空の境界

奈須きのこによるライトノベルシリーズ

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空の境界』(からのきょうかい)は、奈須きのこによる日本の長編伝奇小説、及び、同作を原作としたドラマCD、映画作品。サブタイトルは「the Garden of sinners」。イラストは武内崇。愛称は「らっきょ」。『か「らのきょ」うかい』の「らのきょ」の部分から。

空の境界 the Garden of sinners
ジャンル 伝奇小説
小説
著者 奈須きのこ
イラスト 武内崇
出版社 講談社
レーベル 講談社ノベルス
講談社文庫
発売日 講談社ノベルス:2004年6月8日
未来福音:2008年8月16日
刊行期間 講談社文庫:2007年11月15日 - 2008年1月16日
巻数 講談社ノベルス:全2巻
講談社文庫:全3巻
その他 1998年10月にWeb小説として公開
ドラマCD:俯瞰風景
原作 奈須きのこ
脚本 大森ごはん
レーベル Magic・Cage
発売日 2002年8月9日
映画
監督 俯瞰風景:あおきえい
殺人考察(前):野中卓也
痛覚残留:小船井充
伽藍の洞:滝口禎一
矛盾螺旋:平尾隆之
忘却録音:三浦貴博
殺人考察(後):瀧沢進介[注 1]
制作 ufotable
封切日 俯瞰風景:2007年12月1日
殺人考察(前):2007年12月29日
痛覚残留:2008年2月9日
伽藍の洞:2008年5月24日
矛盾螺旋:2008年8月16日
忘却録音:2008年12月20日
殺人考察(後):2009年8月8日
上映時間 俯瞰風景:49分
殺人考察(前):58分
痛覚残留:56分
伽藍の洞:50分
矛盾螺旋:112分
忘却録音:59分
殺人考察(後):119分
関連作品
テンプレート - ノート

概要

事故により2年間昏睡状態であった両儀式が手に入れた直死の魔眼をめぐる物語。

1998年10月から、『空の境界式』の題でweb小説として奈須と武内の同人サークル「竹箒」のホームページ上に掲載されたのが初出である。(1-5章まで)

2001年、奈須と武内が所属していた同人サークル「TYPE-MOON」が製作した『月姫PLUS-DISC』内に1-4章を収録したところ、好評を博したため、同年12月30日コミックマーケット61において、関係者のみに公開されていた6-7章を含む全7章を同人誌として刊行した。全2巻。この同人誌版は当時奈須が愛読していた講談社ノベルスへのオマージュとして講談社ノベルスに酷似した装丁が施され、カバー下の表紙には「KINOKO NOVELS」という文字と奈須の自画像がびっしり印刷されていた。

2002年8月9日、1章のドラマCDが発売。ドラマ脚本家の大森ごはんによるオリジナルエピソードが追加されており、1章では殆ど出番のなかった鮮花や荒耶宗蓮が登場した。付属ブックレットにはニトロプラス虚淵玄との対談が収録されていた。

その後、講談社の編集者であった太田克史の目に止まり、講談社ノベルスより2004年6月8日に一般書籍(商業版)として刊行された。全2巻。同日発売された5000部限定の愛蔵版は、9,800円と高価であるも関わらず予約開始から2時間で完売[1]した事で話題を呼んだ。通常版・愛蔵版合わせて2007年5月現在70万部以上の売り上げを記録。商業版では細かな校正・校閲がなされており、句読点の位置や単語など同人誌版と違う箇所がある。2007年11月15日から2008年1月16日にかけて講談社文庫より文庫版が刊行された。全3巻。

2006年12月にufotableによる劇場版アニメ(全7部作)の製作が発表された。2009年8月現在第7章まで公開され、全7章すべてがDVD化されている。

2008年8月16日に奈須と武内がサークル「竹箒」として数年ぶりに同人としてコミックマーケット74に参加、その際新作『未来福音』が発売された。なお、本作の一般書籍化の予定はない。

本作のジャンル・世界観

物語全体を包む衒学的かつ耽美的な雰囲気がボーイ・ミーツ・ガールオカルトをテーマとした類似作品と一線を画しているが、新城カズマは『ライトノベル「超」入門』(ソフトバンククリエイティブ)の中で本作をライトノベルに分類している。

主人公・両儀式の持つ能力が『月姫』の主人公・遠野志貴のそれと同様である事、登場人物の一人である蒼崎橙子と『月姫』で登場する蒼崎青子が姉妹と設定されている事等から、『月姫』と共通の世界観を持つとされる。

黒桐幹也が通っていた大学は明治大学和泉キャンパス、黒桐鮮花が通っている礼園女学園は神戸女学院大学がそれぞれモデルとなっている。

サブタイトル・あらすじ

タイトル
1995年 3月 - 12月 2/殺人考察(前)
1996年 1月 - 2月
1998年 3月 - 5月
6月 4/伽藍の洞
7月 3/痛覚残留
8月 1998年8月 feline -August, 1998-
未来福音
9月 1/俯瞰風景
10月 1998年10月 daylight -October, 1998-
11月 5/矛盾螺旋
12月 1998年12月 say grace -December, 1998-
1999年 1月 6/忘却録音
2月 7/殺人考察(後)
3月 空の境界
第一章 俯瞰風景 Thanatos.
1998年9月、観布子市では少女たちの飛び降り自殺が多発していた。自殺した少女たちの関連性は不明、また場所は決まって巫条ビルという取り壊しの決まった高層ビルだった。両儀式はその巫条ビルの上空に浮遊する少女たちを目撃する。そんな中、式の友人である黒桐幹也が巫条ビルに近づいたのを機に昏睡状態に陥ってしまう。
第二章 殺人考察(前) ……and nothing heart.
1995年3月、黒桐幹也は街で一人の少女と出会った。透徹した、不思議な眼差しを持った少女に幹也は一目で心を奪われてしまう。その年の4月、観上高等学園の入学式で幹也はその少女と再会する。少女は両儀式と名乗り、人を寄せ付けない性格であったが、幹也には少しずつ心を開いて行く。ある日、幹也は式のもう一つの人格である「織」と面識を持つ事になる。自分は殺人者だと言う「織」に戸惑う幹也。そんな中、観布子市内では連続猟奇殺人事件が発生し、街は重苦しい雰囲気に包まれていた。
第三章 痛覚残留 ever cry,never life.
1998年7月、複数の捻じ切られたような変死体が見つかるという、人間の仕業とは思えない猟奇殺人事件が発生する。そんな中、“伽藍の堂”の所長である蒼崎橙子に一件の依頼が飛び込んできた。依頼内容は事件の犯人の保護、あるいは殺害。犯人の名前は浅上藤乃。殺された被害者たちに陵辱されていた少女だった。式は藤乃の暴走を止めるために行動を始める。
第四章 伽藍の洞 garan-no-dou.
1998年6月、約2年の昏睡から両儀式は奇跡的に回復する。しかし、目を開けてすぐに見えたのは「死の線」。それが何なのかを理解してしまった式は、自らの目を潰そうとしてしまう。そんな中、一人の女性が式を訪ねてくる。その女性、蒼崎橙子に式のもう一つの異常、式の別人格である「織」が居なくなっている事を気付かされる。生の実感を喪失した式は抜け殻のように日々を送るが、その式の病室に毎夜彷徨ってくるモノがあった。
境界式
病院で寝たきりの一人の女性。大きな痛みを抱えた一人の少女。或る少年。その前に奇跡を施す男が現れる。
第五章 矛盾螺旋 Paradox Paradigm.
1998年10月、両儀式はふとした事から臙条巴という自称人殺しの家出少年と知り合う。式は巴の隠れ家に自室を提供し共同生活を送り始めるが、しばらくして巴は自分の親殺しの罪を告白する。奇しくも蒼崎橙子から似たような事件の詳細を聞いていた式は、巴とともに臙条家のある小川マンションへ向かう。
第六章 忘却録音 fairy Tale.
1999年1月、魔術師見習いである黒桐鮮花は、師である蒼崎橙子にある事件の調査を命じられる。それは鮮花の母校である礼園女学院で、生徒の記憶が妖精に奪われているというものだった。妖精を視る事ができる両儀式を連れて学院に戻った鮮花は調査を開始する。
境界式
誤って人を殺してしまった少年がいた。このままではマズイ、と思った矢先、少年は衝動的にある解決を思いつく。そしてその前に、ある魔術師が現れる。
第七章 殺人考察(後) ……not nothing heart.
1999年2月。両儀式が黒桐幹也の前から姿を消した。そして、それに合わせる様に再発する連続殺人事件。3年前、自らを人殺しと称した式。信じ続けると誓った幹也。幹也は式の無実を証明するため、殺人事件の捜査を始める。そんな中、幹也はある麻薬事件をきっかけに高校時代の先輩・白純里緒と再会する。
空の境界
1999年3月、雪の降る夜。黒桐幹也は4年前と同じ場所で、「彼女」に再会する。
未来福音 recalled out summer
1998年8月 01_feline -August, 1998-
浅上藤乃との戦いも醒めぬある日、黒桐幹也は両儀式の部屋に一匹の黒猫を預けていく。そんな中、式は藤乃との戦いで失った左腕の義手に痛みを感じていた。
未来福音 Möbius ring
1998年8月、黒桐幹也はひょんな事から人の未来を視る事ができる少女・瀬尾静音と出会う。そして喫茶店アーネンエルベで幹也と静音はひと時の会話を楽しむ。その裏では、連続爆弾魔事件が発生していた。両儀式はその爆弾魔に狙われる事になってしまう。その爆弾魔・倉密メルカもまた、未来視の眼を持っていた。静音の未来とメルカの未来。それは同じようでいて、決定的に違う部分があった。
1998年10月 02_daylight -October, 1998-
礼園女学院の生徒・宮月は友人だった安藤由子の自殺は自分が原因だと絶望していた。そんな中、宮月の前に同じ学校の生徒である浅上藤乃が現れる。
1998年12月 03_say grace -December, 1998-
大晦日。黒桐幹也と両儀式は2年ぶりに二人で神社へ初詣へ行く。その途中、幹也は以前預かった黒猫の話をし始める。
未来福音・序 Möbius link
絵本作家である瓶倉光溜はある廃ビルである家の専属興信所を営みながら暮らしていた。そこへ、親元の娘で廃ビルにも頻繁に顔を出す少女・未那が光溜に一つの依頼を持ってくる。心当たりのあった光溜はある占い師の元へ向かおうとするが、好奇心旺盛な未那はついて来てしまう。

注意:以降の記述には空の境界のストーリー(結末を含まない)、登場人物に関するネタバレが含まれます。免責事項もお読みください。


用語解説

世界観がほぼ統一されているため、『月姫』の用語解説欄も参照のこと(特に魔法・魔術関連や直死の魔眼)。

根源
世界の外側にあるとされる領域で、「あらゆる事象の発端」「万物の始まりにして終焉」。すべての魔術師にとっての最終到達目標である。
起源
作品世界において、あらゆる存在が持つ、原初の始まりの際に与えられた方向付け、または絶対命令。あらかじめ定められた物事の本質。無生・有生を問わず全ての物事は、抗えない宿命としてそれぞれ何らかの方向性を与えられて存在している。個々の人間もまた、知ろうが知るまいがこの方向性に従って人格を形成し、存在意義を持つ。
起源覚醒
自らの起源に飲み込まれ、人格を塗りつぶされた状態。太古の昔から来る起源の前では、個人の生涯の結果である人格など、たとえ百年かけて培ったものであっても無いに等しい。ただし、起源という完全な存在意義に目覚めた肉体は強大な力を手に入れることができる。
抑止力
現在の世界の存続を図る、カタチのない力。集合的無意識(本作での使われ方は超個体に近いもの)が生んだ安全装置。世界を保護するという点で優先対象の異なる二つの抑止力が存在し、地球という星を守るためならば人間という種を滅ぼすこともためらわない「ガイアの抑止力」と、人の世の存続のためならば星を食い潰すこともためらわない「アラヤの抑止力」(霊長の抑止力)とがある。無意識から発生した力であるため、たいていの場合、その場にいる誰にも気づかれない、誰の意識にも止まることのない自然なかたちで発動する。たとえば、世界の安定を脅かす危機を排除するため、それと敵対する存在(たいていは無力なただの一般人)を後押しして力を与え、絶対に勝利できるように導く(これを「世界との契約」と言う)。ちなみにアラヤと契約した場合、その人間は英雄となり、死後英霊としてアラヤに取り込まれることになる。

登場人物

声優は劇場版アニメ / ドラマCDの順。相違しない場合は省略。

主要人物

両儀 式(りょうぎ しき)
声 - 坂本真綾 / 川上とも子 
身長:160cm 体重:47kg
誕生日:2月17日 血液型:AB型
事故による2年間の昏睡から奇跡的に目覚めて以来、物の「死」を見る能力・『直死の魔眼』を身につけた少女。普段着は和服で、寒い季節になるとその上から革のジャンパーを着る。幼い頃から剣術を修めており、不確かな生に実感を得るため、異能の者たちとの戦いに身を投じていく。
事故による昏睡の前には女性人格の「式」男性人格の「織」という2つの人格があったが、事故で「織」が消滅してしまう。以後彼女が男口調(例えば一人称が「オレ」)を使うのは精神死した「織」の人格を補完するため。
姓の「両儀」、名の「」ともに意味がある。そのため、公式設定で『月姫』(正確には『月姫』本編時点)の遠野志貴より数段上の直死の魔眼の使い手とされている。達観しているため死の線が見えても(平気ではないが)耐えられるらしく、眼鏡をかけることへの抵抗感もあって「魔眼殺し」は使用していない。式が「魔眼殺し」の眼鏡をかけなかった為、橙子の妹である青子が勝手に持ち出し、遠野(七夜)志貴に与えたという裏設定がある。彼女に見える死の線や死の点は生きている物に関してのみ(生ける屍=リビングデッドのように、擬似的に生命を与えられているモノを含む)で、鉱物・概念に関してはフルに集中してはじめて死の線が視認可能、これらに関しては死の点を見ることはできない。そのため志貴のように脳に負担が掛かるということはない。故に生物の死の点に関しては志貴より細かく見ることはできない。また、彼女は『 』(読みはから、根源に近しいものであるらしい)に触れることで事象の視覚化に特化しており、本来なら視覚できない概念、霊体や能力といったものを目で捉えることができるため、魔眼の有効対象は志貴より上である[注 2]
浅上藤乃(後述)との戦いで左腕を失っており、以降は橙子が作った義手を使用する。この義手は霊体を掴むことができ、霧絵との戦いで利用された。また中に予備のナイフを内蔵している。
黒桐鮮花(後述)からは一方的にライバル視されているが、式は特に意識していない。むしろ面白いやつ、気を遣わなくていいやつと認識している。有り体にいえば、女友達としては好きなタイプ。幹也のことは不器用ながらも意識している様子。
意外な特技は料理(和食)。元々良家の出で舌が肥えているため。他人が作るものならどんな味でも我慢できるが自分が作るとなると絶対に妥協できないということで、板前顔負けの腕前を誇る。
昏睡から回復した後、復学した高校はサボり気味。
武器は基本的にナイフを使うが本来の武装は日本刀で、これを持った場合にのみ未来予知などの潜在能力を発現することが可能になり、普段とは段違いの戦闘能力を発揮する。また、父親から武術の鍛錬を受けており、普通の人間が相手なら素手で圧倒する程の強さを持つ。
「式」と「織」のベースとなっている、脳でなく肉体に宿った第三の人格、「両儀式」が『 』の一部であるため、その気にさえなれば彼女の思い描いた新しい世界で古い世界を握りつぶし、世界を思うがままに変えられる能力を持っている(もっとも本人はそれに意義を見出していない。あらゆる結末を知るがゆえに無気力。それゆえに表に出ない。ちなみに式や織の殺人衝動は彼女から流れ込んだものである[注 3])。「式」も「織」も「両儀式」の存在を知らない。
黒桐 幹也(こくとう みきや)
声 - 鈴村健一(幼少期:喜多村英梨) / 伊藤健太郎
誕生日:12月20日[2]
式の同級生だった青年で、現在は人形師・橙子の事務所「伽藍の堂」で働く。式と学校で出会う前に町で偶然「両儀式」に出会っており、以来、式に惹かれている。
至って平凡な若者だが、ただ一点「物を探す」という事に関してだけはまるで冗談のような才能を見せる(橙子の噂を聞いて実際に会ってみたいと考え、彼女が張っていた結界をものともせず「伽藍の堂」に辿りついた。あるマンションの調査を行った際には、わずか一晩で設計図、建設期間、建設に関わった主な作業員の名前、構造、水道管の配置、オーナー会社、各住人の家族構成、勤め先、前の住所まで網羅した調査書を仕上げてみせた。また玄霧皐月(後述)について調べた際はわずか1日で、しかも日本にいたまま、十数年前ウェールズにいた彼の少年時代の事情を知る者を見つけてしまう)。そのため、橙子に探偵になる事を勧められることもある。父親が薬剤店を営んでいる人と知り合いで、麻薬などにも詳しい。
高校時代、式と一緒に大学に行く約束をしていたが彼女の事故があって一人で進学、しかしすぐに中退して橙子の事務所に就職した。現在はアパートで一人暮らしであり、両親とは大学中退の件で喧嘩して以来ほぼ絶縁状態である。これらの件を棚に上げて式には「学校に行くように」、鮮花には「魔術師になるなんて父さんにどう顔向けするんだ」と説教を行うが、式にも鮮花にも自分の事を棚に上げている事を皮肉られている。
その立ち位置から主要人物で唯一の「普通の人間」であるようにみえるが、「平凡な代わりに誰も傷つけず誰の『特別』にもならない」という生き方故に彼もまた神秘とは関わりの無いところで「特別」(或いは「異端」)な存在である。その特異性ゆえに式や鮮花(あるいは巫条霧絵や浅上藤乃)などの異能の者に慕われている節がある。
なお、彼の容姿は『月姫』の主人公、遠野志貴にそっくりである(志貴の容姿は幹也を元にしたものであると公言されている)。劇場版における幹也役の声優と『真月譚 月姫』での志貴役の声優が同じという繋がりもある。
蒼崎 橙子(あおざき とうこ)
声 - 本田貴子 / 井上喜久子
身長:165cm 体重:50kg
誕生日:4月10日 血液型:O型
「伽藍の堂」社長。表の顔は人形師、実は魔法使いになりそこねた魔術師ルーン文字の魔術を使う。廃墟となっていた建物に、人の意識を向けさせない結界を張ったうえで自宅兼オフィスとしている。眼鏡の付け外しで意図的に人格をスイッチする。ヘビースモーカーで常にタバコ(本人曰く「香港の職人が作った不味いタバコ」)をくわえている。生まれつきの魔眼の持ち主である。礼園女学園のOGだが、18歳まで学校へ行ったことがないという設定もあり、いつ通っていたのかは不明。
『月姫』の魔法使い・青子の実。蒼崎家の家督を彼女ではなく妹に与えたという理由で、師である祖父を殺害した。姉妹の仲は非常に険悪で、彼女の使い魔は妹に破壊されている。魔術師としての実力は、壊すことしか能の無い妹をはるかに凌いでおり、トップランクに位置する。その実力を認めた魔術協会から三原色の「赤」の称号を授けられているが、本来望んだ「青(ブルー)」の名は妹に奪われており、よくそのことで揶揄される。自分を「傷んだ赤色(スカー・レッド)」と呼んだ者は「例外なくぶち殺して」いるらしい。最高位の人形師として協会の封印指定[注 4]を受け逃亡中。趣味は妹の名義で協会からお金をおろして買い物をすること。因みに青子に掛けられた魔術によって生家の地に帰ることができなくなっている。
原作と文庫版及びアニメ版で容姿が最も変わったキャラクターで、原作では水色のショートヘアに琥珀色の装飾品を身に付けている姿だが、文庫版とアニメ版では橙に近いくすんだ赤毛をポニーテイルにしており、装飾品は両耳のピアスと小さなペンダントに留まっている。
彼女の人形師としての技術は「本人と寸分違わぬ」人形を創り上げるまでに至っており、以来、彼女は自己の唯一性への執着を持たなくなった。即ち、自分とまったく同じ存在がもう一人いるのであれば、今の自分はいなくなっても蒼崎橙子という存在は無くならないから問題はないという認識である。現在活動している橙子が何らかの理由により活動停止すると、スペアの人形が目覚めて記憶を引き継ぎ、再び本人と寸分違わぬ人形を作った後、以前の橙子と同様の生活を続ける。巨大な鞄の中に得体の知れない強力な魔物を飼っており、魔術での戦闘に向かない彼女はそれを使って敵を排除する。
奈須きのこの『魔法使いの夜』にも登場し、またTYPE-MOONの伝奇ゲーム『Fate/stay night』にも、名前は出ないが、封印指定を受けた人形師についての話が登場する[注 5]。『MELTY BLOODシリーズ』では青子が自分の名義で金をおろしていることに文句を言っている。(更に『Actress Again』では、アニメ化でイメチェンした事に文句を言っている。)『月姫』では「魔眼殺し」の作り手としても言及されており、『フェイト/タイガーころしあむ』でライダーが探し回る「魔眼殺し」も彼女が製作したものらしい。

第一章「俯瞰風景」の登場人物

巫条 霧絵(ふじょう きりえ)
声 - 田中理恵 / 伊藤美紀
身長:161cm 体重:40kg 血液型:A型
荒耶が式のために用意した3つの駒の一人。宗蓮曰く「死に依存して浮遊する二重身体者」。
退魔四家の一つである巫淨家の最後の一人。家族は既に他界しており、彼女自身も病のために余命幾許も無いと宣告され、ある病院に入院している。荒耶の力を借りて、視力を失う代わりに霊体と言うもう1つの身体を得る。
外の世界を憎みつつも空に憧れて、廃ビル「巫条ビル」を根城に霊体で浮遊していた。そして無意識下で浮遊していた者たちに、それを意識させたため、結果として自分は飛べると勘違いした女子高生たちが次々と飛び降り自殺を行うという事件を引き起こす(最終的に7人を自殺させる)。後述の理由によって「巫条ビル」に調査にやってきた幹也の魂を奪ったことで、彼を取り戻しに来た式に霊体を殺された。その後、病室に訪れた橙子との会話を経て、無関係の人を自殺させた罪悪感と1度経験した死を再び経験するために飛び降り自殺をした。
式が昏睡していた病院と同じ病院に入院しており、よく式の見舞いにきていた幹也に好意を持っていた。そして彼なら自分を生きたままどこにでも連れて行ってくれると感じて魂を奪うことに繋がった。
巫条 康紀(ふじょう やすき)
霧絵の父。妻と霧絵とその弟の四人家族。家族は霧絵を残して皆事故により他界している。

第二章「殺人考察(前)」の登場人物

秋巳 大輔 (あきみ だいすけ)
声 - 東地宏樹 / うえだゆうじ
幹也の従兄(原作の第六章以降では父方の叔父とされている)で警視庁捜査一課の刑事。第二章以外にもたびたび登場する。
幹也に事件の全容を話し、意見を求めるなど、守秘義務に抵触するが、有能さゆえに見逃されているらしい。蒼崎橙子とも面識があり、たびたび情報を交換する仲である。ただし、「忘却録音」の頃まで幹也が橙子の元で働いていることは知らなかった。
硯木 秋隆 (すずりぎ あきたか)
声 - 保村真 / ‐
両儀家の使用人。式の養育係として両儀家に引き取られ、両儀の屋敷で生活している。式が独り暮らしをするようになっても、たまにアパートを訪ねたりしている。
学人(がくと)
声 - 高橋研二 / ‐
幹也の幼馴染で高校時代の友人。柔道部所属。不良がかった性格で、友人も多い。式によく話しかけている幹也に、付き合っているかどうか尋ねる。
「痛覚残留」では給料がなくなってしまった幹也に呼び出されて、金をカンパする交換条件に湊啓太の捜索を依頼する。なお、その際2人が待ち合わせた場所は幹也がかつて通っていた大学の食堂であったため、幹也と同じ大学に通っているようである。第七章でも引き続き登場する。
式の父
声 - 杉崎亮 / -
現・両儀家の当主。家は和風建築の豪邸であり、また剣術の道場があり定期的に式(織)と真剣を使った稽古をしている。自身はその地域一帯に影響力を及ぼす大家であり、邸内には複数人の屈強な男たちが住みこんでいる。なお子供には式の他に要(式の兄)がいる。

第三章「痛覚残留」の登場人物

浅上 藤乃(あさがみ ふじの)
声 - 能登麻美子 / ‐
身長:157cm 体重:48kg
誕生日:5月20日 血液型:B型
礼園女学園の生徒。鮮花の友人。宗蓮が式のために用意した3つの駒の一人。宗蓮曰く「死に接触して快楽する存在不適合者」。
鮮花に「誰も憎まない娘」と評されるほど温和で穏やかな性格。しかし、それは周囲に隠している無痛症によって外部の刺激及び自らの身体を感じることができないために生への実感が無く、感情の抑揚そのものが乏しいための現れだった。結果として他者の痛みに共感する形でしか生への実感を得られなかったことで、感覚を取り戻した後は残虐に相手を殺して喜び・快楽を得るという暴走を招く。
視界内の任意の場所に回転軸を作り、対象の強度に関係なく“曲げる”能力「歪曲」の持ち主。作中では“超能力”として扱われているが、藤乃の場合はある程度人為的な手が加えられている為、正確には魔術(魔眼)と異能(超能力)の中間[3]。理論上は左右どちらか片方しか曲げることができないが、藤乃の場合は異能の回線を複数持つため、左右どちらにも曲げることが出来る。また、後述の理由・方法によって無理に能力を封じられていたことで、より強大な能力へ発達させることになり、終盤では透視能力(千里眼)まで発現させ、橋の全景を視界に納めることで巨大な橋をも捻じ曲げた。しかし、橋を曲げた代償として失明する(原作中では明言されていない。作者は「そこで彼女は視力を失っています。橋壊しの代償として。」と解説している[4]。)。
出自は長野の名家・浅神(あさかみ)家。幼い頃から「歪曲」の能力が発現していたが、6歳頃に父・羽舟が能力を消すため、人為的に感覚を無くし(つまり後天的無痛症である)、能力が封じられる。その後、12歳の頃に浅神家の没落に伴い母と共に浅上家に引き取られ現在に至る。
半年間に渡って不良集団から性的暴行を受けていた。無痛症であるため、その感覚も無きに等しかったが、金属バットで背中を強打されたことで脊髄に損傷を受け、不定期に感覚を取り戻すようになる(脊髄の傷は、後に荒耶に治してもらっている)。ある夜、たまたま感覚を取り戻していた間に不良のリーダーにナイフで腹部を刺され、防衛行動として発動した「歪曲」により湊啓太以外の4名を殺害する。以後、逃亡した湊を殺すために彼を探し、その途中で何度か殺人を繰り返すようになる。
実は腹部の痛みは彼女が患っていた慢性の虫垂炎が原因であり、ナイフで刺されてはいなかった。本人はあくまでナイフで刺された傷によるものだと認識していたために症状が悪化し、最後の式との戦いでは腹膜炎に進行しており、すでに手遅れな症状までに悪化していた。その後、式に体内の病気を殺されたために助かり、「忘却録音」のラストで少しだけ再登場している(劇場版においては冒頭の1カットに登場)。
式は能力発動時の彼女を非常に嫌い、特に復讐としての殺人(性的暴行を行っていた5名の殺害)で無い殺人は殺戮と呼び、その快楽殺人傾向について嫌悪感を示していた。ただ、橙子はそれを同属嫌悪ではないかと述べている。また、幹也は覚えていないが、中学時代に彼と会った事があり、それ以来、好意を持っていた(なお、鮮花が幹也の妹である事は知らない)。
『Fate』の間桐桜の原型となったキャラであり、キャラ設定のコンセプトとして浅上藤乃タイプと指定されたほど。また、デザイン担当の武内は「奈須にとっては違うと思う」と前置きしながらも、自分としては『月姫』の琥珀の原型となっている、と述べている[5]
ファンからの愛称は「ふじのん」。奈須きのこ本人も愛用しており、インタビューなど公式の場でも度々用いている。
湊 啓太(みなと けいた)
声 - 浅沼晋太郎 / ‐
幹也や学人の後輩。街の不良グループの一人で、4人の仲間たちとともに藤乃を脅迫して性的暴行を加えていた。
藤乃の「歪曲」によって仲間が次々と殺されるのを目の当たりにして逃走し、とあるマンションに隠れていたが、逃げる際にリーダーの携帯電話を持っていたため、藤乃からの脅迫めいた電話がかかってくることに悩まされる事となる。そのため幹也が見つけた際にはひどく憔悴していた。後に、学人の依頼を受けて捜索していた幹也に保護され、グループで唯一の生存者となる。
昭野
声 - 飯田浩志 / ‐
湊啓太のグループの交流のあった青年。啓太の行方を追う藤乃に啓太の居場所を問われるも、答えられなかったためか殺害され5人目の被害者となる。式や橙子は、これ以後を殺人ではなく大義名分の無い殺戮と呼んでいた。
康平(こうへい)
声 - 中村悠一 / ‐
湊啓太のグループの交流のあった青年。藤乃の接触を受けるが無遠慮な対応をとったために藤乃に殺害される。6人目の被害者。
高木 彰一(たかぎ しょういち)
浅上藤乃による連続殺人事件の7人目の被害者の少年。啓太のグループのメンバーとは無関係の一般人だった。
この件により、ついに復讐と無関係の殺人が始まったとして、式は藤乃との戦闘に至った。藤乃にとっては無意識下での殺害だったようで、後に藤乃は「6人を殺した」と言っている。
浅上 麻雪(あさがみ まゆき)
声 - 新田万紀子 / ‐
藤乃の実母。浅神羽舟の妻だったが浅神家が破産した際に、分家筋である浅上康蔵に引き取られて再婚した。
藤乃の無痛症について理解していなかったようである。藤乃が式と最後に戦った際、精神が幼退化した藤乃は幹也と麻雪に依存していた。
名前は劇場版の設定から。
浅上 康蔵(あさがみ こうぞう)
藤乃の継父。浅神家の分家に当たる浅上家の当主。かなりの資産家。
本家の浅神家が没落した際にその土地の利権欲しさに借金を肩代わりし、また浅神麻雪を妻として連れ子の藤乃を引き取る。藤乃の異能を知っていたらしく、事件を知ると蒼崎橙子に藤乃を止める、最悪の場合は殺害して欲しいと依頼した。
礼園女学院の寄付金の3割を出しているらしく、また浅上建設株式会社・浅上女学院に出資しているらしい。
名前は劇場版の設定から。
浅神 羽舟(あさかみ はねふね)
藤乃の実父。異能を伝える浅神家の元当主。
両義家と違い現代においては異能を封じ込めることを目指し、藤乃に大量の薬物を投与して感覚とともにその魔眼を封じる。家は当代で没落し、既に存在しない。
名前は劇場版の設定から。
リーダー
声 - 安元洋貴 / -
湊啓太が所属する不良グループのリーダー。藤乃に殺害される。
教授
声 - 岩崎ひろし / ‐
蒼崎橙子の師に当たる大学教授。超能力に詳しく、訪ねてきた幹也にテレビのチャンネルに例えて講釈する。その際、左右両回転の「歪曲」を行使する浅上藤乃を危険視していた。

第四章「伽藍の洞」の登場人物

芦家(あしか)
声 - 石上裕一 / ‐
式が入院していた病院(劇場版では観布病院)の脳外科医。生真面目な性格で、式の担当だった。
『月姫』にも同姓の脳外科医が登場し、式と同じ「直死の魔眼」を持った遠野志貴の担当であるが、関係性は不明。

第五章「矛盾螺旋」の登場人物

臙条 巴(えんじょう ともえ)
声 - 柿原徹也(幼少期:五十嵐裕美) / ‐
誕生日:7月10日
とある事情により母親を殺害したフリーターの少年。十代後半で髪は赤い。母親を殺害した小川マンションから逃げ、自暴自棄になって喧嘩していた時に式と出会い、当面の隠れ家として式の部屋に寝泊りさせてもらう。出遭った時から式に強く惹かれ、彼女を知るうちに好意を抱くようになる。そのため、第五章の大部分では黒桐幹也に代わって式のパートナーを務める事になる。
以前は有名なスプリンターだったが、父が無免許で交通死亡事故を起こしてからは、家族ごと精神的にも金銭的にも立場的に追い込まれる。家族を養うために高校を退学、引越し屋でアルバイトをして、給料は家の借金返済に充てられていた。家族内の会話も無い家庭崩壊した状況で、小川マンション移転後、母親が父を殺し、直後に自分も殺されると感じて母親を殺害し、家を飛び出した。
実は本物の巴は物語以前に母親に殺されており、現在の巴(ひいては小川マンションの住人全員)はアルバに造られた人形に記憶を移植された物だった。荒耶によって最後の1日(即ち「死」)が繰り返される小川マンションにおいて、本来ならいつも通りに母親に殺されて終わるはずだったが、その日だけは逆に母親を殺し、マンションから逃亡していた。完全なイレギュラーな存在で、荒耶にとっても予想外の出来事だったが、これを逆に利用し、無意識下に式への関心を付け加えられ、彼女をマンションへ誘き出す道具として利用された。
自身の真実を知り、存在意義を悉く否定されるも、自身に宿る意思を本物として単身で荒耶に挑む。荒耶にかなうはずもなく消滅させられるが、その間際には自身がそこに確かに存在したことを再認識しつつ散った。また、このわずかな時間が式の回復・脱出に時間を与える結果となり、マンションからの脱出も含めて、巴という存在が荒耶の致命的なミスとなる。起源は「無価値」。
自分の閉じこもっていた殻を破って覚醒するという性質や、デザイン、本物と偽物といったテーマは、浅上藤乃同様、『Fate』の主人公である衛宮士郎の原型となった。
また、公式では猫耳属性があるという扱いになっている。
荒耶 宗蓮(あらや そうれん)
声 - 中田譲治
一連の事件を暗躍する人物。常に黒いコートを羽織り(上着・中着も黒)、無口で強面な人相の持ち主。橙子とは協会で同期だった魔術師。死の蒐集家。
元は台密の僧で人助けをしていたが、戦争などの人の性に絶望し、人と言う存在の意味の有無を求めて根源(延いては『 』)を目指すようになる。しかし、毎回、(霊長の)抑止力に阻まれ、(根源への到達は魔術師たちの最終目標とは言え)現在では度を超え、根源を求めるだけの存在と化している。本作では『 』に繋がる式の身体を手に入れることで根源を目指そうとし、抑止力が働かないように入念な計画を立てていた。
魔術師としての能力は穴だらけだが、結界の分野には突出しており、限定空間においては、空間の移動・圧縮・生成など魔法の域に達する。戦闘に際しては自身の周りに三つの結界「不倶」「金剛」「蛇蝎」を敷くことで鉄壁の守りを誇る。身体能力も桁外れに高く、格闘戦を得意とする。また、橙子には及ばないが人形師としての腕もかなりのものである。さらに起源覚醒の術で、己の起源「静止」を呼び起こしており、ほぼ不老状態になり、200年以上の時を生きている。それに加えて、左手には仏舎利を埋め込んでいるために死の線が極めて細くなっており、式を苦しめた。
抑止力に阻まれぬ様にするため、式の身体を介して『 』へ至る計画を立て、式と同じ根源(性質)を持ち、それでいて相克すると考えた巫条霧絵・浅上藤乃・白純里緒の3人を式と戦うことになるよう暗躍する(ただし、効果的で無かったこと、特に里緒は失敗であったと述べている)。そして後述の実験より、偶然起きた巴の逃走を利用し、自らの拠点・工房である「小川マンション」に式を呼び込む。最初の戦いでは式を捕まえることに成功するも、霊長の抑止とは別の要因によって阻まれ式に敗北。自らの敗北を認めないまま次世代での復活に望みを託して消え去った。
橙子に設計させた「小川マンション」を自らの拠点として「相克スル螺旋」と呼ぶ実験を行っていた。これは根源に至るには死の量より質であるとし、自ら64種に分類した死の性質それぞれを反映した64人の死体と人形を用いて、死で終わる同じ1日を繰り替えさせるというものだった。ただ本人は意味の無いものと述べ、良くて別の要因で死ぬ可能性が見られることを望んでいた。そして、この実験対象の1人であった巴が、繰り返される1日から外れたことが第5章のきっかけとなる。
メインキャラクターとしては基本的に数えられないが、大タイトルである「空の境界」に対して「一人の魔術師が『無』に挑もうとした物語とも言える。」と述べられる[3]ほど重要人物であり、HP上で「空の境界式」が「矛盾螺旋」を持って一応の幕を閉じたのも、「大タイトルである空の境界は、荒耶宗蓮という人物の物語でもある。その為、HP上では矛盾螺旋の段階で一応の幕とした。空の境界という物語は矛盾螺旋で終わっている。」と解説されている[3]
ドラマCD版と劇場版で声優が変わらなかった唯一の人物である(理由は中田譲治の項目を参照)。
コルネリウス・アルバ
声 - 遊佐浩二 / ‐
魔術師。協会では橙子・荒耶と同期。コルネリウス・アグリッパ・フォン・ネッテスハイムの直系の子孫。長いおかっぱの金髪に真紅のコートとシルクハットという出で立ちが特徴で、実年齢は50歳以上だが外見は20代の美青年。黒い犬を連れている描写もあった。
魔術師としての実力は血筋・魔術回路も含めて一流で、シュポンハイム修道院の次期院長と噂され、人形作りや高速詠唱による攻撃魔術を得意とする。特に詠唱は速度のみならず文面でも非常に洗練されており、さらに「repeat」の一言で連続再生も可能とする。また彼オリジナルの「脳だけを生かす技術」を用い、巴を含む小川マンションの多数の人形を製作した。しかし自身の能力を過信していたり、自己顕示欲が強いなど性格にやや問題がある。
学院時代、橙子の方が優れていると周囲に看做されたことから(また橙子が自分を認めなかったことから)、橙子を逆恨みするようになり、橙子を殺せる条件で荒耶の「相克スル螺旋」に協力する。最初の対決では負けたものの荒耶に助けてもらい、生首となった橙子を殺す。だが結果としてそれが次の橙子を目覚めさせることとなり、再度戦う。橙子の事実に対して、人形師としての腕、また魔術師の格の違い(橙子にとっては「考え方の」違い)を認めざるを得なくなり、さらに「傷んだ赤色」を口にしていたため、彼女に惨殺された。意識も消える間際に橙子や荒耶を自分と異なる「怪物」と認識し、関わったことに後悔した。
橙子に対する態度は、DVDの一問一答にて武内に「ヤンデレ」と称されており、学院時代は橙子の研究室に通って与太話・自慢話を頻繁に繰り返していたエピソードを持つ。大好物も、学院時代に橙子が作った蒼崎姉妹流ピザ煎餅であることが明かされている。それ故に、学院時代から変わった「化物」としての橙子に絶望した。起源は「反証」。
チャーリーとチョコレート工場」に登場する「工場長」ウィリー・ウォンカと特徴が似ているため度々ネタにされる。この事は作者である奈須きのこも認識しているようで、自身のホームページである竹箒[1]でネタにしたこともある。
臙条 楓(えんじょう かえで)
声 - 伊藤美紀 / ‐
誕生日:4月34日
巴の母。夫より1歳年上。実家は裕福な家でエスカレーター制の女子大学出身。
結婚した際に実家とは絶縁したが、夫の交通事故後は頭を下げて実家に援助を頼む。自身も慣れないスーパーのパートタイムで生計を助けていた。温和で何事も嫌とは言わない性格だったが、小川マンション移転後の度重なる夫の暴力に堪えかねこれを殺害。直後、自分も殺されると感じた巴によって殺される。
実際には巴に殺されたわけではなく、孝之殺害後に心中を図って巴を殺害し、自殺していた(詳しくは巴の項を参照)。
臙条 孝之(えんじょう たかゆき)
声 - 山野井仁 / ‐
誕生日:9月13日
巴の父。国立大学の出で、当初は一軒家を構え、巴に家の鍵で家族を守る事を教えた良き父であった。しかし、巴が小学生の頃に定職を失い、さらに無免許運転で死亡事故を起こす。
交通事故後、近隣住民の蔑みから逃げるように住居を転々とし、小川マンションへとやってくる。その後、小川マンションの精神に異常をきたしやすい構造の影響もあり、酒浸り、さらに妻に暴力を振るうようになり、最期は妻に殺害される。
ちなみに大学卒業後にしばらく勤めていた会社は浅上商事だった。
相川(あいかわ)
巴の高校時代の同級生。路上でうずくまっていた巴を覚醒させる。
巴の父の事もあってか巴に高圧的にあたっていた。そのために巴の逆襲に遭い、昏倒した。

第六章「忘却録音」の登場人物

黒桐 鮮花(こくとう あざか)
声 - 藤村歩 / 田村ゆかり / ‐
身長:160cm 体重:45kg
誕生日:12月21日 血液型:B型
幹也の妹。礼園女学園の生徒。橙子に弟子入りし、魔術師(正確には魔術使い)見習いでもある。主要人物としての登場は「忘却録音」のみだが、それ以前の物語でもちょくちょく登場している。
兄・幹也を一人の男性として愛しており、妹と認識されないように様々な工作をするが、兄は式しか眼中に無いため意味を成さず、結果、式をライバル視している。正月には実家で準備万端に兄を迎えるつもりが、兄が式をつれて来たせいで、ショックのあまり寝込んでしまうほど(鮮花曰く、実家を離れている間に「鳶に油揚げを取られた」)。だが、式を嫌っているわけではなく、むしろ好感すら抱いている。
「発火」の魔術が唯一にして最大の得意技。使用時には橙子からもらった火蜥蜴の皮手袋をはめる。格闘技の訓練も受けていたらしく、劇場版では妖精達を体術で撃ち払っていた。また、自身の起源を「禁忌」であると考えており、兄を愛するのもそれが由縁と考えている。
「痛覚残留」に登場した浅上藤乃とは友人。鮮花は藤乃が過去に幹也と会ったことがある事は知らないため、藤乃が思い出の人物(幹也)を鮮花に話したところ、「本人を探そう」と人探しの達人として幹也を紹介しようとした。
兄が『月姫』の遠野志貴に似ているように、彼女も遠野秋葉と容姿が良く似ている。
玄霧 皐月(くろぎり さつき)
声 - 置鮎龍太郎 / ‐
誕生日:5月1日
礼園女学園の男性教師。イギリス育ちで外国語を教える。前任の葉山に代わって一年D組の担任になり、生徒からは人気が高く慕われている。
鮮花や式曰く幹也に似た雰囲気を持った人物。幼い頃の出来事で、映像の「再認」(視覚情報による記憶と事実の確認)ができないため、人物を判断する時にはその人物の特徴と実物を当てはめて判断している。正体はアトラス院出身の魔術師で、その能力から「偽神の書(ゴドーワード)」、「統一言語師(マスター・オブ・バベル)」と呼ばれている。橙子同様に協会から封印指定を受けており、協会からは身を隠している。
バベルの塔以前に世の中で使われていた「統一言語」を完全に理解し、話すことができ、世界そのものに話しかける能力を持つ。即ち、彼の言葉は「世界」からの命令と同義であり、それから逃れることは不可能なため、絶対的な催眠術師と言える。この言語をマスターしたのは妖精に拐わかされて色々いじられた結果らしい。
式の記憶を再生するために荒耶に呼ばれる。学園内では黄路美沙夜に擬似的な魔術を教え、また彼女を使って生徒達の記憶を奪っていた。式との戦いでは、式の肉体が『 』と繋がっているがために「統一言語」の効果が薄く左腕の「死の線」を突かれて腕を破壊されるも、式に倒されることはなく、「統一言語」の力で式が失っていた記憶を再生させた。この一件の数日後、ある女子生徒に腹部を刺され、その傷が元で命を落とす。
劇場版では式の記憶を再生した後は、姿を消してその後の詳細は不明。起源は「望郷」
黄路 美沙夜(おうじ みさや)
声 - 水樹奈々 / ‐
礼園女学院の生徒。生徒会長。鮮花の先輩。
養女ではあるが実家は巨大な資産家で、理事長は黄路家の婿養子に当たるため、学院内では絶大な発言力を持つ。後述の一件より、学院内を暗躍し、異常なできごとを起こす。
皐月から魔術を学んでおり、自らに妖精を憑かせることによって妖精を使役することができる。しかし、直接の魔術行使はできない(これが鮮花への敗北の原因となる)。また、その皐月に対して自分達は兄妹であると思い込んでおり、彼を慕う。ただし実際に兄妹であるかは不明。鮮花はこれに関して「美沙夜が妖精を使って皐月の記憶を奪った事により、皐月は自分の兄だと思い込んでいただけ」ではないかと推測している。
学生寮の火災の一件の後に、火災と佳織の死の真相を知って葉山英雄を問い詰めるが逆に暴力を振るわれ、抵抗した弾みで彼を死なせてしまう。そのことを皐月に相談し、葉山の遺体を使って妖精を生み出し、それらを使役するために皐月から魔術を教わる。その後、生徒の記憶を集めるなどしていたが、学院を調査していた鮮花と戦うことになり、敗北する。
劇場版では妖精を攻撃に使用して鮮花を翻弄するが、暴走する巨大な妖精を使役しきれずに気を失ってしまった。
橘 佳織 (たちばな かおり)
声 - 喜多村英梨 / ‐
礼園女学院の生徒。1年D組在籍。学生寮火災の際に焼死した。
担任の英雄の主導で援助交際をさせられ、それが原因で妊娠してしまう。キリスト教を信仰していたため、堕胎することもできず、最期は自分と同じように援助交際をさせられていたD組の生徒の罪を一身に背負い、自殺したと考えられている。
劇場版では、葉山秀雄が麻薬を扱っている所を目撃したために葉山に口封じとして薬漬けにされてしまい、それを苦にして自殺を図った。一時昏睡状況にあったが、事件後に意識を回復させた。
葉山 英雄 (はやま ひでお)
声 - 石上裕一 / ‐
礼園女学院の教師。1年D組担任。学生寮火災の後に行方不明になる。
兄は学院の理事長であり、資金繰りに困っていたところをコネで学院に赴任した。元来、不真面目な性格で、担当クラスの生徒たちに援助交際をさせて金儲けをしていた。橘佳織の一件後、学生寮に放火し、行方をくらます。
学生寮火災の後に、黄路とのトラブルで死亡。その後、その遺体は皐月によって黄路が操る妖精の体に使われていた。
劇場版では、麻薬に溺れており、その現場を橘佳織に見られてしまったために口封じとして橘を巻き添えにしてしまう。その後は黄路の前で事故死したかに思われていたが、実は麻薬による中毒死だった。また下の名前の漢字表記が「秀雄」に変更されている。
紺野 文緒 (こんの ふみお)
礼園女学院の生徒。1年D組のクラス委員長。竹を割ったようなさばさばした性格をしているのだが、クラスの異様ぶりには閉口している。
嘉島(かしま)、瑠璃堂(るりどう)
共に礼園女学院1年D組の生徒。幼い頃からの友人だったが、過去の事が記された手紙が届いてからは疑心暗鬼になり、互いに殺傷するという事件を起こしてしまう。
マザー・リーズバイフェ(Mother Riesbyfe)
礼園女学院の学長。生粋のキリスト教徒。1年D組の異常について、礼園のOGである蒼崎橙子に調査・解決を依頼する。
彼女と同名の人物(リーズバイフェ・ストリンドヴァリ)が『MELTY BLOOD』に登場する。さらに院長室には、リーズの武器である「正式外典ガマリエル」と思われる「バイオリンの形の盾」が置かれているが、関係性は不明。
古越 耕作
幹也・鮮花が子どもの頃、隣の家に住んでいた老人。二人が幼い頃に他界している。
鮮花は彼の死に涙を流さなかった幹也の言葉を聞いて、幹也の事を意識し始めたと認識している。
氏名は劇場版の設定から。

第七章「殺人考察(後)」の登場人物

白純 里緒(しらずみ りお)
声 - 保志総一朗 / ‐
黒桐幹也の高校時代の先輩。生徒会に所属していたが、やりたいことが見つかったと言う理由で中途退学する。
2年前の連続通り魔事件の真犯人で、宗蓮が式のために用意した3つの駒の一人。宗蓮曰く「死に逃避して自我する起源覚醒者」。荒耶の起源覚醒によって「食べる」と言う起源が覚醒し、殺した相手の死体を残らず喰らう殺人鬼となる。しかし、行き過ぎてかなり起源に寄ってしまったために、荒耶には見捨てられる。
式に想いを寄せており、2年前に告白したが「弱い人は嫌い」と拒否される。そこで暴力沙汰を起こすようになるが、誤って相手を殺害してしまう。死体の処理に困っていた際に荒耶と出会い、彼によって自らの起源を覚醒させられたことで死体を食べるようになる。それ以後は式を揺さぶるため、連続通り魔事件を起こしていた。
薬屋の息子だったこともありドラッグについて詳しく、その知識を用いて、起源覚醒者を増やすために自分の血液を混ぜたオリジナルの覚醒剤「ブラッド・チップ」を広めていた。また、2年前と同じく殺人を繰り返していたが、その時には式への執着のためか彼女を模した姿をしていた(髪と目の色も変わっており、髪は金髪で目は赤という容姿になっていた)。その後式と幹也を捕え、2人を仲間に引き入れようとしたが、幹也に拒否されたことで怒り、幹也を傷付ける。これがきっかけで式を激昂させ、彼女に殺された(彼女が犯した唯一の殺人)。
実は第二章ですでに登場しており、学校を退学する日に式と廊下で遭遇し「四回はやりすぎだ」と彼女に告げている。式は前後して幹也から名前も聞いているが、彼女はその名を女生徒のものと思い込み里緒と結びつけはしなかった。
蛍塚 音子 (ほたるづか おとこ)
声 - 甲斐田裕子 / -
街の裏に流通するドラッグの密売人。白純里緒が広めている覚醒剤を嫌悪しており、裏流通ではやや浮いた存在になっている。
世界観を同じくする『Fate/stay night』にゲスト出演、さらに『Fate/hollow ataraxia』ではサブキャラクターとして登場し、殆ど別設定のキャラになっている(TYPE-MOON公式より)。なお本作には名前は出て来ない。
式の祖父
声 - 大木民夫 / -
式が幼少の頃に他界しており、故人。両儀家の血によってたびたび精神に異常をきたしていたために、両儀邸内の奥座敷に半ば幽閉されていた。また既に殺人の経験があるらしい。幼い式に殺人の定義を教え、それが式の殺人に対する考え方の基盤となった。
両儀 要(りょうぎ かなめ)
式の実兄。陰陽の人格を形成するという両儀の性質が表れず、また妹の式にそれが完全な形で表れたために嫡子としては扱われていない。両儀邸の離れで暮らしているが、家督継承候補としての待遇は受けている。

「未来福音」の登場人物

瀬尾 静音(せお しずね)
声 - 井口裕香 / ‐
礼園女学園の生徒で鮮花のルームメイト。予測タイプ(回避可能な未来)の未来視の能力を持つ。
予想される未来を視る事ができるのだが、それを確定された未来だと認識しており、視えた未来に対してすぐに諦めてしまっていた。実家は北陸の有名な酒蔵で、幼い頃から家の手伝いをさせられていた。
幹也と出会い、未来視の能力を見つめ直す助言を与えられた。その際に幹也に憧れに近い感情を持つのだが、式の存在を知ってすぐに「失恋」する事になった。また幹也に「今のままだと、近いうちに死んじゃうかもしれません」と忠告しているが、幹也は巴にその事を話した際、「危険な目にあうけど、死ぬ事はない」と誤魔化している。
劇場版では第六章に登場している。
同じコンセプトのキャラクターに『月姫PLUS-DISC』で登場する瀬尾晶(せお あきら)がおり、苗字が同じである。また飼っている犬の名前はアキラである。
瓶倉 光溜 (かめくら みつる)
倉密 メルカ(くらみつ めるか)」と名乗る職業的爆弾魔。14歳の少年。決定された未来を視る事のできる測定タイプの未来視の能力を持つ。
依頼を受けて爆弾を設置、発動させる事で金銭を稼ぐ爆弾魔。未来視の能力を持つが、その未来を決定させるための方法をなぞるだけの人生を送ってきた。式に顔を見られたことにより、彼女の殺害に執着するが結局5回に渡って失敗する。最後は「式が対人地雷によって殺害される」という未来を式に一刀両断にされ、同時に視力(未来視の能力)も失う(本来、「直死の魔眼」は「未来」などという不確かなものを「殺す」ことはできないが、未来視により確定された「未来」は別となる)。
その後は空屋になった元伽藍の堂に住んで絵本作家として生計を立てていたが、10年後に式と再会し両儀家専属の興信所(探偵)を兼業する事になる。処女作『吸血鬼の涙』のファンである未那には好かれており、度々共に行動をするようになる。
原作者の小説『DDD』に同名の登場人物がいるが、コミックから自らの名前をアナグラムできる名前を引用しただけであり、関連性はない。
観布子の母(みふねのはは)
歓楽街の路地裏で占い業を営む、正真正銘の予言者。式や幹也が高校時代の時に女子生徒の間で話題になった占い師で、良くない未来の回避方法を教えており、その的中率は100%と言われていた。
老いと共に視力を失ったため他人の未来を視ることが出来なくなるが、その代わりに他人の過去が視えるようになってしまう。式や幹也だけではなく、光溜や織とも面識がある。
ナオミ
礼園女学院の生徒。瀬尾静音の友人。実家は香港で家族には弟が居る。常に学年トップの成績を保つことにより、素行の悪さを処罰されずに学園生活を謳歌していたが、鮮花が学校に編入してきた為、学年トップの座から陥落する。
シスター・アインバッハ
礼園女学院の学生寮寮長。厳格な校風に相応しい厳しい性格で、学生たちに「鬼の寮監」として恐れられている。
名前は「忘却録音」にも登場している。
宮月(みやづき)
礼園女学院の生徒。
世間を汚れたものと蔑視しており、友人の安藤に一緒に死のうとほのめかした。その後、安藤が死んでしまったため、ひどく後悔の念にとらわれている。自殺を図ろうとするが、藤乃に安藤の言葉で説得されて思いとどまる事になった。
安藤 由子(あんどう ゆうこ)
礼園女学院の生徒。巫条霧絵によって墜落死した一人。
実家に多額の負債があり、母の変死、一家離散など、もともと自殺してもおかしくない程追い詰められた状態にあった。しかし友人の宮月とは違って世界に希望を見出しており、宮月や藤乃にそのように説いていた。
両儀 未那(りょうぎ まな)
幹也と式の間に生まれた娘。織の事も知っており式を「お母様」、幹也を「パパ」、織を「お父様」と呼ぶ。
瓶倉の絵本の処女作のファンであり、その縁で彼を救う。その後も何かと光溜の下を好意で訪れている。母親の式を倒して、父親の幹也を自分のものにしようという野望を持っている。
なお作中の時系列から判断して、式と幹也の本格的な交際が始まった時期から彼女の誕生まで1年程度しかないため、読者からは「2人はいわゆるできちゃった結婚ではないのか」と見なされることがある。

以上で空の境界のストーリー(結末を含まない)、登場人物に関する核心部分の記述は終わりです。


書籍

国内

同人誌
空の境界(上)
発売日:2001年12月30日(コミックマーケット61)
店舗発売日:
収録章:
空の境界(下)
発売日:2001年12月30日(コミックマーケット61)
店舗発売日:
収録章:
空の境界 未来福音
発売日:2008年8月16日(コミックマーケット74)
店舗発売日:2008年9月15日
収録章:1998年8月、未来福音、1998年10月、1998年12月、未来福音・序
1998年8月・1998年10月・1998年12月は武内崇による漫画。
ノベルス・文庫の表紙イラスト5枚と映画ポスターのイラスト3枚が収録されている。
講談社ノベルス
空の境界 上
発売日:2004年6月8日ISBN 978-4-06-182361-7
収録章:1/俯瞰風景、2/殺人考察(前)、3/痛覚残留、4/伽藍の洞、境界式、5/矛盾螺旋
空の境界 下
発売日:2004年6月8日、ISBN 978-4-06-182362-4
収録章:5/矛盾螺旋、6/忘却録音、境界式、7/殺人考察(後)、空の境界
空の境界 限定愛蔵版
発売日:2004年4月1日ISBN 978-4-06-182373-0
5000部限定生産。本体の内容は通常版と同じだが、上下巻とも外面はシルバーに統一されており、紙縁にも銀塗装がされているため四方どの角度から見ても銀色に見える演出が施されている。
付属の小冊子には奈須きのこのあとがきと設定用語集が収録されている。外装は本編二冊と同じシルバー外装。
専用ケースとして小冊子と上下巻が収納できるリボンつきの小形の棚と、帯状の外箱が付属している。
講談社文庫(な 71-1、な 71-2、な 71-3)
空の境界 上(1)
発売日:2007年11月15日ISBN 978-4-06-275892-5
収録章:1/俯瞰風景、2/殺人考察(前)、3/痛覚残留
空の境界 中(2)
発売日:2007年12月14日ISBN 978-4-06-275920-5
収録章:4/伽藍の洞、境界式、5/矛盾螺旋
空の境界 下(3)
発売日:2008年1月16日ISBN 978-4-06-275946-5
収録章:6/忘却録音、境界式、7/殺人考察(後)、空の境界

翻訳

英語
  • The Garden of Sinners: A View from Above
「1/俯瞰風景」の翻訳。
FAUST 1(アメリカ版ファウスト)(Del Rey、2008年8月19日、ISBN 978-0-34-550206-3)に収録。
中国語(繁体字)
台湾の出版社 傑克魔豆から刊行された。
韓国語
韓国の出版社 鶴山文化社のライトノベルレーベルであるエクストリームノベルから刊行された。

劇場版

『空の境界』初の映像化を果たしたアニメ映画作品。声優は中田譲治を除きドラマCD版と変更されている。

原作と同様に、劇場版も全七章で構成されている。当初、東京都にあるテアトル新宿にてレイトショーだけで公開されていたが、連日立ち見が出る程の集客となったため、モーニングショー枠などを設定し上映回数を増やし、テアトルダイヤ等全国8ヶ所の映画館でも上映されることとなった[6]。公開初日の舞台挨拶やオールナイト等のイベントも催された。

第一章から第五章までの観客動員数は18万3千人を達成しており、累計興行は2億円を記録している[7][8]。またDVDは『第四章 伽藍の洞』までの4作で、シリーズ累計総出荷枚数40万枚を突破、これらはテアトル系単館アニメ作品歴代興行収入の新記録である[7][8]。第六章までのDVDの累計売上は63万本を超える[9]

本編前に「劇場観賞マナーCM」(後述)が、本編後にはテレビアニメのように次章予告が挿入されている。

一章60分ほどの尺で構成されており鑑賞料金もその分価格が低く設定されているが、第五章と第七章は尺が長く、その上映時間の長さから鑑賞料金は通常料金と同じになっている。

原作の内容をほぼ忠実(一部にアレンジあり)に描いている為、残虐シーンやグロテスクな描写が非常に多いが、映倫の基準に合わせているため、年齢制限の類は全く存在していない(DVDも同様)。

公開リスト

  • 第一章 俯瞰風景 - 2007年12月1日公開
  • 第二章 殺人考察(前) - 2007年12月29日公開
  • 第三章 痛覚残留 - 2008年2月9日公開
  • 第四章 伽藍の洞 - 2008年5月24日公開
  • 第五章 矛盾螺旋 - 2008年8月16日公開
  • 第六章 忘却録音 - 2008年12月20日公開
  • 第七章 殺人考察(後) - 2009年8月8日公開

スタッフ

キャスト

第一章
第二章
第三章
第四章
  • 両儀式:坂本真綾
  • 黒桐幹也:鈴村健一
  • 蒼崎橙子:本田貴子
  • 医師:石上裕一
  • 看護婦A:井口裕香
  • 看護婦B:吉田聖子
  • 看護婦C:阿久津加菜
  • 巫条霧絵:田中理恵
  • 浅上藤乃:能登麻美子
  • 白純里緒:保志総一朗
  • 荒耶宗蓮:中田譲治


第五章
第六章
  • 両儀式:坂本真綾
  • 黒桐幹也:鈴村健一
  • 蒼崎橙子:本田貴子
  • 黒桐鮮花:藤村歩
  • 黄路美沙夜:水樹奈々
  • 玄霧皐月:置鮎龍太郎
  • 黒桐幹也(幼少期):喜多村英梨
  • 葉山秀雄:石上裕一
  • 瀬尾静音:井口裕香
  • シスター:鍋井まき子
  • 白純里緒:保志総一朗
  • 荒耶宗蓮:中田譲治
第七章
  • 両儀式:坂本真綾
  • 黒桐幹也:鈴村健一
  • 蒼崎橙子:本田貴子
  • 黒桐鮮花:藤村歩
  • 秋巳大輔:東地宏樹
  • 玄霧皐月:置鮎龍太郎
  • 学人:高橋研二
  • 売人:甲斐田裕子
  • 祖父:大木民夫
  • アナウンサー:井上剛
  • TVレポーター:たなか久美
  • 鑑識:坂巻学
  • 白純里緒:保志総一朗
  • 荒耶宗蓮:中田譲治


主題歌

第一章 俯瞰風景 エンディングテーマ
『oblivious』
歌:Kalafina、作詞・作曲:梶浦由記
第二章 殺人考察(前) エンディングテーマ
『君が光に変えて行く』
歌:Kalafina、作詞・作曲:梶浦由記
第三章 痛覚残留 エンディングテーマ
『傷跡』
歌:Kalafina、作詞・作曲:梶浦由記
第四章 伽藍の洞 エンディングテーマ
『ARIA』
歌:Kalafina、作詞・作曲:梶浦由記
第五章 矛盾螺旋 エンディングテーマ
『sprinter』
歌:Kalafina、作詞・作曲:梶浦由記
第六章 忘却録音 エンディングテーマ
『fairytale』
歌:Kalafina、作詞・梶浦由記、奈須きのこ 作曲:梶浦由記
第七章 殺人考察(後) エンディングテーマ
『seventh heaven』
歌:Kalafina、作詞・作曲:梶浦由記

劇場鑑賞マナーCM

上映前に行われる劇場鑑賞マナーCMはクレイアニメーションで作られており、デフォルメ化されたキャラクター達による掛け合い漫才のような内容となっている。本編のキャラクターの他、ネコアルクや「Fate/stay night」のキャラクターが登場している。映像特典としてDVDに収録されている。

Remix

最終章である第七章公開を前に、リミックス作品として「空の境界 Remix -Gate of seventh heaven-」が2009年3月14日から公開された。内容は第一章から第六章までのリミックス総集編で、各章の主題歌[注 6]に乗せて要所を抜き出して編集されている。また章順ではなく時間軸順に編成されており、第二章からはじまり、第四章、第三章、第一章、第五章、第六章と続く。基本的には既存のシーンのリミックスだが、一部新規のシーンも追加されている。劇場観賞マナーCMはないが、第六章のものとは別に新規の第七章の次章予告が挿入されている。

キャスト
  • 両儀式:坂本真綾
  • 黒桐幹也:鈴村健一
  • 蒼崎橙子:本田貴子
  • 黒桐鮮花:藤村歩
  • 浅上藤乃:能登麻美子
  • 巫条霧絵:田中理恵
  • 臙条巴:柿原徹也
  • 藤乃の母:新田万紀子
  • 巴の父:山野井仁
  • コルネリウス・アルバ:遊佐浩二
  • 黄路美沙夜:水樹奈々
  • 橘佳織:喜多村英梨
  • 玄霧皐月:置鮎龍太郎
  • 教授:岩崎ひろし
  • 荒耶宗蓮:中田譲治
挿入歌
  • 『overture』 - 歌:Kalafina、作詞・作曲:梶浦由記
  • 『君が光に変えて行く』 - 歌:Kalafina、作詞・作曲:梶浦由記
  • 『ARIA』 - 歌:Kalafina、作詞・作曲:梶浦由記
  • 『傷跡』 - 歌:Kalafina、作詞・作曲:梶浦由記
  • 『interlude 01』 - 歌:Kalafina、作詞・作曲:梶浦由記
  • 『sprinter』 - 歌:Kalafina、作詞・作曲:梶浦由記
  • 『fairytale』 - 歌:Kalafina、作詞・梶浦由記、奈須きのこ 作曲:梶浦由記
  • 『oblivious』 - 歌:Kalafina、作詞・作曲:梶浦由記

ラジオ

関連商品

CD

oblivious』(2008年1月23日発売)
第一章から第三章の主題歌を収録。
初回生産限定盤も同時発売。
Re/oblivious』(2008年4月23日発売)
『oblivious』のリミックスミニアルバム。
完全生産限定盤。
sprinter/ARIA』(2008年7年30日発売)
第四章と第五章の主題歌とobliviousのインストゥルメンタルを収録。
初回生産限定盤も同時発売。
fairytale』(2008年12年24日発売)
第六章の主題歌とsprinterのインストゥルメンタルを収録。
初回生産限定盤も同時発売。
Seventh Heaven』(2009年3年4日発売)
第一章から第七章の主題歌を収録。
豪華な初回仕様の期間生産限定盤も同時発売。

DVD

劇場版「空の境界」俯瞰風景
発売日:2008年5月21日(ANZB-2881)
完全生産限定版
2枚組(本編DVD+第一章サウンドトラックCD)
武内崇描き下ろしBOX
第一章パンフレット縮刷版/特製ピンナップ/オリジナル特製小冊子封入
劇場版「空の境界」殺人考察(前)
発売日:2008年6月25日(ANZB-2883)
完全生産限定版
2枚組(本編DVD+第二章サウンドトラックCD)
武内崇描き下ろしBOX
第二章パンフレット縮刷版/特製ピンナップ/オリジナル特製小冊子封入
劇場版「空の境界」痛覚残留
発売日:2008年7月23日(ANZB-2885)
完全生産限定版
2枚組(本編DVD+第三章サウンドトラックCD)
武内崇描き下ろしBOX
第三章パンフレット縮刷版/特製ピンナップ/オリジナル特製小冊子封入
劇場版「空の境界」伽藍の洞
発売日:2008年12月17日(ANZB-2887)
完全生産限定版
2枚組(本編DVD+第四章サウンドトラックCD)
武内崇描き下ろしBOX
第四章パンフレット縮刷版/特製ピンナップ/オリジナル特製小冊子封入
劇場版「空の境界」矛盾螺旋
発売日:2009年1月28日(ANZB-2889)
完全生産限定版
2枚組(本編DVD+第五章サウンドトラックCD)
武内崇描き下ろしBOX
第五章パンフレット縮刷版/特製ピンナップ/オリジナル特製小冊子封入
劇場版「空の境界」忘却録音
発売日:2009年7月29日(ANZB-2891)
完全生産限定版
2枚組(本編DVD+第六章サウンドトラックCD)
武内崇描き下ろしBOX
第六章パンフレット縮刷版/特製ピンナップ/オリジナル特製小冊子封入
劇場版「空の境界」殺人考察(後)
発売日:2009年12月9日(ANZB-2893)
完全生産限定版
2枚組(本編DVD+第七章サウンドトラックCD)
武内崇描き下ろしBOX
第七章パンフレット縮刷版/特製ピンナップ/オリジナル特製小冊子封入

アニメイトゲーマーズとらのあなソフマップの四社限定で、それぞれ第一章〜第三章、第四章〜第五章、第六章DVD(限定版)連続購入特典でufotable描き下ろしテレホンカードが入手可能(先着)。各チェーンによって絵柄は異なる。

オリコン週間DVD総合チャート第1位
2009年12月21日
前作:
ダニエル・ラドクリフ
ハリー・ポッターと謎のプリンス 特別版
アニメーション
劇場版 空の境界 殺人考察(後) (完全生産限定版)
次作:
KAT-TUN
KAT-TUN LIVE Break the Records

画コンテ集

講談社BOX

劇場版 空の境界 第一章「俯瞰風景」画コンテ集
発売日:
ISBN 978-4-06-283671-5
劇場版 空の境界 第二章「殺人考察(前)」画コンテ集
発売日:
ISBN 978-4-06-283672-2
劇場版 空の境界 第三章「痛覚残留」画コンテ集
発売日:
ISBN 978-4-06-283675-3
劇場版 空の境界 第四章「伽藍の洞」画コンテ集
発売日:
ISBN 978-4-06-283691-3
劇場版 空の境界 第五章「矛盾螺旋」画コンテ集
発売日:
ISBN 978-4-06-283693-7

脚注

注釈

  1. ^ a b 主要制作スタッフの近藤光、あおきえい、野中卓也、小舩井充、平尾隆之の集合ネーム。
  2. ^ 浅上藤乃の「歪曲」の力や、荒耶宗蓮の結界すら視認し、「殺す」ことが可能で、果ては倉密メルカの能力で確定化された「未来」でさえも一刀両断してみせた。ただし、「形のないものは見えにくい」と自ら発言している。
  3. ^ ただし、己の能力ゆえに命の大切さを無意識の内に知っており、衝動はあっても無差別な殺戮を行うことはない。これを行った浅上藤乃には怒りすら感じていた。
  4. ^ 学問では習得の不可能な、一代限りの希有な才能に対し、魔術協会がサンプルとして保護する旨を伝える令状。封印指定された術者は保護の名の下に一生涯幽閉されることになる。魔術師にとっての最高の誉れであり、同時に最大の災難。大半の者は逃亡することを選ぶ。
  5. ^ Heaven's Feelのトゥルーエンドで、使い物にならなくなった衛宮士郎の身体の代わりを作ったのが、その封印指定を受けた人形師である。
  6. ^ ただし第一章分は「oblivious」ではなく、「interlude 01」。「oblivious」は全章終了後に流れる。

出典

  1. ^ 渡辺圭 (2006年12月28日). “空の境界:劇場版アニメ化決定”. 毎日新聞社. 2008年3月2日閲覧。
  2. ^ 劇場版では4月19日と記載されている。
  3. ^ a b c 「空の境界」限定愛蔵版付属の空の境界用語集より
  4. ^ 劇場版「空の境界」第三章「痛覚残留」のパンフレット
  5. ^ 月姫読本プラスピリオド
  6. ^ 立山夏行 (2008年1月17日). “空の境界:第一章の全上映で満員札止めを記録 テアトル新宿”. 毎日新聞社. 2008年3月2日閲覧。
  7. ^ a b 『空の境界』テアトル系単館アニメ作品歴代興行収入記録 第1位達成&DVD出荷総数40万枚突破!! プレセペ 2008年12月27日
  8. ^ a b 株式会社アニプレックス プレスリリース 2008年12月22日
  9. ^ 月刊ビジネスアスキー』2009年12月号、47頁

外部リンク