スコティッシュフォールド
スコティッシュフォールド(Scottish Fold)は、ネコの品種の一つ。



折りたたまれたような小さな耳が特徴で、スコットランドで発見された突然変異の個体から発生し、その後、アメリカでの繁殖プログラムにより品種として確定された。
短毛種と長毛種タイプ、折れ耳(Fold)と立ち耳(Straight)タイプがある。
歴史
すべてのスコティッシュフォールドは、1961年にスコットランドで見つかったスージーと呼ばれた、耳の折れた白いメスのイエネコの子孫である。
「スコティッシュ」という名前ではあるが、品種として猫血統登録団体に公認され確立されたのはアメリカでの繁殖プログラムによって健康な猫種として固定されて以降のことである。
繁殖プログラムが確立する以前は、折れ耳同士の交配によって生まれる子のほとんどが成長と共に骨瘤や心臓病、内臓疾患などを発症する為に一時は固定させるのは危険な品種ともされていたが、アメリカでの繁殖プログラムによってアメリカンショートヘア・ブリティッシュショートヘアと交雑され、遺伝子プールが広がり、立ち耳のスコティッシュフォールドが生まれ、折れ耳と立ち耳を交配することによって他の猫種のように健康な子猫を得る方法が確立したため、CFA、TICAなどの猫血統登録団体に公認されるようになった。
しかし、未だに故郷英国の猫血統登録団体では同型接合性障害のために猫種としてまだ公認はされていない。
繁殖プログラムとして、遺伝子プールを広げるためにアメリカンショートヘア・ブリティッシュショートヘアが使われたのは、発祥や体型、血統が近いためで、(アメリカンショートヘアはイギリスからの開拓民がアメリカに持ち込んだ猫が先祖とされており、ブリティッシュショートヘアはイギリスの土着猫であるので)現在でも、CFA、TICAなどの主な猫血統登録団体ではスコティッシュフォールドとこの2種との交雑を認めており、繁殖計画に定期的に導入する事を推奨している。
スコティッシュフォールドとこの2種どちらかとの組み合わせで生まれた子猫も、スコティッシュフォールド同士での子猫と同様に、立ち耳も含めてすべてスコティッシュフォールドとして血統登録されるが、それ以外の組み合わせで生まれた子猫は耳が折れていたり交配相手の品種の特徴を示していたとしても、猫血統登録団体では通常、どの血統猫の猫種としても登録されない。
一匹の猫が発祥でありながら短毛種と長毛種が存在するのは、全てのスコティッシュフォールドの始祖であるスージーが長毛の遺伝子を持っていた為であるが、繁殖プログラムに長毛の他品種の猫は組み込まれてはいないので、長毛種のスコティッシュフォールドは生まれる確率が低く、短毛種に比べると個体数はかなり少ない。
特徴
セミコビーの体型に丸い目丸い顔で、身体に比べて程よい長さ短くない先細りの尻尾が折れ耳・立ち耳の両タイプ共通の特徴であるが、品種としての一番の特徴はその名の通り、折れ耳タイプの小さく折りたたまれたように垂れているぼったりとした耳であり、これは耳の軟骨の形成異常によるものである。
耳折れは耳の根元がどれ位折り込まれているかによって、シングルフォールド・ダブルフォールド・トリプルフォールドと3段階で呼称される。トリプルフォールドであることがスコティッシュフォールドのショートタイプの主な基準のひとつである。
また、ストレスや病気、妊娠、気温の暑さなどが原因で折れていた耳が浮きあがったり立ち上がるなどすることがあるが、その要因が解消されると元の耳に戻ることが多いようである。
立ち耳タイプの耳は、折れ耳の耳の小ささと逆転するかのように、顔の大きさに比して耳がセミコビーの猫としては大きい傾向にあるようだ。
特有の同型接合性障害
折れ耳を作る遺伝子(Fd)は、通常の猫の立った耳の遺伝子(fd)に対して優性であり、耳の折れたスコティッシュフォールド同士で交配するとほぼ100%耳の折れた子猫しか生まれないが、しかし、この折れ耳同士の組み合わせで生まれた子猫のほとんどは同型接合性障害の為に成長と共に骨瘤や心臓病、重度の内臓疾患などを発症する為、折れ耳同士や血統が近い猫同士での交配は回避されるべきである。
しかし、前述のように折れ耳が立ってしまったり、折れ耳遺伝子を持っていても生まれつき折れの弱い個体を立ち耳だと勘違いした場合や折れ耳の子猫の方が市場価値がある為、また飼い主の同型接合障害についての無知の為に折れ耳同士の交配が多く行われているのが現状でもある。
そのような事情から健康な繁殖の為にスコティッシュフォールドの交配では、折れ耳のスコティッシュフォールドと、立ち耳のスコティッシュフォールドもしくはアメリカンショートヘア、ブリティッシュショートヘアの「折れ耳と立ち耳」のペアで、なおかつ交配する親のスコティッシュフォールドは「折れ耳と立ち耳」の子で血統が出来るだけ遠い猫同士であることが、障害を出来る限り回避するために推奨されている。
同胎の兄弟猫の3分の2以上が折れ耳であったり、子猫の段階で尻尾が太かったり短かったり動きが滑らかでない場合は、尻尾や脚の関節や指を触るなど観察をし、同型接合性障害についての注意が必要である。
なお折れ耳同士のオスとメスを飼う場合には去勢や避妊手術を行う必要がある。
飼育
短毛種でも他の短毛種の猫に比べて被毛はやや長く、細く厚く密集しており、手触りはさらさらしていてシルキーである。
換毛期にはシルエットが変わるほど大量に毛が抜け替わるので、毛玉症を防ぐ為にもブラッシングやシャンプーが必要であり、ヘアボールコントロールのキャットフードを与えた方が良い。
関節が柔らかく、香箱座りをしていても崩れやすく、不思議な体勢で寝たり、同じくらいの体格のほかの猫が入れないような隙間に匍匐前進で入ったり、きつく抱いたりハーネスをつけていても抜け出すような事もする。
不用心とも思われるほど、楽観的でぼんやりしている傾向が強いと言われている。