星界シリーズ

日本のライトノベル作品、テレビアニメ番組

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星界の紋章』(せいかいのもんしょう)は、森岡浩之によって執筆されたSF小説スペースオペラ)、ライトノベル、及びそれを原作としたアニメ作品。続編として『星界の戦旗』が刊行中である。

概要

人類が、太陽から0.3光年離れたところに発見した「ユアノン」なる素粒子を利用した恒星間宇宙船を開発し、惑星改造により太陽系外に居住惑星を拡大し始めて何世紀も後のこと…。

ハイド星系・惑星マーティンの政府主席の息子ジント・リンが幼少の頃、彼の故郷は「アーヴによる人類帝国」なる星間帝国の大艦隊によって侵略を受けた。彼の父ロック・リンは降伏と引きかえに貴族の称号を得、そのためジント自身も帝国貴族の一員となる。それから7年後、ハイド伯爵公子となったジントは、皇帝の孫娘ラフィールと運命的な出会いをする。その時からジントは帝国貴族として生きていく事を決意する。侵略者でもある専制国家を従来のようにステロタイプな敵役としては描かず、むしろ理想国家として美化して描き、厚遇の象徴として高貴な身分のヒロインを主人公に配した作品である。

アーヴとよばれる遺伝子改造によって生まれた架空の種族は宇宙の人類世界の半分弱(2兆人のうち9000億人)を支配している。アーヴは後述のごとく日本文化を継承する種族であり、帝政をとる。他の半分は現在の国家に近く民主政体をとっている。これら民主国家がアーヴによる人類帝国の伸張に恐れをなし、侵略戦争をしかけるというのが物語の背景となっている。

アーヴはホモ・サピエンスと異なる遺伝的特徴、美貌・不老とか空識覚をもつにとどまらず、宇宙空間を旅する船舶、あるいは宇宙に浮かぶ都市や施設など宇宙空間で暮らす事を常とすることでも人類一般と異なる。このアーヴという種族の設定のみならず、超光速航行を可能にするために別の宇宙である「平面宇宙」を移動する、平面宇宙航法と呼ばれる恒星間航行や、アーヴ語と呼ばれるアーヴ独特の言語体系などの設定も星界シリーズの大きな特徴となっている。

日本神話を世界設定の背景にしていることも特徴的で、例えば八頸竜「ガフトノーシュ」は「八俣大蛇(ヤマタノオロチ)」、金色鴉「ガサルス」は「八咫烏(ヤタガラス)」、皇族「アブリアル」は「天照(アマテラス)」、帝都「ラクファカール」は「高天原(タカマガハラ)」であり、また「帝国(フリューバル)」は星々の集合ということで「御統(ミスマル)」の語形変化とされる。


注意:以降の記述には物語・作品・登場人物に関するネタバレが含まれます。免責事項もお読みください。


ストーリー

星界の紋章I

ロック・リンの降伏・叙爵に伴い、ジントはロックの秘書にして育ての親であったティル・コリントと離れ離れになり、ヴォーラーシュ伯国デルクトゥーに送られた。7年後、アーヴ言語文化学院を卒業したジントは帝都ラクファカールにある星界軍の主計修技館(ケンルー・サゾイル)に入学するため巡察艦ゴースロスに乗り込む。彼を迎えに来た翔士修技生ラフィールは、皇帝の孫であった。いろいろあった末に友情を結んだ二人は、突如4ヵ国連合の一つである人類統合体の艦隊の攻撃を受けて脱出(その後ゴースロスは撃沈)。二人を乗せた連絡艇は燃料補給のためフェブダーシュ男爵領へ到着するが、男爵により二人は引き離され、ジントは監禁されてしまう。

星界の紋章II

ジントが監禁されている事を知ったラフィールは男爵の家臣セールナイらと、ジントは共に監禁されていた前男爵スルーフと協力して脱出し合流。追撃してきた男爵を倒した二人は目的地のスファグノーフ侯国へ向かうが、惑星クラスビュールに着陸したときにはすでに人類統合体により星系は占領されていた。地上人に変装した二人を待ち受けていたのは、マルカ率いる、帝国からの独立を夢見る「反帝国クラスビュール戦線」の面々であった。一方、4ヵ国連合の大使から抗議された皇帝ラマージュは連合に対して宣戦布告した…。

星界の紋章III

二人の着陸跡を発見した人類統合体軍は、二人と「戦線」との関連を突き止め、追跡を開始。ルーヌ・ビーガ市警察のエントリュア警部は統合体のカイト憲兵大尉とともに二人を追う。一方、スファグノーフ奪還のために帝国は大艦隊を派遣。スファグノーフ門沖会戦が始まった。あちこちで追跡劇を繰り広げた二人を脱出させるために「戦線」のメンバーは奇想天外な脱出法を提案。二人は無事に救出されたが、そこに待ち受けていたのは……。

そして、3年後……


登場人物

星界シリーズの重要諸設定

星界シリーズにおける宇宙観は、通常の宇宙物サイエンスフィクションとは大きく異なる。一番著しいのは、超光速航法の描写である。通常宇宙空間から「門」を通じて「平面宇宙」という別の宇宙空間を経由して、再び「門」をくぐって通常宇宙空間へと戻るという方式である。もちろんこのような「場所を限定するワープ」というのは、過去のSF作品でもよく見られるものであるが(ワームホール航法など)、星界シリーズの超光速航法で特徴的なのは、別の宇宙空間である「平面宇宙」での描写が詳細である事である(他作品では、ワープの間に経由する別宇宙空間は一瞬のうちに通過してしまい、ほとんど描写されない場合が多い)。「平面宇宙」の通過にはそれなりに時間を要し、そこでの宇宙戦闘艦どうしの戦闘も生じる。また恒星間の移動は全て「平面宇宙」を経由する事から、宇宙地図・星間国家の勢力図は、平面宇宙上の地図で表される。

この世界には、かつては数百を越える国家(恒星系ごとに独立)が存在したようであるが、長年の間に侵略と併合を受け、現在は「アーヴによる人類帝国(フリューバル・グレール・ゴル・バーリ)」、通称「帝国(フリューバル)」を含めて5ヶ国しか存在しない。

帝国は人類宇宙の約半分を支配し、その交易により莫大な富を得、超大規模の星界軍(ラブール)を維持している。と言うよりも、星界軍が帝国の政治、行政の多くを動かしており、事実上帝国の基盤となっている。

形式上は皇帝(スピュネージュ)が帝国全体を統治しているが、その支配は緩やかなものであり、地上世界(ナヘーヌ:有人惑星)では現地人から成る領民政府(セメイ・ソス)が各惑星の統治を行い、帝国に対しては領民政府の代表である領民代表(セーフ・ソス)が、帝国貴族である領主(ファピュート)と各種の交渉を行う(領民政府の統治権は大気圏外には及ばない。従って複数の有人惑星を持つ星系には同数の領民政府がある)。

このように、帝国は地上世界や領民(ソス)に対して直接関与せず、地上世界で起きていることに通常はまったく関心を払わない。領民は、帝国臣民としての自覚や忠誠を期待されてはおらず、帝国の支配に反対することすら禁止されていない。

人類宇宙の残りの半分は、一部は遺伝子操作種族もいるものの、普通の人類からなる「人類統合体」「ハニア連邦」「拡大アルコント共和国」「人民主権星系連合体」が、離合集散しながら統治している。彼らは一般に、アーヴの帝政に嫌悪感を持っており、民主主義国家を標榜している。「4ヵ国連合(ノヴァシチリア条約機構)」という軍事同盟を結んでアーヴによる人類帝国と敵対しているが、各国の帝国に対する態度には温度差がかなりある。

戦いは、帝国以外では最も強大にして敵愾心の強い、人類統合体の大規模な先制攻撃から始まった。帝国は、これに対し断固たる報復で応える所存であった……。

アーヴによる人類帝国

アーヴとは

帝国(フリューバル)の社会構成

アーヴ
法律上は皇族・貴族・士族の総称。つまり地上人でも功績によって士族や貴族に取りたてられればアーヴとして扱われる。ただし、子孫にその爵位(スネー)を継がせたければ、遺伝子操作により生物学的なアーヴとしなければならない。
皇族(ファサンゼール)
「アブリアル」の氏姓と「ネイ」の姓称号(サペーヌ)を持つ八王家(ガ・ラルティエ)に属する者。軍役に就く義務を負い、同世代の皇族の中で最初に帝国元帥(ルエ・スペーヌ)まで昇進できたものが皇太子(キルーギア)になり、同時に他の皇族は予備役編入となる。なお、各王家の長はそれぞれ帝都ラクファカールにある八つの門の一つと、それに(平面宇宙側で)近接する多数の門からなる王国に封じられている。王家の長以外の皇族は、通常どこかの恒星系を領地(リビューヌ)として与えられ、貴族爵位を持つ(たとえばラフィールは子爵である)。なお、皇帝は「アブリアル伯爵」の爵位を持つが、これは帝都ラクファカールの領主、という立場であり、実質上皇帝としての称号である。皇族は、全員が生物学的なアーヴである。
貴族(スィーフ)
原則として、恒星系を領地として持ち、世襲でそれを統治する者で、領主(ファピュート)とほぼ同義である。皇族から分かれた家は「ボース」、帝国成立時からある貴族の家は「アロン」、帝国成立後に貴族となった家は「スューヌ」の姓称号を持つ。爵位は上位より大公爵(ニーフ)・公爵(レークル)・侯爵(レープ)・伯爵(ドリュー)・子爵(ベール)・男爵(リューフ)がある。アーヴの爵位は領地の状態に由来しており(詳細は後述。また例外は大公爵で、根源氏族直系の長を表し、地上世界の状態に由来しない)、それゆえ地球上に存在した爵位のように貴族の階級別栄誉称号ではない。地球上の爵位は元は職名に由来しており、その職が有名無実化する事によって栄誉称号化したものが多いが、アーヴの貴族社会はそのような変遷をまだ経験していないためである(後述する通り軍隊は兵器体系の変遷があり、職名が階級化している)。ただし領地と爵位が密接に関わっている点に関してはヨーロッパの爵位と類似はしている(それゆえヨーロッパでは複数の領地を持つ貴族が複数の爵位を持つ場合もあるが、アーヴにおいては複数の領地を持つがゆえに複数の爵位を持つのは皇帝のみである)。
世襲の貴族の場合、各爵位の叙爵基準は以下の通り。
大公爵
皇族であるアブリアルを除いた根源二八氏族直系の一族の長のみに与えられる。領地の規模は様々であるが、必ず領民が住む地上世界(邦国(アイス)と呼ぶ)を含んでいる。
公爵
侯爵の中で、特に大きな功績があった者が昇格する。生まれの血筋に関係なく、帝国内で誰もが到達可能な最高位である。ただし、実際に到達するのは極めて困難である。
侯爵
領地内に、領民が住む地上世界を持つ。通常、領地内の領民数が1億人を超え、なおかつある程度以上の領地経営の手腕が認められていることが必要。
伯爵
領地内に地上世界を持つが、領地内の領民数は1億人以下か、領地経営の手腕が不十分である場合。
子爵
地上世界を持たず、領地はすべて無人の所領(スコール)。ただし、環境改造すれば居住可能になる惑星を領地に持ち、そうした惑星を開拓して帝国の拡大に貢献する事が期待される。
男爵
領地に地上世界を持たず、また環境改造しても居住可能とできる惑星を持たない。恒星エネルギーを利用した反物質燃料の生産や、無人惑星(小惑星やガス惑星等)から鉱物資源や燃料の水を採掘し、それらを売ることで生計を立てる。
地上世界を持つ場合(大公爵、公爵、侯爵及び伯爵)を「諸侯(ヴォーダ)」と呼ぶ。領主の収入は、無人惑星の鉱物資源採掘権、恒星周辺における反物質燃料(ベーシュ)の生産権を利用した生産物の売却益で、さらに諸侯の場合、他星系との星間交易権の独占による商取引での利益がある。これらの「領地経営による収入」については、帝国から課税される(帝国への納税は貴族の高貴なる義務であり、中世・近世の実際のヨーロッパ貴族が免税特権を持っていたのとは逆である)。
帝国に編入されたばかりの星系や、何らかの理由で領主が空位となった星系は一時的に帝国直轄領=皇帝領となり、新たな領主が決まるまでは代官(トセール)が任ぜられる。そのため、皇帝は上記の「アブリアル伯爵」以外にも、その領地の数だけ男爵から公爵までの爵位を同時に持つ立場になることがある。
貴族自身が長く行方不明の場合(たとえばヴォーラーシュ伯爵など)や、特に諸侯で何らかの事情により地上世界の統治が困難または不可能である場合(たとえば取り決めにより領地内に長期滞在できないハイド伯爵など)にも、領地の近く(通常、軌道城館内)に代官が置かれる。これらの場合の代官は一時的なものではなく、比較的長期にわたり、その任に就くこととなる。
貴族の子弟が爵位を継ぐには、翔士として最低10年(修技館及び翔士修技生を含めると13年)、星界軍へ奉職することが義務づけられている。また、領地を持っている場合、星界軍に所属している間は無給である(ただし何らかの事情で収入がない場合は、星界軍から年金が支給される)。
数は少ないが、領地を持たない貴族も存在する。本来は領地を持つ世襲の貴族であるが、敵国の侵略等により領地を奪われた貴族(ジントも一時的にこの立場になった)と、皇族から離籍した公子(皇帝にならなかった皇族や王族の子女)、領地を持つ貴族の傍流で『公子』という爵位のみ継承する貴族、一代限りの貴族(星界軍や帝国政府で特に高い地位に達した国民、官僚などで、称号には『帝国(ルエ)~』の後に公爵以下の爵位がつく)がある。
また、上記の一代限りの貴族が領地を賜って世襲の貴族になる場合もある。例を挙げると、星界軍の翔士は、各兵科(一部を除く)の最高位である星界軍元帥になると叙爵される(フェブダーシュ男爵・クロワールの祖母は一領民であったが、従士から翔士、さらに技術元帥・艦政本部長官に出世、所領を賜り正式の男爵となった)。
星界軍の翔士以外にも、官僚が功績を上げて貴族となる場合もある。ただし多くは一代限りの貴族であり、世襲の貴族となる場合は少ない。宰相まで勤めてもせいぜい男爵、特筆すべき功績をあげても子爵が精一杯で、条件は厳しい。国民ですらなかった地上人が一足飛びに貴族、しかも伯爵となったロック・リンは、例外中の例外である(帝国編入と引き換えに皇太子ドゥサーニュに自らが貴族となることを認めさせた)。
上記の叙爵基準から、男爵から子爵への昇格は、かなり困難であると考えられる。男爵は、自領にどのような投資をしても有人惑星を持つことが不可能であるため、子爵以上に昇格するには何らかの大きな功績を挙げ、少なくとも有人惑星が持てる別星系の領主となることが必要である。子爵以上であれば、自領への投資(惑星改造、移民募集、邦国への経済的援助など)により、公爵までの上位昇格を狙うことができる。
なお、貴族籍を捨てることもできる。すべての貴族特権を失い、領地は帝国へ返上となる。
諸侯は約1600家で、家族を足しても2万人足らず。貴族全体では20万人ほどである。
士族(リューク)
皇族、貴族以外のアーヴ。一等~五等の5階級から成る「勲爵士」と呼ばれる身分を持つ。星界軍での位階との対比の目安は、以下の通り。
一等勲爵士(ラローシュ)
艦長称号(サレラジュ)を受けている者。
二等勲爵士(キゼー)
十翔長と、副百翔長以上で艦長称号を受けていない者。
三等勲爵士(ルフール)
後衛翔士と前衛翔士。
四等勲爵士(エナーヴ)
列翼翔士。従士からたたき上げた軍士が最先任従士長から列翼翔士に昇進したら、この位置となる。
五等勲爵士(リヘール)
士族として生まれ、成人したがまだ翔士になっていない者(翔士修技生を含む)。
提督など、より高い位階に達した場合は、一代限りの貴族爵位を持つ場合がある(上記)。
また、星界軍に入らずとも、官僚としての功績によって国民から士族になる場合もある(貴族にまで昇進するケースもあるのは上記の通り)。ラフィールを保護した『紋章』の反帝国クラスビュール戦線のメンバーのように、領民からいきなり士族になったケースもあるが、これは「アヴリアルが約束を守らないのは許されない(ラフィールは彼らに対して宇宙船を貸与してもらえるよう、皇帝陛下に願い出ると約束したが、宇宙船の貸与は士族以上の身分の者にしか認められていなかった)」・「領民ですら無かった地上人からいきなり貴族になった前例もある」として認められた特例であり、その後同様のケースが生じたかは、現時点では不明である。
帝国成立時からある士族の家は「ウェフ」、帝国成立後に士族となった家は「ボルジュ」の姓称号を持つ。なお、領地を持たないため、帝国から課税されることはない。約2500万人ほど。
地上人
国民(レーフ)
星界軍従士や貴族の家臣などとして働く者。ただし、上記の通り功績次第では栄達も可能。官僚になるアーヴが少ないこともあり、歴代の帝国宰相は地上出身者が多い。領地を持たないので、帝国から課税されることはない。約10億人。
領民(ソス)
地上世界(ナヘーヌ:有人惑星)で生活する者。領民政府(ソメイ・ソス)の統治下にあり、大気圏から出ない限りは完全な自治権を持つ。課税に関しては領民政府が課すものであり、帝国は関与していない。星系内のみを航行する非武装の宇宙船であれば、領主の許可があれば保有できる。約9000億人。平面宇宙航法の確立前に亜光速宇宙船を使った移民の時代がかなり長期間に渡ったため、その文化や社会は実に多様である。また、アーヴに対する見解や立場も様々である。アーヴから遺伝子調整の情報を提供された領民政府も存在するが、アーヴの特色である空識覚器官(フローシュ)だけは禁止されており、空識覚器官を持つ領民は国民にすらなることはできない。
個々の地上世界の詳細は星界の紋章・戦旗惑星一覧を参照。

邦国の義務

帝国貴族である諸侯の領地である有人星系すなわち邦国(アイス)、その領民政府には、いくつかの義務がある。

  • 領主や帝国との交渉役である「領民代表」を選出すること。一応は邦国のトップの立場である人間が望ましいが、帝国はそこまでは干渉せず、純然たる交渉役でも構わないようである。ただし帝国の側では領民代表を邦国のトップとみなして扱う。方法は、領民が認めるものであれば問わない(既存の政府主席、世襲の王、選挙、指名、くじ等何でもよい)。ただし、あからさまに帝国に叛逆の意志を示す者や、何らかの理由で領主が拒否する者は認められない(領主は拒否権を持つ)。領民代表の地上世界側での呼称は自由。「大統領」や「首相」等は無論、「皇帝」を名乗ろうとも、帝国はそれに関与しない。独立国としての体裁を保つ目的で(帝国を外交相手である外国とみなして)「外務大臣」と称しても構わない。変わったところでは、アーヴを機械と定義した上で、領民代表をその「保守責任者」と称する地上世界もある。
  • 平面宇宙航行の可否を問わず、星系間を航行できる宇宙船(メーニュ)の所有は一切禁止。領民個人はもちろん、領民政府であっても所有は認められない(アーヴですら宇宙船の個人所有は認められておらず、帝国所有のものを借り受ける形である)。ただし、星系内の航行のみに限定されたものであれば、所有可能。
  • 帝国星界軍の募集事務所(バンゾール・ルドロト)の設置。領民の星界軍への参加は、強要による徴兵ではなく、本人の自由意志による志願が原則であり、領民政府や領民代表もこれを妨げてはいけない。ただし、星界軍に入隊しないようにというプロパガンダを行う程度なら黙認されている。なお、募集事務所では志願兵の受付のほか、移民を募集する他の邦国や家臣を募集する領主、帝国の官僚機構等への人材斡旋も行う。募集事務所を通さない星系間での移民は、原則として禁止されている。

帝国星界軍(ルエ・ラブール)の組織

帝国成立期のアーヴは小型の高機動戦闘ユニットを主戦力としており、当時の職名が階級名としてジントたちの時代になっても使われている(ただし、千翔長以上は組織の拡大に伴って創設されたもの)。

勅任翔士(セドラリア) 元帥将官に相当する。
帝国元帥、星界軍元帥は飛翔科のみ。その他の兵科は元帥(スペーヌ)ないし大提督が最高階級。
  • 帝国元帥(ルエ・スペーヌ)
飛翔科のみ存在する、最高位。皇族がこの階級に達した場合に皇太子となり、帝国艦隊司令長官に親補される。それまでの皇太子は皇帝になり、それまでの皇帝は上皇(ファニーガ)になる。
かつては皇帝が「帝国元帥」にして帝国艦隊司令長官を兼務したが、現在では皇太子がその任にあたる。統帥権は皇帝が有するが、象徴的なもので軍令に指図することはない。
  • 星界軍元帥(スペーヌ・ラブーラル)
複数の戦線でそれぞれ艦隊集団規模の戦力を動かす場合は「星界軍元帥」が副司令長官として、そのうちのひとつの前線指揮を執る。
  • 大提督(フォフローデ)
艦隊司令官職の階級。
  • 提督(フローデ)
艦隊司令官職の階級。
  • 准提督(ロイフローデ)
分艦隊司令官職の階級。
  • 千翔長(シュワス)
戦隊司令官職の階級。当階級以上で、両翼頭環(アルファ・マブラル)の着用が許される。
奏任翔士 佐官尉官に相当する。
この階級は、初期の星界軍の艦隊編成に由来する。小型の高機動戦闘ユニットはダイヤモンド型の4機編成を基本としており、その役割に由来する。星界の紋章の時代には高機動ユニットは過去の兵器であり、階級と役職は乖離している。
  • 百翔長(ボモワス)
元は100機から200機ほどの高機動戦闘ユニットの長。片翼頭環(アルファ・クラブラル)の着用が許される。
  • 副百翔長(ロイボモワス)
元は百翔長の補佐。当階級も、片翼頭環の着用が許される。
  • 十翔長(ローワス)
元は10機の高機動戦闘ユニットの長。ダイヤモンド型4機編成の2隊(計8機)プラス2機を束ねる。
  • 前衛翔士(レクレー)
元はダイヤモンド編成の前方担当。ダイヤモンド4機編成の長。
  • 後衛翔士(リニエール)
元はダイヤモンド型編成の後方担当。ダイヤモンド4機編成の副長。
  • 列翼翔士(フェクトダイ)
元はダイヤモンド型編成の左右担当。
翔士修技生(ベネー・ロダイル) 士官候補生に相当する。
従士(サーシュ) 下士官・兵に相当する。
  • 最先任従士長(ボアルム・ウェサーシュ)
  • 先任従士長(アルム・ウェサーシュ)
  • 従士長(ウェサーシュ)
  • 一等従士
  • 二等従士
  • 三等従士
  • 四等従士
  • 一等錬兵
  • 二等錬兵

原則的に従軍したアーヴはすべて翔士となり、従士には国民がなる。翔士に昇進した国民は士族として扱われる。なお、士族の説明にある通り、著しい功績等により特に高い階級に昇進した場合、国民出身であっても一代限りの貴族爵位や、さらに領地を賜って世襲の貴族(正式の貴族)にまで昇格することもある。

操艦・砲術などを担当する飛翔科翔士(ロダイル・ガレール)になれるのは、生物学的なアーヴだけである(帝国では、平面宇宙航行機能を持つ宇宙船はすべて空識覚に基づく、制御籠手(グーヘーク)を介した操縦を前提としているため)。

かつては地上軍が存在したが、帝国創建から程なく帝国史上最大の内乱「ジムリュアの乱」を起こしたために解体され、空挺科として星界軍に組み込まれた。

その他の兵科には軍監科(作戦参謀)、主計科(補給・医療などの後方参謀)、軍匠科、軍医科、技術科、警衛科、法務科、看護科などがある。

上記の通り奏任翔士の階級は役職と乖離しているため、星界の紋章の時代においては階級とは別に、各艦の艦橋要員について以下の職名が存在する。

艦長(サレール)
艦全体の最高責任者。乗組員を指揮し、司令官からの上意下達や、作戦行動の指示などを行う。小型艦である突撃艦では突撃艦長(マノワス)であり、砲術士を兼任することもある。
艦長席の後方には、必ず艦長の氏族の紋章旗を掲げ、また航行日誌や戦闘状況などを記録する「思考結晶(ダテューキル)」を管理する。
通常、突撃艦や護衛艦などの小型艦では十翔長、襲撃艦や巡察艦、戦列艦などの大型艦では副百翔長以上がおもに担当する。
副長(ルーセ)
艦長を補佐する。多くの場合、航法士や砲術士を兼任する。通常、大型艦では十翔長か前衛翔士が、小型艦では先任翔士として前衛翔士か後衛翔士が、おもに担当する。
航法士(リルビガ)
航法を担当し、平面宇宙での操艦も担当する。空識覚が必須なので、必ず飛翔科の翔士である。小型艦では先任翔士が担当する。当直により艦橋に航法士が不在となることを防ぐため、必ず複数が置かれる(航法士全員が他職と兼任のことも多い)。通常、小型艦では前衛翔士か後衛翔士、大型艦では十翔長か前衛翔士がおもに担当する。
砲術士(トラーキア)
火器管制を担当し、通常宇宙や時空泡内での操艦を担当する。航法士と同じく空識覚が必須なので、必ず飛翔科の翔士である。小型艦では艦長(マノワス)が兼任することが多い。大型艦では十翔長・前衛翔士・後衛翔士がおもに担当する。
通信士(ドロキア)
他の艦艇や宇宙港などとの通信を担当する。小型艦では専任者を置かず、次席砲術士などを兼任することが多い。大型艦では、後衛翔士や列翼翔士がおもに担当する。
監督(ビュヌケール)
機関や艦体などのハードウェアの維持管理に責任を持ち、実働部隊である多くの従士を指揮監督する。軍匠科の翔士で、部下の従士たちから好感を持たれやすい地上出身者が多い。通常、小型艦では列翼翔士、大型艦では十翔長・前衛翔士・後衛翔士がおもに担当する。
書記(ウィグ)
燃料や弾薬、食糧や衣服、医薬品など、艦に必要な資材や消耗品、什器類の調達と管理や、艦内環境の維持管理、乗組員の健康管理、福利厚生などに責任を持つ。主計科の翔士。通常、小型艦では列翼翔士、大型艦では十翔長・前衛翔士・後衛翔士がおもに担当する。なお、戦闘中は本来の職務がないので、監督(戦闘中は機関関係に集中する必要がある)を補佐し、艦体の状況(被弾箇所など)の把握や気密隔壁の制御などを行う。
艇指揮(ボノワス)
連絡艇や短艇などの、搭載艇の操縦士。搭載艇を使用する際、乗員の飛翔科翔士の中から艦長や副長が任命する。

星界軍(ラブール)の装備

巡察艦(レスィー)
攻撃・防御・機動力・機雷戦ともにバランスの優れた大型艦。ビルシュ級、ロース級、更に最新鋭のカウ級が存在する。非常に強力な艦種であり、全軍を巡察艦で編成するべきとの意見もあるが、費用対効果等の問題もあり実際の配備数は少ない。なお皇帝の座艦「ガフトノーシュ」は最新鋭の巡察艦を当てるのが慣例になっている。
おもな装備は強力な電磁投射砲と少数の機雷。ゴースロスには防御及び近接戦用に可動凝集光砲と可動反陽子砲が装備されていたが、可動反陽子砲は威力と連射性が中途半端らしく、後述する襲撃艦では可動凝集光砲のみに統一された。おもな任務は、強行偵察と敵艦隊に致命傷を与えるための突撃(蹂躙戦)。
突撃艦(ゲール)
機雷を持たない小型艦で、機動力を最重要視した艦であるが、それだけに装甲が薄いので打たれ弱く、火力も貧弱である。防御機雷戦ができないので、防御用可動凝集光砲などを装備してはいるが、機雷攻撃に対しては脆弱である。また、非力な突撃艦の主砲(反陽子砲)では防御磁場を展開した大型艦の装甲に大きなダメージを与えられないため、大型艦に立ち向かうためには数を揃えて集中砲火を浴びせる戦術が取られる。
作中では巡察艦等の大型艦へと艦隊の主力が移りつつあり、非力で大型艦に対抗しきれない突撃艦は徐々にその地位が低下している(アーヴは突撃艦より大型の襲撃艦を配備しつつあり、統合体では突撃艦を減らして巡察艦を増強しつつある)。現在、ロイル級とガムフ級が確認されている(短編『着任』には“コーヴ級突撃艦”との記述があるが、これは作者がロイル級と間違えたものと思われる)。
護衛艦(レート)
機雷迎撃用可動砲を多数装備し、機雷を撃滅する。機雷には強いが、突撃艦には弱い。機雷の迎撃に真価を発揮するが艦自体の攻撃力は低めなため、突撃艦部隊などと組み合わせて運用される。船体の規格は突撃艦のものを流用しており、おおよその大きさは突撃艦とほぼ同等である。
戦列艦(アレーク)
機雷戦専門の艦。サイズ的には巡察艦を上回る超大型艦で、胴体部に機雷を多数格納している。平面宇宙の戦闘では主力艦の地位を占める。弱点は機動力の低さ。また、雷撃を突破されるか機雷を撃ち尽くして巡察艦等の接近を許すと、防御用火砲を装備してはいるものの一方的な蹂躙戦を許しがちである。ソーフ級が存在する。
襲撃艦(ソーパイ)
『戦旗III』で登場する新鋭艦で、『紋章』には登場しない。現在はコーヴ級が存在する。期待される役割は突撃艦に近く、そもそも時代遅れとなりつつある突撃艦の後継として開発されたものだが、テクノロジー的には機雷を抜いた巡察艦のようであり、重突撃艦と呼ぶべきか、軽巡察艦と呼ぶべきかの大議論の末、襲撃艦と命名されるに至った。襲撃艦という名が決まった後も軍士の間では議論が続き、しばしば殴り合いにまで発展することがある。主砲には電磁投射砲を採用し、突撃艦をはるかに凌ぐ火力を誇り、無数に装備された可動凝集光砲で護衛艦の担っていた機雷迎撃もこなす。実戦配備は途上である。
過去に存在した艦種(高機動戦闘ユニット他)
ジントたちの時代には既に時代遅れとなり存在しないものとして高機動戦闘ユニットがある。いわゆる単座式の宇宙戦闘機と思われる。また、高機動戦闘ユニットを運用する為の空母も存在した。星界軍の初期には主力を勤めたが、後に平面宇宙を自立航行可能な機雷が出現して敵機の迎撃や敵艦への攻撃をこなす様になったため、淘汰されたと考えられる。同様に空母も機雷を多数搭載する戦列艦にとって変わられている。しかし、星界軍の階級名はこれらの兵器が主力であった時代のものを慣習として引き継いでおり、士官を意味する"翔士"という言葉も本来は高機動戦闘ユニットのパイロットの称号である。
輸送艦(イサーズ)
資材・補給物資の輸送艦。攻撃力はなきに等しい。機雷戦も不可。質量も戦闘艦とは比べ物にならないほど大きく、そのぶん機動力は極めて低い。ただし、高い機動力を求められる巡察艦中心の偵察分艦隊に随伴するタイプは小柄で、機動力も高い。また、惑星への降下及び離脱が可能な強襲輸送艦(ルソーミア)も存在する。
連絡艦(ロンギア)
平面航行能力を備えた小型の貨客船(レビサーズ)のような構造の艦。情報と共に、貴賓や伝令使を運ぶことが想定されている。
連絡艇(ペリア)
平面宇宙における伝令役を務める小型艇。質量が小さく、快速である。ペリアの語源は日本語の“パシリ”らしい。
短艇(カリーク)
平面航行能力を持たない小型艦載艇。艦が直接入港できない場合、艦と宇宙港の間での人員輸送に使用される他、艦同士の連絡艇、脱出艇としても用いられる。
救命莢(ウィコー)
艦艇からの緊急脱出用ポッド。制御可能な動力を持たない、いわば宇宙の筏。通常1つが1人用で、生命維持能力は24時間分、わずかな食料と医薬品が備え付けられている。
艦艇の外部に面した通廊などに接して装備されている。ワンタッチのスイッチ操作で迅速に乗り込むことができ、救命莢内側のボタン操作で自動密閉、その後すぐに射出され、艦艇の爆散に巻き込まれないよう速やかに宇宙空間へ離脱する。
射出後は自動的に救命信号を発信し続け、近くの艦艇に救助を求めるようになっている。
艦載砲
機動時空爆雷(サテュス・ゴール・ホーカ)
短く機雷(ホクサス)とも。平面宇宙戦闘に使用される長射程兵器。時空泡発生機関と人工知能を備え、平面宇宙を自力で航行できる。すなわち無人・小型ではあるが宇宙船としての機能を備えており、これ自体が無人・体当たり専門の宇宙戦闘機的な能力を有している。突撃艦などよりはるかに小型・軽量であるため平面宇宙での機動性で大きく優り、これら小型艦艇にとっての天敵とすら言える存在。巡察艦には10発前後、戦列艦には100発近くが搭載されている。平面宇宙戦においては、命中させる以外にも相手の時空泡と時空融合させて質量を増やし行き足を遅らせるといった付与効果もある。統合体では新型の多弾頭機雷が開発されており、休眠状態にして放てば待ち伏せ攻撃も可能。また、『戦旗』では人民主権星系連合体が小型艦艇(おそらく突撃艦など)と同等の航続距離を誇る“超長射程機動時空爆雷”なるものを実戦配備し、星界軍に苦戦を強いた。
電磁投射砲(イルギューフ)
核融合弾(スピュート)や質量弾を光速の1%程度に加速して発射する。いわゆるレールガン(コイルガンの可能性もあり)。破壊力が大きく巡察艦・襲撃艦の主砲に採用され、主に対艦攻撃に用いられる。原理は不明だがある程度の追尾機能があり、その一方で無秩序噴射により敵の攻撃を回避する。
反陽子砲(ルニュージュ)
反物質である反陽子荷電粒子砲で打ち出す。いわゆるビーム砲。おもに突撃艦の主砲、巡察艦の副砲として用いられる。相手の物質の陽子との対消滅で発生するエネルギーによって分子を崩壊させることで破壊力を得るため、防御力場には阻まれやすい。威力と連射性が中途半端らしく、威力では電磁投射砲に、速射性では凝集光砲に劣る。機雷の迎撃と対艦攻撃の両方に用いられる。
凝集光砲(ヴォークラーニュ)
小型のレーザー砲のこと。物理法則上最速の光子を凝集して射出する(それゆえ弾影がなく、命中点のみが視認できる)。単発の破壊力は低い。ただ、弾体を施設で工業的に生産しなければならない電磁投射砲(核融合弾等を使用)や反陽子砲とは異なり、艦船のエネルギーがあればよいので物質弾体の補給の必要はない。速射性・連射性にも優れ、集中砲火すればかなりの破壊力を持つため、主に機雷の迎撃に用いられる。なお、襲撃艦の対空防御装備はこれに統一されている。人民主権星系連合体は反陽子砲並みの破壊力を持った凝集光砲を配備している。凝集光であるので、拡散しやすく、硝子片等を事前に散布することにより、一定以下まで火力を低下させることも出来る。
個人装備
軍衣(セリーヌ)
軍士が軍務に就く際の標準服。つなぎ。胸部から腹部、足の内側は青灰色、それ以外は濃紺色で、その境界に所属兵科を示す色の縁取りがある。また、縁取りと同色の飾帯をつける。
左胸に、所属兵科と階級を示す階級章をつける。
気密性が高く、与圧兜と併用することで、簡易宇宙服として使用できる。
かつてアーヴの先祖が使用していた船内作業服を元に、改良を重ねたものである。
階級章(レンスィムスィア)
軍衣の左胸につけるワッペン。地色で所属兵科を、また模様の色(金か銀)と、一重または二重の縁取り、星の数で階級を示す。
飾帯(クタレーヴ)
軍衣の上、腰回りに締めるベルト。服を締めるものではなく、銃や手榴弾などの携行装備品をこれに吊すためのものである。所属兵科を示す色のものを着用する。
端末腕環(クリューノ)
左手の甲に着用する、小型の多機能端末。通信や自動翻訳といった機能を持つ。
与圧兜(サブート)
いわゆる気密ヘルメット。これに大気瓶を接続し、軍衣を着用した上で与圧手袋・軍靴も着ければ、簡易宇宙服として機能する。
大気瓶は容量が少ないため、簡易宇宙服による宇宙空間での活動時間は極めて短い。
与圧服(ゴネー)
本格的な宇宙服。宇宙空間で、長時間の作業を行うには必須。収納時はコンパクトになるように、構造が工夫されている。また、与圧が失われた艦内で作業する際にも使用する。
凝集光銃(クラーニュ)
凝集光砲の小型版で、個人で持てるようにしたもの。白兵戦用の拳銃やライフルにも用いられ、出力を落とせば照明としても利用できる。

4ヵ国連合

平面宇宙(ファーズ)での戦闘形態

平面宇宙とは、文字通り2次元の宇宙であり、通常宇宙(ダーズ:3次元)上にあるものが平面宇宙に入る際は、通常宇宙を切り取った「時空泡(フラサス)」を時空泡発生装置によって形成して、3次元を維持しなければならない。また、物理法則も通常宇宙とは異なる。時空泡の移動速度は、内部質量と反比例するなどである(このため、複数の艦艇が時空融合した時空泡で防御しつつ、攻撃に際しては「単艦時空泡」に時空分離して急速接近する戦術が用いられる)。電磁投射砲の砲弾も凝集光も時空泡外では存在できないため、平面宇宙戦闘は、敵味方の時空泡が重なった場合に起こる「時空融合(ゴール・プタロス)」によって発生する。そこでは3次元的な戦闘が行われる。ただし、時空泡発生機関を独自に持つ機雷を使用すれば、時空融合していない遠距離の敵艦を破壊することもできる。

艦隊同士の平面宇宙戦闘は、通常まず多数の機雷を搭載した戦列艦同士での撃ち合いに始まる。しかし機雷は質量が大きく数が限られる上、防御機雷戦(機雷によって機雷を撃破する)や護衛艦による迎撃もある程度可能であるため、機雷のみで敵艦隊を全滅させることはかなり難しいようである。機雷戦の後、一方がダメージを受けるか機雷を撃ち尽くす等して満足に雷撃が行えない状態に陥ると、巡察艦もしくは突撃艦が敵時空泡と時空融合して戦闘をすることになる。戦列艦中心の部隊が巡察艦部隊による突撃を受けると戦闘は一方的な展開となりやすく、これを蹂躙戦と呼ぶ。

上記の戦闘形式は大艦隊同士の戦闘形態であり、小規模な局地戦ではこの限りではない。例えば大質量の機雷を多数搭載する戦列艦には機動力が低いという弱点があり、偵察と奇襲を主な任務とする機動力重視の偵察分艦隊に含むことはできない。偵察分艦隊は戦列艦より機動力の高い巡察艦のみで編成され、敵偵察分艦隊の迎撃には主に突撃艦がその任に当たることとなる。巡察艦と突撃艦の戦闘は、まず巡察艦が機雷を発射して突撃艦の数を減らし、その上で生き残った突撃艦と巡察艦が時空融合して戦う形となる。突撃艦は火力が弱く機雷攻撃にも弱いため、巡察艦を数でかなり圧倒しなければ勝利は難しい。

平面宇宙戦闘で一番問題となるのは、時空泡の中身は、質量でしか判断できないことである。泡間通信ができない場合、時空泡の質量から、経験と勘と運に頼って、敵か味方か、また艦種は何かを判断するしかない。何が出てくるかは実際に時空融合してみないと分からないこと、そして時空泡内の質量にも限界があることで、少なくとも襲撃艦6隻程度の質量が限界のようである(厳密にどの程度かは不明)。もっとも、限界質量に関しては戦旗Ⅲにて明らかにされたため、戦旗Ⅲ以前の映像作品(特に戦旗I)との間に矛盾が発生している。なお、限界質量を超えると時空泡は分裂してしまうが、無規則に分裂するためどのような時空泡ができるか予測できず危険である。

平面宇宙と通常宇宙

そもそも、人類が銀河文明を築き得たのは、平面宇宙の発見と、通常宇宙と平面宇宙を繋ぐ「門(ソード)」利用技術の確立によるものである。

通常宇宙と平面宇宙との位置関係は1対1ではない。平面宇宙は通常宇宙の投影ではなく、別個の宇宙である。両空間における位置関係は全くのランダムである。 ただ、「第二形態ユアノン」または「開いた門」(単に「門」とも)と呼ばれる特異空間においては、平面宇宙と通常宇宙は1対1に対応している。ある門から平面宇宙に入って別の門から通常宇宙に出ると、光速以上の速さで移動したと同様の結果となる場合があり、このような「門」と平面宇宙を介した超光速移動のおかげで、人類は通常宇宙の物理法則から解放され、銀河文明を作りえたのである。

なお、ユアノンは常に一定のエネルギーを放出し続ける特殊な素粒子として発見され、人類はこの素粒子が放出するエネルギーを利用する亜光速宇宙船を建造していた(ジントの故郷も、そうしたユアノン推進宇宙船によって植民された星の一つである)。この「第一形態ユアノン」はすなわち「閉じた門」であり、放出するエネルギーは平面宇宙から流入してくるものであった。

戦闘においても、当然「門」は重要な拠点であり、制圧対象である。例えば、機雷を大量に「門」に放てば、防御機雷戦ができない艦隊は、なすすべがない。これは、通常宇宙から平面宇宙に機雷を撃つ場合(時空融合)も、その逆の場合(時空分離)も、真である。

平面宇宙の勢力図

通常宇宙の銀河系で中心部ほど星が濃密であるように、平面宇宙の「天川門群(ソードラシュ・エルークファル)」にも「中心円」と呼ばれる「門」が密集した領域が存在する。この領域は時空粒子流が激しく、アーヴといえども航行できない。また、時空粒子流は中心円から外側へ向かって流れるため、流れに逆らって進む時はその反対方向へ向かうのに比べて遅くなる。

中心円から離れると、「環(スペーシュ)」という門がある程度密集した同心円状の領域が飛び飛びに存在する。「アーヴによる人類帝国」を構成する八王国のうち7つと4ヵ国連合諸国はおおむね第1環から第7環までの「中央領域(ソール・バンダク)」に存在し、イリーシュ王国のみが第12環にある(第8環から第11環までにも、有人星系に通じる門が少数ながら散在する)。ジントのハイド星系が長らく帝国に発見されなかったのは、ハイド門が第12環の中でもイリーシュ門のほぼ反対側という「辺境」に存在するため、探査自体がほとんど行われなかったことによる。第12環から外側は門がほとんどないが、一部に門密度の高くなっている領域があると観測されていたため、遥か遠くに別の銀河系に由来する門群があると推定されているが、まだそこまで到達したものはいない。

帝都ラクファカールのあるアブリアル伯国には八つの門があるが、それぞれが平面宇宙側では八王国のどれか一つに通じている。このためにいわゆる「内線の利」を発揮する事が可能だが、逆に帝都が陥落すれば一気に分断されてしまう。『紋章』では人類統合体を主力とする連合艦隊が第12環に通じる2つの門からイリーシュ王国に侵攻し、帝都に通じるイリーシュ門へ向けて進撃した。

平面宇宙における勢力境界線はかつて地球上にあった国境ほど明確なものではないが、便宜的にそれに準じて記した勢力図が『星界の戦旗I』の付録に示されている(第12環以外の「環」は省略)。7つの王国は4ヵ国の支配領域の隙間を埋めるように存在する。中でもラスィース王国とスュルグゼーデ王国は人類統合体に楔を打ち込んだ状態になっており、『戦旗I』では、この王国を出撃基地として攻撃を加えている。

図上ではクリューヴ王国だけがハニア連邦内に孤立している。ただ、ハニア連邦は他の三国全てと隣接しているものの、大戦初期に中立を宣言していたため、アーヴ側もクリューヴ王国方面への戦力増強は控えていた。しかし、この領域が実は重大な問題であったことが、『戦旗IV』の最後で語られた……。

機雷と平面宇宙戦闘

星界シリーズにおける機雷は、我々の世界で海中に敷設する実在の兵器のようなものではなく、時空泡発生装置を持ち、敵艦隊に向けて高速で投射・誘導される、架空の兵器である。

通常のSF艦艇の主力兵器である、レールガン荷電粒子砲といった兵器(無論、星界シリーズの艦艇でも装備しているが)は、平面宇宙では、時空融合しない限り意味を成さない。 敵の機雷攻撃に、味方の機雷をぶつけることで防御する防御機雷戦が必要なのは、そのためである。大量の敵機雷に時空融合されてから打ち落とすのでは、全てを打ち落とすことは不可能で、また打ち落とせたとしても時空泡内の質量が増して機動力が削がれ、艦隊運動に支障をきたし壊滅的被害を受ける。時として、数としては圧倒的に優勢な帝国星界軍艦隊が危機に陥るのは、補給不足や機動力重視の艦種構成ゆえの機雷の不足によるところが大きい。

作品リスト

原作小説

  • 星界の紋章シリーズ
    • 星界の紋章I 帝国の王女
    • 星界の紋章II ささやかな戦い
    • 星界の紋章III 異郷への帰還(完結)
  • 星界の戦旗シリーズ
    • 星界の戦旗1 絆のかたち
    • 星界の戦旗2 守るべきもの
    • 星界の戦旗3 家族の食卓
    • 星界の戦旗4 軋む時空(以下続刊)
  • 外伝
    • 星界の断章I(外伝的挿話。フィルムコミックスや読本、ゲームなどに掲載されている。2005年、文庫本としてまとめられた)
    • 星界の断章II
    • 星界の紋章 超外伝(原作者自ら手がけるパロディともいえる短編。ゲームなどに付属)
    • 星界の戦旗 超外伝(同上)

漫画

  • 星界の紋章(作画:小野敏洋・電撃コミックス)
  • 星界の戦旗 絆のかたち(作画:小野敏洋・電撃コミックス)
  • 星界の戦旗2 守るべきもの(作画:宮越和草・電撃コミックス)

アニメ

第1話冒頭のゴースロスの戦闘シーンとナレーション(ユアノン発見後の人類の太陽系外移民についての経緯)、第2話以降の冒頭のナレーションは作者創作のアーヴ語による。また、第1話ではマーティン語(実際は英語)、デルクトゥー語(広東語を基にした)の会話シーンが登場する。一方、人類統合体の言語リクパルは、原作では数語登場するが、アニメ化に際してはカットされた。第5話の冒頭ナレーションはリクパル。

また、最終話でラクファカールに到着してから3年後までの間のシーンは回想で触れられるのみで、上皇会議などのシーンはほとんどカットされている。

星界の紋章

WOWOW1999年1月2日から3月27日まで放映された。全13話。

スタッフ

  • 企画:宮河恭夫(サンライズ)・川城和実バンダイビジュアル
  • 原作:森岡浩之(ハヤカワ文庫刊)
  • シリーズ構成:吉永亜矢
  • キャラクターデザイン原案/ビジュアルコンセプト:赤井孝美江田恵一(ナインライブス)
  • キャラクターデザイン:渡部圭祐
  • メカニックデザイン:森木靖泰筱雅律常木志伸
  • 美術監督:岡田有章
  • 色彩設計:歌川律子 (Wish)
  • 撮影監督:白井久男(スタジオコスモス)
  • 編集:瀬山武司
  • 音楽:服部克久フェイスミュージック
  • 音響監督:小林克良
  • 音響効果:倉橋静男、武藤晶子(サウンドボックス
  • 録音調整:野口あきら
  • 録音助手:八巻大樹
  • 録音スタジオ:ブーメランスタジオ
  • 録音制作:トリニティサウンド
  • 音楽プロデューサー:井上裕香子、積惟文、眞野昇
  • 音楽制作:ビクターエンタテインメントビースタック、サンライズ音楽出版
  • 制作デスク:樋口弘光
  • 設定制作:青木弘幸
  • 制作助手:松尾友子
  • 企画担当:永井真吾
  • 宣伝:松永綾 (WOWOW)、村田央 (SUNRISE)、椎貝哲之介(バンダイビジュアル)、伊藤将生(ビクターエンタテインメント)
  • プロデューサー:片桐大介 (WOWOW)、若鍋竜太 (SUNRISE)、杉田敦(バンダイビジュアル)
  • 監督:長岡康史
  • 製作:SUNRISE、WOWOW、バンダイビジュアル
  • 著作権:(C)1999 SUNRISE INC.、WOWOW

放映リスト

  1. 侵略 〔Inofacssoth〕(1999年1月2日)
  2. 星たちの眷族〔Carsarh Gereulacr〕(1999年1月9日)
  3. 愛の娘〔Frymec Négr〕(1999年1月16日)
  4. 奇襲〔Déucrémhoth〕(1999年1月23日)
  5. ゴースロスの戦い〔Slachoth Gothlau th〕(1999年1月30日)
  6. 不可解な陰謀〔Sai gezai tec Dafacra〕(1999年2月6日)
  7. 幸せな叛逆〔Rau mechoth Rai fa〕(1999年2月13日)
  8. アーヴの流儀〔Bar Garhath〕(1999年2月20日)
  9. 戦場へ〔Ïucrabë〕(1999年2月27日)
  10. 二人だけの逃亡〔Digecau th Matnir Latta〕(1999年3月6日)
  11. スファグノーフ門沖会戦〔Raïchacarh Üécr Sau der Sfagnau mr〕(1999年3月13日)
  12. 惑乱の淑女〔Logh Labyrena〕(1999年3月20日)
  13. 天翔る迷惑〔Robïach Sai sera〕(1999年3月27日)

星界の紋章 特別編

2000年4月7日にWOWOWにて放映された。星界の紋章 全13話に新作カットを加えた総集編。

星界の断章 誕生

2000年4月7日にWOWOWにて放映された。「星界の紋章」番外編で、ラフィールの出生に関する話。

スタッフ

  • 監修:長岡康史
  • 監督:鍋島修
  • 脚本:村上ヒロアキ
  • ビジュアルコンセプト:赤井孝美、江田恵一
  • キャラクターデザイン:渡部圭祐
  • メカニックデザイン・作画監督:筱雅律
  • 美術監督:岡田有章
  • 音楽:服部克久
  • 制作:サンライズ

※星界の戦旗に関しては星界の戦旗#アニメを参照。

ラジオドラマ

FM大阪ネット配信され、CDとして全3巻がリリースされている。キャストは基本的にはアニメ版と同じだが、一部変更されている。

ゲーム

関連項目

外部リンク