ノックス級フリゲート

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ノックス級フリゲート(Knox class)はアメリカ海軍が保有していたフリゲート。対潜任務を重視して設計されている。1969年から1974年にかけて46隻が就役した。建造当初は護衛駆逐艦(DE)に分類されていたが、1975年にフリゲート(FF)に変更されている。

ノックス級フリゲート
ノックス級
艦級概観
艦種 フリゲート
艦名 海軍功労者。
一番艦はダドリー・ライト・ノックスに因む
建造期間 1965年 - 1974年
就役期間 1969年 - 1994年
前級 ガーシア級フリゲート
ブルーク級ミサイルフリゲート
次級 FFとしての後継無し、FFGへ移行。
オリバー・ハザード・ペリー級ミサイルフリゲート

アメリカ海軍からは1995年までに全艦が退役して、台湾海軍トルコ海軍などに売却・貸与された。また、本艦をベースとして、スペイン海軍バレアレス級フリゲートが建造された。

概要

本級は、量産性を重視した対潜重視の護衛艦で、アメリカ海軍が第二次世界大戦中より整備してきた対潜重視の護衛駆逐艦の戦後型第3世代(SCB199シリーズ)に属し、その最終型であるとともに、一つの完成形である。46隻に及ぶ大量建造により、1970年代におけるアメリカ海軍の護衛艦部隊の主力となった。

遠距離用のQH-50 DASH (無人対潜ヘリコプター)、中距離用のアスロック、近距離用の短魚雷と三段構えの対潜兵装を備えており、さらに防空用として長射程の5インチ速射砲や シースパロー艦対空ミサイル短距離艦対空ミサイルを装備している。のちにDASHの運用中止に伴い、有人のSH-2 LAMPS Mk Iヘリコプターを搭載するように改修されたほか、ソビエト軍の対艦ミサイルの大量配備を受けて、一部はファランクスCIWSを搭載している。

80年代後半から90年代初頭における戦略環境の変化と海洋戦略の転換、国防予算の削減などによって、アメリカ海軍においては1995年までに全艦が退役した。しかし、退役艦は台湾海軍トルコ海軍などに売却・貸与されて、現在でも運用されている。そのほか、スペイン海軍は本級をベースに、ターター・システムを搭載して防空艦としたバレアレス級フリゲートを建造した。

来歴

第二次大戦中より、アメリカ海軍は対潜作戦を主任務とする護衛駆逐艦の整備を進めてきた。戦中型の設計に基づくディーレイ級(計画名はSCB72)、クロード・ジョーンズ級(計画名はSCB131)を経て、1963年、ソ連の潜水艦戦力の拡充に対応した、まったく新しい設計に基づいた真の戦後型護衛駆逐艦として、ブロンシュタイン級フリゲート(計画名はSCB199)が就役した。これは、ソ連の長射程魚雷に対抗しうる長距離探知が可能な大出力・低周波数のSQS-26ソナー、飛躍的に射程が増大した対潜前投兵器としてアスロック、そしてソナーの有効探知距離外縁においてすら潜水艦脅威を攻撃できる長射程の対潜兵器としてQH-50 DASH(無人対潜ヘリコプター)を搭載していた。また、マストと煙突を一体化したマック構造を採用し、新型の対空レーダーであるAN/SPS-40を搭載した。さらに、その主機を増強したガーシア級フリゲート(計画名はSCB199A)においては、主砲が5インチ砲に大口径化され、有線誘導魚雷に対応した連装短魚雷発射管を装備するとともに、水平甲板型の船型が採用された。ノックス級の設計は、SCB199C計画として、これらSCB199シリーズの護衛駆逐艦をもとにして行われた。

ノックス級の計画は、1960年代中の退役が予想される100隻以上におよぶ戦中型の護衛駆逐艦の代替を目的として、1960年代初頭に開始された。最初の 10隻の建造は1964年に認可され、翌1965年には16隻、その後1966年から1968年には各10隻ずつの建造が認可されたが、1968年と 1969年にぞれぞれ6隻と4隻がキャンセルされ、最終的な建造数は46隻となった。

設計と装備

船体

 
マック構造とSPS-40対空、SPS-67 対水上レーダー

本級はガーシア級と同様、水平甲板型の船型に大型のマック構造を採用している。また、護衛駆逐艦の伝統にのっとって、主機はウェスティングハウス式ギヤード・タービン1基、軸数は1軸である。

本級は、主缶として、ジョン・C・バトラー級護衛駆逐艦以来使用されてきたD形2胴型水管缶を使用しているが、先行するガーシア級で採用された過給水管缶方式は、高いコストと複雑な構造から、採用されずに終わった。通常型の水管缶を使用し、また航続力を増強したことで排水量は増大しているが、優れた船体設計により、ガーシア級と同じ出力でありながら、同等の速力を保っている。

ただし、1200psiの高圧蒸気を発生する主缶は、信頼性は高いものの、誤操作時には重大な事態に至る恐れが大きく、熟練を要する。このため、アメリカ海軍での運用時には問題なかったものの、退役後に供与を検討した国の中には、機関を維持・運用できる自信がないとして辞退したケースがあったと言われている。

対潜・対水上戦闘システム

新造時の本級は、SQS-35可変深度ソナー (IVDS) と大出力・低周波数のSQS-26CXソナーによって潜水艦脅威を探知し、さらにブロンシュタイン級フリゲート以来のアメリカ護衛駆逐艦と同様に、長射程、中射程、短射程の対潜兵器により三段構えの対潜火網を構築して、これらをMk 114水中攻撃指揮装置が統制していた。SQS-35 IVDSは180mまでの深度に吊下することができ、変温層下において敵潜水艦を探知することができた。

短射程の対潜兵器としては、両舷に短魚雷固定連装発射管Mk 32を有する。これは、駆逐艦級の艦艇が搭載している回転式の三連装発射管とは異なり、有線誘導の短魚雷を運用することができた。

 
Mk 16発射機より発射されるハープーン対艦ミサイル

中射程の対潜兵器として、アスロック対潜ミサイル用に、Mk 16 GMLSが装備されている。そのMk 112発射機は艦橋構造物の直前に装備され、次発装填装置は艦橋構造物の下方に設置されていた。また、Mk 112発射機の左端の2セルはハープーン対艦ミサイルの発射に対応しており、16発の搭載弾のうち、4発はハープーン対艦ミサイルを搭載するのが典型的な構成であった。

長射程の対潜兵器として、建造当初は QH-50 DASH (無人対潜ヘリコプター)が装備されていたが、DASH計画は最終的に中止された。これを受けて、ノックス級はLAMPS (軽空中多目的システム)を搭載することになり、DASHの運用設備はLAMPS Mk Iの空中プラットフォームであるSH-2ヘリコプターに対応するように改装された。これにより、本級はLAMPSが投射するソノブイおよび機体装備のMAD (磁気探知装置)を対潜センサーとして使用できるようになったほか、より柔軟な対潜攻撃を展開できるようになった。さらに、一部の艦はのちにSQR-18戦術曳航ソナー(TACTAS)を装備することで、より遠距離での敵潜水艦の探知が可能となっている。

対空戦闘システム

 
有人のMk 115イルミネーター(写真は空母ドワイト・D・アイゼンハワー」搭載のもの)

ノックス級は基本的に対潜任務を主眼としてはいるが、決して対空兵装を軽視したわけではなかった。本級の主たる対空センサーは、当時のアメリカ海軍で一般的なAN/SPS-40であった。また、本級は当初、護衛駆逐艦として初の艦対空ミサイル装備として、開発中の短射程艦対空ミサイルである RIM-46シーモーラーBPDMS (基本個艦防空ミサイル・システム)を搭載することになっており、その後日装備の余地を織り込んで設計されていた。最終的にシーモーラーBPDMS計画は中止されたため、本級は、その代替として開発されたシースパローBPDMSを搭載している。これは、Mk 115イルミネーターとMk 25八連装発射機、RIM-7Eシースパロー・ミサイルなどによって構成されるものであったが、イルミネーターは手動追尾式で、高速目標などに対する追随性には問題があった。

また、本級は護衛駆逐艦として初めて(そして唯一)54口径長5インチ速射砲であるMk 42を装備している。これは、先行するガーシア級が装備する38口径長5インチ速射砲Mk 30に対して、射程・発射速度ともに向上した優秀な対空砲であり、艦隊防空の中核となりうることが期待されていた。

しかし、本級の配備前後よりソビエト海軍チャーリー級巡航ミサイル潜水艦の配備を開始しており、潜水艦発射巡航ミサイルが重大な脅威として認識されはじめていた。これに対し、本級が装備していた対空兵装では対処が困難であると判断され、このため、一部の艦では、艦尾のシースパロー・ミサイル発射機を20mmファランクスCIWSに換装している。

航空機

 
コーク」に着艦するSH-2F LAMPS Mk I。艦尾にはシースパローBPDMSのMk 25発射機が装備されている。

上述のように、ノックス級は当初、無人のQH-50 DASH対潜ヘリコプターを搭載していた。しかし、後に運用損失の高さやベトナム戦争の戦費負担の煽りを受けて、DASHの運用は中止された。

これを受けて、ノックス級はLAMPS (軽空中多目的システム)を搭載することになり、DASHの運用設備はLAMPS Mk Iの空中プラットフォームであるSH-2ヘリコプターに対応するように改装された。飛行甲板はやや拡張され、また、格納庫は入れ子式に改装されて、SH-2ヘリコプターを収容できるように拡張された。

これにより、ノックス級は有人ヘリコプターの運用能力を保有することになった。ただし、元来DASH用の運用設備を元にしていたため、新しいLAMPS Mk IIIシステムで採用された大型のSH-60Bヘリコプターの搭載は不可能であった。

アメリカ海軍での運用終了

本級は、蒸気タービン推進であるために保守点検の手間がかかり、ミサイル攻撃に対する対処能力にも欠け、航空機運用能力も低く、さらに戦術情報処理装置も搭載していなかった。このため、冷戦構造崩壊後の海軍戦略の転換、さらに国防予算の削減を受けて、1991年から1994年という短期間で、全艦が実戦部隊より引き下げられた。その後、8隻が海軍予備役の訓練に使用されたが、やがてオリバー・ハザード・ペリー級ミサイルフリゲートによって代替された。

アメリカ国外での運用状況

その後、ノックス級の退役艦は後任のオリバー・ハザード・ペリー級ミサイルフリゲートとともに各国に輸出された。このうち、80年代より本級の取得を要望していた台湾海軍に対しては、冷戦の終結、および同国がフランスフリゲート康定級フリゲート)を導入したことを受けて、1991年より輸出が認可され、93年より94年にかけて6隻、98年にさらに2隻が導入された。台湾海軍は、2005年までに退役したギアリング級駆逐艦の兵装を本級に移植する改修を行っており、スタンダード・ミサイル1型(SM-1MR)の搭載によって限定的ながら中距離での艦対空交戦能力を付与したほか、レーダーやFCSを換装、戦術情報処理装置(タレス社製H- 930)の搭載などを行なった。ただし、台湾海軍が現在主力対潜ヘリコプターとして運用するS-70Cは本級の設備では運用できず、500MD/ASWを搭載している。これは旧式で飛行性能もSH-2に劣り、対潜センサーとしては海面監視レーダーとMADしか搭載していないため、能力的には極めて限定されたものである。ノックス級そのものも老朽化が進み、蒸気タービン推進であるため保守点検の手間もかかることから、台湾海軍は本級の運用継続の可否を検討していると言われている。

一方、スペイン海軍は本級の設計図をもとにターター・システムを搭載した防空艦として、バレアレス級フリゲートを開発し、1969年から1976年にかけて5隻を建造、配備した。本級においては、BPDMSのかわりにターター・ミサイルの単装発射機である Mk 22(Mk 13の小型化版)、DASH運用設備にかわってMk 74 FCSを搭載しているほか、SPS-52 3次元レーダーも装備している。さらに、後には国産のTRITAN戦術情報処理装置も搭載し、一線級の防空艦として活躍したのち、2004年から2008年にかけて全艦が退役した。

運用国

要目

新規建造時 改修後
排水量 基準:3,010t
満載:3,877t - 4,200t
全長 134m
全幅 14.4m
吃水 7.5m
機関 蒸気タービンボイラー×2基+タービン×1基; 35,000hp), 1軸推進
速力 最大: 27kt
乗員 288人
兵装 Mk.42 5インチ単装速射砲 × 1基
Mk.15 20mmCIWS × 1基
(FF-1084~、BPDMSから再換装)
Mk.25 シースパローBPDMS 8連装発射機 × 1基(~FF-1083)
Mk.16 8連装ミサイル発射機 × 1基
アスロックSUM用; のちにハープーンSSMにも対応)
Mk 32 mod 9 2連装魚雷発射管 × 2基
艦載機 QH-50 DASH × 2機 SH-2 LAMPS Mk I × 1機
レーダー AN/SPS-40 2次元対空レーダー
AN/SPS-10 対水上レーダー AN/SPS-67 対水上レーダー
ソナー SQS-26CX 艦首装備ソナー
SQS-35可変深度ソナー (IVDS) SQR-18戦術曳航ソナー (TACTASS)
 ※一部艦
C4I Mk.68 砲FCS (Mk.42 5インチ砲向け)
Mk.115 ミサイルFCS (BPDMS)
Mk.114 水中FCS
電子戦 SLQ-26統合電子戦システム
(AN/WLR-1C ESM装置、
AN/ULQ-6C ECM装置)
SLQ-32(V)2 統合電子戦システム
Mk 36 SRBOC チャフフレア発射機

同型艦

参考文献

外部リンク