ヒ化ガリウム
ヒ化ガリウム(ヒかガリウム、gallium arsenide)はガリウムのヒ化物である。ガリウムヒ素とも呼ばれる。IUPAC名はヒ化ガリウム(III)。
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物質名 | |
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gallanylidynearsane | |
識別情報 | |
3D model (JSmol)
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ECHA InfoCard | 100.013.741 |
PubChem CID
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RTECS number |
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CompTox Dashboard (EPA)
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性質 | |
GaAs | |
モル質量 | 144.645 g/mol |
外観 | 灰色結晶 |
密度 | 5.316 g/cm3[1] |
融点 | 1238 ℃ (1511 K) |
< 0.1 g/100 mL (20 ℃) | |
バンドギャップ | 1.424 eV (300 K) |
熱伝導率 | 0.55 W/(cm·K) (300 K) |
屈折率 (nD) | 3.0 - 5.0[2] |
構造 | |
閃亜鉛鉱型 | |
T2d-F-43m | |
四面体形 | |
直線形 | |
危険性 | |
NFPA 704(ファイア・ダイアモンド) | |
特記無き場合、データは標準状態 (25 °C [77 °F], 100 kPa) におけるものである。
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性質
常温で安定な結晶構造は閃亜鉛鉱型(ジンクブレンド型)構造。銀色の金属状化合物で、組成式GaAs。式量144.64、融点1238°C、比重5.310。砒素化合物の中では毒性は弱いが、酸や蒸気との反応で有毒なアルシンを発生させる。半導体材料としての性質は、1.43 eV のバンドギャップを持つIII-V族半導体であり、電子移動度は 0.85 m2/Vs、ホール移動度は 0.04 m2/Vs である。
特徴
一般的な半導体材料であるシリコンと比較して、電子移動度が高い。 また、アンドープ基板が非常に高抵抗(シート抵抗値が数 MΩ/□)を示す。 この基板を半絶縁性基板と呼ぶ。この基板は、現在のSOI技術によるFETと同じく、基板へのリーク電流や寄生容量を低減する。
これらの特徴は、高速動作、低消費電力の半導体素子の作成に有利に働いている。 その一方で、この半絶縁性の原因であるミッドギャップ近傍の準位は数msから数sの遅い時定数の応答を引き起こし、不安定動作の原因となっている。
用途
前記の利点を生かして、ヘテロ構造を使用した、HEMTやHBT等の高速通信用の半導体素子の材料として用いられる。 また、直接遷移形の材料であるため、赤色・赤外光の発光ダイオードに広く用いられており、半導体レーザーにも使用されている。
毒性
ガリウムヒ素は、IARC発がん性リスク一覧でGroup1に分類され、発ガン性があると認められている。ガリウムヒ素を含有する半導体を廃棄する際には、人体に摂取されぬよう適切に処理しなくてはならない。(粉砕・破砕などは、ガリウムヒ素が飛び散るおそれがあるため、行ってはならない。)
脚注
- ^ P. Patnaik (2003). Handbook of Inorganic Chemicals. McGraw-Hill. p. 310. ISBN 0070494398
- ^ “Handbook on Semiconductor Properties”. p. 28. 2010年4月20日閲覧。