御剣怜侍
概要
逆転裁判シリーズの初代主人公・成歩堂龍一(なるほどう りゅういち)のライバルにして親友。『4』では従来の登場人物のほとんどが一新され、登場していないが成歩堂みぬきや宝月茜が御剣のことを連想させる発言をしている。
名前の由来は侍のような張り詰めた雰囲気と頭の回転が速く(怜悧であり)切れ味が良い(御剣→切れ味の良い刀剣)ことから。英語版の名前は"Miles Edgeworth"(Edge=“刃” worth=“値打ちのある” 尚、この姓は実在する)。
開発当初の設定では、髪型はオールバックで肌は蒼白、赤く鋭い目をした40代の中年検事だった。メインキャラクターのデザインを担当したスエカネクミコによると「ライバルと言うより敵キャラ」「こんなオジサンと戦えと言われても、燃えない」という理由でデザインは一新され、成歩堂と同い年という設定に変更。後にその没デザインは『1』に登場する狩魔豪に流用されている。
逆転裁判シリーズ初のスピンオフ作品、逆転検事(以下『検事』)では主役を務めている。
ドラマCD逆転検事2~宇宙からの逆転!?~では竹本英史が声をあてている。
担当した声優・俳優
- 岩元辰郎(シリーズ全作品の一部サブキャラクター及び『2』~『3』・『検事』のメインキャラクターデザイン担当)(出演ゲーム全作品)
- 竹本英史(TGS特別法廷、『3』・『検事』プロモーション映像)
- 七帆ひかる(舞台版「逆転裁判 蘇る真実」)
- 悠未ひろ(舞台版「逆転裁判2 蘇る真実、再び…」)
注意:以降の記述には物語・作品・登場人物に関するネタバレが含まれます。免責事項もお読みください。
人物
高名な検事・狩魔豪(かるま ごう)に師事し、弱冠20歳で検事になる。それ以来、無罪判決を出した事の無かった天才検事。但し、証拠の捏造や証言の操作などの噂[1]が無数にある。
生年月日などは不明だが、小学校の同級生だった成歩堂が1992年度(学校年度)生まれであり、御剣も同じと思われる。
家族構成
家族については父親しか明らかになっていない。父・御剣信(みつるぎ しん)は弁護士で、彼と死別した「DL6号事件」が『1』の物語に深く関わってくる。
なお、血縁上・法律上の家族ではないが、師を供にする狩魔冥とは義理の兄妹類似の関係がある。年齢は御剣の方が上だが、彼女から見れば「弟のようなもの」とのこと。
性格
一人称は「私」で、「なのだよ」「たまえ」といったやや古風な喋り方が特徴で腕組をした時に右手の人差し指を動かす癖がある。登場当初は一部に後述するようなギャグ要素があるものの、非常に冷酷かつ頑迷で隙がないシリアスな人物として描かれていた。しかし『1』の発売後カプコン発行・双葉社発売の攻略本「逆転裁判真相解明マニュアル」で「トノサマンのファン」という内容の漫画が描かれてから、ディレクターの巧舟が「隙があった方がかわいい」と思い始め、スタッフの中での彼に対するイメージが少しずつ崩れていく。
その為、GBA版『2』以降の作品では性格が二面性を帯びるようになり、特に天然なところを見せたりと、少しずつコミカルな面の方が目立っていくようになる。しかし『1』における特徴は衰える事なく、更に昇華されたものとなっている。検事としては、法廷において事実を究明する事で浮かぶ真実を、明らかにする姿勢を強めている。『2』以降の御剣はこのスタンスを一貫して通しており、『3』で特別弁護人として法廷に立った際には、自分と互角に競える検事として狩魔冥を選んだ。法廷に立つことは「命を懸けている」とも言っており、普段の御剣を知っている者からは「法廷に立つと性格が変わる」「普段の10倍は激しくなる」と言われたことがある。
基本はサブキャラクターであるため彼の思考はあまり語られないが、『3』第5話では操作キャラクターとなったことで、彼がその場で心の中で思っていることを見ることが出来た。『3』第5話では主に単独行動の際にボケることがあるが、基本的に矢張や糸鋸のボケに対してツッコミを入れることが多い。『検事』では一貫して操作キャラクターであり、やはり周囲の人物に対するツッコミが多い。
劇中では感情をうまく表現できず、眉間にしわを寄せるような険しい表情や困った表情を作ったり、卑屈になったりすることが多い。また、失態を見せると卑屈になり、自嘲しながら成歩堂に「笑えよ!」と叫ぶ場面も見られる(しかし、成歩堂によると「素直じゃないので、笑ったら怒り狂うか泣き出す」とのこと)。また、証人などに煮え湯を飲まされると、白目を剥きながら唇を震わせるといった表情を見せる。『3』第5話での発言やTGS特別法廷などでの様子から、屈辱を受けると割としつこく根に持つタイプだとも考えられる。
加えて、何故か物の名前を間違えて憶えてしまう事が多い。例えば、「サルマゲどん」を「サルマゲくん」と呼んだり、サイコ・ロックを「さいころ錠」と言う等。また、堀田クリニックの入院患者の堀田院長(自称)を本物の院長と誤解していた。
漫画版では成歩堂に対しややキザな振る舞いをしたり、成歩堂をからかったりと、ゲーム版とはやや異なったキャラクターとして描かれている。スタンス的には『2』以降に近く、漫画版第5話では最終的に彼が真相を究明している。
また、『検事』第2話・第3話で女性キャラクターへの反応を見る限り、恋愛関係に関しては鈍い事この上ない。
来歴
幼い頃から弁護士の父を尊敬して憧れていた。小学4年生の頃、自分の給食費が盗まれて、御剣のクラスで「学級裁判」が開廷される。その犯人として成歩堂が疑われたが、当時すでに弁護士になる事を望んでいた御剣は成歩堂の有罪を立証する証拠がなかった為、無実を主張する成歩堂を信じて、自ら弁護した。この時、矢張政志も弁護してくれたお陰で成歩堂は無罪となった。それ以来、その2人と親友になり、彼等にはよく将来の夢を語り聞かせていた。ところが、御剣は『3』第5話の矢張の人物ファイルで「友人になったキッカケはおぼえていない。」と言って、完全に忘れてしまっている[2]。
弁護士を目指していた御剣だったが、9歳の時に経験した「DL6号事件」が原因となり、犯罪者と弁護士への強い憎しみが植え付けられたため、かつての夢とは正反対の検事という職業を選んだ(ただし『1』第4話や『検事』第4話では若干の未練があることも伺える)。20歳という国内での史上最年少での就任を果たす。その半年後に綾里千尋の前に大苦戦して、思わぬ結末を迎えてしまう(『3』第4話)。その後は成歩堂と再会するまでの4年間、合法か疑わしいほどの非常に強引な手法を用いながらも、有罪判決を取り続けていた。
DL6号事件で味わった絶望から真実を求めることを諦めてしまっていた御剣だが、弁護士になった成歩堂と再会し、被告人の無実が明らかになり、真犯人が暴かれるのを目の当たりにすることで少しずつ心境が変化してゆく。その後、ある事件で自身が被告人となり、成歩堂により救われたことでその心境はさらに大きく変化した。
だが、2か月後に起こったある事件(『蘇る』第5話)によりショックを受け失踪する。そして、検事とは何か、裁判とは何かを深く考え、1年後(『2』第4話)に再び法廷に立つ。
その後は理想の審理を求めるために海外研修をしていたが、『3』第5話で矢張から成歩堂の事故を聞き緊急帰国。事故によって出廷不能になった成歩堂の頼みで、特別弁護人として法廷に立つ。
事件の顛末を見届けた後に再度出国、海外研修を再開し、1ヶ月後に帰国した(『検事』)。
容姿
身長178cm、体重不明。体格は中肉。ちなみに身長は声を担当した岩元と同じである(こっそり同じにしたらしい)。
髪型は前髪が大体真ん中分けで、後ろ髪が必ず1箇所はねている。色白で端正な顔立ちをしており、劇中では成歩堂よりも圧倒的に女性受けが良い。前述の通り眉間にしわを寄せていることが多く、「なるほど逆転裁判!」や『検事』では「ヒビ」と表現されている。
服装はいつも黒いウェストコートとワインレッドのスーツで[3]、首には今風の普通のネクタイではなく、中世ヨーロッパの貴族のような白いクラバット(フリルのようなもの、ジャボ)を巻いている。この奇抜な服装は狩魔豪直伝のファッションらしく、本人も誇りに思っている一方で、その派手さをからかわれることもある。ファンブックのスエカネの発言によると「適当に描いた」とのことで、どのような構造になっているか把握していないらしい。劇中やファンブックではこのクラバットは「ヒラヒラ」「フリフリ」と呼ばれ、彼の特徴のひとつとなっており、『検事』のプロモーション映像の最後でもこれがやや強調されていた。スペアも常に携帯しており、女性からは「ヒラヒラした検事」などと呼ばれることが多い。漫画版『検事』ではこの服装を名探偵の仮装と勘違いされている。
検事バッジはつけていない[4]。これは巧によると「あの世界ではつけないのがオシャレ」とのことで、『蘇る』で糸鋸の口からこのことが語られている。『検事』では、師匠である狩魔豪からそのように教えられ、いつもポケットの中に入れて持ち歩いていることが判明した。
好物・苦手な物
好物については特にゲーム中で記述されていない。『蘇る』では紅茶を飲んでおり、執務室に紅茶のセットが置かれている。糸鋸は『2』で「御剣検事はサザエのつぼ焼きが大好きッス」と発言している(恐らくエスカルゴの事)。また漫画版では「おやつ」と称して「トノサマンジュウ」を取り出すシーンがある。その他にも、ソフトクリームを2つ食べるなど、甘党を思わせる描写もある。
DL6号事件の影響で地震が苦手であり、地震が起こると床にうずくまって震えたり、時には失神や呼吸困難に陥ったりする等、成歩堂や糸鋸に心配されるほど深刻な状況である。エレベーターもDL6号事件の影響で好ましくは無い様で暖炉も「見たくない」と発言している(後述)。『検事』ではエアポケットでも気絶している。
幼馴染の成歩堂とはそれなりに気が合うが、矢張に関してはあまり話したがらない。またオバチャンから異常なほど好かれているが、法廷での彼女のいい加減な証言と態度には彼も手に負えない様子であった。
趣味・特技
成歩堂によると小学生だった頃はゴルフや論文などで多くの賞を取っていたらしく、スポーツは万能だと思われる。また、運転免許も所持しており、『蘇る』第5話では真っ赤なスポーツカーを乗り回していた(このスポーツカーは事件の中で壊された)。
『蘇る』では彼のサバイバルナイフが証拠品として登場しているが、アウトドア等の趣味があるのかは定かではない。
前述したようにある攻略本で「トノサマンのファン」という内容の漫画が書かれており、執務室にはトノサマンのフィギュアが置かれている。逆転裁判4限定版の「逆転裁判辞典」にて「実はトノサマンのファン」という事が確定した。なお、この設定が公式となる前の『1』第3話で、トノサマンのスーツアクターであり被告人の荷星に「いつも、テレビでごカツヤクをハイケンしております。」と発言しておりツッコまれる場面があった。『検事』ではこの設定が至る所で使われているが、この趣味は周囲には隠しているようである。また漫画版ではヒーローショーに出演しているヒロインのアクションに詳しいなど、トノサマンに限らず子供向け番組が好きというイメージがある。
執務室にはチェスボードが置かれており、なぜか青のポーン(歩兵)を赤のナイト(剣士)が追い詰めている。成歩堂は「気のせい」だと思っているが、真意は定かではない。『検事』でも飛行機の彼の席にチェスボードが置かれているがやはりナイトがポーンを追い詰めている。チェスの腕はそれなりに自信があるらしい。
前述のスポーツカーや紅茶のセットなど身の回りの物の中でも自分の趣味に関連した物には特に金をかけていることが多い。『検事』での彼の発言によると紅茶のセットは特注品で糸鋸刑事の1カ月分の給料よりも高く、漫画版では100グラム2万円以上のスペシャルティーの試飲会に参加しようとしていた。
さらに非常に頭脳明晰で一見何事も完璧にこなすように見えるが、実は指先は非常に不器用で、幼少期は折鶴すらもまともに折る事ができなかった。その話題になると、その後悔しくて練習して折れるようになった事を強調していた。ところが、本人曰く「5ミリの狂いも無く」であり、実際はどうなのか不明。
『1』では、証言の前の証人から名前を聞き出す段階で証人がボケるばかりで名前を言ってくれず、成歩堂に「いいコンビだ」「証人から名前を聞くのが苦手みたいだな」と言われた。
『検事』ではピアノとフルートが得意と発言している。
体質
『2』での「春風のどこがサワヤカなものか」という発言から花粉症ではないかと思われる。そのほかには持病らしきものは見られない。地震に対する恐怖も恐怖症というよりは自分の精神面に関する問題といった面が強い。
生活・仕事
実際の法廷に立つ前から“検察局始まって以来の天才検事”と呼ばれていた。御剣が検事になったのと近い時期に刑事になった縁からか、糸鋸圭介(いとのこぎり けいすけ)刑事を長らく直属の部下としている。特に有能という評価もない無能の糸鋸刑事をなぜ自分の側に置き続けているのかは明らかになっていない。ちなみに糸鋸刑事の失敗に際して「来月の給与査定を楽しみにしておくことだ」というのはシリーズ定番のセリフとなっている。
また、糸鋸刑事が御剣を信頼している理由については、巧曰く「きっと過去に、何か決定的に御剣を信頼するキッカケのようなものがあったのでしょう。」と言っており、『検事』第4話にてそれが明らかとなった。「被告人を有罪にするには、警察との強い信頼関係が必要」と思っており、例え糸鋸刑事が無能でも警察を強く信頼している。
彼の給与の額などは劇中で明確になっていないが、登場人物の台詞や所持している物品を見る限り、世間一般の基準に照らすならばかなり裕福な部類のようである。ただし本人はあまり満足していない様子。成歩堂によると子どものころの家庭は裕福だったらしい。また、オバチャンに証言をさせるために買ったガムの請求書を成歩堂に宛てる等、若干せこい一面も見られる。
TGS特別法廷
スタッフから非常に弄ばれており、ギャグ要素が強いキャラクターになっている。
2005年は、「ピンクカラーのゲームボーイアドバンスSP」をズボンの尻ポケットに入れて持ち歩いているが、成歩堂には取扱説明書の記述から「違法な取り扱い」と指摘され、さらにニンテンドーDSを所持しておらずそのことで有罪になった。自分が所持していないことはおろか、DSの存在すら知らず、真宵や裁判長、更には安月給の糸鋸や傍聴人まで所持していたことに孤独感を味わった。
2006年では、シリーズがいったん終了したことからニュースキャスターに転職しており、突然法廷に呼び出されたため準備ができておらず、成歩堂の「まるっきり準備できていません」という発言に対し「似たり寄ったり」と返した。その後オバチャンの証言で聞いただけでの容姿の特徴は王泥喜と同じだったため、『4』の主人公に抜擢されたと思われたが、成歩堂に年齢の矛盾を指摘された。なお、主役には興味が無いと主張したものの、成歩堂の指摘によって酷い屈辱を受け不機嫌になった。
2008年には、上記の屈辱により、誰かが仕込んだ罠と警戒していた。その為、本格的に主役には興味がないよう見せていたが、オバチャンの盗撮カメラには指を突きつける練習をしている場面があった。
その他
父を失ったDL6号事件が彼に与えた影響は大きく、事件が解決されるまで、事件の事で15年に渡って毎夜悪夢を見ていた。また、事件が地震による停電で止まったエレベーター内で発生した為、トラウマで酷く地震を恐れるようになってしまっている。少年期の彼の家には暖炉があったらしく、『2』で暖炉を目にした時に子供の頃を思い出すのがイヤなので「見たくない」と言っている(『検事』では暖炉を見ても特にリアクションをしないが、相変わらずエレベーターは苦手としている)。
『2』以降の彼には「大いなる復活」という専用BGMが用意されており、『検事』ではこれのアレンジが多用されている。
関連人物
御剣怜侍に対する呼称
一人称は「私」。以下にあげるもの以外に様々な呼称があるがここではメインキャラクターから頻繁に呼ばれたものを記す。
- 御剣検事…糸鋸刑事、法廷での呼称。
- 御剣検事殿…糸鋸刑事、部下。
- 御剣…成歩堂、矢張、狩魔豪。
- みつるぎ検事…真宵。
- みつるぎ検事さん…春美。
- 御剣怜侍…狩魔冥。
- レイジ…狩魔冥。
- ミッちゃん…オバチャン(本名・大場カオル)に呼ばれているが御剣は激しく嫌がっている。
- ミツルギさん…『検事』で美雲から。
- 検事さん…『検事』で狼士龍から