党議拘束

議会での表決において、政党の決定に従うように党所属議員を拘束すること

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党議拘束(とうぎこうそく)は政党の決議によって党議員の議員活動を拘束すること。

概説

主に、議会で採決される案件に対し、あらかじめに賛成か反対かを決めておき、所属議員に投票行動を拘束する。ひとつの政党が結束して行動するための手段として用いられる。党議拘束に反する行動をしたら、政党は除名などの処分を下す。党議拘束の方法は党則などによって定められている。

党議拘束の程度は国によって異なる。

  • 日本ではかなり拘束度の高い党議拘束をしているために、ほとんどの案件について採決前に可決が否決か判明するために、国会での決議が形式化されているとする意見もある。自由民主党では党大会や両院議員総会総務会の決議によって党議拘束がかかる慣例になっている。
  • フランス議会では政党による造反議員への制裁が少なく比較的寛容である。
  • イギリス議会では原則として予算案の議決には下院与党の党議拘束がかけられ、非常に党派性のつよい二大政党制が実施されている。これはマニフェスト選挙とともにイギリスの半代表制議会制度を象徴しており、国民有権者の投票の結果としての契約(マニフェスト)に対して忠実であるべき下院の伝統とされている。一方で議員の自由委任に対する反論も根強く、若手議員(バックベンチャー)を中心とした造反がしばしばみられる。上院では党議拘束は下院にくらべて少なく、これは上院が貴族院であるという事情が背景にあり民主的正当性がないことが影響しており、国民の目から「議員としての正当性ある者」として見られることが大きな焦点となることが影響している。イギリスではソールズベリー・ドクトリンの伝統から原則として下院の決定を上院が覆すことはできないため、下院より詳細な審議をおこない年間3000-4000の修正をおこなうことで、上院は下院党派とはことなる見識を議会に提供している[1]
  • アメリカ合衆国議会では法案に対してほとんど党議拘束がかけられていないため、議案ごとに個々の与野党議員が是々非々で交差投票(クロスボーティング)を行う。 委員長選出などの議事運営上での選任投票など党派色の強い案件を除き、党議拘束は緩く法案ごとに同調する議員をまとめている[2]。これは大統領を頂点とする行政府に権力を付与するために議会において党議拘束が求められる必要がないということが大きい。政党のリーダーとたとえば地元選挙区の意見や利害が衝突した場合には、議員は政党の拘束よりも地元の利害に基づいて判断し、議会での投票行動をおこなう[3]


議院内閣制をとる国々では一般に党議拘束が強いという傾向があるが、これは議院内閣制において行政権を担う内閣を組織するためには議会における多数派の形成が不可欠であり、政権を獲得してこれを維持するためには党議拘束による多数派の形成を図る必要性が大きいためと説明される。

国会議員への党議拘束は日本国憲法第51条の「両議院の議員は、議院で行った演説、討論又は表決について、院外で責任を問はれない」から違憲とする意見があるが、院外の公権力によって議院内の活動に対して議員に責任を問うことを禁止しているのであって、党所属の国会議員を政党内部において政党の処罰をすることは禁止されていないとする観点より、合憲とする説が有力である。

党議拘束は国会改革における重要な議題の一つであり、『政権が変わっても政治が変わらないということを裏付けているのは政党の「党議拘束」である。党議拘束が緩和されない限り議員立法の可能性は全くない』すなわち『政策決定プロセスにおける(行政府)官僚支配を決定的にしているのが国会審議における党議拘束であり、(行政府)官僚はこれがあるかぎり与党(与党議員)とだけ調整していればよいのである』[4]

日本での事例

党議拘束に造反した議員が大量に出た例

※太字は造反が出たことにより当初予定されていた採決結果と異なる採決結果が出た事例

党議拘束を掛けなかったことで注目された法案

脚注

  1. ^ 「参議院憲法調査会における海外派遣調査の概要」参議院憲法調査会(H17.4)[1]P.116(PDF-P.122)およびP.192(PDF-P.198)
  2. ^ 「参議院憲法調査会における海外派遣調査の概要」参議院憲法調査会(H17.4)[2]P.6(PDF-P.12)
  3. ^ 「参議院憲法調査会における海外派遣調査の概要」参議院憲法調査会(H17.4)[3]P.39(PDF-P.45)
  4. ^ 「政策決定プロセスの再検討」五十嵐敬喜(日本公共政策学界年報1998)[4]P.13(PDF-P.13)

関連項目