野良打ち

福井県で行われる太鼓芸能

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野良打ち・のら打ちとは、主に福井県嶺北地方で神社の祭の際に用いられる太鼓奏法の独特の呼び名。一般的に、夕方から夜にかけ屋外で太鼓好きが集まり自由奔放に太鼓を打つ。具体的には、一張の「長胴太鼓」をゴザを敷いた地面に置き、2名1組で太鼓の片面だけを使って打つスタイルで、一方の打ち手が「地打ち(ベースとなる一定のリズム)」を、他方の打ち手がその「地打ち」に合わせて自由に太鼓を打ち込む。一定時間(数分)経過すると、今度は「地打ち」に合わせて打っていた者が「地打ち」側にまわり、誰か他に参加したい者が「地打ち」に合わせて自由に太鼓を打つ・・・この繰り返しが切れ目なく行なわれる。また、その場に横笛が加わることも多々あり、より一層場の雰囲気を賑やかにする。昔々は、村や町によっては、上手な打ち手に『太鼓打ち名人』と書かれた「すげ傘」を渡していた時期があり、その「すげ傘」をいくつも集めるのが太鼓自慢の証しだと言われていた。

野良打ちの主な特徴

  • 「長胴太鼓」一張さえあれば十分行なえる。
  • 「長胴太鼓」の片面だけを使って打つ。
  • 楽譜面に書き表すことが不可能。
  • 「地打ち」は「三ツ打ち」を主として「一本打ち」「早打ち」の3種類ある。さらに正確には「早打ち」は福井系の「四分六」と関東系の「五分五分」に分けられる。 ※ 「四分六」「五分五分」とは、左右の(バチ)の力の入れ具合のこと。
  • 「地打ち」の種類に合わせた「打ち込み」をする以外、奏法に何ら制約が無く、自由奔放に各自が自分の個性と感性(アドリブ)で打つ。
  • 一見「打ち込み」が花形に見えるが、実は「地打ち」と「横笛」が最も重宝がられる。
  • 下手な「地打ち」は好かれない傾向にあり、その「地打ち」にあえて打ち込もうとする者は少ない。よって、「地打ち」の交代が自然と行なわれる。

用語の発生時期

打ち方自体は大昔からあったらしいが、用語としては、おおよそ1990年代末(平成10年)頃から呼び名として定着したと思われる。

書き言葉として意味

現在、書き言葉として『野良打ち』と『のら打ち』の両方が用いられているが、『野良』の場合には、「野原・野」の意味(良は当て字)を持ち、一方『のら』の場合には、「なまけること・遊興にふけること・酒や女におぼれること」の意味を持つ。しかしながら、現状、どちらが正解だとは判断し難い。

野良打ちの参加者

年齢・性別・太鼓の上手下手、更には飲酒者・素面(しらふ)を問わず、太鼓を打ちたい者なら誰でも参加できる。

暗黙の決まり事

  • 参加するには、まずは「地打ち」側から入っていく。
  • 1組であまりにも長い時間(分)打ち続けていると、他に太鼓を打ちたい者に交代されないため、参加者は自分の持ち時間を心得ておく。
  • 夜遅くまで繰り広げられる場合には、近隣住民の了解を事前に得る。

野良打ち今昔

1980年代後半(昭和60年代前半)頃を境に、「野良打ち」参加者の傾向が徐々に変わってきている。1980年代後半までは、太鼓の上手下手に関係なく、全くの素人や泥酔者でさえも参加しやすい場の雰囲気であったが、その後の全国的な和太鼓ブームを機に、自称”セミプロ級”の打ち手が次第に集まるようになり、普段は太鼓に疎遠な一般人が参加しにくい場に変わってきており、徐々に味のある太鼓、情緒ある雰囲気が失われつつある。また、近年には「福井県野良打ち保存会」というアマチュア和太鼓グループが結成されている。

他都道府県の「野良打ち」類似形

  • 石川県能登地方輪島) - 一張の長胴太鼓をゴザを敷いた地面に置き、太鼓の片面だけを使って打つスタイルにおいては同じであるが、「御陣乗太鼓」に見られるように、「地打ち」は輪島独特の一種類のみで、「打ち込み」に至っては一定の形式があり自由奔放とまではいかない。動画サイト『YouTube』で「御陣乗太鼓」と検索すれば実際の演奏が観れます。 
  • 東京都八丈島 - の上に置かれた一張の太鼓を両面から二人で自由奔放に打ち合う。一方の打ち手がリズム打ち、他方がそのリズムに合わせて自由に打ち込む。動画サイト『YouTube』で「八丈太鼓六人会」と検索すれば実際の演奏が観れます。
  • 沖縄県大東島 - 「東京都八丈島」の流れを汲む太鼓。形式、奏法ともに八丈太鼓と酷似している。動画サイト『YouTube』で「大東太鼓」と検索すれば実際の演奏が観れます。

参考外部リンク

  • 御陣乗太鼓保存会 - 太鼓を打つ場(環境)や、太鼓の片面だけを使う点では「野良打ち」に類似しているが、奏者は「夜叉面」をはじめ八つの「面」の装いであり、奏法的にも全く異なる「石川県無形文化財指定」の和太鼓保存会様。 
  • 八丈太鼓六人会 - 「野良打ち」の類似形で、「八丈島独特の奏法」を伝承されている和太鼓チーム様。