鹿島線
鹿島線(かしません)は、千葉県香取市の香取駅から茨城県鹿嶋市の鹿島サッカースタジアム駅に至る東日本旅客鉄道(JR東日本)の鉄道路線(地方交通線)である。
高架の続く十二橋駅付近 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
| 路線総延長 | 17.4 km | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
| 軌間 | 1067 mm | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
| 電圧 | 1500 V(直流) | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
| 停車場・施設・接続路線 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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概要
成田線の佐原駅の銚子方1駅先の香取駅から分岐し、前川あやめ園や十二橋めぐりなどの観光地を持つ潮来駅、鹿島神宮やカシマサッカースタジアム、鹿島臨海工業地帯の鹿嶋市の中心である鹿島神宮駅を経由し、鹿島サッカースタジアム駅を終点とする。
日本鉄道建設公団によって建設され、開業は1970年と比較的新しい路線である。国家的な開発プロジェクトであった鹿島臨海工業地帯の開発・発展に寄与するため、現在の鹿島臨海鉄道の営業路線(大洗鹿島線・鹿島臨港線)と共々に計画・建設され、香取駅 - 北鹿島駅(現在の鹿島サッカースタジアム駅)間が日本国有鉄道(国鉄)の「鹿島線」として開業した。
日本鉄道建設公団によって建設された路線であるため、全線のほとんどが高架路線となっている。成田線との分岐点を過ぎると、鹿島線内には踏切はひとつもない。このことは接続先の大洗鹿島線でも水戸駅付近を除けば同様である。また利根川・常陸利根川・北浦に架かる橋梁はいずれも長大で、特に北浦に架かる北浦橋梁は1236mの長さを持ち、これらの高架・橋梁で水域が多い水郷地帯を貫通している。ただし、強風時は速度制限や運転見合わせが行われることがある。
JRにおける実質的な旅客上の運用範囲は佐原駅 - 鹿島神宮駅間である。鹿島神宮駅 - 鹿島サッカースタジアム駅間はJRの区間であるが、旅客輸送は鹿島臨海鉄道大洗鹿島線の車両が担う。よって鹿島線の同区間に大洗鹿島線が乗り入れる形態となるが、特に多客が見込まれる時は、鹿島神宮以遠より鹿島サッカースタジアムにかけてJRによる旅客輸送が行われる場合がある。また旅客列車のほかに、日本貨物鉄道(JR貨物)による貨物列車も運行されている。
利用者は地元の沿線住民がほとんどで、純然たるローカル輸送に留まっている。特急「あやめ」が東京まで運行されるものの、現在の本数は1日1往復に留まり、工業都市として発展が著しい鹿嶋市と東京間のアクセスは、東関東自動車道を経由する高速バス「かしま号」が圧倒的なシェアを持つ。
全区間が旅客営業規則の定める「東京近郊区間」に含まれている。
路線データ
- 管轄(事業種別):東日本旅客鉄道(第一種鉄道事業者)・日本貨物鉄道(第二種鉄道事業者)
- 路線距離(営業キロ):17.4km
- 軌間:1067mm
- 駅数:6駅(起終点駅含む)
- 複線区間:なし(全線単線)
- 電化区間:全線(直流1500V)
- 閉塞方式:単線自動閉塞式
- 運転指令所:千葉総合指令室
- 最高速度:95km/h
- 表定速度:56.8km/h
全区間が東日本旅客鉄道千葉支社の管轄である。
運行形態
旅客列車
成田線からの分岐駅は香取駅であるが、運転系統上の分岐駅は佐原駅である。運行本数は毎時1本程度で、千葉駅、成田駅または佐原駅からの普通列車が鹿島神宮駅まで運転されている。1日1本のみ横須賀線・総武快速線からの直通列車もあり、佐倉駅で成田空港行き列車から分割された付属編成の4両が使用される。いずれも、終着は鹿島神宮駅である。
優等列車としては、東京 - 鹿島神宮間に特急「あやめ」が1往復運転されているが、佐原 - 鹿島神宮間は普通列車(特急料金不要の各駅停車)となる。
鹿島神宮 - 鹿島サッカースタジアム間は、夜間留置のための回送列車以外JR車の運行はなく、鹿島臨海鉄道大洗鹿島線からの乗り入れ列車(気動車)のみが運行される。
2002 FIFAワールドカップ開催時に東京方面から鹿島サッカースタジアム駅まで電車列車で直通運転する輸送計画が立てられたが、前年に発生した兵庫県明石市の明石花火大会歩道橋事故を教訓に、警備上の問題から見送られた。その後、2006年7月15日の2006JOMOオールスターサッカーに際して、初めてJR東日本の旅客車両が鹿島サッカースタジアム駅まで営業運行(臨時列車)された。2008年からは、鹿島アントラーズホームゲームの一部の試合開催時に千葉・成田行きの臨時直通列車が鹿島サッカースタジアム駅から運行されることになった。
貨物列車
貨物列車は新鶴見機関区のEF65形電気機関車の牽引で鹿島サッカースタジアム駅まで運行され、鹿島臨海鉄道鹿島臨港線の神栖方面へと引き継がれる。鹿島臨海鉄道鹿島臨港線内で荷役するコンテナ輸送や鹿島臨海工業地帯で製造・消費される化成品のタンク車による輸送が主な収入源である。
使用車両
香取 - 鹿島神宮間
以下はいずれも電車、臨時列車で鹿島サッカースタジアム駅までの全線で運用される車両もある。貨物列車は「貨物列車」の節を参照。
- 113系(幕張車両センター所属)
- 4両編成のみ入線する。6両編成や211系が入線しないのは佐原駅の鹿島線折返し用ホームの0番線が4両分しかないためであるが、過去にダイヤ乱れで211系が入線したことが数回ある。
- 209系2000番台・2100番台(幕張車両センター所属)※2010年3月13日ダイヤ改正以降
- 座席は先頭車のみボックスシート、バリアフリー対応トイレ設置。
- E217系(鎌倉車両センター所属)
- 4両の付属編成のみ入線する。
- なお、2002 FIFAワールドカップでカシマサッカースタジアムが使用されたときは、グリーン車付きの11両編成が使用された。成田線成田以東にE217系の11両が入ったのはこのときが初めてである。その後1・2年はカシマサッカースタジアムで国際級の試合があるときに11両での運転があったが、利用客が定着せず現在は11両編成が運転されることは滅多にない。
- E257系500番台
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E217系
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113系
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E257系500番台(写真は特急わかしおのもの)
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209系2100番台
他社乗り入れ車両
- 鹿島臨海鉄道6000形気動車
- 大洗鹿島線水戸方面から、鹿島サッカースタジアム - 鹿島神宮間に乗り入れる定期運用。
- 鹿島臨海鉄道7000形気動車(茨城県所有)
- 不定期運用で、大洗鹿島線水戸方面から、鹿島サッカースタジアム - 潮来間に乗り入れることがある(あやめ祭り期間など)。
歴史
鹿島臨海工業地帯の開発に伴って敷設された路線である。予定線としては、改正鉄道敷設法別表第39号の2に「茨城縣鹿島ヨリ千葉縣佐原ニ至ル鐵道」と掲げられていた。
- 1970年(昭和45年)8月20日 鹿島線香取 - 鹿島神宮間(14.2km)開業
- 1970年(昭和45年)11月12日 鹿島神宮 - 北鹿島(現在の鹿島サッカースタジアム)間(3.2km・貨物線)開業。香取 - 北鹿島間で貨物営業開始。
- 1974年(昭和49年)10月26日 香取 - 北鹿島間電化
- 1978年(昭和53年)7月25日 鹿島神宮 - 北鹿島間で旅客営業開始(鹿島臨海鉄道鹿島臨港線旅客営業開始による。ただし北鹿島駅での旅客扱いは行われない。以下同様。)
- 1983年(昭和58年)12月1日 鹿島神宮 - 北鹿島間の旅客営業廃止(鹿島臨海鉄道鹿島臨港線旅客営業廃止による)
- 1985年(昭和60年)3月14日 鹿島神宮 - 北鹿島間で旅客営業開始(鹿島臨海鉄道大洗鹿島線開業による)
- 1987年(昭和62年)4月1日 国鉄民営化により東日本旅客鉄道に承継。日本貨物鉄道が第二種鉄道事業者となる
- 1994年(平成6年)3月12日 北鹿島駅を鹿島サッカースタジアム駅に改称。サッカー試合日の鹿島臨海鉄道大洗鹿島線の一部列車に限り、旅客営業開始。
- 2009年(平成21年)3月14日 全線が東京近郊区間に編入される。ただし、Suicaは香取のみ利用可能となる。
駅一覧
便宜上、全列車が直通する成田線佐原駅からの区間を記載する。
- 鹿島線内ではすべての定期旅客列車が臨時駅以外の全駅に停車
- 線路(全線単線) … ◇:列車交換可、|:列車交換不可
| 路線名 | 駅名 | 駅間営業キロ | 累計営業キロ | 主要駅からの 営業キロ |
接続路線 | 線路 | 所在地 | ||||
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 佐原から | 佐倉から | 千葉から | 東京から | ||||||||
| ※ | 佐原駅 | - | 3.6 | 0.0 | 40.0 | 56.1 | 95.3 | 東日本旅客鉄道:成田線(成田方面:直通あり) | ◇ | 千葉県 香取市 | |
| 香取駅 | 3.6 | 0.0 | 3.6 | 43.6 | 59.7 | 98.9 | 東日本旅客鉄道:成田線(銚子方面) | ◇ | |||
| 鹿島線 | |||||||||||
| 十二橋駅 | 3.0 | 3.0 | 6.6 | 46.6 | 62.7 | 101.9 | | | ||||
| 潮来駅 | 2.2 | 5.2 | 8.8 | 48.8 | 64.9 | 104.1 | ◇ | 茨城県 | 潮来市 | ||
| 延方駅 | 5.2 | 10.4 | 14.0 | 54.0 | 70.1 | 109.3 | ◇ | ||||
| 鹿島神宮駅 | 3.8 | 14.2 | 17.8 | 57.8 | 73.9 | 113.1 | 鹿島臨海鉄道:大洗鹿島線(旅客列車乗換駅) | ◇ | 鹿嶋市 | ||
| (臨)鹿島サッカースタジアム駅 | 3.2 | 17.4 | 21.0 | 61.0 | 77.1 | 116.3 | 鹿島臨海鉄道:大洗鹿島線・鹿島臨港線(貨物線) | ◇ | |||
- ※:佐原駅 - 香取駅間は成田線
- 鹿島臨海鉄道大洗鹿島線とは終点の鹿島サッカースタジアム駅で繋がっているが、実際の佐原方面 - 鹿島神宮間の旅客列車との乗り換え駅は鹿島神宮駅となる。
運賃計算など
鹿島臨海鉄道の車両が鹿島神宮駅まで乗り入れる場合、会社境界駅である鹿島サッカースタジアム駅での乗務員の交代はないが、通常の他社車両乗り入れの取り扱いとなり、運賃は鹿島神宮 - 鹿島サッカースタジアム駅間の運賃はJRの運賃が適用され、JR線区間と大洗鹿島線の区間を通して乗車する際は、JRと鹿島臨海鉄道の合計運賃が必要となる。ただし鹿島神宮駅 - 荒野台駅間の利用に限り、乗継割引として、両社の合計運賃から30円の割引が設定されている。また鹿島サッカースタジアム駅は、主にカシマサッカースタジアムにおける鹿島アントラーズなどのサッカー試合開催日のみ営業する臨時駅であり、通常は同駅を通過する。同駅まで有効なJR乗車券(青春18きっぷなど)を有している場合は、たとえ同駅が営業していない日でも同駅までJR乗車券は有効であり、鹿島臨海鉄道の駅で下車する場合は、鹿島サッカースタジアムからの鹿島臨海鉄道の運賃のみ支払いが必要となる。
「Suica」などのIC乗車カードを使用しての旅客列車の利用は不可能となっている。2009年3月14日に東京近郊区間となったが、同時にSuicaの利用が可能となった成田線と接続する香取駅・佐原駅を除き、IC乗車カードは鹿島線全駅では当面利用できない。そのため、もし旅客が他の線区からIC乗車カードで入場した状態で当線区内の各駅で下車した場合、現金での運賃精算が必要となる。