北総鉄道
北総鉄道株式会社(ほくそうてつどう)は、東京都東部から千葉県北西部を結ぶ北総線を運営する日本の鉄道会社。
| ファイル:Hokuso-railway 7500.jpg | |
| 種類 | 株式会社 |
|---|---|
| 市場情報 | 非上場 |
| 略称 | 北総 |
| 本社所在地 |
〒273-0107 千葉県鎌ケ谷市新鎌ケ谷四丁目2番3号 |
| 設立 | 1972年(昭和47年)5月10日 |
| 業種 | 陸運業 |
| 法人番号 | 9040001030372 |
| 事業内容 | 鉄道による一般運輸事業、その他これに関連する事業 |
| 代表者 | 代表取締役社長 笠井孝悦 |
| 資本金 | 24,900百万円(2008年3月31日時点) |
| 売上高 | 14,386百万円(2008年3月期) |
| 営業利益 | 4,904百万円(2008年3月期) |
| 純利益 | 1,540百万円(2008年3月期) |
| 純資産 | -8,734百万円(2008年3月31日時点) |
| 総資産 | 115,898百万円(2008年3月31日時点) |
| 従業員数 | 302人(2009年7月1日現在) |
| 主要株主 |
京成電鉄株式会社 (50%) 千葉県 (22.29%) 独立行政法人都市再生機構 (17.27%) 松戸市 (1.37%) 市川市 (1.02%) 他(2006年3月31日現在) |
| 外部リンク | http://www.hokuso-railway.co.jp/ |
| 特記事項:北総開発鉄道として設立 | |
京成グループの企業の一つで、京成電鉄が筆頭株主であるほか、千葉県や松戸市など沿線地方公共団体が出資する。本社は、千葉県鎌ケ谷市新鎌ケ谷四丁目2番3号にある。
概要
千葉ニュータウンの建設開始に伴い、1972年3月の都市交通審議会(現在の運輸政策審議会)答申第15号が示した2本の東京都心直結ルートの一つ[1]を運営するために、京成電鉄グループ主体により設立されたものである。
その後、京成電鉄の経営悪化に伴い、千葉ニュータウン建設の事業主体である千葉県、1973年に事業に参加した宅地開発公団(後に住宅・都市整備公団、都市基盤整備公団を経て現在は都市再生機構)および沿線の地方公共団体や金融機関が出資者として加わり、第三セクター会社となった。
営業収益は毎年100億円以上(2006年度は135億円)あるものの、建設関連に伴う借入金の額が多く、2006年3月の時点で固定負債が1,145億円となり、約103億円の債務超過となっている。
| 経常利益 | 純利益 | 翌期繰越損失 | |
|---|---|---|---|
| 2006年度 | 22億2,900万円 | 11億1,300万円 | 365億800万円 |
| 2007年度 | 24億5,300万円 | 13億3,300万円 | 351億7,400万円 |
| 2008年度 | 30億6,700万円 | 15億4,000万円 | 336億3,400万円 |
| 2009年度 | 33億100万円 | 18億3,400万円 | 317億9,900万円 |
2000年度より9期連続黒字
歴史
北総鉄道は、その設立の経緯から千葉ニュータウンの建設と密接なつながりを持ち、歴史は千葉ニュータウン建設の歴史でもある。
千葉ニュータウンの建設は1966年に千葉県が構想を発表し、1969年に都市計画を決定した。1970年に小室地区から事業が着手されたものの、用地買収が計画通りに進まずスローダウン、その間に東京圏への人口集中が鈍化し、住宅確保の緊急性が薄れたこともあって、当初の計画から大幅な変更・縮小を余儀なくされている。これはそのまま北総鉄道の経営に影響を及ぼしている。そのような動きにより、既に不動産事業から撤退し、事業内容にそぐわない「開発」の名を都市基盤整備公団の撤退を機に社名より外し、「北総・公団線」と呼ばれた同線も「公団」を外して「北総線」とした。
- 1972年(昭和47年)5月10日 北総開発鉄道設立。
- 1979年(昭和54年)3月9日 北総線(第I期)北初富駅 - 小室駅間開業(当初は新京成電鉄松戸駅まで乗り入れ)。
- 1982年(昭和57年)5月 新東京国際空港アクセス鉄道として位置付け。
- 1984年(昭和59年)3月19日 住宅・都市整備公団千葉ニュータウン線小室駅 - 千葉ニュータウン中央駅間が開業し、運営を受託。
- 1988年(昭和63年)4月1日 住宅・都市整備公団千葉ニュータウン線の第2種鉄道事業者となる。同時に第一種鉄道事業区間を含めて「北総・公団線」と改称する。
- 1991年(平成3年)3月31日 北総・公団線(第II期)京成高砂駅 - 新鎌ヶ谷駅間(第1種鉄道事業)開業。
- 1992年(平成4年)7月8日 北初富駅 - 新鎌ケ谷駅間廃止(新京成電鉄新鎌ヶ谷駅の開業に伴う乗り入れ中止による)。
- 1995年(平成7年)4月1日 千葉ニュータウン中央駅 - 印西牧の原駅間(第2種鉄道事業)開業。
- 2000年(平成12年)7月22日 印西牧の原駅 - 印旛日本医大駅間(第2種鉄道事業)開業。印旛車両基地供用開始。
- 2000年(平成12年)10月14日 共通乗車カードパスネット対応カードとして、「ほくそうパッスルカード」発売・運用開始。
- 2004年(平成16年)7月1日 社名を北総鉄道に変更、同時に北総・公団線を「北総線」と改称。
- 2007年(平成19年)3月18日 PASMOを導入。同時にSuicaと相互利用開始。
- 2008年(平成20年)1月10日 共通乗車カードパスネットの発売終了。
- 2008年(平成20年)3月14日 共通乗車カードパスネットの自動改札機での使用を終了。
- 2010年(平成22年)度 成田新高速鉄道線として北総線を利用した京成電鉄による成田空港までの直通運転が実現する予定。
路線
32.3kmの路線を有するが、一部は千葉ニュータウン鉄道が施設を保有する第2種鉄道事業区間である。現在、成田空港への延伸計画が進行中である(京成成田新高速鉄道線を参照。2010年度予定)。開業後は15駅全駅が京成との共同使用駅となる(管理権は北総鉄道のまま)。
- 北総線(第1種鉄道事業):京成高砂駅 - 小室駅 19.8km 12駅
- 北総線(第2種鉄道事業、第3種鉄道事業者は千葉ニュータウン鉄道):小室駅 - 印旛日本医大駅 12.5km 3駅
- 【廃止】北初富駅 - 新鎌ケ谷駅 0.8km
車両
2009年7月現在、8両編成7本(56両)が在籍するが、自社所有の車両は5本(40両)で、残りの2本(16両)は京成電鉄からのリース車である。その他、千葉ニュータウン鉄道所有の8両編成5本(40両)も管理している。便宜上、同社所有車についてもここに記す。また、千葉ニュータウン鉄道所有車・京成電鉄からのリース車両を含むすべての現有車両が、京浜急行電鉄乗り入れ対策のため、先頭車を電動車としている。整備はともに京成電鉄で行われるが、当初9000形と9100形については新京成電鉄で整備されていた。
自社車両
現有車両
- 7500形:自社所有車。車体構造やスペックは京成3000形や新京成N800形と同一設計である。2006年2月20日より営業運転を開始。
- 7300形:元新京成乗り入れ対応車であった自社所有車2本(16両)および京成3700形のリース車両1本(8両)。
- 7260形(7268編成):京成3300形のリース車両。
過去の車両
- 800形:新京成800形のリース車両。塗装は変更されなかったが、返却後に車体の車両番号表記がプレート式へ変更された。またII期線や新京成線以外の他社線への入線は行っていない。
- 7050形:京成3150形のリース車両。このうち7064Fと7068Fの4連2本は前面帯が標準のものより薄い色だった。
- 7250形(7258編成):京成3200形のリース車両。2005年度に廃車回送された。
- 7150形:京急1000形を譲り受けて運用した。このうち4両は晩年にカラードア試験を実施した。ただし、SR無線を装備しなかったので、7000形や7300形と違って新京成には入線できなかった。
- 7000形:自社所有車。元新京成乗り入れ対応車。前面がゲンコツ形のためゲンコツ電車と呼ばれる。7500形への置き換えで2007年3月25日のさよなら運転を最後に運転を終了し、全車が廃車された。
千葉ニュータウン鉄道所有車
- 9100形:愛称はC-flyer(シー・フライヤー)。斬新なデザインに加えて車端部クロスシートを装備するが、スペック的には7300形と同じである。
- 9000形:当初は2000形と名乗っていたが、京急線への乗り入れに際して京急にも2000形があるため、地下鉄1号線乗り入れ協定に準拠して改番された。
1991年の第II期線開通当初は京成車両の北総線への乗り入れが行われていたこともあったが(当時京成車で千葉ニュータウン中央行の場合、行先表示の「ニュータウン」を大きく表示して千葉中央行と区別していた)、北総線列車が羽田空港方面にシフトしたことや、親会社である京成電鉄からの経営支援策(京成線内における北総車の車両使用料を金銭で支払うことによる北総鉄道のキャッシュ・フローの改善)の側面などから、2000年から2006年12月までは行っていなかった。
また、京成電鉄から一時的に3400形が帯色を変更せずに貸し出されたことがあるほか、1回のみであるが3000形(6両編成)が直通したことがある。
運賃
北総線全線共通・大人普通旅客運賃(小児半額・10円未満切り上げ)(2007年2月現在)
| 距離 | 運賃(円) |
|---|---|
| - 3km | 200 |
| - 5km | 300 |
| - 7km | 370 |
| - 9km | 440 |
| - 11km | 500 |
| - 14km | 570 |
| - 17km | 630 |
| - 20km | 680 |
| - 23km | 730 |
| - 26km | 760 |
| - 29km | 790 |
| 29.1km - | 820 |
乗り継ぎ割引
- 新柴又駅と京成高砂駅経由で京成本線(お花茶屋駅 - 江戸川駅)・押上線(京成立石駅)・金町線(全線)との間で利用する場合は、各社大人運賃で10円(合計20円)の割引。
- 北総線内各駅と京成線経由で都営線各駅との間で利用する場合は、各社大人運賃で10円(合計30円)の割引。ただし北総線が大町 - 印旛日本医大間の各駅発着である場合は、北総線は20円・他社局は10円(合計40円)の割引(北総線内各駅と京成・都営線を経由して東京メトロ線各駅との間で利用する場合も割引となる)。
- 北総線内各駅と京成・都営・京急線経由で羽田空港駅との間で利用する場合は、大人運賃で北総・京成10円、都営・京急30円(合計80円)の割引。ただし、北総線が大町 - 印旛日本医大間の各駅発着である場合は、北総線は20円(合計90円)の割引。
運賃問題
背景
北総鉄道は東京の通勤路線の中でも運賃が際立って高い。これは建設コストが高くついたことと、千葉ニュータウン事業計画の遅れによる利用の少なさに由来する(こちらを参照)。中距離の運賃設定は東日本旅客鉄道・東武鉄道・京成電鉄など接続鉄道と比較して最も高額になっている。
千葉県内を走る東葉高速鉄道も似たような運賃設定ではあるが、相互直通運転先の東京メトロが低運賃のため、沿線から都心に出る際の合算運賃は他の路線と比較して特段高額にはならない。これに対し北総鉄道は、直通先に京成電鉄、東京都交通局と事業者が連続し、都心に出る際の合算運賃は更に高額になる。
同様に、県内に近年開業したつくばエクスプレスと比較しても一部で1.5倍近くに達している。同線は、当線が高額運賃による乗客離れを招いていることを他山の石として対策を行った結果好調な業績を達成しているとされ(詳細は当該項目を参照)、当線の高額さが際立っている状況である。
こうしたことから、通勤で交通費(定期乗車券)が支給される場合を除いては沿線住民でも利用しにくい状況で問題視されている。開業時は開業後10年での達成を想定していた利用者累計5億人突破は、予定より18年遅れた。
定期券割引
北総鉄道の定期券の割引率は他社に比べ低く、通勤定期の割引率は30%である。都営線との乗り継ぎの3社線割引で京成・北総線分は5%引きとなるが、それでも割引率は33.5%である。6か月定期でかろうじて40.15%となり、定期券購入の実効性が生じる状態である。なお、各種の割引を受けられる乗車券などが発売されている。
また北総線内にある駅の定期券売り場では、京成電鉄が発行する京成カードのみではあるがクレジットカードによる定期券購入が可能である。ただし、定期券が高額なため、定期券売り場には「京成カードで定期券を購入される場合は、カードのご利用可能枠をご確認下さい」旨の掲示がある。PASMO定期券で北総線の定期券を発行した場合、万一紛失しても再発行が可能である。なお、沿線の白井市では「北総線通学定期券助成」制度を設けているが、2010年3月末でこの制度は終了予定である。
沿線住民・自治体の動き
北総線沿線住民の間では「財布落としても定期落とすな」と言われることがあるとの指摘があり[2]、値下げを求める運動が起きている[3][4]。また成田新高速鉄道が開通すると、北総線の線路を京成電鉄が運行する空港アクセス列車が運行されることになるため、沿線市町村や一部県議会議員も北総線の運賃を引き下げるよう関係機関等に求めている[4]。空港アクセス列車は京成電鉄が第2種鉄道事業者として運行するため、京成電鉄の低廉な運賃体系を採用することも可能であるが、この場合従前の北総鉄道の列車の利用客と著しい運賃の差が生じる。また、北総鉄道の運賃体系をそのまま適用した場合には、空港アクセス列車も従前通り高額な運賃となる。こうした中、空港アクセス列車の運行により北総鉄道にも多額の線路使用料収入が見込まれることから、運賃引き下げを求めているものである。
2009年9月5日には、千葉県と沿線自治体6市2村が北総鉄道に対してそれぞれ年2億円の補助をする代わりに、5%以上の運賃値下げを要求することで、合意する目処がたった[5]。今後、成田新高速鉄道の運賃が認可されるまでの間に、自治体側と北総鉄道・京成電鉄との間で運賃をめぐる交渉が予定されている。2009年10月には、森田健作千葉県知事が前原誠司国土交通大臣に成田新高速鉄道の路線の一部となる北総鉄道の運賃値下げに「格段の配慮」を求める要望書を提出した[6]。
国会における議論
北総線の運賃問題については、これまで国会でも議論されている。
1999年の衆議院運輸委員会 11号(1999年7月1日)では、自由民主党の実川幸夫衆議院議員がこの問題を取り上げ、運輸省の小幡政人鉄道局長(当時)は「現在の運賃をできるだけ長く、上げないで維持できるようにということで頑張っていきたいと思っております。」と答弁した。
2009年の衆議院総務委員会 (2009年3月13日)では、成田財特法改正案[7]の審議の中で民主党の田嶋要衆議院議員がこの問題を取り上げ、国土交通省の渡辺鉄道局次長は「千葉県と関係市町村で構成される北総鉄道利用促進協議会に参画し意見を言って行きたい。」とこれまで通りの答弁をし、成田財特法による北総鉄道への支援(インフラ整備や運賃を下げるための資金援助)については消極的な姿勢を示した。また鳩山邦夫総務大臣(当時)は「国土交通省とも協議をし、総務省として何かできる方法がないかについて住民の立場に立って(関係各所に)意見を言って行きたい。」と答弁した。
その他
- 開業当初に自動精算機を設置していた。当時は国鉄(松戸駅は改札口が分離されていなかった)や新京成などは自動改札に対応していなかった。精算機は係員がテレビカメラで券面を読み取り、コンピュータを操作して精算する原始的な方法で新鎌ヶ谷駅(開業当初は信号所)から遠隔操作を行っていた。トラブルが続出したため、数年(1982年頃には既に使用を停止)で撤去されたが、数年後に復活している。
- 鉄道施設をテレビや映画の撮影用などに提供し、その使用料を得る営業が早くから行われている。
- かつては北総線の駅売店で「サントリーオープンゴルフトーナメント」(2007年限りで廃止)の前売り券を販売していたことがあった。これは会場(習志野カントリークラブや印西カントリークラブ)が沿線にあるためである。
脚注
- ^ もう一つについては千葉県営鉄道#計画路線(北千葉線)を参照。
- ^ 衆議院建設委員会 - 12号(平成11年5月14日)にて、公明党の斉藤鉄夫議員が運輸省(当時)小幡政人鉄道局長に対する質問で言及している。また日本共産党の機関誌にも言及がある(北総線 高運賃是正を要請 国交相に市民団体)。
- ^ 白井市北総線通学定期券助成の案内
- ^ a b 北総線の運賃値下げを実現する会
- ^ “運賃値下げへ要求案協議 県と沿線自治体の会議開催決まる 北総鉄道” (2009年9月5日). 2009年9月5日閲覧。
- ^ http://www.asahi.com/special/hanedahub/TKY200910200514.html
- ^ この成田財特法を根拠として、新東京国際空港周辺の道路整備等のために多額の費用が投入されてきた背景がある。この法律の現在の監督官庁は総務省である。