真夏の方程式
『真夏の方程式』(まなつのほうていしき)は、東野圭吾の推理小説。ガリレオシリーズ第6弾、シリーズ3作目の長編である。
真夏の方程式 | ||
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著者 | 東野圭吾 | |
発行日 | 2011年6月6日 | |
発行元 | 文藝春秋 | |
ジャンル | ミステリー、推理小説 | |
国 |
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言語 | 日本語 | |
形態 | 上製本 | |
ページ数 | 413 | |
前作 |
ガリレオの苦悩(短編) 聖女の救済(長編・2作同時刊行) | |
公式サイト | 特設サイト | |
コード | ISBN 9784163805801 | |
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概要
美しい海を誇る町・玻璃ヶ浦で発見された男の変死体。当初単純な事故と思われたものが、やがて16年前のある事件との関係が浮かび上がってくる。
今作では「科学技術と環境保護」というテーマを織り交ぜ、科学者の湯川がどのような考え方を持っているのかが描かれている。また、そのほかの特徴として、湯川がこれまで苦手としていた少年との交流が物語の軸になっている。
また、今回は湯川が警察(大学の同級生であり警視庁捜査一課での協力者草薙)よりも先に事件に遭遇することとなり、自らが進んで真相を究明していく様子が描かれる。ゆえにこれまでのシリーズ作品とは異なる空気感を有している。
キャッチコピーは「これは事故か、殺人か。湯川が気づいてしまった真相とは。」
あらすじ
両親の都合で一人・親戚が経営する旅館で過ごすことになった恭平。玻璃ヶ浦へ向かう電車の中で彼は湯川に出会う。湯川はこの町で開かれている、海底鉱物資源開発の説明会に出席するために来ており、恭平は親戚の旅館の名前と場所を教えた。
その夜、旅館には恭平と湯川のほかに、塚原正次という男性が宿泊していた。説明会に参加していた旅館の娘・成実は、塚原も説明会に出席し、面識がなかったにもかかわらず、自分に微笑みかけていたことに気づく。
ところが夜遅くになり、塚原が突如として姿を消してしまう。そして翌朝、海辺で変死体となった塚原の姿が発見される。県警は現場検証を行い、堤防から誤って転落した事故死の線が濃厚であるとしていた。
同じころ、草薙は上司である多々良管理官から直々に特命の捜査を依頼される。実は塚原は元警視庁捜査一課所属の刑事で、多々良も恩になったことがある先輩であった。転落死したと到底思えない多々良は同じ旅館に湯川が泊っていることを知り、草薙を連絡係にして独自の捜査を命じたのだった。草薙は内海とともに湯川とコンタクトを取りながら捜査を行う。捜査を進めるうち、塚原は殺害された後に、海に遺棄された可能性が高くなっていく。
はたして塚原は何のために玻璃ヶ浦に来たのか。事件に遭遇した湯川は「ある人物の人生が捻じ曲げられる」ことを防ぐために、真相に挑んでいく。
鍵を握るのは16年前に塚原が担当した元ホステス殺人事件。そして、その裏には旅館の家族が隠さなければならなかったある重大な秘密があった。
主な登場人物
レギュラー
それぞれリンク先を参照のこと。
柄崎家
- 柄崎恭平(えさき きょうへい)
- 小学5年生。夏休みを親戚の旅館に泊るため、玻璃ヶ浦にやってきた。電車の中での出来事で湯川に窮地を脱してもらったときに旅館の紹介をし、結局湯川の客引きに成功した。両親が多忙なため、一人で過ごすことも珍しくなく、ゲームを遊んでばかりいた。宿題がはかどらず、特に理科が苦手であったが、湯川との出会いで少しずつ心境に変化が訪れる。彼のことを「博士」と呼ぶようになる。
- 柄崎敬一(えさき けいいち)
- 恭平の父。
- 柄崎由里(えさき ゆり)
- 恭平の母。敬一とともにブティックを経営。多忙な日々を送っている。
緑岩荘・川畑家
- 川畑成実(かわはた なるみ)
- 環境活動家。15年前に玻璃ヶ浦に移り住んでから海の環境保護に力を入れるようになる。ホームページを運営し他の活動家と海を守る活動に参加しているが、その姿は母親でさえも「過激な活動家」であると感じている。科学者の湯川とは考えが合わずに対立する。湯川いわく、「不自然なほど痛々しく、悲壮感さえ漂わせて」海を守るのにはある理由があった。
- 川畑重治(かわはた しげはる)
- 成実の父。旅館「緑岩荘」を経営。東京に住んでいたが、父親の後を継いで玻璃ヶ浦に越してきた。太りすぎたために膝を壊し、杖が手放せない。
- 川畑節子(かわはた せつこ)
- 成実の母。柄崎敬一の姉にあたる。実年齢より若く見える。
警察
- 西口剛(にしぐち つよし)
- 玻璃警察署巡査。成実の高校時代の同級生で、移り住んでからのことをよく知っている。今回、捜査の中で成実に接近し好意を持つようになる一方、成実が事件に絡んでいないかが不安になっている。
その他
- 沢村元也(さわむら もとや)
- フリーライターで環境保護活動家。成実が運営したサイトで知り合い、意気投合する。環境保護活動に腰を据えるため、成実と暮らしたいと考えている。
- 塚原正次(つかはら まさつぐ)
- 元警視庁捜査一課刑事で被害者。多々良管理官の先輩で恩人でもあった。現役時代には「名刑事」と呼ばれていた。
- 仙波英俊(せんば ひでとし)
- 16年前に起きた元ホステス殺人事件の容疑者。塚原が身柄を確保し取り調べを行った。その後懲役八年の実刑を受けている。かつて玻璃ヶ浦にある東玻璃に住まいを持ち、妻と住んでいたが、先立たれている。