られる。男性向けの作品では、好きな男性の前でだけ精一杯可愛らしく媚びた振る舞いをする女性キャラクターが、その一途さや他の女性に嫌われるのを厭わない態度が可愛いと捉えられ、「萌え属性」のように扱われる事もある。

好きな男性の前では必要以上に可愛さをアピール、もしくは人前で善人振るが、その一方で自分の好きな男性を振り向かせ、自分のものにする為、または自分のプライドと面子を保つ為ならヒロインを陥れるための悪知恵を働かせることも厭わないしたたかな面がある。その本性は腹黒く、大抵ヒロインやヒロインと親しい友人や身内などの人物はすでに知っており、その事を相手の男性に忠告したり、ライバルの女性本人に直談判することもある。しかし女性側は過度に下手に出て、あくまでも自分が被害者であり、非があるのは相手側だということを強調することで、男性のほうは情により捨てることができずにライバルである女性と付き合い続けるか、気にも留めず逆にヒロインたちのほうを「悪」と決め付け、ライバルである女性への想いを募らせることによりヒロインを傷つけたり、自分の親を泣かせたりもする。 そして自らヒロインへの嫌がらせいじめを平気で行う。このキャラクターの辿る結末は「本性がバレて皆から嫌われ、全てを失う極端な場合はヒロインに対する仕打ちが理由で社会的な信用までもが失墜する)」もしくは「男性はライバルに惑わされずヒロインの方を選ぶ」といったものがほとんどである。しかし、極わずかに「ある出来事を機に理由は何であれ改心し、ヒロインの理解者となる」といったパターンもある。

最近では作品ジャンルに関係なく、「いじられキャラ」として扱われるパターンが増えている。大抵は健気で純粋な部分を持ち合わせており、努力を惜しまない生真面目な性格であるが、夢見がちで極めて子供っぽい(良く言えば世間に囚われないが、悪く言えば無神経な性質を持つ)為、馬鹿阿呆にされたり失笑を買ってしまうタイプが多い。その一方、傲慢な本性を秘めた自己中心的な思考を貫き、周囲をも利用する可愛さで翻弄させる腹黒い(性悪な)面を持ち、自身が持つ目的を果たす為なら手段を選ばない残忍なタイプも存在する。

その他

  • 本来は男性受けを計算して、男性の前と女性の前で振る舞い方を変えている裏表のある女性を批判して使う言葉だが、最近では性別・年齢を問わず「ぶりっ子嫌い」の者が増えた故か、単なる幼稚な性格や舌っ足らずな口調に、天然ボケな面が強い者に関しても短絡的に「ぶりっ子」だと決め付けられることがある。
  • 上述にある性質や、場の空気を読まない無神経なふるまいをしたり、先輩や教師に過度に従順な態度を見せると、周りの者からの嫌悪感を誘い、「無自覚ぶりっ子」と非難される場合がある。