小田急7000形電車

小田急電鉄の特急形電車(1980-2018)

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小田急7000形電車(おだきゅう7000がたでんしゃ)は、小田急電鉄特急形車両ロマンスカー)。車両愛称は「LSE (Luxury Super Express) 」。

小田急7000形電車
7000形
(2007年3月28日 / 新百合ヶ丘駅付近)
基本情報
製造所 日本車輌製造
川崎重工業
主要諸元
編成 11両編成4本(44両)
軌間 1,067
電気方式 直流1,500V
最高運転速度 110
設計最高速度 140
起動加速度 2.0
編成定員 454名(運行開始当初は456名)
駆動方式 TD平行カルダン駆動方式
制御装置 直列/並列指定式抵抗制御、弱め界磁制御(東芝MM-39A:直並列各13段、弱め界磁4段)
制動装置 発電ブレーキ併用全電気指令式空気ブレーキ
保安装置 OM-ATS
備考
第24回(1981年
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1980年昭和55年)12月に営業運転を開始した。

1981年鉄道友の会第24回ブルーリボン賞受賞。各運転席の入口付近にブルーリボン賞受賞記念プレートを貼付している。

概要

3100形「NSE」の登場から18年経った1980年昭和55年)末に第1編成が就役した。以後、1981年(昭和56年)、1982年(昭和57年)および1984年(昭和59年)に各1編成の合計11両編成4本(44両)が日本車輌製造川崎重工業にて製造された。

車両構造

   
NSEの先頭角度は60度
LSEの先頭角度は45度

編成組成は、MT比9M(電動車)2T(付随車)の連接式11両である。なお、3100形では少なくとも前後どちらかが電動台車だったため全車がデハであったが、本形式では前後とも付随台車に跨ったサハとなる形式が初めて登場している。台車数で見た場合のMT比は8:4で、3100形「NSE」と同じである。

車体構造は、従前の小田急ロマンスカー(3000形「SE」「SSE」・3100形「NSE」)では「中央部低床構造」を採用したが、本形式では通常の「平床構造」とした。先頭部分には3100形「NSE」で好評を博した「展望席」を設置しているが、前面の傾斜角度をきつく(3100形「NSE」の60度に対して本形式は45度)し、かつ前照灯油圧緩衝器突当座などを車体内に埋め込むことで、3100形「NSE」とは異なるデザインとなった。設計当初はもっと「シャープ」な形状にする予定だったが、座席定員が同形式以下になってしまうことから見送られた。

運転席は、全電気指令式ブレーキの導入に伴い小田急では初めてワンハンドルマスコンを採用した。加えて、平床構造となったため3100形の運転席より広くなっている。

現車が登場する前のモックアップは、神奈川県川崎市多摩区の小田急系遊園地「向ヶ丘遊園」内に設置されていた。

客用扉は、従前までの手動開閉式とは異なり、2枚折り戸を採用した自動開閉式となった。登場当時は乗車扉が限定されていたため、半自動扱いにより手動の開閉も可能になっている。

外観

1980年の登場時は、3000形「SE」「SSE」や3100形「NSE」と同様の「オレンジバーミリオンとシルバーグレーに白色帯」の塗装だったが、1995年平成7年)から1997年(平成9年)に全編成の更新工事が日本車輌にて行われ、塗装が10000形「HiSE」と同様の「ワインレッドと白色」に変更された。

また、列車愛称表示器は先頭車の正面に設置され、小田急ロマンスカーとしては初めて字幕式のものとされた。なお、一般的な字幕式表示器(方向幕)が縦方向に回転するのに対し、同形式では横方向に回転を行う。

リニューアル工事

前述したが、1995年から1997年に日本車輌において全編成のリニューアル工事が行われた。車体塗装や座席モケットの変更の他、車いす対応座席の設置とそれに伴う出入口幅の拡張(700mm→1,000mm)や客室内のカラースキームもブラウン系濃淡を基調としたものとなったことが挙げられる。加えて便所の汚物処理方式も「循環式」から「真空式」へ変更されている。また、室内の号車番号や座席番号表示などは30000形「EXE」と共通の書体が用いられている。

さらに、2005年(平成17年)から2006年(平成18年)には集電装置を順次菱形パンタグラフから9000形廃車発生品であるシングルアーム式パンタグラフに変更した。

旧塗装への復元

2007年(平成19年)で小田急電鉄は開業から80周年を迎えるのを記念し、同年7月6日から本形式の7004Fを1997年(平成9年)以来10年ぶりの旧塗装に復元して営業運転に就くこととなった[1] 。この編成を使用して、同日に新宿から小田原まで記念列車「旧塗装特別記念号」が運転された。それと同時に騒音問題で取り外されていたオルゴール(補助警笛・ミュージックホーン)も当時のままの音色で復活するとともに、列車愛称表示器は使用せず、初期の3000形「SE」で使われていた列車愛称表示板を模した「旧塗装復活記念号」のステッカーも貼付された。運転終了後も同年8月17日25日には成城学園前から小田原まで団体専用列車「M78星雲号」も運転された。その後2007年のファミリー鉄道展においても展示された。旧塗装での営業運転は2008年(平成20年)3月31日までの予定であったが、それ以降も継続して使用している。

なお、実際に走っていた1997年頃までの旧塗装との違いとして、以下のような点が挙げられる。

  • 先頭部分の窓枠が銀色ではなく黒色となっている。
  • 側面の号車プレートと車内設備が更新後のままである。
  • パンタグラフがシングルアーム式である。
  • 2008年3月に側面に小田急グループブランドマークが貼付された。

車内

 
7000形の座席

座席は、展望席を含めてリクライニング式回転クロスシートが採用された。昨今主流となっているバケット式の先駆けというべき形状である。展望席は1号車と11号車の車端に14席ずつ設置する。ただし、小田急電鉄が「展望席」として発売するのは前から3列の12席であり、4列目にある2席は一般席として発売されている。この座席は終着駅において自動回転することが可能で、リクライニングした背もたれを起こし、奇数列と偶数列に分かれて回転する。3000形「SE」「SSE」や3100形「NSE」では係員による手作業だったこともあり、特に「走る喫茶室」営業列車ではこれまで終点で座席を1つ1つ回転させていた作業を軽減できることで、朗報だった。

新製時点で、座席モケットはすべて橙色(背もたれ中央部は金茶色)であったが、更新時に1 - 5号車が「禁煙席」、6 - 11号車が「喫煙席」であり、識別のために新宿方6両(6 - 11号車)はブラウンに、小田原方5両(1 - 5号車)はブルーにそれぞれ変更された。後に6 - 11号車についても「禁煙席」に変更されたが、座席モケットは変更されていない。

小田急ロマンスカーでは日東紅茶森永エンゼルが「走る喫茶室」と称する喫茶サービスを実施していたが、それが終了した後は車内販売基地として使用されている。

車内案内

  • 座席定員は454名である。
  • 座席は全席禁煙である。
号車 客席 その他の設備
1 展望席(12席)
一般席(38席)
運転室(2階)・車掌室
2 一般席(44席)  
3 一般席(28席)
車いす対応座席(2席)
車内販売カウンター・公衆電話自動体外式除細動器 (AED)
4 一般席(36席) 男女共用洋式トイレ・男子小用トイレ
5 一般席(44席)  
6 一般席(44席)  
7 一般席(44席)  
8 一般席(36席) 男女共用和式トイレ・男子小用トイレ
9 一般席(32席) 車内販売カウンター・公衆電話
10 一般席(44席)  
11 一般席(38席)
展望席(12席)
運転室(2階)・車掌室

性能

 
7000形の付随連接台車 FS-008
  • ダイヤの稠密化や停車駅の増加に対応して、3100形「NSE」のような高速性能よりも中低速域の加速を重視した設定になった。そのため主電動機出力を140kWに増強し、歯車比は4.21へと大きくされた。その同じシステムは後に10000形「HiSE」や20000形「RSE」にも採用されている。
  • 台車電動車がFS-508A(連接台車)とFS-508B(編成両端の通常台車)、付随車がFS-008(連接台車)である。基礎制動装置は電動台車がシングル式、付随台車がツインディスク式ディスクブレーキである。いずれも小田急では2200形からの実績があるアルストムリンク式空気バネ台車で、小田急の特急車両ではアルストムリンク式台車は初採用となった。

運用

30000形「EXE」が登場した1996年(平成8年)3月以降、本形式と10000形「HiSE」が共通の運用に就いている。そのため、時刻表の車両欄には「L/H」が表記されている。2007年10月現在、「はこね」「さがみ」を中心に使用している。また、50000形「VSE」や30000形「EXE」が定期点検などで車両が使用できない場合は、両形式の代走として使われることもある。かつては、えのしまの定期運用も担っていた。

歴史

  • 1980年昭和55年)12月7日、第1編成 (7001F) が小田急線に入線。
    • 12月9日、第1編成 (7001F) が竣工。
    • 12月25日新宿駅にて「新形特急車7000形完成お披露目式」を挙行し、完成記念列車が運行される。
    • 12月27日、第1編成 (7001F) が就役。同日「第17はこね号」「第18はこね号」の1往復で営業運転を開始する。両列車では記念品として「ボールペン」を配布。
  • 1981年(昭和56年)3月29日、鉄道友の会主催の「新型ロマンスカー試乗会」が第1編成(7001F)にて海老名駅小田原駅新宿駅間で運行される。
  • 1982年(昭和57年)10月25日、第3編成 (7003F) が小田急線に入線。
  • 1983年(昭和58年)12月12日、第4編成 (7004F) が小田急線に入線。
    • 12月22日、第4編成 (7004F) が竣工。
  • 1984年(昭和59年)1月14日、第4編成 (7004F) が就役。
  • 1986年(昭和61年)10月4日、車内に公衆電話が設置される。
  • 1987年(昭和62年)7月1日、1 - 3号車に禁煙席が設置される(従来は全席喫煙席)。
  • 1992年平成4年)10月3日、第9回全国緑化かながわフェアの開催を記念し、臨時列車「グリーンウェーブ相模原号」が運行される。
  • 1995年(平成7年)、第2編成 (7002F) リニューアル工事が竣工。
  • 1996年(平成8年)、第4編成 (7004F) リニューアル工事が竣工。
    • 4月、第3編成 (7003F) リニューアル工事が竣工。
    • 10月、第1編成 (7001F) リニューアル工事が竣工。
  • 2005年(平成17年) - 2006年(平成18年)、パンタグラフを順次菱形からシングルアーム式へ変更。
  • 2006年(平成18年)2月16日、18時16分頃に「はこね43号」として運行していた第1編成 (7001F) が小田急相模原駅を通過中に男性が飛び込み自殺を図って死亡。この衝撃のため先頭車展望席のフロントガラスが大破し、展望席に乗車していた乗客9名が負傷。このため、事故翌日の17日より安全対策として全展望席のフロントガラス内部に「飛散防止フィルム」を貼り付ける対策を行うため、同対策が終了する同月23日までの1週間、前展望席の使用を全面中止。
  • 2007年(平成19年)3月18日、従来喫煙席であった6 - 8号車が禁煙席化され、全席禁煙席となる。
  • 2008年(平成20年)2月9日秦野駅小田急多摩センター駅間を旧塗装編成にて「ハローキティ号」を運行。
  • 2010年(平成22年)1月6日、第2編成 (7002F) 廃車[2]
    • 1月、本形式3本と10000形2本の合計5本の編成で車両の連結部分の金属に複数の傷が見つかり、全車検査のため当分の間運用離脱している。代走運用は30000形EXE4両単独運転や50000形VSE、20000形RSEなども使用。
    • 4月1日、営業運転再開[3]

脚注

  1. ^ http://www.odakyu.jp/80th/event_top/index.html
  2. ^ 「Topic Photos 小田急7000形7002編成廃車」 『鉄道ピクトリアル』2010年4月号(通巻832号)85p, 電気車研究会
  3. ^ 小田急「LSE」が営業運転に復帰交友社鉄道ファン』railf.jp 鉄道ニュース、2010年4月5日

関連項目

外部リンク

総合

旧塗装復元関連