JR九州811系電車
811系電車(811けいでんしゃ)は、九州旅客鉄道(JR九州)の交流近郊形電車。
JR九州811系電車 | |
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![]() 811系P108編成 朽網駅にて | |
基本情報 | |
製造所 |
近畿車輛 日立製作所 小倉工場 |
主要諸元 | |
編成 | 4両 |
軌間 | 1,067 |
電気方式 |
交流20,000V 60Hz (架空電車線方式) |
最高運転速度 | 120(速度種別A5) |
設計最高速度 | 120 |
編成定員 | P1・P3~P17:510人(座席204人) |
車両定員 |
クモハ810形:120人(座席48人) クハ811形:118人(座席44人) 中間車:136人(座席56人) |
全長 | 20,000 |
全幅 | 2,950 |
全高 |
3,670mm クモハ810形パンタグラフ折畳高さ4,230 |
主電動機 |
直巻整流子電動機 MT61QA×8基(1編成あたり) |
主電動機出力 | 150kW |
駆動方式 | 中空軸平行カルダン駆動方式 |
歯車比 | 5.6 |
編成出力 | 1,200kW |
制御装置 | サイリスタ位相制御 |
制動装置 | 発電ブレーキ併用電気指令式空気ブレーキ |
保安装置 | ATS-SK |
備考 | 定員・重量は0番台のもの |
車両解説
北九州・福岡大都市圏における快速列車の増発と、421系の置き換えを目的として、1989年(平成元年)から1993年(平成5年)にかけて4両編成28本(112両)が製造された。全車が南福岡電車区に配属されている。
以下に構造上の特徴を示す。番台区分ごとに異なっている仕様については、「番台区分」の節で記述する。
車体
車体は軽量ステンレス構造で、片側3箇所に両開き扉を設置し、全扉または中間扉のみの選択開閉(ドアカット)が可能である。扉の間にバランサ(任意の位置で窓の開口が調整できる機能)付きの一段下降窓が3枚ある。車体の大部分は無塗装であるが、側面窓下部に青色と赤色の帯が互い違いに配されている。前頭部は普通鋼製で、白色に塗装されている。先頭車前面には貫通扉を設けているが、非常用のため幌も幌枠もなく、編成間の貫通には使用されない。
台車・機器
台車は空気ばね方式、ヨーダンパ付き軽量ボルスタレス台車のDT50QA(電動車)/TR235QA(制御車・付随車)が採用されている。主回路制御方式はサイリスタ位相制御。最高速度は120km/hである。パンタグラフ(形式はPS101QB)は上り側(門司港側)先頭車のクモハ810形の連結面寄りに設置している。
車内設備
快速列車を中心に、臨時急行列車にも用いることを想定して、座席は転換クロスシートを採用した。モケットの色は青色(サニーブルー)と紫色(レイニーパープル)の2色で、各席とも左右で異なった色とされ、座席の枕の部分は独立している。その後座席モケットについては紫色と黒の市松模様に張り替えられた。優先席は枕の色が他の座席のパープルに対しグレーとされている。さらに視認性を高めるため813系も含めて2006年(平成18年)末より「優先席」表示がされた枕カバー(白色)が装着された。当初喫煙車であった門司港側先頭車のクモハ810形では座席横の肘掛に灰皿を内蔵していたが、1995年(平成7年)にJR九州管内の普通列車が全面禁煙となったため現在は塞がれている。座席の間隔と窓配置は合っていない。これは415系1500番台と窓ガラス寸法を共通にしたためで、813系も同様である。
冷房装置は集中式のAU403K(42000kcal/h)を各車両の屋根上中央部に1基設置し、ラインフローファンによる配風方式としている。
トイレは下り側(八代・宇佐側)先頭車のクハ810形に設置されているのが基本だが、例外もある(後述)。便器は和式である。また従来の近郊形電車には設置されていなかった大形くずもの入れが車端部(先頭車1箇所、中間車2箇所)に設置されている。
形式
編成は八代側からクハ810形 - サハ811形 - モハ811形 - クモハ810形の4両固定編成である。サハ811形を抜いて3両編成を組むことも可能であるほか、機器類を若干変更してクモハ810形 - クハ810形の2両編成を組むことも可能な設計とされたが、2両・3両編成は実現していない。
車両番号は基本的には編成ごとに同じ番号で揃えられている。また編成自体にも「Pxxx」の番号が与えられている。「P」は本系列を示し、「xxx」は車両番号に対応している。車両に表示される編成番号は「Pxxx」だが、正式な編成番号は「PMxxx」である。「M」は南福岡電車区所属であることを表す。また、先頭車前面に編成番号が表示されるが、他系列と異なりアルファベットと数字の間にはスペースが挿入される。
編成番号 | ←八代・佐伯・早岐・長崎 | 門司港・佐世保→ | ||||
南福岡電車区(北ミフ) 所属 |
P1・P3 - P17 | クハ810-0(Tc') |
サハ811-0(T) |
モハ811-0(M) |
クモハ810-0(Mc') | |
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P101 - P104・P107 - P111 | クハ810-100(Tc') |
サハ811-100(T) |
モハ811-100(M) |
クモハ810-100(Mc') | ||
P105・P106 | クハ810-100(Tc') |
サハ811-200(T) |
モハ811-100(M) |
クモハ810-100(Mc') |
番台区分
広告車両については別に記述する。
0番台
基本番台。車両両端部以外の座席がすべて転換クロスシートとなっている。1992年(平成4年)までにP1 - P17の4両編成17本が製造されたが、P2編成は2002年(平成14年)に列車衝突事故により電動車2両が大破し、復旧されることなく制御車・付随車も含めてすべて廃車された。九州鉄道記念館にある本系列の運転シミュレーターはこの事故の廃車体を流用している。
P17編成の座席仕様は次節の100番台と同一である。
100番台
1992年7月15日のダイヤ改正を前に製造されたマイナーチェンジ車である。扉寄りにある座席が固定式となったことで扉周辺の空間が拡がり立席定員が増加したが、座席数は変更されていない。またつり革も増設され、0番台より座席の厚みが薄くなった。
同改正までにP101 - P109の4両編成9本が製造され、1993年(平成5年)3月18日ダイヤ改正前にP110, P111の4両編成2本が増備された。
P105, P106編成はサハ811形200番台を組み込んでいるが、これについては次節で述べる。
サハ811形200番台
サハ811形のみの番台区分で、201, 202の2両が存在する。団体臨時列車や臨時急行列車などの長距離運用に使用することを考慮してトイレを設置した関係で座席定員は52名に減っているが、その他の構造は他車と同一である。201はP105編成、202はP106編成に組み込まれ、この2本はクハ810形と合わせて編成中に2箇所のトイレを有する。そのため、サハ811-105, 106は存在せず、P107以降はサハ811-107のように編成番号と車両番号は一致している。
広告車両
P 11編成
P 11編成は北九州市八幡東区にあるテーマパーク「スペースワールド」のPR車両として落成した。当初、車体には青色の帯が全体にわたって配され、側面中央には「スペースワールド」のロゴが描かれた。車内についても座席の形状が他編成と異なり、荷物棚の色が青色であること、壁に小型の壁灯を設置しているのが特徴である。また、車内広告は基本的にすべてスペースワールドのものとされているが、スペースワールドとは関係ないJR関連の広告が掲出されることもある。なお、天井の吊り広告枠は設置されているが使用されない時期が長かった。そのため、つり革増設時にも干渉する吊り広告枠の移設は行われていない。その後は干渉しない広告枠のみ使用されており、2008年夏時点では、JR九州の自社広告が掲示されていた。
1996年(平成8年)秋にリニューアルされ、側面はロゴの代わりに「スペースワールド」のマスコットキャラクター等のステッカーが貼付され、前頭部は白色から赤色に変更され、座席モケットも張り替えられた。
当初は快速「スペースワールド号」に優先的に使用されていたが、その後は快速「スペースワールド号」の廃止により、他の編成と共通運用となった。
2009年1月に標準の帯色に変更されて小倉工場を出場し、これによりスペースワールド色は消滅した[1]。 但し、内装の変更はされていない。
P 8・P 9編成
P 8・P 9編成は1995年7月に熊本県荒尾市にある遊園地「三井グリーンランド」のPRを目的に外装が変更された。車体全体に緑色の帯が配され、「三井グリーンランド」のPRステッカーが貼付された。内装は変更されていない。
排障器の色は外装変更の時点から両編成とも緑色だったが、P 9は排障器を強化型に交換した際に灰色となっている(2007年3月現在。右の写真とは逆)。現在はP 8も強化型の排障器に交換されているが、こちらは緑色とされた。車外スピーカー取付工事については後述する。
2007年(平成19年)7月に「三井グリーンランド」が「グリーンランド」に名称変更された際、P 8編成、P 9編成は共に車体側面の緑色の帯を廃し従来のオリジナルのものに戻され、運転台ガラス上部の広告ステッカーも撤去された。また、側面戸袋部についても「三井グリーンランド」ロゴとイラストステッカーは撤去されたが、「NEW RAPID TRAIN 811」ロゴは存置されている。P 8編成は2007年11月現在、クハ810形およびクモハ810形正面部の緑色の帯、排障器を含めた原色復元を完了しているが、P 9編成の同正面部の帯は復元されていない。
当初は快速「三井グリーンランド号」に優先的に使用されていたが、後に快速「三井グリーンランド」の廃止により、他の編成と共通運用となった。
P 101編成
2006年、ソフトバンクグループとなった日本テレコム(現・ソフトバンクテレコム)のPRを目的として登場した広告車両で、プロ野球パシフィック・リーグ球団である福岡ソフトバンクホークスの選手のラッピング広告が施されていた。ラッピングはクハ811-101が鳥越裕介、サハ811-101が斉藤和巳、モハ811-101が松中信彦、クモハ810-101が杉内俊哉であった。
運用は他の編成と共通だった。2007年にラッピングが撤去され、旧に復している。
その他の広告車両
上記の他にも、NHK「どーもくん」、劇団四季のミュージカル『CATS』、映画『ドラえもん のび太の恐竜2006』など期間限定で広告ペインティング・ラッピングが施される事例がある。
2008年9月末現在、P 8編成は九州鉄道記念館開館5周年記念のラッピング広告が施されている。
現況
運用
2009年現在、以下の路線で運用されている。
鹿児島本線門司港 - 荒尾間の快速列車・普通列車としての運用が大半を占めているが、日豊本線や長崎本線での運用も存在し、日豊本線の中津駅以北では朝夕に運行される快速列車にも使用されている。2009年3月14日のダイヤ改正により、日豊本線における定期運用範囲が佐伯駅まで拡大した[2]。
改造工事など
2008年現在では、全編成の排障器が813系と同様の乗務員室昇降ステップ組込み大型に交換されている。一部の編成では客室側窓の一部固定化改造も施工されているが、落成当初から扉間の中央と車端部以外の側窓が固定式とされている813系と異なるのは、車端部から一箇所おきに固定式とされている点である。
2005年(平成17年)春以降、車外スピーカーの設置が進められており、2008年10月時点では、0番台がP 4・P 6・P 7・P 11・P 14・P 17以外、100番台はP 111以外の各編成で設置済となっている。
また、落成当初はドア周辺のみであったつり革がドア間の座席部分にも増設されている。これに伴い干渉する一部の吊り広告枠が移設された。
関連商品
脚注
- ^ 「811系スペースワールド色が消滅」交友社『鉄道ファン』railf.jp 鉄道ニュース 2009年1月28日
- ^ 「811系が佐伯まで乗入れ」交友社『鉄道ファン』railf.jp 鉄道ニュース 2009年3月17日
- ^ 臨時快速「有田陶器市号」運転の際には入線する。