空軍
空軍(くうぐん、英:Air force)とは主に空中における作戦・戦闘を主な任務とした航空機を主な戦力とする軍事組織を指す。
航空機の発達によって第一次世界大戦に登場し、その後軍事的な価値が各国軍部に高く評価され、第二次世界大戦以後陸軍や海軍と並ぶ主要な軍種となっている。日本では、航空自衛隊がこれに相当する。
意義
航空戦力が運用される空は陸地、海上などの地形の制約を全く受けず、また、地球上あらゆる場所に通じているため、陸上の戦闘などとは全く異なり、非常に迅速な敵地深部への侵攻が可能である唯一の軍種である。近年は航空機やミサイルの著しい発達に伴いその行動範囲や攻撃力、迅速性などは圧倒的なものとなっており、現代の戦争においてこの空軍が果たす役割は非常に大きいものとなっている。
空軍軍人の気質
空軍軍人は、パイロットや搭乗員以外は後方支援職種が多く、陸軍海軍の軍人からは「やる気なし空軍」と揶揄されることもある。[要出典]エラー: タグの貼り付け年月を「date=yyyy年m月」形式で記入してください。間違えて「date=」を「data=」等と記入していないかも確認してください。パイロットは、一部のエリートであり、一般的な空軍兵士と比較しても、待遇の格差は隔絶している。パイロットも、戦場に在空している場合以外は、いたって安全であり、空軍軍人は、サラリーマン軍人の典型であるともいわれることもある。
第二次世界大戦のような、総力戦になれば戦死する確率が高くなることもあるが、パイロットや搭乗員には普通、専門の救出部隊が編成されており、一般兵士では考えられない厚遇である[1]。ベトナム戦争においては、直接戦闘に関わらない事から徴兵先として米空軍(の整備兵や管制要員)が人気であったという[2]。
ただし、航空戦力は現代戦の要であり、緒戦での航空優勢の獲得は、絶対必要な要素である。よって空軍軍人は、陸海軍の存在を軽視する傾向にあるとも言われている[要出典]エラー: タグの貼り付け年月を「date=yyyy年m月」形式で記入してください。間違えて「date=」を「data=」等と記入していないかも確認してください。。逆にロシアなどは現在でも空軍は地上軍の補助部隊という認識が強く、近年には便宜上地上軍に編入されていたヘリコプター部隊が再び空軍に再編入されていたりする[3]。
空軍の任務
空軍は航空機を主な装備とし、下記の任務を遂行する。
平時
- 自国領空および領土の警備・監視。それに伴う領空侵犯などの対処措置。
- 航空偵察による仮想敵国に対する情報収集任務。
- 国内の敵対組織(反政府ゲリラ)への威圧・攻撃。
- 輸送機などによる各種の輸送任務。
- 空軍アクロバットチームによる展示飛行などによる広報・親善業務。
戦時
組織
軍隊共通の組織体制に関しては軍隊#組織形態を参照されたい。
部隊編制
空軍部隊の編制が国によって一様ではない。 まず2機の航空機から成る飛行小隊(Section, Element)、この2個以上の飛行小隊から成る飛行中隊(Flight, Platoon)、2個以上の飛行中隊から成る飛行大隊(Squadron)がある。これら飛行小隊・飛行中隊・飛行大隊は基本的に同一の機種で編制されている。この飛行大隊は主要任務群(Group)として構成され、整備隊・補給隊・防空隊・施設隊・警備隊・航空管制団などから成る支援任務群や専属の司令部とあわせて独立的な作戦行動をとることが出来る航空団(Wing)となり、戦闘機を主要な戦力とした航空団は戦闘航空団(Combat wing)と呼ぶ。この2個以上の航空団から編制された部隊が航空師団(Air division)であり、これは任務によって様々に改編される場合もある。
航空部隊
- 主戦力:平時は領空保全を行い、戦時はそれに加えて敵対国・組織を空から攻撃する。戦闘機・攻撃機・爆撃機・偵察機・観測機・早期警戒機(早期警戒管制機)・連絡機などを運用する部隊。冷戦時代は核兵器を搭載した戦略爆撃機を運用する戦略空軍が独立部隊として存在していた。
- 空輸部隊:輸送機・空中給油機などを運用して、空軍の兵器・兵員や陸軍部隊を輸送する。
- 訓練部隊:パイロットの養成を行う部隊、訓練には専用の練習機を使用する。
支援部隊
- 地上部隊:航空機の整備・補給に携わる部隊、飛行場を運営する部隊。飛行場の防衛に当たる部隊が空軍に属する場合もある。第二次世界大戦中のドイツ空軍(ルフトヴァッフェ)では空軍の指揮下に地上の対空砲部隊や歩兵部隊も存在した。現在においても、スリランカなど内戦の激しい発展途上国やベトナム戦争時のアメリカ空軍においては、基地・飛行場警備を主任務とする大規模な地上部隊を編成していた。なお、日本においては地対空誘導弾改良ホークは陸上自衛隊に、地対空誘導弾ペトリオットは航空自衛隊に所属している。
これらとは別に、近接航空支援(CAS)を目的とした通信兵が陸軍部隊に派遣される事がある。これは、機種の異なる無線機に対応したもので、通信兵は陸軍の兵装に準ずる。第二次世界大戦以降に発達し、ベトナム戦争において活発に投入された。現在、アメリカ空軍は、これをより大規模・特殊部隊化させた部隊を保有しており、陸軍とは分離した形でアフガニスタン等に投入しているといわれる。
発達史
飛行機の歴史は、1903年アメリカのライト兄弟の飛行から始まる。初期の飛行機は空を飛ぶことに専念し、戦闘に使われることは想定されなかった。
第一次世界大戦
航空機が戦力として使われたのは第一次世界大戦から。大戦初期 航空部隊の任務は偵察のみで戦闘に携わることは無かったが、途中から戦闘機や爆撃機が誕生し、ドイツ・フランス・イギリス・アメリカ・カナダ・イタリアなどの国で多数の戦闘機や爆撃機が生産・使用された。この時期にイギリス空軍(ロイヤルエアフォース)とドイツ空軍(ルフトバッフェ)が組織として誕生した。ドイツ空軍はその後敗戦により2回解体されたが、イギリス空軍は現在まで続いている。この大戦では戦闘機同士の空中戦、ドイツ飛行船(海軍に所属)・爆撃機による夜間都市爆撃、イギリス海軍機(水上機)によるドイツ軍基地攻撃など今まで無かった新しい戦争の形態が出現した。しかし、当時の飛行機は技術的・数量的にも未発達で、空軍力が陸・海の戦争の帰結を左右するほどではなかった。
大戦間の状況
第一次世界大戦が終了すると大戦参加各国の航空部隊は大幅に縮小された。当時の飛行機は木製で耐久性に乏しかったため、大部隊を維持するには常に大量に更新する必要があったためでもある。その中でイタリアのジュリオ・ドゥーエ少将は将来の戦争は戦略爆撃が戦争の勝敗を決する旨の構想を明らかにし、アメリカのウィリアム・E・ミッチェル准将は航空爆撃の効果を重視し爆撃機の攻撃により(旧式ではあるが)戦艦を撃沈できることを証明した。彼らの見解は直ちに受け入れられたとは言いがたいが、将来の戦争形態について各国の関係者たちに影響を与えた。1930年代中期まで、各国空軍は技術の進歩にあわせて新しい機体を採用しつつも規模は小さいままであった。1930年代後半にアドルフ・ヒトラーが率いるナチス・ドイツが再軍備を宣言し空軍を急速に増大させると、これに対抗してイギリス・フランス・アメリカ・ソ連などが空軍の強化を開始した。極東では日中戦争を始めた日本の陸軍と海軍の航空隊が増強され始めた。特に海軍では山本五十六の主導の下、従来の戦艦主体の艦隊から航空母艦を主力とする海軍への切り替えが始まった。この時期イギリスは空母搭載機も空軍に所属していたがこれは明らかに不合理で、海軍用の機体は地上を基地とする機体に比べて更新が大幅に遅れた。イギリス海軍が大戦前半に複座戦闘機フルマーや複葉攻撃機ソードフィッシュで戦った原因はここにある。その後イギリスも空母搭載機は海軍所属に変更した。
第二次世界大戦
第二次世界大戦では、空軍は戦争の主力となった。海上でも陸上でも制空権を有する側が勝利を得た。大戦初期ではドイツの電撃作戦は制空権を握ったドイツ空軍が多数の爆撃機を使用して成功し、日本の海軍航空隊はパイロットの優れた技量と集中的な投入によって真珠湾攻撃やマレー沖海戦などで米英海軍を圧倒した。この結果長年海軍の主力であった戦艦はその座を失い、航空母艦が海軍の根幹となり戦争中多数建造された。第二次世界大戦では爆撃機による都市への無差別攻撃が盛んに行われ、直接戦闘員以外の損害も著しく増えた。また、特攻隊という100%の戦死を前提にした非人道的な作戦も大日本帝国では太平洋戦争末期に導入された。最後は米軍による広島・長崎への原爆投下にいたった。戦争中に生産された機体数はアメリカが約30万機、ソ連が約15万機、他の国も数万~10万機を生産し戦場に投入した。組織として独立した空軍を擁した国はイギリス・ドイツ・イタリア・フランス・ソ連で、日米の2国は陸軍航空隊と海軍航空隊で戦った。大戦中に対潜哨戒機やヘリコプターが実用化され、飛行機による物資・人員の輸送が一般化された。
冷戦時代まで
1947年9月18日に、アメリカ陸軍航空隊から空軍が独立した。主要国でも組織としての空軍が一般化した。例外としてはスイスやオーストリアなどは現在も陸軍の所属であり、名義上では空軍として独立していても、指揮系統において陸軍の下に位置する。
日本においては、保安隊(陸上自衛隊の前身)・警備隊(海上自衛隊の前身)時代には、航空部隊は保安隊・警備隊に分属していたが、1954年(昭和29年)に自衛隊に改組される際に、国際の趨勢に従い航空自衛隊として分離独立することとなった。
冷戦時代は、空軍の任務として敵対国への核爆弾攻撃が重視され各国で多数の爆撃機が開発された。これらの爆撃機は万一の事態に備えて整備され、いつでも核爆弾を搭載して飛行できるように準備されていた。戦闘機・爆撃機とも1950年代にはジェット化された。
第二次世界大戦末期にドイツで開発されたV2ロケットは、大戦後に核爆弾を搭載したICBMに進化した。これらの攻撃を探知し防御することも空軍の重要な任務となった。また、仮想敵国の情報を入手するため、専用の偵察機が種々製作され運用された。
一方、発展途上国においては戦闘機・爆撃機を戦略上必要とせず、また、価格的にも高価である事から入手せず、COIN機のような廉価かつ操縦性の容易い機体が選ばれるようになった。これは冷戦時代を背景に各地で左翼ゲリラ活動が行われるようになり、従来の戦闘機・爆撃機ではリスクが合わなくなってきた為である。こうした動きは、ベトナム戦争においてアメリカが、アルジェリア紛争においてはフランスがこうした任務の機体の必要性を痛感した事も一因となった。
現代の空軍
冷戦が終結し大国間の全面戦争の危険が無くなったかわりに、アメリカは自国本土を含む世界のあらゆるところで多様な敵と対戦する必要に迫られた。この状況に対し、米軍は2002年4月以後各軍の統合運用を基本とし、空軍単体としての運用は無くなった。また、偵察衛星や無人偵察機の進歩により、パイロットの危険を伴う有人機による敵地偵察飛行は重要性が低下した。
管轄の例
空母搭載航空機について
- 2004年現在の合衆国軍
- 空母に搭載されている航空機は海軍や海兵隊の所属。
対空兵器について
- 第二次世界大戦当時のドイツ空軍
戦略核ミサイルについて
- 2004年現在のロシア軍
- 戦略ロケット軍を独立させている。
- 2004年現在の中国軍
- 第二砲兵部隊として独立させている。