海抜ゼロメートル地帯
海抜ゼロメートル地帯(かいばつぜろめーとるちたい)とは、海岸付近で地表標高が満潮時の平均海水面よりも低い土地のこと。単にゼロメートル地帯とも呼ぶ。こうした地域では集中豪雨や高潮、台風などの水害時に対処するために、堤防や水門、揚排水ポンプなどを整備する必要がある。なお、海岸付近に限らず平均海水面よりも低い土地は一般に窪地(あち)と呼ばれることがある。
原因
世界の多くの海抜ゼローメートル地帯は、地殻変動により海面下に海水が入り込まない地域ができたことによって発生したと考えられている。また、干拓や埋め立てによって低地が拡大し、近年はその面積が拡大している。
こうした地域が発生する人為的原因の一つとしては地下水の過剰な汲み上げが挙げられる。
主な海抜ゼロメートル地帯
日本国内
東京都23区の湾岸部や東部に海抜ゼロメートル地帯が広がっている。足立区、葛飾区、江戸川区、墨田区、江東区などにわたって広がるこの地域には150万人もの人々が暮らしている。更に東に隣接した千葉県の浦安市や市川市行徳、船橋市にも同様の地域がある。干潮時の海水面よりも低い地域もある。
中部地区においては、濃尾平野の愛知県津島市・弥富市・愛西市・海部郡・名古屋市の一部、三重県桑名市、岐阜県海津市などが海抜ゼロメートル地帯である。古くから輪中で知られる同地域は、伊勢湾台風など大雨による被害も多い。
その他、阪神工業地帯や天然ガス採取にともなう地下水汲み上げによる新潟市周辺にもみられる。
日本国外
ゼロメートル地帯は日本国外にも存在する。オランダは干拓によって国土を広げ、干拓地に農地を広げ、都市を建設してきた。アムステルダムやロッテルダムなど、同国の主要都市の多くは干拓によって広げられたゼロメートル地帯に存在している。
潮流の関係で鳥趾状になっているアメリカ合衆国のミシシッピデルタもまた、日本国外の著名なゼロメートル地帯のひとつである。ミシシッピ川とポンチャートレイン湖に挟まれ、市域の約半分が海抜0mを下回るニューオーリンズは、全米の主要都市の中で最もハリケーンに対して脆弱な都市である。2005年にハリケーン・カトリーナが同市付近に上陸したときには市を取り囲んでいた堤防が決壊し、洪水によって壊滅的な被害を受けた。その1ヶ月後には、同市がルイジアナ・テキサス州境付近に上陸したハリケーン・リタの右側半分(危険半円)に入ったため、追い討ちをかけられた形となった。