経済産業省
経済産業省(けいざいさんぎょうしょう、通称:経産省、英訳名:Ministry of Economy, Trade and Industry、略称:METI、メティ)は、日本の行政機関の一つ。民間の経済活力の向上及び対外経済関係の円滑な発展を中心とする経済及び産業の発展、並びに鉱物資源及びエネルギーの安定的かつ効率的な供給の確保を図ることを任務とする。
経済産業省 けいざいさんぎょうしょう | |
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![]() | |
![]() 経済産業省庁舎 | |
役職 | |
大臣 | 海江田万里 |
副大臣 | 池田元久、松下忠洋 |
大臣政務官 | 中山義活、田嶋要 |
事務次官 | 松永和夫 |
組織 | |
内部部局 | 大臣官房、経済産業政策局、通商政策局、貿易経済協力局、産業技術環境局、製造産業局、商務情報政策局 |
審議会等 | 産業構造審議会、消費経済審議会、日本工業標準調査会、計量行政審議会、独立行政法人評価委員会、輸出入取引審議会、化学物質審議会、総合資源エネルギー調査会(資源エネルギー庁)、中央鉱山保安協議会(原子力安全・保安院)、工業所有権審議会(特許庁)、中小企業政策審議会(中小企業庁) |
地方支分部局 | 経済産業局、産業保安監督部(原子力安全・保安院) |
外局 | 資源エネルギー庁、特許庁、中小企業庁 |
特別の機関 | 原子力安全・保安院(資源エネルギー庁に置かれる) |
概要 | |
法人番号 | 4000012090001 |
所在地 |
東京都千代田区霞が関1丁目3番1号 北緯35度40分20秒 東経139度45分3秒 / 北緯35.67222度 東経139.75083度座標: 北緯35度40分20秒 東経139度45分3秒 / 北緯35.67222度 東経139.75083度 |
定員 |
8,601人 (2007年(平成19年)4月1日施行) |
年間予算 |
1兆237億円 (特会繰入含む。2007年度(平成19年度)) |
設置 | 2001年(平成13年)1月6日 |
前身 | 通商産業省(農商務省、商工省、軍需省) |
ウェブサイト | |
www.meti.go.jp 予算・決算 / 所管法令、国会提出法律案 / 統計 |
概要
2001年(平成13年)1月6日の中央省庁再編において、通商産業省(つうしょうさんぎょうしょう、通称:通産省)の廃止に伴いその後継存続機関として新設されたもの。産業政策、通商政策、産業技術、貿易などを所管する。
前身の通商産業省は、かつては日本経済ないし「日本株式会社」の総司令塔として高度経済成長の牽引役とされ、海外でも「ノートリアス ミティ Notorious MITI」ないし「マイティ ミティ Mighty MITI」と呼ばれ、その名は日本官僚の優秀さの代名詞[1]として広く轟いていた[2]。 その持てる許認可や行政指導をあまねく駆使し、さらに政府系金融の割り当て融資(財政投融資)、予算手当て、補助金などを力の源泉として主に産業政策を掌り、のみならず通商や貿易、技術革新に応じた科学技術開発に加え、特許、エネルギー政策、中小企業政策など幅広い権限を保持し、他省庁の領域にまで踏み込む政策で「ケンカ官庁」「アイディア官庁」の異名をとっていた。しかし日本の高度成長期が終わると、幅広い権限を保持する割に他の省庁に比して許認可行政や補助金行政ができないことから、この省では否応なしに単発のアイディア政策で勝負せざるを得なくなってきている。
毎年五月六月頃から様々な新政策のアドバルーンを打ち上げてくる[3]。このため、財務省が財政ないし予算査定、税制を通して、依然として広く政策決定に関与する「総合官庁」[4]であるのに対して、経済産業省はほとんどの産業を所管する「行政のデパート」であるにしても「限定された総合官庁」であるとも評されている[5]。
また、通産省中堅官僚が世界各国のジェトロを経由した産業調査員(いわゆる「産調」)として調査活動に従事している。
経済産業省は自由な気風も後押しし、実業方面や政治家、起業家などに優秀な人材を数多く輩出してきた。この理由から、経済産業省では優秀な人ほど転出するということも言われるが、一方で、転出後に不祥事を起こして逮捕される例なども見受けられる。日本の産業地盤沈下を反映して、経済産業省の展望は決して明るいとは言えない。
沿革
通商産業省の沿革は、1949年(昭和24年)5月25日、商工省とその外局である貿易庁、石炭庁を統合して発足した。この組織を考えたのは白洲次郎といわれる。発足当初の通産省には、吉田茂 - 白洲 - 牛場信彦らの「外交派」・「通商派」ラインとして、時に「永山天皇」と呼ばれた永山時雄初代官房長らがおり、主流である「産業派」・「統制派」には岸信介 - 椎名悦三郎 - 美濃部洋次 - 山本高行ラインとして、玉置敬三や平井富三郎、佐橋滋、今井善衛などが名を連ね、その他「商務派」には豊田雅孝らがいた[6]。その後も、「資源派」・「国際派」と「国内派」との対立軸など、現在に至るまで省内における政策対立ないし派閥争いには事欠かないことでも知られている。
発足当時は資源庁、工業技術庁、特許庁、中小企業庁の4つの外局があったが、1952年に組織改革が行われ、外局は特許庁と中小企業庁の2つになった。1972年に田中角栄が通商産業大臣から内閣総理大臣に就任した時、通商産業省出身者が総理大臣秘書官を担当するようになった。これが前例となり、後の内閣も通商産業省から出向で総理大臣秘書官を担当するようになり、首相への通商産業省の影響度が大きくなった。1973年に新たな外局・資源エネルギー庁を設置。2001年1月の中央省庁再編に伴い、経済産業省に名称変更された。ただ「経済」の名称は、マクロ経済政策(経済計画)の所掌を含む意味を持つため、現状ではそぐわないとの指摘もなされる。
組織
幹部
内部部局
- 大臣官房
- 秘書課
- 総務課
- 会計課
- 政策評価広報課
- 情報システム厚生課
- 経済産業政策局
- 経済産業政策課
- 調査課
- 産業構造課
- 産業組織課
- 産業再生課
- 産業資金課
- 企業行動課
- 産業人材参事官室
- 地域経済産業政策課
- 立地環境整備課
- 産業施設課
- 地域技術課
- 調査統計部
- 通商政策局
- 通商政策課
- 国際経済課
- 経済連携課
- 地域協力課
- 米州課
- 欧州中東アフリカ課
- アジア大洋州課
- 北東アジア課
- 通商機構部
- 貿易経済協力局
- 貿易振興課
- 通商金融・経済協力課
- 資金協力課
- 技術協力課
- 貿易保険課
- 貿易管理部
- 貿易管理課
- 貿易審査課
- 安全保障貿易管理課
- 安全保障貿易審査課
- 産業技術環境局
- 産業技術政策課
- 技術評価調査課
- 大学連携推進課
- 技術振興課
- 研究開発課
- 基準認証政策課
- 標準課
- 認証課
- 知的基盤課
- 環境政策課
- リサイクル推進課
- 製造産業局
- 鉄鋼課
- 非鉄金属課
- 化学物質管理課
- 化学課
- 生物化学産業課
- アルコール課
- 住宅産業窯業建材課
- 産業機械課
- 自動車課
- 航空機武器宇宙産業課
- 車両課
- 繊維課
- 紙業生活文化用品課
- 商務情報政策局
- 情報政策課
- 情報経済課
- 情報処理振興課
- 情報通信機器課
- サービス政策課
- サービス産業課
- 文化情報関連産業課
- 商務課
- 取引信用課
- 流通産業課
- 流通政策課
- 消費経済部
- 消費経済政策課
- 消費経済対策課
- 製品安全課
審議会等
施設等機関
地方支分部局
- 北海道経済産業局(札幌市)
- 東北経済産業局(仙台市)
- 関東経済産業局(さいたま市)
- 中部経済産業局(名古屋市)
- 近畿経済産業局(大阪市)
- 中国経済産業局(広島市)
- 四国経済産業局(高松市)
- 九州経済産業局(福岡市)
- ※甲信越地方及び静岡県は関東経済産業局管轄、福井県は近畿経済産業局管轄である(ただし長野県・静岡県及び福井県の一部業務は中部経済産業局、新潟県の一部業務は東北経済産業局のそれぞれ管轄(電力関係など))。
- ※九州経済産業局の管轄に沖縄県は含まれない(内閣府の地方支分部局である沖縄総合事務局経済産業部が担当する)。
外局
所管独立行政法人
- 新エネルギー・産業技術総合開発機構
- 原子力安全基盤機構
- 石油天然ガス・金属鉱物資源機構
- 水資源機構(水路事業部の事業を農林水産省・厚生労働省・国土交通省と共に所管する)
- 製品評価技術基盤機構
- 経済産業研究所
- 工業所有権情報・研修館
- 日本貿易保険
- 産業技術総合研究所
- 日本貿易振興機構
- 情報処理推進機構
- 中小企業基盤整備機構
所管特殊法人
所管財団法人
所管社団法人
公表している統計
- 指数
- 鉱工業
- 工業統計調査、経済産業省生産動態統計、鉄鋼需給動態統計調査、鉄鋼生産内訳月報、化学物質の製造・輸入量に関する実態調査、機能性化学品動向調査、バイオ産業創造基礎調査、砕石等動態統計調査、生コンクリート流通統計調査、建設機械動向調査、金属加工統計調査、繊維流通統計調査、革需給動態統計調査、本邦鉱業のすう勢調査、石油統計速報
- 商業
- 商業統計、商業動態統計調査、家庭電気製品の量販店月次販売統計調査
- サービス業
- 特定サービス産業実態統計、特定サービス産業動態統計調査
- 企業
- 経済産業省企業活動基本統計、外資系企業動向調査、海外事業活動基本調査、海外現地法人四半期調査
- 設備投資
- 経済産業省設備投資調査
- 工場立地
- 工場立地動向調査
- 環境
- 公害防止設備投資調査、水質汚濁物質排出量総合調査、容器包装利用・製造等実態調査
- IT関連
- 情報処理実態調査
- エネルギー
- 経済産業省特定業種石油等消費統計
- 産業連関表
- 延長産業連関表、簡易延長産業連関表、地域間産業連関表、国際産業連関表、鉱工業投入調査、商品流通調査、資本財販売先調査
- 現在実施していない統計
- 特定機械設備統計調査、商工業実態基本調査、石油等消費構造統計
経産省における電力会社への天下り・官民癒着と原子力事故
経済産業省は、旧通商産業省時代から半世紀近くもほぼ切れ間無く東京電力への天下りを行っていて、その数は取締役としての天下りで累計45人にものぼり、両者は癒着しつづけていた歴史がある。 東京電力による経産省OBの天下り受け入れは、旧通産省時代であった1962年、石原武夫・元次官が東電の取締役に就任し副社長などを歴任したのが始まりである[7]。その後も、(1981~1989年)増田実・元資源エネルギー庁長官、(1991年~1999年)川崎弘・元エネ庁次長、(2000年~2010年)白川進・元エネ庁次長と、いった調子で、ほぼ切れ目なく天下りで取締役のポストを得てきた[7]。その結果、東電6人の副社長ポストのうち1人分は「経産省OBの指定席」などと見なされる始末だった[7]。このような天下りによる癒着は東京電力に限らず、他の電力会社でも起きているという[7]。本来、原子力発電の安全性を審査する役目を担うはずの組織として原子力安全・保安院が存在してはいるが、この保安院は経済産業省の下部組織であるので、上部組織の経産省が天下りによって電力会社と癒着したことで、原子力安全・保安院の機能も損なわれてきたと見なされている[8]。
2011年3月の原子力発電所事故以降は「官と民の癒着が事故(福島第一原子力発電所事故)を悪化させた」「官民のなれ合いが安全規制の緩みにつながった」と批判されることになった[7]。それを受けて、与党民主党は、「原子力という関心の深い問題で強い疑義が持たれた。」として、枝野官房長官は経産省幹部の電力大手などへの再就職自粛を指示した[7]。2011年4月、経産省OBの石田徹は天下りによって得ていたポストである東京電力の“顧問”の職を辞任することになった[7]。 テレビのニュースなどでも2011年4月19日に、与党民主党は、経済産業省と電力会社の癒着体質を修正することで、ないがしろにされてきた原子力発電所の安全管理を改善してゆく方向だ見られる、といったことが報道された。
2011年に行われた経済産業省の調査によると、経済産業省から電力会社への天下りが過去50年間で68人もあったとの調査結果を発表した。このうちの13人は現在も顧問や役員などの肩書で勤務しているために、監督官庁である経産省とのこのような緊密な関係は原子力発電所の安全基準のチェックを甘くさせるなどの弊害などがあるとも指摘されている(ただし、沖縄電力には原子力発電所は存在しないので、経済産業省が沖縄電力の原子力発電所の安全基準のチェックを甘くすることはない)。この調査では経産省(前身の通商産業省、商工省を含む)の元職員で、再就職先で常勤の役員か顧問だった人物を対象とされた[9]。
- 天下りの人数
(※このうち中国電力をのぞく11社で現在も1~2人の経産省OBが残っている。)
今後の課題
旧通産省時代から経済・産業の幅広い分野に対して審査権・許認可権を有しており、規制緩和もしくは規制改革がいわれている。産業分野で「産・官・学」という場合に於いて、官を代表する役所である。このため、国民ではなく経済界・産業界の団体・法人の意向を重視する傾向がある。団体・法人の意向を重視するものの、投資家ではなく経営者側の利益を重視する傾向がある。結果として、経産省は、国民の側でも投資家の側でもない、経営陣の個人的利益を最大化させるよう動いているだけとも指摘される。公害・産廃・貿易摩擦といった問題を常に抱えており、環境問題などでは、環境省と対立する立場にあり経済優先の傾向が強く、対策が後手に回ることが多い。端的な例として、計量行政においては、都道府県・計量特定市及び各々の協議会、業界団体ならびに独立行政法人産業技術総合研究所との調整が不可欠であり、法改正後もその解釈について検討が延々と続けられるのが通例となっている。産業政策についても、経済産業省が後押しして成功した産業はないという意見もあり、「経済産業省不要論」が主張されるときもある。
経産省出身の著名人
政治家は除く。なお前身の商工省、軍需省、通産省時代を含む。
広報誌
経済産業省の広報誌としては、経済産業調査会発行の、『経済産業ジャーナル』がある[1]。
脚注
- ^ Vogel, Ezra Feivel (1979) Japan As Number One: Lessons for America, Cambridge:. Harvard University Press. / エズラ・ボーゲル, 広中和歌子・ 木本彰子翻訳 『ジャパンアズナンバーワン―アメリカへの教訓』 (TBSブリタニカ, 1979年)では通産省を行政の中心に描いている。
- ^ Johnson, Chalmers A. (1983) Miti and the Japanese Miracle: The Growth of Industrial Policy, 1925-1975, Stanford Univ Press. / チャルマーズ・ジョンソン, 矢野俊比古監訳 『通産省と日本の奇跡』 (TBSブリタニカ, 1982年)
- ^ 大宮知信 『世紀末ニッポンの官僚たち』(三一書房, 1991年) P54~
- ^ 但し、財務省の予算編成権は建前上は経済財政諮問会議に移され、また、金融行政は内閣府の外局である金融庁の管轄となった。
- ^ 川北隆雄 『通産省』(講談社現代新書、1991年3月) P110~
- ^ 松本清張 『現代官僚論』(1963 - 1966年、文藝春秋新社)より抜粋。
- ^ a b c d e f g 吉永康朗. “東京電力:石田顧問辞任へ 天下り、なれ合い半世紀 「原発安全規制に緩み」”. 毎日新聞社. 4月21日閲覧。 エラー: 閲覧日が正しく記入されていません。(説明)
- ^ “[http://www.j-cast.com/2011/03/24091192.html 高橋洋一の民主党ウォッチ 原子力安全・保安院の問題体質 経産省「植民地」、そして「東電の虜」]”. JCASTニュース. 4月21日閲覧。 エラー: 閲覧日が正しく記入されていません。(説明)
- ^ 50年間で68人が電力会社に天下り 経産省調査 - MSN産経ニュース
関連項目
- 日本経済団体連合会
- 経済同友会
- 商工省
- JKA
- 大学発ベンチャー1000社計画
- 旧・日本輸出入銀行(輸銀に対する輸出割当融資権限により通産省のプレゼンスは高まった)
- 旧・日本開発銀行・旧・中小企業金融公庫(輸銀と共に「体制金融」を担った通産省関連財投機関)
- 植物工場
- 経済産業省アイディアボックス