いなほ (列車)
東日本旅客鉄道が運行している特別急行列車
いなほ は、東日本旅客鉄道(JR東日本)が、新潟駅~酒田駅・秋田駅・青森駅間を白新線・羽越本線・奥羽本線経由で運行する特別急行列車。

運行概要
新潟駅で上越新幹線に接続し、新潟県下越地方北部、山形県庄内地方とを結ぶ特急列車。沿線が全国有数の米どころであることから、この愛称が付与された。
2025年現在、定期列車としては新潟~酒田間4往復、新潟~秋田間2往復、新潟~青森間1往復の計7往復が運行されている。青森発着便は青森~秋田間で「かもしか」を補完もしている。
定期列車の他、多客時には臨時列車が運転される。2004年夏季には下り2本、上り5本が運転され、上りダイヤ(計12本)はまるで往年のエル特急華やかなりし頃を思わせるものである。
使用車両
設備
- 6両編成
- 9両編成
- グリーン車指定席…4号車(禁煙車)
- 普通車指定席…1~3・5・6号車(禁煙車1~3号車)
- 普通車自由席…7~9号車(禁煙車8・9号車)
車内販売
- 基本的に新潟~酒田間で車内販売を行う(NRE新潟列車営業支店担当)。ただし7・8号に限り新潟~秋田間で行う(NRE秋田営業支店担当)。
停車駅
新潟駅 - 豊栄駅 - 新発田駅 - 中条駅 - 坂町駅 - 村上駅 - 府屋駅 - あつみ温泉駅 - 鶴岡駅 - 余目駅 - 酒田駅< - 遊佐駅 - 象潟駅 - 仁賀保駅 - 羽後本荘駅 - 秋田駅>( - 東能代駅 - 二ツ井駅 - 鷹ノ巣駅 - 大館駅 - 弘前駅 - 青森駅)
- ( )内(新潟-青森間)は1往復のみ設定。< >内(新潟-秋田間)は2往復設定。
沿革
- 1969年 - 上野駅~秋田駅間を高崎線・上越線・信越本線・羽越本線(水原駅経由)経由で運行する特別急行列車として運行を開始(1往復)。キハ80系気動車が使用され、ボンネット型のキハ81形が先頭車両になった。
- 1972年 - 羽越本線電化に伴い485系電車を導入。同時に青森駅までの1往復増発(計2往復)。
- 1979年 - 秋田駅発着列車を1往復増発し上野駅~秋田駅2往復・上野駅~青森駅1往復の3往復体制となる。
- 1982年 - 上越新幹線開業に伴い、新幹線接続の便を図るため新潟駅発着に変更。新潟駅~秋田駅・青森駅間5往復となり、エル特急に。この際に新潟駅~秋田駅間を結ぶ気動車急行「羽越」を吸収、急行「羽越」は特急格上げの形で消滅。尚、上野駅~青森駅間(水原駅経由)1往復のみ、特急「鳥海」(ちょうかい)として存続。ちなみに、「鳥海」の名称は同区間を運行した夜行急行の名称であった。「あけぼの」記事も参照のこと。
- 1985年 - 東北・上越新幹線上野駅開業に伴い「鳥海」が廃止。また、酒田駅発着列車の運転が開始された。
- 1993年 - 新潟駅~村上駅間の快速「せなみ」を格上げし、村上駅発着列車の運行を開始(1995年廃止)。以後、主に羽越本線内での運用が中心となる。
- 2001年3月 - 大阪駅~青森駅間の特急「白鳥」が廃止。それぞれ「雷鳥」・「北越」・「いなほ」に系統分離される。同時に、大阪駅~新潟駅間運行の「雷鳥」も廃止されたため、新潟駅~青森駅間の「いなほ」が国内在来線で最長の定期昼行特急列車(458.8km)となる。
- 2002年12月1日 - JR東日本管内のエル特急名称廃止により、形式上「特急」となるが、運転系統上特に変更はない。
- 2002年12月25日 - 羽越本線余目駅~酒田駅間にて脱線事故発生。
今後の展望
- 白新線・羽越本線は線形が悪く、また部分複線であるため、高速化には大きなネックとなっている。また、日本海沿岸部を走行する区間が多いこともあり、特に冬期間は降雪(特に吹雪)・積雪の影響でほぼ慢性的な遅れが発生している。
- 近年、ダイヤ改正で徐々に本数が減っており、特にデータイムは空白時間となっている。
- 現在競合する交通手段としては、対首都圏では羽田~庄内空港の航空便がある。2006年4月より庄内空港での夜間駐機を行うことにより、羽田行き始発便の時刻繰り上げ・羽田発最終便の時刻繰り下げが予定されている。これにより首都圏滞在時間で優位に立っていた「いなほ-上越新幹線」ルートにどのような影響が及ぶか注目すべきところである。また日本海東北自動車道(日東道)の一部開通に伴い、新潟~村上間で高速バスが運行されている。
- 新在直通のフリーゲージトレインの導入、ミニ新幹線化、線形改良による高速化、新幹線ホーム乗り入れに伴う乗り換えの利便性向上、羽越新幹線の建設等、両県沿線でも様々な意見や試案が出されているものの、実現にはまだ相当の議論を要す見込み。また日東道は現在、新潟市内から中条ICまでの区間が開通しているが、以北の温海ICまでの区間の多くは未着工であり、「いなほ」の存続を脅かす程の競合交通手段は現在のところ、特に存在しない。