仕事関数

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仕事関数(Work function):表面において、表面から1個の電子を無限遠まで取り出すのに必要な最小エネルギーのこと。この時、表面上の空間は真空であるとする。N個の電子からなる表面系の基底状態の全エネルギーをEtot(N)とすると、最初電子がN+1個あった表面(Etot(N+1))から電子を1個無限遠方まで取り出すとすると(無限遠方にある電子状態を真空準位V(∞)とすると、系全体として、Etot(N)+V(∞)となる)、仕事関数Wは、

となる。ここでμは化学ポテンシャルである(Nが十分大きければ、)。
温度が絶対零度(T = 0 K)なら、

となり(εFフェルミ準位)、仕事関数は真空準位とフェルミ準位とのエネルギー差となる。表面から電子を取り出す場合、それは熱(→熱電子)であったり、光の吸収や原子、イオンなどの衝突などによって電子が励起されて飛び出してくる。飛び出す電子はいろいろなエネルギー準位から出てくるが、仕事関数は定義によりその中で最小のものとなる。従って真空準位とフェルミ準位(T = 0 K)との差が仕事関数となる。表面の電子状態がバンドギャップを持つ場合は、電子の詰まった価電子帯の最も高いエネルギー位置と真空準位とのエネルギー差が仕事関数となる(T = 0 Kの場合)。
真空準位は常にフェルミ準位より高いところにある。真空準位がフェルミ準位より低くなることは、表面から(何の励起もなしに)自発的に電子が出て行くことになりあり得ない。

仕事関数の値は、表面における原子の種類、面の方位や、構造、或いは他の原子が吸着していることなどに強く依存する。これは別の言い方をすれば、仕事関数は表面の電子状態に強く依存している量である。その意味で、仕事関数は表面の研究において非常に重要な物理量の一つである。
実験的には、ケルビン法(振動容量法)などで測定される。

(電気陰性度との関係)
ポーリングの電気陰性度をχとすると、いろいろな単体元素表面の仕事関数とχには次のような相関関係がある(単位はeV:電子ボルト)。

勿論、実際の値にはばらつきがあり、上式にあまり当てはまらないものもある。

【関連用語】 電子親和力

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