2011年バーレーン騒乱
2011年バーレーン騒乱(2011ねんバーレーンそうらん)は、2010年-2011年アラブ世界騒乱を起因とするバーレーンで2011年に発生した、より大きな政治的自由と人権の尊重を求めた大規模な反政府デモとそれに付随する事件の総称である[1]。
| 2011年バーレーン騒乱 | |
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ファイル:2011 Bahraini protests.JPG バーレーンの反政府デモ | |
| 目的 | ハリーファ内閣の交代・王政の打倒 |
| 発生現場 |
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| 期間 | 2011年2月14日 – 現在進行中 |
| 死者 | 4人 |
| 負傷者 | 50人以上 |
反政府デモ
2月4日、数百人のバーレーン市民がエジプトの反政府デモに呼応し、首都マナマにあるエジプト大使館前で集会を行った[2]。石油資源に恵まれたペルシア湾岸諸国では今回初となる動きだった[2]。その後、アル・ジャジーラにより、2月14日に反政府デモが計画されていることが報道される[3]。2月14日はバーレーン国民行動憲章草案が国民投票によって採択された十周年を記念する日として選ばれた[4]。デモの背景には、国権を握る王家ハリファ家のイスラム教スンニ派と、国民の多数派を占めるシーア派の対立がある。シーア派は就職差別などを受けており、今回のデモ参加者もシーア派住民が主体で、政府に対し、雇用創出や賃金の引き上げ、在任40年に及ぶハリーファ首相の退陣、議院内閣制の導入などを求めている[5][6]。チュニジアやエジプトと同様、バーレーンでも若者たちの間でFacebookやTwitterを使用した、反政府デモへの参加の呼びかけが行われた[5]。
2月11日、ハマド国王は1世帯当たり1000バーレーン・ディナールの現金支給を決定。支給の表向きの理由は、国民行動憲章の10周年を記念してというものだった[7][8]。
2月12日、人権活動団体「Bahrain Center for Human Rights」は国王に書面で人権運動家など450人以上の受刑者の釈放を要求。ハマド国王は要求に部分的に譲歩し、若年の受刑者を社会復帰させる命令を下した[9][10]。国王は13日には国内の反対勢力シーア派の要求に応じ、メディア規制の緩和を約束[10]。
2月14日
2月14日、首都マナーマ東のディヤ村で反政府デモが行われ、警察がデモ隊を排除した[5]。その際、男性一人が負傷、搬送先の病院で14日夜に死亡したことが確認された[5]。首都に近いシャイア村でもデモが起き、目撃者の報告によると20人以上が負傷、1人が死亡[11]、その際、警察は催涙ガスやゴム弾を使用したと報道される[11]。イスラム教シーア派の若者たちはこの日の運動を「2月14日の改革」と名付けた[11]。
2月15日
前日のデモで犠牲となった参加者の葬儀が行われたが、集まった群衆と治安部隊との間に衝突が発生、群集1人が死亡、最低でも25人が負傷したと報道される[11][12]。デモで死亡した2人の写真はFacebookに掲載され、憤った人々が多数葬儀に集まり、これをきっかけに、マナーマ中心部にある真珠広場をデモ隊2000人が占拠し、抗議デモへと発展、また約1000人が泊まり込みを始めた[13][14][11][15]。真珠広場に集まったデモ隊は黒い衣装で身を包み、有志による役割分担、介護所やメディアセンターの設置、飲み物の無料提供も行っており、組織だった一面も垣間見えた[16]。同日、バーレーンのシーア派系の最大野党「ウェファク」(国民合意イスラム連盟)が反政府デモに参加すること公式に表明[17][18]。デモによって2人の死者が出たことで、ハマド国王は国営テレビで演説を行い、社会改革と2人がデモで死亡したことについてを調査を始めると発表した[19]。
2月16日
前日の国王の演説を受けても納得しなかったため、真珠広場のデモ参加者は7000人に増加[20]。参加者はハマド国王のおじであるハリーファ首相の退陣を強く求め[20]、中には王政打倒を訴える者も現れ始めた[16]。また同日、亡くなった2人目の葬儀が行われた[18]。
2月17日
17日未明、治安部隊は真珠広場を封鎖し、催涙ガスを発射、広場を占拠していた反体制派数百人を強制排除。広場にいた参加者はほぼ一掃された[18]。ウェファクによると、この日の強制排除で2人が死亡、少なくとも50人が負傷した[18]。AP通信では4人の死者が出たと報じている[16]。
2月18日 - 2月19日
18日に入り、治安部隊が反政府デモ隊に発砲、武力鎮圧に乗り出す[21]。政府側がデモ隊に銃撃、武力行使に踏み切ったことで、当初、政治改革や民主化を求めていたデモが、王室打倒に傾倒、情勢はさらに緊迫化した[6]。ハマド国王は軍副司令官を兼務するサルマン皇太子にウェファクとの対話を進めるよう命令、皇太子はハリーファ首相に事態の責任をとって辞任するよう要求し[21]、ウェファクなど反政府側とも対話姿勢を示したものの、反政府側は2月19日にハリーファ内閣の総辞職とマナーマに展開している軍の撤収を要求したため物別れに終わった[21][6][22]。ただ、2月19日に予定されていたデモは2月22日に延期されている[22]。
なお、2月18日にサルマン皇太子は、「一つの宗派(シーア派)のために存在しているわけではない。今、国は分裂している」と地元テレビで発言している[22]。
諸外国の反応
アメリカのホワイトハウスは2月16日に、バーレーン情勢を「注視している」との声明を発表し、バーレーン政府に平和的な反政府デモを認めるよう呼び掛けた[18]。イラン外務省も2月18日、バーレーン治安部隊の暴力を非難、同国政府に平和的な対応を呼びかけた[23]。
経済への影響
デモの激化を受け、2月18・19日にバーレーン・インターナショナル・サーキットで開催予定だったGP2アジアシリーズのレースが中止された[24]。3月13日に開催予定のF1開幕戦・バーレーングランプリも実施が危ぶまれている[25]。
脚注
- ^ “Bahrain activists in 'Day of Rage'”. Al Jazeera. 2月14日閲覧。 エラー: 閲覧日が正しく記入されていません。(説明)
- ^ a b “Protests Emerge in Jordan, Bahrain”. Wall Street Journal. 2月6日閲覧。 エラー: 閲覧日が正しく記入されていません。(説明)
- ^ “Calls for weekend protests in Syria”. Al Jazeera. 2月8日閲覧。 エラー: 閲覧日が正しく記入されていません。(説明)
- ^ “In Fear of Transmitting the Tunisian and Egyptian Demonstrations to Bahrain”. Bahrain Center for Human Rights. 2月8日閲覧。 エラー: 閲覧日が正しく記入されていません。(説明)
- ^ a b c d “バーレーン各地でデモ、警察と衝突 死者2人に”. AFP通信. 2月17日閲覧。 エラー: 閲覧日が正しく記入されていません。(説明)
- ^ a b c “バーレーンデモ「打倒王室」に。政府の武力行使に反発”. 朝日新聞. 2月20日閲覧。 エラー: 閲覧日が正しく記入されていません。(説明)
- ^ “アラブ諸国指導者、変革の波を警戒”. 読売新聞. 2月17日閲覧。 エラー: 閲覧日が正しく記入されていません。(説明)
- ^ “Bahrain's king gifts $3,000 to every family”. AFP通信. 2月17日閲覧。 エラー: 閲覧日が正しく記入されていません。(説明)
- ^ “An open letter to the King of Bahrain to avoid the worst case scenario”. Bahrain Center for Human Rights. 2月17日閲覧。 エラー: 閲覧日が正しく記入されていません。(説明)
- ^ a b “イエメンやアルジェリアなどでも反政府デモ=他のアラブ諸国に飛び火”. Wall Street Journal. 2月17日閲覧。 エラー: 閲覧日が正しく記入されていません。(説明)
- ^ a b c d e “Bahrain activists in 'Day of Rage'”. Al Jazeera. 2月17日閲覧。 エラー: 閲覧日が正しく記入されていません。(説明) 引用エラー: 無効な
<ref>タグ; name "Day_of_rage"が異なる内容で複数回定義されています - ^ Randeree, Bilal (2011年2月15日). “Deaths heighten Bahrain tension - Middle East”. Al Jazeera English 2011年2月16日閲覧。
- ^ “バーレーン首都広場、デモ隊1千人が泊まり込み”. 読売新聞. 2月20日閲覧。 エラー: 閲覧日が正しく記入されていません。(説明)
- ^ “バーレーンの反政府デモで2人死亡、イランやイエメンにも波及(1)”. Bloomberg. 2月17日閲覧。 エラー: 閲覧日が正しく記入されていません。(説明)
- ^ “中東デモ:リビアに拡大、2人死亡 バーレーン、死者葬儀に数千人”. 毎日新聞. 2月17日閲覧。 エラー: 閲覧日が正しく記入されていません。(説明)
- ^ a b c “「次はおれたちだ」 バーレーン デモの若者ら気勢”. 東京新聞. 2月17日閲覧。 エラー: 閲覧日が正しく記入されていません。(説明) 引用エラー: 無効な
<ref>タグ; name "Chunichiday17Feb"が異なる内容で複数回定義されています - ^ “Bahrain Protests Swell With Second Death, Tear Gas at Funeral”. Bloomberg (2011年2月14日). 2011年2月16日閲覧。
- ^ a b c d e “バーレーン、反政府デモを強制排除 2人死亡”. AFP通信 2月17日閲覧。 エラー: 閲覧日が正しく記入されていません。(説明)
{{cite news}}:|accessdate=の日付が不正です。 (説明); 不明な引数|accessyear=は無視されます。(もしかして:|access-date=) (説明)⚠⚠ - ^ “デモ隊が首都広場を占拠 バーレーン、国王は演説”. 東京新聞. 2月16日閲覧。 エラー: 閲覧日が正しく記入されていません。(説明)
- ^ a b “中東各国でデモ緊迫 バーレーンでは強制排除に乗り出す”. 中日新聞. 2月17日閲覧。 エラー: 閲覧日が正しく記入されていません。(説明)
- ^ a b c “バーレーン武力鎮圧で多数死傷、リビアは死者35人以上”. 産経新聞. 2月20日閲覧。 エラー: 閲覧日が正しく記入されていません。(説明)
- ^ a b c “全権委任のバーレーン皇太子、「国は分裂」”. 読売新聞. 2月20日閲覧。 エラー: 閲覧日が正しく記入されていません。(説明)
- ^ “イラン、バーレーン警察によるデモ隊への暴力を非難”. IRIBラジオ日本語. 2月20日閲覧。 エラー: 閲覧日が正しく記入されていません。(説明)
- ^ GP2アジア、バーレーンの反政府デモ激化により中止 - F1-Gate.com・2011年2月17日
- ^ “今季のF1開幕戦に黄信号、バーレーンの政情混乱で”. CNN. 2月17日閲覧。 エラー: 閲覧日が正しく記入されていません。(説明)