東日本大震災心理支援センター
東日本大震災心理支援センター(ひがしにほんだいしんさいしんりしえんセンター)は、東京都文京区本郷二丁目40番14号 山崎ビル602号室に事務局を置く東日本大震災被災者支援機関である。2011年(平成23年)に設立された[1]。本項では、関連支援事業である心の相談緊急電話についても記載する。
創立者 |
日本臨床心理士会 日本心理臨床学会 |
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設立 | 2011年 |
所在地 | 東京都文京区本郷二丁目40番14号 山崎ビル602号室 |
主要人物 | 村瀬嘉代子 |
活動地域 |
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主眼 | 東日本大震災被災者に対する心のケア |
活動内容 | 臨床心理士を中核とする東日本大震災被災者支援に関わる諸活動 |
活動手段 | 中央省庁・地方自治体との連携支援、日本赤十字社との連携支援、国境なき医師団との連携支援、民間ボランティアへの研修実施、基金・義援金による経済支援など |
ボランティア人数 |
臨床心理士:約21,000名、 日心臨会員:約22,000名。 (合計:のべ約43,000名) |
子団体 | 都道府県臨床心理士会 |
ウェブサイト | http://www.ajcp.info/pdf/Press-20110324-A.pdf |
概要
東日本大震災心理支援センターは2011年3月23日、同年3月11日に発生した東日本大震災において極めて膨大な犠牲や甚大な被害がもたらされたことにより、東北地方、関東地方、北海道地方、甲信越地方、東海地方など非常に広範囲にわたって数十万人規模の関連被災者が生じ[2]、未だかつてないほどに体系的・長期的・集中的な精神心理的支援が急務とされたことから、心理職専門家である臨床心理士を中核とした支援体制の整備を図り、もって東日本大震災被災者に対する心のケアに寄与することを目的として設立された[1]。
設立経緯
後に東日本大震災心理支援センターの設立母体のひとつとなった日本臨床心理士会は、同センター設立に先立って東日本災害被害者支援対策本部を立ち上げ、「心の相談緊急電話」などの広域支援活動をいち早く開始しており[3]、首相官邸の災害情報公式Twitterからのツイートや[4][5]、文部科学省・厚生労働省などのウェブサイトにおいても周知が図られていた[6][7][8]。一方、同じく後に設立母体のひとつとなった日本心理臨床学会も、既に「東北地方太平洋沖地震と心のケア」特設ウェブサイトを開設し、会員研究者だけでなく一般ボランティアなどに向けても、現地支援活動に際した心理学的な注意点などの情報提供を開始していた[9]。
他方、大震災に見舞われた被災者への心のケアの必要性は、国や中央省庁からだけでなく、全国知事会や被災地域の地方自治体からも叫ばれており[10]、日本赤十字社や国境なき医師団の緊急医療チームに臨床心理士が帯同して現地入りし、それぞれが被災者支援にあたっていた[11][12][13]。しかしながら日が経つにつれ、未曾有の大惨事の実態が浮き彫りになると同時に、原子力発電所事故や電力・物資不足などの新たな問題も次々に生じ、復興までの道のりが当初よりも極めて長期化する公算が高まったことで[14][15]、個別・短期の支援と並行して、より体系的・長期的な支援実現を念頭に置いた体制確保が不可欠であることが明らかとなった[16]。
そのため、これまで阪神・淡路大震災や新潟県中越地震などにおいて支援活動を行ってきたほか、国境なき医師団やJICAなどの海外支援活動にも参加してきた臨床心理士の全国職能団体である日本臨床心理士会[17]と、心理学・臨床心理学関連で国内最大の会員研究者数を擁した公的学会である日本心理臨床学会[18]が協同することで、心理職専門家や心理学研究者を中心とした高度な専門性を備える被災者支援機関の設立が検討され、実現に至った[1]。
これにより、約21,000名の臨床心理士と、約22,000名の日本心理臨床学会(日心臨)会員研究者によって構成される、のべ約43,000名の専門家間の連携支援が図られる運びとなったほか、日本臨床心理士会の子団体である各都道府県臨床心理士会と、日本心理臨床学会の協力学術研究団体との間の連携も同時に図られた[1]。また、臨床心理士の現地派遣に関して、中央省庁・地方自治体、日本赤十字社、国境なき医師団などとの連携・調整に際する窓口が集約され、今後の支援手続きの円滑化が図られた[1]。
沿革
- 2011年(平成23年)3月11日 東日本大震災発生
- 2011年(平成23年)3月14日 日本臨床心理士会が東日本災害被害者支援対策本部を立ち上げ
- 2011年(平成23年)3月15日 東日本災害被害者支援対策本部より被災者支援にあたる臨床心理士向けに情報提供開始。日本心理臨床学会支援活動委員会が「東北地方太平洋沖地震と心のケア」特設ウェブサイトを開設し一般向けに情報提供開始
- 2011年(平成23年)3月17日 日本精神衛生学会、日本臨床心理士会、東京臨床心理士会、日本電話相談学会の協同により「心の相談緊急電話」開設計画を発表
- 2011年(平成23年)3月19日 「心の相談緊急電話」正式開設
- 2011年(平成23年)3月23日 日本臨床心理士会と日本心理臨床学会の協同により東日本大震災心理支援センター設立
活動内容
東日本大震災心理支援センター事務局(電話:03-3817-6392/FAX:03-3817-7800、03-3817-6802)
- 連携支援
- 直接支援
- 被災者に対する電話相談支援(※被災者対象の電話相談は「心の相談緊急電話」も並行して開設)
- 後方支援
- 被災地域の各都道府県臨床心理士会による被災者支援のバックアップ
- 被災地域において支援活動を行う救援者・民間ボランティアのメンタルヘルスケア
- 民間ボランティアが被災者と接する際の心理学的な注意点などの研修実施
- 被災者に対する心のケアに関わる各種情報提供
- 経済支援
- 被災者支援基金設立
- 日本臨床心理士会義援金送金
※状況により活動内容を順次拡充する
心の相談緊急電話
心の相談緊急電話フリーダイヤル(電話:0120-111-916)
- 時間
- 毎日13:00~22:00
- 期間
- 2011年3月19日~2011年4月23日(※状況により開設期間を延長する場合あり)
- 対象
- 被災者、および支援活動を行う救援者・民間ボランティア
- 内容
- 対応
- 精神科医、臨床心理士など
- 主催
- 日本精神衛生学会、日本臨床心理士会、東京臨床心理士会、日本電話相談学会
- 協賛
- 日本生産性本部メンタルヘルス研究所
- 広報
脚注
- ^ a b c d e 東日本大震災心理支援センター (2011年). “臨床心理士が心のケアの中核センターを設立” (PDF). 2011年3月24日閲覧。
- ^ 全国新聞ネット (2011年). “大震災、55万人避難所に”. 2011年3月14日閲覧。
- ^ 日本臨床心理士会 (2011年). “心の相談緊急電話開設のお知らせ”. 2011年3月17日閲覧。
- ^ 首相官邸 (2011年). “東北地方太平洋沖地震への対応 - いのち - 健康「不安・悩み」”. 2011年3月19日閲覧。
- ^ Twitter (2011年). “首相官邸災害情報公式Twitter - 【再送】【お知らせ】【被災された方へ】被災による不安や悩みを受け止める相談窓口です”. 2011年3月21日閲覧。
- ^ 文部科学省 (2011年). “東北地方太平洋沖地震関連情報 - こころの窓口”. 2011年3月19日閲覧。
- ^ 厚生労働省 (2011年). “東北地方太平洋沖地震の被災者やその家族、支援者の方へ - こころのケアの関係”. 2011年3月19日閲覧。
- ^ 内閣府 (2011年). “相談窓口 - 震災関連情報(電話相談、心のケア等)”. 2011年3月19日閲覧。
- ^ 日本心理臨床学会 (2011年). “東北地方太平洋沖地震と心のケア”. 2011年3月15日閲覧。
- ^ 全国知事会 (2011年). “全国知事会(緊急広域災害対策本部)記者会見概要” (PDF). 2011年3月14日閲覧。
- ^ 日本赤十字社 (2011年). “「こころのケア」についての活動”. 2011年3月20日閲覧。
- ^ 国境なき医師団 (2011年). “東日本大地震:避難所の高齢者に、慢性疾患への治療を引き続き提供”. 2011年3月20日閲覧。
- ^ 国境なき医師団 (2011年). “東日本大地震:他団体の臨床心理士とも連携”. 2011年3月24日閲覧。
- ^ ロイター (2011年). “日銀が震災対応で追加策の必要性議論へ、電力不足・原発問題深刻化で景気下振れ懸念”. 2011年3月31日閲覧。
- ^ ロイター (2011年). “出口見えない福島原発危機、解決には数十年か”. 2011年3月31日閲覧。
- ^ NHK (2011年). “クローズアップ現代 - “心の危機”被災者を救え”. 2011年3月31日閲覧。
- ^ 日本臨床心理士会 (2011年). “沿革”. 2011年3月23日閲覧。
- ^ 日本心理臨床学会 (2011年). “沿革”. 2011年3月23日閲覧。
関連項目
- 東日本大震災
- 急性ストレス障害 - 心的外傷後ストレス障害(PTSD)
- サバイバーズ・ギルト - 惨事ストレス
- 日本赤十字社
- 国境なき医師団
- 心のケア - 臨床心理士