領土問題

国またはその下位区分間の土地の所有・管理に関する意見の不一致

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領土問題(りょうどもんだい)は、ある地域がどの国家領域に属するかをめぐって、国家間での争いが起きることである。

よく領土問題の原因になるのが、その土地にある石油などの天然資源や、国境付近にある、農地、重要建造物である。また、その土地を始めに占有した国家が領有を明確にしていなかったり、付近に他の国家がありながらもその国家の了解を得ていなかったりといった歴史的経緯も、原因になりやすい。

領土問題は、植民地問題と並んで戦争テロのきっかけになりやすく、過去に日本を初め世界各国で領土問題を発端に戦争が起きたこともある(ノモンハン事件印パ戦争など)。これら領土問題を戦争に発展させないために、国連国際法によって、一国が他国の領土を武力によって占有することを禁じている。


国際司法裁判所への付託

領土問題は当事国同士での外交で解決されるのが望ましいが、当事国間で解決することが困難な場合には、国際司法裁判所(ICJ)への付託ができる。ただし、国際司法裁判所への付託は、紛争当事国の一方が拒否すれば審判を行うことができず、つまり強制管轄権はない[1]

しかしながら、当事国間で解決することが困難な場合には、ICJは客観的に判定することを推奨している。また

例えば、

  • ICJ
    • 「連合国とブルガリア、ハンガリー及びルーマニアとの平和諸条約の解釈に関する勧告的意見」(1950)
    • 「カメルーンとナイジェリアとの間の陸地及び海の境界に関する事件」の先決的抗弁に関する判決(1998.6.11, 先決的抗弁5)、
  • 常設国際司法裁判所判決
    • 「マヴロマチス事件」(ギリシャ対イギリス1924)
    • 「上部シレジアのドイツ人の利益に関する事件」(ドイツ対ポーランド1925)

などの判決が客観的判定の推奨を確認されている[2]


領土の権原

領土権を主張する根拠(権原)として、歴史的には以下のようなものがある。

  • 譲渡
    • 売買 (例:アラスカをアメリカがロシアから購入)
    • 交換 (例:樺太千島交換条約)
    • 割譲 (例:下関条約での台湾取得)
  • 征服 (国連憲章下で現在認められない)
  • 先占 (無主地を国家が領有意思を持ち実効的に占有すると当該土地がその国の領土になる)
  • 添付 (自然現象や埋め立て等で土地が拡張する場合)
  • 時効 (土地を領有の意思を持って相当期間平穏公然に統治することで領有権を取得する場合)

がある[3]


国際領土紛争では、「国家権能の平穏かつ継続した表示[4]」という権原を基準に判定される場合が多い。

国際判例による規則

塚本孝によれば、これまでのICJ国際判例から次の様な規則が得られる[5]

  1. 中世の事件に依拠した間接的な推定でなく、対象となる土地に直接関係のある証拠が優位。中世の権原は現代的な他の権原に置き換えられるべき。
  2. 徴税・課税、法令の適用、刑事裁判、登記、税関設置、人口調査、亀・亀卵採捕の規制、鳥の保護区設定、入域管理、難破事件の捜査などが、国家権能の表示・実効的占有の証拠となる。
  3. 紛争が発生した後の行為は実効的占有の証拠とならない。
  4. 住民による行為は国家の主権者としての行為ではない。
  5. 条約上の根拠がある場合にはそれが実効的占有に基づく主張に優越する。
  6. 国は、相手国に向かって行った発言と異なる主張はできない。
  7. 相手国の領有宣言行為に適時に抗議しないと領有権を認めたことになる。
  8. 歴史的、原初的権原があっても相手国が行政権行使を重ね、相手国の主権者としての行動に適時に抗議しなければ主権が移ることがある。
  9. 発見は未完の権原である(実効的占有が行われなければ領有権の根拠にならない)。
  10. 地理的近接性は領有根拠にならない。領海内の無人島が付属とされることはある。
  11. 地図は国際法上独自の法的効力を与えられることはない。公文書付属地図が法的効力を持つ場合や信頼に足る他の証拠が不足するときに一定の証拠価値を持つ場合はある。

世界各地の領土問題

東アジア

  • 北方領土(南千島)(北海道):現在、ロシア連邦が実効支配中。日本は不法占拠だとして返還要求している。
  • 北千島:現在、ロシア連邦が実効支配中。日本政府は領有権を放棄したが最終的な帰属は未定としている。日本共産党などは、南千島だけでなく、北千島についての日本の領有権も主張している
  • 南樺太:樺太島(サハリン島)の南部。現在、ロシア連邦が実効支配中。日本政府は領有権を放棄したが最終的な帰属は未定としている(北樺太(北サハリン)はロシア領確定地)。
  • 竹島(島根県):現在大韓民国が実効支配中(韓国名:独島(トクト))。日本および朝鮮民主主義人民共和国は不法占拠であるとしてそれぞれ自国への返還を要求している。
  • 尖閣諸島(沖縄県):中華人民共和国、中華民国(台湾)が領有権を主張しているが、日本政府は尖閣諸島に領有権問題は存在しないとの立場である。

東南アジア

南アジア

 
北部が中国の領土にされる前のブータン。北部が北側に出ている。2006年より前の国境
 
北部が中国の領土にされた後のブータン。2006年の新国境線
  • ブータンと中国との領土問題(主張する国境線に食い違いが大きく、2010年時点において交渉中)[6]。2011年時点で、ブータンと中国とは国交が樹立していない[7]。ブータンの面積は、従来は約46500km²だったが、2006年に発表した新国境線で北部の多くが中国領とされたため、約38400km²にまで大きく減少し、国土の形も大きく変わってしまった[8]
  • 中印国境紛争:下記を始めとした諸領土を巡って、中華人民共和国とインドが領土紛争を起こしている。
  • カシミール:インドとパキスタン、中華人民共和国が領有権を主張。特にインドとパキスタンは激しく対立し、武力衝突に発展したこともある(印パ戦争)。

中央・西アジア

東ヨーロッパ

南ヨーロッパ

西ヨーロッパ

南アメリカ

アフリカ

北アメリカ

オセアニア

既に解決された領土問題

ヨーロッパ

アジア

アフリカ

国際司法により解決した領土紛争

特設仲裁裁判所

常設仲裁裁判所

常設国際司法裁判所

  • 「東部グリーンランド事件」(デンマーク対ノルウェー1933年)

国際司法裁判所

  • 「マンキエ・エクレオ諸島事件」(イギリス対フランス、判決1953年)
  • 「国境地区の主権に関する事件」(ベルギー対オランダ1959年)
  • プレア・ビヘア寺院事件」(カンボジア対タイ1962年)
  • 「国境紛争事件」(ブルキナファソ対マリ1986年)
  • 「陸地、島および海の境界紛争に関する事件」(エルサルバドル対ホンジュラス1992年)
  • 「領土紛争事件」(リビア対チャド1994年)
  • 「カシキリ/セドゥドゥ島事件」(ボツワナ対ナミビア1999年)
  • 「カタールとバーレーンとの間の海洋境界画定及び領土問題に関する事件」(2001年)
  • 「カメルーン・ナイジェリア間の領土・海洋境界画定事件」(2002年)
  • 「リギタン島およびシパダン島の主権に関する事件」(インドネシア対マレーシア2002年)
  • 「国境紛争事件」(ベニン対ニジェール2005年)
  • 「ニカラグアとホンジュラスの間のカリブ海における領土及び海洋紛争」(2007年)
  • 「ペドラブランカ/プラウバトゥプテ、中央岩及び南暗礁に対する主権」(マレーシア対シンガポール2008年)

凍結している領土問題

  • 南極大陸南極における領有権主張の一覧を参照。 フランス、チリ、アルゼンチン、オーストラリア、イギリス、ノルウェー、ニュージーランド、ブラジル、ドイツ等が南極大陸における領有権主張(特に英仏爾3国は海外領土の属領として領有主張)を行っていたが、南極条約によって領有権は凍結された。ただし領有権自体を否定したわけではないので、将来的に領土問題が再燃する可能性はある。また、アルゼンチンのように今も南極における領土主張に意欲を見せている国もある。

「県境」の領土問題

日本国内において、県境が定まらずもめることも、「領土問題」ということがある。蔵王山中海、など[10]

脚注

  1. ^ 塚本 孝『国際法から見た竹島問題』(PDF)2008年10月26日、pp. 3-9.頁http://www.pref.shimane.lg.jp/soumu/web-takeshima/H20kouza.data/H20kouza-tsukamoto2.pdf2008年11月9日閲覧 
  2. ^ 高野雄一編『判例研究 国際司法裁判所』東京大学出版会1965、横田喜三郎『国際判例研究 第一』有斐閣1933
  3. ^ 塚本 孝『国際法から見た竹島問題』(PDF)2008年10月26日、pp. 3-9.頁http://www.pref.shimane.lg.jp/soumu/web-takeshima/H20kouza.data/H20kouza-tsukamoto2.pdf2008年11月9日閲覧 
  4. ^ title of peaceful and continuous display of State authority
  5. ^ 塚本 孝『国際法から見た竹島問題』(PDF)2008年10月26日、pp. 3-9.頁http://www.pref.shimane.lg.jp/soumu/web-takeshima/H20kouza.data/H20kouza-tsukamoto2.pdf2008年11月9日閲覧 
  6. ^ Ugyen Penjore (14 January, 2010 エラー: 日付が正しく記入されていません。(説明). “Joint field survey next on agenda” (英語). Kuensel Newspaper. 2011年11月21日閲覧。
  7. ^ http://www.mofa.go.jp/mofaj/area/bhutan/kankei.html 最近のブータン情勢と日本・ブータン関係 日本外務省
  8. ^ 河添恵子「中国に侵蝕されるブータン王国」『月刊WiLL』、ワック・マガジンズ、2010年11月。 
  9. ^ 詳細はイギリス領インド洋地域を参照。
  10. ^ 「日本全国『県境』の謎」ISBN978-4-408-10712-7

文献情報

関連項目